
ご高齢とご病気のため現在は製作をストップされている江南市の中西さんは、もともとバンジョーやウクレレを大量に輸出していた楽器製作者でした。特にウクレレはCFマーチンを模したモデルを製作し、丁寧な仕上げで輸出先でも好評を得ていました。
1970年代にハワイへ行った際、オータサンから「ナカニシウクレレ」という楽器が非常に良いのでどこで作っているか探して欲しい、と依頼されたため帰国後各方面を当たった結果中西清一さんにたどりつき、それ以来中西さんとのお付き合いがはじまりました。
中西さんの工房にも何度か伺い、テナーウクレレやフラットマンドリンそしてバンジョーウクレレをいただいたこともありました。ほんとうは本物(?)のバンジョーをという話もあったのですが、大きくて重たく、しかも大音量なのでバンジョーウクレレで我慢?したといういきさつもありました。
中西さんから入手した2台のバンジョーウクレレのうち片方にギター用の金属弦を張って少しでもホンモノの音に近づけよう、と楽しんだこともありましたがいずれも日本に置いてきてしまいました。
金属弦を張ったバンジョー・ウクレレの音はナイロンやナイルガット弦を張ったものよりはるかにバンジョーらしく聞こえます。さらにギター用のピックを使うことでソロでもストラミングでも楽しむことができます。
さらにエスカレートしてバンジョー用のピック(スチールギター用と同じです)を右手の親指、人差し指、中指にはめて「スリーフィンガー奏法」をすればあなたはしっかりとバンジョー奏者に変身できます(たぶん・・・笑)
ただ、あまりにもカン高い音ですので皆さんから嫌われるかもしれませんし、思いのほか不協和音的な音も出ますので弾いている本人も気になるかもしれません。
金属弦ではなく「バンジョーらしい音が出せる弦」としてはフリーが採用しているラベラとアキーラの2社から「バンジョー・ウクレレ弦」が出ていますのでもし他のメーカーのバンジョー・ウクレレをお持ちの場合はそれらの弦を試されてはいかがでしょうか。まぁ振動膜の音が結構ユニークなのでどんなウクレレ用の弦をつかっても「バンジョーらしい音」は得られると思いますが。
トロイ・フェルナンデスの奏法をそのままバンジョーウクレレに移し変えると面白いなぁ、などと思ったこともありましたが、指の速度がかれの演奏についていけません(涙)。
トロイの奏法は4弦がハイGなのですが、その奏法をあきらめて(笑)ローG弦を張るのも面白いですね。
ただしフロロカーボンのようなプレインのローG弦は結構太いのでテールピースのスリットを広げる必要がある場合がありますので金属巻き弦を使うのが無難でしょう。
最近ハワイでもバンジョーウクレレが目立つようになったため、その代表的なモデルをご紹介いたします。
ひとつはおなじみのフルークやフリーを出しているマジック・フルーク社から出た米国製の「フリーM80ファイアフライ(蛍)」で(写真上)、もうひとつはエディー・フィン社からでている台湾製の「EF-BU1バンジョー・ウクレレ」(写真下)です。
そして私はEF-BU1のほうに懲りずに金属弦を張ってバンジョーに近い音を楽しんでおります。
それぞれの裏側はこのようになっています。
写真からお分かりのようにエディー・フィンのほうが伝統的なバンジョーを小さくしたような構造を持つのに対して、フリーのほうは極端に簡素化した構造になっていて、バンジョー・ヘッドのテンションの調節はおろか交換もできないように見えます。でもこのクラスのものはそれでも良いかもしれません。
エディー・フィンではボディー内部に太い金属棒を通すことでネックから連続したと同様の効果をもつ構造になってるのに対して、フリーのほうはネック自体をテールまで延長し、テールとの接合部にあるネジでボディーとネックのなす角度が調節できる構造を持っています。
バンジョー・ウクレレは振動膜(メンブレン)の上にブリッジを載せているために、長期間演奏したり保存していると弦の張力により膜が伸びてしまい、ブリッジが沈んで行きます。そのためエディー・フィンのような構造の楽器ではボディー周囲に配置されたナットを回すことで膜の張力を回復させるようになっているのです。
それに対し、この構造をもたないフリーの場合にはブリッジの沈みは覚悟のうえでネックとボディーの角度を調節することで弦がフレット線に触れてバズ音が出ないようにするという画期的な構造(特許でしょうか)で設計されています。
ただ、フリーのほうにはネックにサイドドットがないので演奏がやや困難になるでしょう。
いずれも専用のギグバッグが付いていますが、これは楽器の構造上どうしても必要とおもいます。なにしろ既成のケースには収まらないでしょうから。
バンジョー・ヘッド(振動膜)はトップメーカーのRemo社製もしくはライセンス生産品によるマイラー(ポリエチレン・テレフタレート)製ヘッドで、フリーのほうはポリスパンを混ぜて音質と外観を考慮したFiberskyn3というものを使っています。
それぞれの寸法を比較すると(フリー/エディー・フィンの順)、まず全長は547mmと553mmとほぼ同じ、弦の実効長も355mmと350mmといわゆるスタンダードサイズ。全幅すなわちバンジョー・ヘッドの直径は200mmと167mmと大きくちがうのですが、何よりも違うのは質量(重さ)で450グラムに対してなんと985グラムと2倍以上エディー・フィンが重たいのです。このため立って演奏するとズリ落ちそうになります。やはり本格的!な構造を持つことが災いしているのです。
エディー・フィンに金属弦を張ってみました。左からフリー、エディー・フィンのナイロン弦、そして金属弦の順です。
これがヘッドストック側
そしてこれがテールピース側です。
エディー・フィンはナイロン弦を考えた穴径のテールピースであったため穴を広げる必要がありましたが、もしフリーのほうに金属弦を張るのであれば十分な穴径が確保できています。ただしヘッドストック側のチューナー(弦巻き)がストレートタイプなので金属弦のテンションに耐えられるかは不明ですし、そのような設計にはなっていないでしょうから、もしそのような場合にはご自分の責任において実施してくださいね。上記のナカニシに金属弦を張ったときもマンドン用のギヤ式チューナーに付け替えていましたのでフリーに金属弦を張る場合にもウクレレ用のギヤ式のチューナーに変更した方が良いかもしれません。
これらの製品はバンジョーと同じようなロングネック構造にもかかわらずスタンダードサイズのためハイポジションの場所でフレット間隔が狭く指が窮屈です。
できればテナーサイズが欲しいところで、Gold ToneのBUT(Banjo Ukulele Tenor)
あたりが適当かもしれませんね。価格も3万円程度ですし。
その後も続々とバンジョー・ウクレレが登場しています。
上はFireflyの改良型で、前モデルではアキーラのナイルガットが張られていましたが、このモデルではラベラのバンジョー・ウクレレ専用弦に代わり、ボディー周囲の素材もメープルとウォールナットの2種類となりました。(合板ではありますが・・・)
そして角度調節機構も改良されました。
中段は最近登場したLUNA(日本のLUNAではありません)のもので透明の振動膜に特長がありますが、構造的には従来のスタイルになっています。
下段はエディーフィンの2台目のモデルでボディー直径がかなり大きくなっています。
これ以外にもたくさんのモデルがネット上で紹介されています。どうやら日本ではなく米本土の愛好者が多いのが原因のようです。
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