いくら用心しても、老化は起こります。まず老眼が45歳前後から始まってきます。だんだん聴力が弱くなってきます。発語が不明瞭になってきます。年をとった人は話している言葉がどうしても不明瞭になります。聞いているほうの老人も「そうか、そうか」といい加減な返事をします。年をとると聴力が落ちることに加えて、識別力も下がるのです。音は聞こえているが言葉が識別されないということが起こります。年をとると視野も狭くなります。眼科医で視野検査を受けると、正常な視野はあるのです。「あなた、よいですよ」と言われます。ところが家では「楊枝をとってくれ」と奥さんに言ったりします。しかし、目の前に楊枝はあるのです。目のすぐ前だけを見て、そこになければ楊枝はどこにあるのかと聞くのです。広く見ようとする習慣がなくなるからです。眼鏡がそこにあっても、どこかと尋ねます。
このように年をとると実際上の視野が狭くなり、言葉の識別力が下がるということが起こるのはやむをえませんが、そのほかに、老人になるとだんだんイコジになって孤立してしまうことがあります。どうすれば心の視野を広げることができるかということも考えなければなりません。老人が目もよく見えず、音もよく聞こえないと、つい自分の部屋にこもってしまいがちになります。老人は人との接触から離れると、老化が非常に早くなります。人に接することが老化を防ぐ上で大切なことです。