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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

海南島の気のいい仲間達

2006-10-20 | フィールドから
10月20日(金)
・再び,マングローブ群生地へ行く.今日の群生地は,海口市街地から20分くらいのところである.現地スタッフと合流し,やはり船(低速のモーターボート)でマングローブ群生地を見に行く.この自然保護区には中国のマングローブ37種が全て分布しているらしく,非常に美しい景観である.



・改めて,オヒルギの花や胎生種子をしっかりと見たのだが,写真やTVと違い,間近で見るとまた色んな発見がある.マングローブ群落は景観も特異だが,群落に依存する鳥類,甲殻類,魚類なども多様で,まさに生物の宝庫といえそうである.群集生態を志す研究者にとっては,またとない研究対象だろう,などと思ったりする.



・この自然保護区は1980年に設定されたとのことだが,植生図など詳しい資料はないらしい.しかし,現地スタッフの頭の中に植生図が入っているとのこと.こうした調査研究では,やはり現場をよく知っている人の協力が不可欠だということを改めて感じる.第一,自分達だけでは種の同定すらできない.

・午後,現在,会場の準備を進めている熱帯植物園を見学.海南島には,マングローブだけではなく,標高1000mくらいまでに熱帯低地林,熱帯高地林,高山帯の潅木など多様な植生があることを知る.動物種もかなり豊富のようで,ウンピョウ,クマ,アルマジロ,ムササビなど様々な剥製の展示がある.

・動物種のうち,海南島だけに生息するサルがいると聞く.現在では,既に13頭しかいないらしく,非常に貴重な種らしい.それにしても,13頭しか現存しないのでは,もはや種としては絶滅したに等しいのではないだろうと思っていたら,海南島のシカは一度26頭まで減少したが,現在では2000頭まで増えたという話を聞く.すごいボトルネックがかかっていそうで,遺伝解析したら面白そうである.

・この熱帯植物園は単に展示をするだけでなく,蘭の培養施設があり,花の販売も行っている.その規模はかなり大きく,スタッフはもくもくと継代培養を行っている.以前,樹木の組織培養に手を染めた当方としては,懐かしい限りである.施設は決して新しくないが,コンタミもなく,非常にうまく培養がしていることに感心する.



・今日の夜は偉い人との会合もなく,海南島でマングローブ調査に付き合ってくれたスタッフとの懇親会となる.38度のマオタイ酒で何度か乾杯すると,あやうく目が回りそうになるが,中国人は皆強く全然変わらない.海南島のスタッフは気持ちがよい人達ばかりで,気のいい仲間達という感じ.特に,南京農業大学のTさんのキャラクターにもよるのだろうが,みんな飲みまくり食べまくり,で盛り上がり,とても愉快な一時を過ごした.

・話しながら感じたのだが,中国の人達の友達に対する感覚というのは,日本にはない信頼の深さ,一種独特の鷹揚さがある.「度量が大きい」というのは,こういうことを言うのであろう.こうした懐の深さをうらやましく思ったり,かなわないと思ったり・・・.ともかく,中国の人達のこうした機微に触れることができたのは,本当に貴重な体験だったと思う.

南国・海口のマングローブ群落

2006-10-19 | フィールドから
10月19日
・飛行機で海口市へ.こちらはさらに南国チックである.朝飯がまだだということで,いきなり街角の食堂へ入る.ヌードルを食べたのだが,これまた薄味でとても粋な味である.



・ハイウェイをひた走り,調査地へ.運転手は,林野局で最も運転が上手なドライバーだとのこと.クラクションを鳴らしながら,高速レーンをかき分けるように走る.初めて,160kmまで針が触れるのを見た.ハイウェイを降りた途端に突然のスコール.すぐやむという話の通り,10分ほどで激しい雨が上がる.



・林野局の人たちと合流し,船に乗ってマングローブ群生地へ.へさきに立ち,湿った海の風を受けていると妙に落ち着くのは不思議な感覚である.途中,タープのような格好をした魚網があちこちに仕掛けられている.潮が満ちると魚が入り,潮が引くと魚が取り残されるという,原始的だが手間いらずの漁法である.



・1時間ほどでマングローブの群落へ到着.川の両岸はヤエヤマヒルギ,オヒルギ,メヒルギ,その他数種が群生して独特の景観になっている.昨日のシンチェンの自然保護区とはだいぶ雰囲気が異なり,雄大な景色である.川に挟まれたところに中州があり,そこにもマングローブが群生している.いずれにしても相当な密度で,やはりプロットの設定方法などについて議論する.



・午後は,移入種ユーカリの植栽地を見る.とても成長の早い品種(U-6)らしく,植栽して半年だというのに既に4mを超えている.1年目の植栽地では,既に12-13mに到達しており,4年後に収穫して萌芽更新させるという.育種サイドから見ればまさしく成功例なのだが,ここでは別の問題も発生している.



・この付近は,赤色土壌なのだが,ユーカリを植えると養分の逸脱が激しく,後から他の植物が育たなくなるらしい.しかし,現在では製紙用として需要があり,高く売れるということで,この付近の山では新たな植栽が起こっているらしい.何事も色んな角度から見なければいけないと,改めて感じたのであった.

シンチェンの光と影

2006-10-18 | フィールドから
10月18日

・広州の中山大学のホテルを出発し,車でシンチェンへ向かう.2時間ほどの行程である.途中,広大なバナナのプランテーションを見る.農村風景はまた違った趣である.同行してくれたPDの学生から小さなバナナが美味しいということを力説されたり,と.

・シンチェンは経済特区に指定されて以来,急激な経済成長を遂げた都市である.現在でも,移入して働きたい人が多すぎるため,厳重なゲートを設けて移入を制限している.一瞬,国境かと錯覚するくらい.中に入ると,確かに近代化された都市で,大きなマンションやビルが立ち並ぶ.

・シンチェン自然保護区に入る.自然海浜公園となっており,一般の人も入場料を払って観光している.こちらも,電気自動車に乗せられて,同じく観光気分.人工林と自然林があるが,環境はそんなによろしくないようである.ここには7種のマングローブがあるとのことだが,移入種が巨大になっている.さて,問題のメヒルギだが,非常に密生した状態でどこからどこまでが株なのかといった感じである.

・再び車で移動し,ホテルと陳先生のマングローブの試験地があるリゾート地に到着.この一帯はかつて泥炭地で樹木は1本もなかったそうだが,今では緑化樹が至る所に植栽されている.中には,観光やアミューズメント施設まであり,テーマパークといったところか.

・この一帯に,マングローブの試験地がある.ここは,昨日,博士課程の学生がプレゼンしてくれた調査地である.水を張ったところにマングローブを迷路のように植栽しているのだが(彼は植栽後の成長や生存,栄養塩やエビやカニなどの汚染含有などを調べていた),この試験地は最終的にはマングローブで作られた水路を船で案内するコースになるらしい.効率的というか世俗的というか・・・,ちょっとしたカルチャーショックである.



・この試験では,マングローブ3種で45%の面積をカバーするように植栽したのだが,生存と成長は顕著である.中程度の種の現在の樹高は50cmから1mくらいであるが,メヒルギは水没に弱いらしく,ほぼ完全に消滅している.



・一方,バングラディシュからの移入種は極端に成長が早く,樹高が10m以上に達しており,もはや人を寄せ付けない雰囲気である.ここでも,移入種問題は早くもクローズアップされそうな気配である.



・ところで,広州についてから今日まで,ずっと薄曇のような天気が続いている.どうしてすっきり晴れないのかと思っていたら,この付近では大気汚染によってこのようなスモッグが常にかかっているらしい(排気ガスが原因と言っていたが・・・).急激な成長を遂げる裏で,汚染の問題は深刻なようで,現在,“汚染浄化”がかなり重要な研究のキーワードとなっている理由を体感する.

中国人学生の熱意

2006-10-17 | フィールドから
・今更ながら宿泊したホテルが大学のキャンパス内に存在したということを知る.道理でたくさんの学生らしき人たちが夜遅くまで闊歩していたはずだ.学生寮,職員住宅も同じキャンパスにあり,幼稚園,スーパー,病院と一つのコミュニティを形成している.




・大学の教養学部は離れたところにあり,そこまで車で1時間ほどかけて行く.さしずめ,柏キャンパスといったところか.この辺りは,巨大な中洲になっているらしく,新しい大学が集中して存在する学園都市となっている.巨大な建造物に圧倒されつつ,講義棟へ向かう.



・教室には既に60名程度の学生が待ち構えており,即刻,ミニ講義(?)となる.当方は,二次林におけるウダイカンバ資源管理の話をしたのだが,どれだけ伝わったか少々不安である.しかし,学生達が真剣な表情で聞いてくれるのには,もはや感動すら覚えてしまう(某T大学の講義ではありえない状況だ・・・).生徒達はみなあどけなく,まるで高校生みたいだったが,聞けば3年生とのこと.それにもかかわらず,講義終了後も質問が矢のように降り注ぐ.実によく勉強しているし,様々なことに関心を持っているようだ.



・図書館などを見学した後,ホテルに戻る途中に,水辺に浮かぶコテージのようなレストランで広東料理を頂く.アヒル,豚,鳥の軟骨,青菜などの炒め物,春雨サラダなど,やや油っぽいのが玉に瑕だが,さすが「食は広東にあり」と言わしめるだけのことはある味であった.冬草夏虫のスープは見た目はちょっとグロテスクだが,滋味溢れるもので唸らせるものであった(だけど,そんなに好きではない).



・午後はホテルのあるキャンパスに戻り,大学院生と教員達と合同セミナー.2つ分のプレゼンは用意していなかったのだが,同じ話をするのも飽きるので,マツ材線虫病抵抗性育種のスライドを即席で作る.午前中のプレゼン用では,一生懸命,英語のスライドを作ったのだが,中国では日本語のスライドを使って英語でプレゼンした方が分かりやすい,かもしれないということに今更気がつく.カンバの話は,プチ熱帯の広州ではピンとこなかったようだが,マツ材線虫病はタイムリーだったようで,分子生態学をこちらでやっているXue-Jun教授には興味を持っていただけたようだ.Silvae Geneticaの論文も読んでみると言ってくれたので,そのうち引用されることを期待しよう.



・食事の後,疲れた体を引きずるように,遊覧船で観光.中国の人たちはみんな元気で,いわゆる蹴鞠に似た球技(?)に興じている.ここ広州は中国3番目の都市だそうで,河川沿いは非常に美しいイルミネーションである.船にもたれながら輝く都市を眺めていると,もはや現のものだとは思えなくなってきて,意識朦朧となるのであった.

ひとたびはポプラに

2006-10-16 | フィールドから
・ここのところ,何やら慌しく,日記をつける暇すらなかった.というのも,現在,はるか中国は広州に居るからで,申請書の締め切りと渡航準備に追われていたわけである.幸い,ホテルはインターネットが使えるため,こうして記事を投稿できるというわけ.

・今回は,Rさん,Hさんと3人での中国出張である.マングローブ研究を開始するにあたり,まずは現地検討というわけだ.成田から上海に3時間かけてフライトした後,2時間かけて広州へとわたる.広州はいわゆる華南エリアにあり,広東省に位置するそれなりに大きな街である.現在,世界的な”貿易展覧会(?)”みたいなイベントが開かれていて,なかなか航空券が取れなかったとのこと.しかし,お隣の国でありながら,本当に,中国のことを何も知らないなと実感する.

・さて,上海空港は最近新しくなり,2つに分かれている,というのを今日まで知らなかった.今回の日程では,成田から到着する空港と広州へと出発する空港が違っており,移動する必要がある.普通,第一ターミナルと第二ターミナルくらいの距離だろうと思うところだが,そこは広い中国である.時間がないということで,タクシーを利用したのだが,120kmでぶっ飛ばしても1時間近くかかった.たまたま助手席に乗っていたのだが,窓を全開にしたままの120kmはなかなかで,そんじょそこらのジェットコースターよりも迫力がある.

・危機感も時間が経つとだんだんと麻痺するもので,朦朧としつつ車窓の風景を楽しむ(?).そうして見ていると,やはり中国はポプラの国だと認識.そのほか,街路樹として植えてあった針葉樹はラクウショウだろうか・・・.上海は巨大な建設物(マンション群)がひしめきあっていて,乾いた印象である.ギリシャ調の建物などが目に付いたせいか,なぜか”石の都”という感じを強く受けた.

・広州についたころには,とっぷりと日も暮れていた.こちらは蒸し暑く,プチ熱帯的な雰囲気であるようだ(が,暗いので様子はよく分からない).海外旅行ならではの緊張感と,中国ならではの独特の猥雑さに,すっかり飲まれてしまい,今夜はもはや気力ゼロである.明日は,中山大学で学生を相手にプレゼンすることになっているようだが,もはや「ひとたびはポプラに臥す」しかないのである.


指数べき分布

2006-10-06 | フィールドから
・申請書の作成に午前中かかりきりになる.内容を変更するために,コピーしては貼り付けるだけなんだが,ワードの罫線はどうしてこう言うことを聞かないのか・・・.今回は関係ないけど,論文作成の時には,いつも”ページごと削除”というのができずに苦しんでいる.何とも情けない限りで,コンピュータに操られているとしか言い様がない.

・先日読んだRobledo-Arnuncio and Gil (2005)の論文の中で,「指数べき分布を使って花粉散布曲線を観察値にフィットさせる」というのがあるんだが,そもそも指数べき分布ってどんな感じだろうと思って,Rを使っての作図に取り組む.明らかにこんなことをやっている場合ではないのだが,忙しいときに限ってこんなことにはまってしまうわけで・・・.

・さて,指数べき分布は,a,bなどの2つのパラメータで決まる減少曲線である.Robledo-Arnuncioの論文にも式が書いてあるが,見慣れないΓ(ガンマと読む)という関数が出てくるのでエクセルでは手に負えない(・・・と思っていたら,Sさんは強引にΓ関数の値を算出する技を編み出している,すごい).

・指数べき分布は,aとbの値によって,距離に対するスケールと形が異なるので,自由度が高く,「花粉散布や種子散布曲線の推定ではまず試みたまえ!」とClarkさんも述べている.平均値は,a×Γ(3/b)/Γ(2/b)で計算できるのだが,Rの場合,gamma()であっさりと計算してくれるので,式を書くのも楽だ,と分かる.

例えば,

a <- 20
b <- 0.7
exppower <- function(x) b/(2*pi*a^2*gamma(2/b))*exp(-(x/a)^b)
curve(exppower, 1, 1000, col="purple")

とでもすれば,a=20,b=0.7の時の指数べき分布曲線が紫色で描けるし,

avg.ab <- a*gamma(3/b)/(gamma(2/b))
print(a)
print(b)
print(avg.ab)

で平均値も求められる(もっとエクセレントな方法があるんだろうけど).

aを動かしてみると,こんな感じである.b=0.7に固定して,赤はa=10, 緑はa=20, 紫はa=30となっている.




今度はbを動かしてみる.a=20で固定.b=0.5が赤,b=0.7が緑,b=0.9が紫.



・Robledo-Arnuncioの論文で載っていたa=24.08,b=0.67を代入して平均花粉散布距離を計算させると137.6である.たしか,こんな値だったわい,うまくできた・・・と思って論文を読み返すと,平均135.5mになっている.なぜであろうか・・・.小数点以下の問題かもしれないが妙に気になる.直接,本人にメールしてみるか,と思ったり・・・.

・ここまではいいのだが,最尤法で観察値にフィットさせるようにaとbを最適化させるのには,尤度方程式の理解が必要.未だに尤度という概念そのものが苦手である.まあとにかく,自分でやると勉強になるので,少しずつ進めることにする.

焼松峠の変貌

2006-10-03 | フィールドから
・岐阜大学のTさんを迎え,1年ぶりに焼松峠の調査.今回は,実生の調査は行わず,各プロットの含水率,土壌硬度などを測定する.平坦部と斜面部を比べると,土壌硬度は明らかに斜面部が低い(当たり前!?).水分はというと,なかなか明確な関係はないが,林縁が若干高く,また下草が繁茂しているプロット右下部分は明らかに高そうだ.Tさんは,今年もプロット内の植生調査を継続しつつ,各植物種の最大高などを測っておられる.



・このプロットには,2002年から毎年調査に来ているのだが,昨年くらいから様相が一変している.最初は土壌が露出し,これからどうなってしまうんだろうという感じだった.それが今では,実生も下草も繁茂し,プロット右下部のタラノキはついに背丈を越えた.全体的に,プロットの周囲に密生しているササがあっという間に回復して,ササに覆われてしまうのではないかと心配していたのだが,ササの植被率は相変わらず10%にも満たない程度だ.昨年に定着したウダイカンバ,イタヤカエデ,ヤチダモ,シナノキなども結構たくさん残り,多様な樹木の更新が起こりつつある感じ.昨年よりも,若干,イタヤカエデが増えただろうか・・・.



・今回は,当方の調査は楽なので,写真撮影などしつつ,気ままに歩き回る.普段,こうして余裕をもってプロットにいることは少ないので,非常に有意義だ.焼松峠には,ウダイカンバの種子を花咲か爺さんのように直播したところと,全くの放置したところがあるのだが,特に直播したところがウダイカンバが多いというわけではない.かように,森林への直播というのは難しく,どんぐりの直播(しかも,しっかりと埋め込むやつ)以外ではほとんど失敗しているのではないか・・・.

・こうして失敗した例というのは,なかなか論文にはならないので,いつの時代にも失敗が繰り返されることになってしまうわけだ.今回の焼松峠の場合,10年後に再調査して,直播の失敗ということを定量的に示してみたいと思っている.

遺伝解析→フィールド

2006-09-29 | フィールドから
・再び、カツラの現地調査。実生プロットをめぐりつつ、各プロットの状態、周りのカツラ成木を確認していく。せっかくプロットめぐりをするので、今回は水分計、土壌硬度計でプロットごとの状態を定量的に評価しようということに。硬度計はバラツキが多いが、水分計は思ったよりもうまく値が出ているようだ。湿地がちだったところでは最大で70%もの値を示し、マウンドのような乾いたところでは20~30%といったところである。

・さて今回は、既に遺伝解析で種子親が推定できた上で、フィールドに行くという流れである。いつも慌しく調査することが多いので、このような機会は意外と少ない。各プロットでよく貢献している雌株を確認すると、それなりに近い株がよく貢献しているようだ。今回面白かったのは、単に幹の中心の距離よりは、やはり樹冠の広がりの範囲が大きく影響していることである。また、他の針葉樹の位置なども影響を与えていそうである。何はともあれ、遺伝解析はうまく行っているようで、明らかに挙動がおかしいというような雌株は認められない。

・今回の調査で一番興味深かったのは、必ずしも超巨大な株が貢献しているとは限らないことである。もちろん、30cm程度の個体はたいして貢献していないのだが、何本もの萌芽幹が並んでいるような巨大株よりは、50~60cm程度の壮齢株の方がよく貢献している。実際、実をつけている量も、どうもそのような個体の方が多そうだ。

・こうして考えると、BAを種子生産量の指標にするのは難しそうだ。だからこそ、遺伝マーカーを用いる意義が大きいわけなんだが。それしても、個体差というのは簡単に扱うことはできず、ランダム効果にした方がすっきりしそう、ということがよく分かる。うーむ、やはりベイズか・・・。

秋は足元から

2006-09-26 | フィールドから
・実習対応.東京から来た1-2年の学生たち35名ほどを迎え,大麓山山頂を目指す.と,800m付近でいきなりダケカンバの大木が道をふさいでいるというアクシデント.応援を待っていると,シマリスがぴょこぴょこ.初めて見たんだが,かわいらしい動き.こうして比較すると,エゾリスはずいぶん野性味溢れる動物だね.



・1100mから1時間ほどかけて,大麓山山頂へ.高山性のイチゴ,ツツジの仲間はすっかり紅葉し,足元は赤や黄色と鮮やかである.ここのところ,登山しようとするたびに雨とか雷とか,よく考えたらろくな天気がなかった.久しぶりに富良野岳,十勝岳,下ホロカメツトク山などを眺める(3年ぶり・・・?).



・その後,2箇所ほど下山途中に保存林を見学させる.天気がいいと山を歩いていても単純に気持ちがよく,細かい説明なんぞはどうでもいいような気持ちになる.個人的な趣味で,湿地帯に分布しているアカエゾマツの純林も無理やり見せる.足元のぬかるみに学生たちは少々苦戦していた.全体的に,今年の学生はやや大人しいようで・・・(夜になったら,分からんが・・・).

・ところで,昨日,UくんからForest Ecology and Managementに投稿していたウダイカンバ論文がついに受理されたとの嬉しい知らせがあった.ウダイカンバは,天然林ではギャップ更新依存で低密度に分布するが,山火事後のような大規模撹乱後には高密度林分が形成される.この論文では,成立過程の異なるウダイカンバ集団を対象に,成熟個体集団と埋土種子集団の遺伝的多様性や構造がどのように異なるかを調べた論文である.最初の調査から数えると足掛け○年,ようやくここまで来ましたか・・・.それにしても,“受理”って言葉,何度聞いてもいい響きである.

スズメバチおそるべし

2006-09-22 | フィールドから
・Sさん,Tさんと久しぶりに岩魚沢でカツラの調査.まずは,風向風速ロガーのデータを回収.今年からこのロガーを設置したが,風のデータをいかにつかうかが,また一つの難所になりそうである.コーナーシステムのものを使っているのだが,かなり微風でも反応しており,これまでのところ故障もない.バッテリーもまだ半分くらいのこっているようで,とりあえず一安心.


・実生プロットをめぐり,環境条件や周囲のカツラの分布状況など確認.パソコン上では平面になっているのだが,実際には地形の起伏があったり,間に大きな針葉樹が邪魔していたり,と意外な発見があったりする.全体的には,納得の雌が母親として推定されており,解析結果はなかなか正しかったりするんじゃないか・・・という感覚だ.

・4つ目の実生プロットでの調査中,気がつくとなんとスズメバチが周りにわんわんといる・・・.なんと,すぐそばの倒木の下に巣があったらしい.あわてて逃げたが,Sさんが1匹に背中を刺されるというハプニング.すぐに休憩バスに戻って,毒吸引器で吸い出す.この吸引器はなかなか強力で,当職場でも結構役に立っているようで,野外調査をする人にとっては必需品といえるかもしれない.

・幸い,大事には至らなかったが,やはりスズメバチは怖い.フィールド調査をする皆さんもくれぐれも気をつけて・・・.