「にがり」が大ブームになっています。テレビの健康番組や雑誌で次々と「にがり痩身効果あり」という情報がながされたことが原因のようです。
過剰な量の「にがり」をとると下痢をおこしやすなります。ひどい場合には、2004年、ある福祉施設でにがりの原液を飲まされた女性が意識不明の重体となったほか、にがりを大量に摂取したことによる急性マグネシウム中毒で、死亡事故まで発生しています。
サプリ会社などは、にがりのダイエット効果は、にがりに含まれるマグネシウムが脂肪分や糖分の吸収を抑え、糖やエネルギーの代謝を促進するものです と主張していますがそのとおりでしょうか。
「にがり」とは、海水を煮詰めて製塩した後に残った母液のことです。この味が「ニガイ」ので、「苦汁」ともいいます。その主成分は塩化マグネシウムで、一般的には豆腐を固まらせるために使われます。
市販の「にがり」は、海水を蒸発させて作られます。海水の塩分の濃度は3.4%です。この3.4%の中に塩化ナトリウム(77.9%)、塩化マグネシウム(9.6%)、硫酸マグネシウム(6.1%)硫化カルシウム(4.0%)塩化カリウム(2.1%)などが含まれています。製塩によってつくられる「にがり」の主成分はマグネシウムとなります。
マグネシウムは医薬品では下剤に分類されています。マグネシウムを大量にとると、腸管の内部で水分が吸収されにくくなります。このため便が軟化し、下痢がおこるのです。腸管に存在する大量のマグネシウムに邪魔されて、ビタミンやミネラルが吸収されにくくなります。もし、ビタミンやミネラルが不足すれば、大変こまったことになります。ビタミンやミネラルは、生体で栄養素をほかの栄養素に変換する化学反応を触媒する酵素の働きに欠かせません。
ビタミンやミネラルが不足すると、糖類や脂肪からエネルギー物質であるアデノシン三リン酸ができにくくなります。下痢をすると体力が落ちるのは、ビタミンやミネラルが不足するためです。
マグネシウムが脂肪分や糖類の吸収を抑えるわけでもない。「にがり」による痩身効果があるわけでもありません。
にがりの健康へのマイナス効果はとても大きいのです。それは、もともと海水には大量のナトリウムが含まれており、製塩されたあとでさえもナトリウムはカリウムよりもはるかに多いからです。そのため、高血圧となりやすくなります。「にがりダイエット」は、脳卒中を引き起こす危険もあるということです。
「にがり」には、マグネシウムに比べてカルシウムが決定的に不足しています。そのために、にがりの過剰摂取により、高血圧、糖尿病という生活習慣病になりやすくなります。