
ハワイアン・ファン誌復刊第3号のご依頼で下記の記事を書いたのですが、字数が大幅にオーバーしてしまったため、3分の1を削ったものが掲載されました。どこが削られたかをご覧いただくのも楽しみ(?)かもしれませんね。
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IZ(イズラエル・カマカヴィヴォオレ)のアルバム「フェイシング・フューチャー」が2005年10月に米国レコード工業会(RIAA)からハワイのミュージシャンとしては初の全米におけるセールスが100万枚を突破した「プラチナ・ディスク」として認定されました。
1997年6月に38歳の若さで亡くなったハワイの歌手IZはハイティーンのころからマカハ・サンズ・オブ・ニイハウの中心人物としてライブにアルバム収録にと活躍してきたのですが、その後グループから独立し、歌手としてソロ活動に専念していました。彼のソロ・アルバムとしてはマカハ・サンズ・オブ・ニイハウ在籍中にリリースした「カ・アノイ」を含めて生前に4枚、没後に2枚のCDが、そして没後に3枚のDVDもリリースされています。
彼の独立後最初のアルバム「フェイシング・フューチャー」はハワイではもちろんのこと全米での売り上げも常にベスト10に入るという人気を持続しています。そして彼のアルバム6枚中4枚がビルボードの売り上げランキングで全米の1位、2位、15位、22位を占めた時期もあり、2005年年11月現在でも2枚が全米で9位と33位という相変わらずの売れ行きを記録しています。その人気の原動力は彼の独特の味のある声と歌い方にあると思われますが、それに加えて彼がハワイアン音楽だけでなく幅広いジャンルの曲を唄っていることにもあると思われます。特に「フェイシング・フューチャー」と没後に出た「アローン・イン・イズ・ワールド」に収録されている「虹の彼方」がこの人気の引き金になっていることは間違いありません。
この「虹の彼方」をアルバム「フェイシング・フューチャー」のときは「サムホエア・オーバー・ザ・レインボー/ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」という形のメドレー曲として唄い、没後に出たアルバム「アローン・イン・イズ・ワールド」では「オーバー・ザ・レインボー」として唄われていますが、この2枚のアルバムが全米の売り上げのトップ100に常に入っているのがその裏づけとなるでしょう。
日本でもお馴染みのTV映画「ER(救急救命室)」というシリーズのエグゼクティブ・プロデューサーであったジョン・ウェルスが1996年にカウアイ島を旅行した際、たまたまIZのコンサートを聴き、彼の歌声にすっかり魅せられてしまったのです。そしてIZの死後もなんとか彼の歌声を自分の番組で使いたいと暖めていたところ、最適のシーンで使うこととなりました。それは「オン・ザ・ビーチ」というエピソードの中においてERの医師マーク・グリーンが息を引き取るという悲しい場面で、窓の外からこのIZの唄う「サムホエア・オーバー・ザ・レインボー」が聞こえてくる、という設定でした。これが放映された2002年5月9日の翌日からTV局には歌手の名前やアルバムの名前についての問い合わせが殺到し、その結果「フェイシング・フューチャー」(TVではこちらの音が使われています)と「アローン・イン・イズ・ワールド」の2枚、特に前者の売れ行きが爆発的に上昇したのです。
これに伴い、ERだけでなく同じくNBCのTVシリーズ「プロヴィデンス」や映画「ファインディング・フォレスター」およびブラッド・ピットとアンソニー・ホプキンス主演の「ジョー・ブラックをよろしく」の中で効果的に使われたり、さらには米国だけでなく世界各国のTVCMのバックに使われたりと、現在でも衰えを知らないほどの人気が続いています。
ただ、この人気に水を差すつもりはさらさらないのですが、IZの唄う「虹の彼方」にはイマイチ気になる点があるのです。まず、タイトルが当初「サムホエア・オーバー・ザ・レインボー」と付けられたことが気になります。この曲はジュディー・ガーランド(ライザ・ミネリの母親、といったほうが理解されるかもしれませんが)の大ヒット作品「オズの魔法使い」の主題歌として彼女自身が歌った名曲であり、当然ながら「サムホエア」とは付きません。この点だけは次のアルバムでは削除されましたが、一度間違って付けられた前のアルバムでのタイトルは永久に残ってしまいます。ハワイの出版元マウンテン・アップル社がこの曲を知らなかったのかも知れませんが、著作権管理団体で調べればすぐに分かることなので、「IZ」というより出版元の落ち度だと思っています。
このことよりも数段ヒドイ「問題点」があります。それはIZがウロ覚えで唄っていると思われる歌詞が「支離滅裂である」という点です。(「IZのOver the Rainbow」参照)全部を紹介するにはスペースがありませんが、出だしの一節を除くすべての歌詞が脈絡のない順番で唄われます。例えば出だしの「虹の彼方のどこかに、私が子守唄で聞いたことのある場所がある」と唄われるところが「虹の彼方のどこかと、あなたが子守唄のなかで夢みた夢がある」と文法もメチャクチャであるだけでなくせっかくのストーリーを壊した歌詞の羅列が最後まで続くのです。
メロディー自体もオリジナルとは異なっていますが、こちらのほうは「アレンジ」と強弁すれば通る程度の内容です。しかし歌詞のほうはいけません。この歌詞は作詞者が心を込めて書いた「作品」であり、当然著作権登録もされているにもかかわらず、IZはこの素晴らしい「作品」をパロディーではなくまじめに「間違って」唄っているのです。
IZが亡くなった今となっては打つ手はないと考えます。こういうことはアルバムをリリースする際にプロデューサーなりディレクターがしっかりとチェックすべき点であり、上記同様マウンテン・アップル社の姿勢に疑問を感じます。IZの唄う「間違った歌詞」をまねて唄う歌手はプロ・アマを問わずたくさんいるでしょう。影響力の大きいアーティストほど出版前のチェックを慎重にやってほしいものです。このこともあってせっかくの「プラチナ・ディスク達成」という快挙にも心から賛辞を述べられないというのが現在の心境です。
大好きなIZの話題を嬉しくも複雑に拝見しました。
いちファンとして「FACINGFUTURE」がミリオンセラーに輝いたことはとても嬉しいです。しかしながら、ご指摘の通りSomewhere・・・は、お気に入りの曲でありながら以前MATTさんから経緯を教えて頂いていたので(今回もご説明を頂いてますが!)自ら歌ってみようという気になれません。今更ながら、キチンとした歌詞をIZが歌ってくれていたなら!と想うばかりです。さて、小職がまだまだ知らないIZのエピソードが沢山あると思いますので、これからもご紹介を暫時お願い致します。。。
ところで、29日のJohnnyは、MATTさんとキッドさんに入って頂き嬉しそうに歌ってましたね!本人の方が大感激してたのではないでしょうか!?幸せなヤツですね。。。
でも、あの天性の歌声は誰にもマネできないでしょうね。たとえコロッケでも、って例えがマズイですが。
ニック加藤さんが「誰も知らないハワイもうひとつ」でIZについて書かれています。けだし名文です。この文でニック加藤さんに逢いたいと思いました。いつの日か、時間とお金に余裕ができたら、ニック加藤さんのB&Bに泊まろうと思っています。
そして、MATTさん、おがわさん、JohnnyさんなどIZの好きな人とお知り合いになれて本当によかったと思っています。
(今夜も少し酔っていますナ。)
ちょうど1年前のナー・ホークーに出席したときには、すでに酸素ボンベを伴っての演奏で(「19回ナ・ホク報告抜粋」参照)、翌年のナー・ホークーは入院中のIZに代わって叔父さんのモエ・ケアレがペナントを受け取ったのですがそれから程なくして他界したわけです。正直なところIZに関して興味を持つようになったのは彼の死後のことですので、あまり皆さんと変わらないでしょう。
そしたら,Facing Future 以外に,Gordon Mark の Nohea という(すごくカッチョいい)ウクレレのインストアルバムに入っているこの曲のタイトルが Somewhere ... でした.でも,まあハワイつながりでしかたない(?)として,もう1曲,Ray Charles の(感動的な)遺作,Genius Loves Company 中のこの曲も Somewhere ... でした.
ついでに,ネットでサーチしたら,英語版Wikipedia の見出しも Somewhere ... になっとりました.
ジェイクが物心ついて初めて日本に来たときにパットさんもご一緒しましたね、あのあとに来日したとき、クロース・トゥー・ユーを何回か演奏したのですが「ラ・ド・ソ」と上がっていくフレーズを彼は「シ・ド・ソ」と上がる弾き方をしたので「あなたが弾いてCDに入れると、みんなそのままマネするので、正しく弾かないとダメだよ!」と言ったら「だってママからこう教わったんだヨ」との返事。そこでカーペンターズの楽譜を持ち出して見せたら納得してくれました。危機一髪といったところです。
ところで掲載誌が発行されたので画像を入れ替えました。