現代川柳『泥』第五号 藤井比呂夢
いま
「現今を生きる人間の自己確認を、根底に置きながら気負うことなく自然体で流れてみようとしている。」
創刊号「うぶごえ」から抽出したのだが、四号までゆっくり読み終えて言えることは、とても格調たかいエッセイストたちの思考が反映されていることである。
かつて「視野」「川柳平安」「人」「川柳鷹」「川柳ジャーナル」といった謂ゆる現代川柳の革新性を標榜した誌風をかいまみるおもいがする。
そんな流れの中で、作品を鑑賞するとき何故作品を書かねばならなかったのか、の問いがいつもわたしの脳裏を去来する。
作品は感動の所産だという。書かねばならぬ必然があったからだという。・・・いずれにしても。
青葉テイ子・佐藤容子・池さとしの書く作品をとおして人間の存在を認めることからはじまる。
創意のおのれを突き放した冷酷な空間の設定をみるとき、別人の如き志向を思う。
しかしながら、作品の消化に生身のにんげんの弱さを暴露することもまた、愛すべき一断面かもしれない。
*青葉テイ子作品
真っ赤な嘘ダダイズムなどよく似合う
創刊号の「いのちへの賛歌」から泥誌に打ち込む心情をしかとみた。自分をおろそかにすると粗雑な感性や勘になるという常識をそのまま信じてよいということを思いつつ、十七音律の中のダダイズムはおそれいった。
超現実主義そして、シュールレアリズムの母体と言われるダダイズムを川柳のデッサンに載せてはみたが、とても作品からの心象として作者の意図を汲みあげることができない。
反伝統の志向であるダダを冷ややかな眼線でみているのである。
川柳の創意は壊しては積み、壊しては積む積木細工とおなじでそこから生る証しも生まれてくる。
楯ひとつふたつこの苛立ちは何がろう
壁ぎわではっしはっしと折るは自我
時代背に 革命ごっこ花ごっこ
蝶よ花よ骨抜きばかり殻ばかり
煮ても焼いても食えぬ生臭い会話
三十作品の中の少なくともひとつの行動から思考へ推移する過程の句後の反復作用はやや安易に流れやすく、飛躍も意外性もうすれてくる。
川柳の流れはかなり変化して来ている。規制の川柳人達の不甲斐なさを嘆きながらも、川柳の世界へ新しく飛び込んでくる人達に積極的に働きかける努力は惜しんではならないと自分自身に聞かせている。
放心の骸でパンを焼いている
風刺が川柳のひとつの特性であることを充分承知したうえで、苦悩をにんげんの内部から汲みこんでいるところに共感を深くした。
続く・・・・。
いま
「現今を生きる人間の自己確認を、根底に置きながら気負うことなく自然体で流れてみようとしている。」
創刊号「うぶごえ」から抽出したのだが、四号までゆっくり読み終えて言えることは、とても格調たかいエッセイストたちの思考が反映されていることである。
かつて「視野」「川柳平安」「人」「川柳鷹」「川柳ジャーナル」といった謂ゆる現代川柳の革新性を標榜した誌風をかいまみるおもいがする。
そんな流れの中で、作品を鑑賞するとき何故作品を書かねばならなかったのか、の問いがいつもわたしの脳裏を去来する。
作品は感動の所産だという。書かねばならぬ必然があったからだという。・・・いずれにしても。
青葉テイ子・佐藤容子・池さとしの書く作品をとおして人間の存在を認めることからはじまる。
創意のおのれを突き放した冷酷な空間の設定をみるとき、別人の如き志向を思う。
しかしながら、作品の消化に生身のにんげんの弱さを暴露することもまた、愛すべき一断面かもしれない。
*青葉テイ子作品
真っ赤な嘘ダダイズムなどよく似合う
創刊号の「いのちへの賛歌」から泥誌に打ち込む心情をしかとみた。自分をおろそかにすると粗雑な感性や勘になるという常識をそのまま信じてよいということを思いつつ、十七音律の中のダダイズムはおそれいった。
超現実主義そして、シュールレアリズムの母体と言われるダダイズムを川柳のデッサンに載せてはみたが、とても作品からの心象として作者の意図を汲みあげることができない。
反伝統の志向であるダダを冷ややかな眼線でみているのである。
川柳の創意は壊しては積み、壊しては積む積木細工とおなじでそこから生る証しも生まれてくる。
楯ひとつふたつこの苛立ちは何がろう
壁ぎわではっしはっしと折るは自我
時代背に 革命ごっこ花ごっこ
蝶よ花よ骨抜きばかり殻ばかり
煮ても焼いても食えぬ生臭い会話
三十作品の中の少なくともひとつの行動から思考へ推移する過程の句後の反復作用はやや安易に流れやすく、飛躍も意外性もうすれてくる。
川柳の流れはかなり変化して来ている。規制の川柳人達の不甲斐なさを嘆きながらも、川柳の世界へ新しく飛び込んでくる人達に積極的に働きかける努力は惜しんではならないと自分自身に聞かせている。
放心の骸でパンを焼いている
風刺が川柳のひとつの特性であることを充分承知したうえで、苦悩をにんげんの内部から汲みこんでいるところに共感を深くした。
続く・・・・。