どんな時代にも若者は人生の出発点で、基準を世間並みに置くか、自分自身のうちに置くかの決断を迫られる。世間並みのところに基準を置く者は、生涯世間並みに生きる道を選びとったといえる。自分のうちなる要求に忠実であることを選んだ者は、誰でもがあうわけではないかずかずの困難に出会うだろうが、それもみずからの責任において選んだものである。
人間は生きている限りは活動をし、自己を世に問いたいが、奴隷になりたくない。自分の欲した仕事ならどんな苦労もいとわないが、そうでない仕事では僅かの強要もいやだと思う。そして「天職」とは自分の選び取った仕事の中に限りもなく深入りし、少しでも立派なものにそれを仕立てようとする心映えを持ち続けることだろう。選ぶとは限定することである。何でもやろうとする人は結局ついに生涯ただの好事家に留まらざるをえない。