11日から事業仕分け 「政治銘柄」判断に注目
2009年11月11日 朝刊
政府の行政刷新会議は11日、2010年度予算の概算要求から無駄を洗い出す「事業仕分け」を始める。初日は4省の23項目が対象。厚生労働省所管の診療報酬を皮切りに、例年の予算編成で調整が難航する「政治銘柄」の事業が続々登場する。「要・不要」という単純な判定にはなじまない課題だけに、国会議員や民間有識者の仕分け人がどう切り込むのか、注目が集まる。
11日の事業仕分けでは、第2グループで午後、診療報酬の配分について病院勤務医対策を中心に55分、薬価の見直しについて後発薬(ジェネリック医薬品)の普及策を中心に1時間15分を費やして議論する。
薬価を含む診療報酬全体は、おおむね2年に1度改定され、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で利害関係者が重点配分の在り方など協議。予算の増減幅は、年末に財務相と厚労相が折衝して決めている。
長妻昭厚労相は10日の記者会見で「薬価は見直す必要がある。指摘をいただき、何ができるか議論していきたい」と述べ、仕分け結果を予算折衝の参考にしていく意向を示した。仕分けで重点配分や予算の増減幅の方向性が示されれば、中医協関係者から「部外者」の干渉に不満が出る可能性もある。
ほかにも「政治銘柄」には、総務省の地方交付税交付金や文部科学省の義務教育費国庫負担金、防衛省の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)が当てはまる。いずれも自民党政権時代は、予算の増減をめぐり各省が族議員を巻き込んで財務省と対立してきた政治課題ばかりだ。
北沢防衛相は記者会見で、思いやり予算が仕分け対象になったことについて「一義的には防衛省が米軍と話をする。いきなり削るという話はいささか乱暴だ」と反発。原口一博総務相は「財務省も聖域ではない」と財務省所管の事業に切り込むよう求めた。
鳩山首相は10日夕、こうした「政治銘柄」を仕分け対象にすべきかどうかが9日の行政刷新会議で議論になったことを記者団に明かした。その上で「慎重に配慮する必要も、あるいはあるかもしれない。しかし、まずは『聖域なき見直し』をしっかりしようという意思はみんな感じている」と力説した。
(古田哲也)