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川柳・ボートっていいね!北海道散歩

川柳・政治・時事・エッセイ

冬の金魚・・・青葉テイ子

2007年11月26日 | 川柳
            現代川柳『泥』第五号

垂れ流す午後の会話と冬の金魚
  我慢ならぬならぬとうそぶく金魚
    灰汁抜けて昂ぶることもなく金魚

                      樹林の吐息ではらはらと舞う金魚
                    身を捨てて海を知ろうとする金魚
                 煮ても焼いても食えぬ生臭い金魚

薄暮からはらり抜け出すカメレオン
       常夜灯妖しく光る猫家族
         真っ赤な嘘ダダイズムなど良く似合う

                      俗世を捨てるに惜しい花ごよみ
                   ある日ふと溺れてみたい河にでる
              愁眉ひらいてあっけらかんと握り飯

凡俗のわたしに出来ぬことばかり
   降りる筈もないの蜘蛛の糸とモルヒネ
       砂漠の真ん中放尿ああ生きている

                     落ちていた会話とグローバルな会話
                   蝶よ花よ骨抜きばかり殻ばかり
                 延長線上におく湿った榾木

泣きながら咲く浜木綿と憐憫と
   放心の骸でパンを焼いている
        竜巻に呑まれてみたい沙羅の下

                     時代に背 革命ごっこ花ごっこ
                 逆切れてなす術もなき梨の花
           慢心の楔打つ手に霙はらはら

シンジケート抜けて激しい雨に遭う
    甘い懊悩ランダムに抜く生温かい風
            夕闇が炙り出すわが歪な影

                   壁ぎわではっしはっしと折るは自我
               楯ひとつふたつこの苛立ちは何だろう
           どぶ板をめくれば慙愧ごうごうと
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月の息・・・佐藤容子

2007年11月26日 | 川柳
              現代川柳『泥』第五号

              雨激し兵士は寡黙のまま神へ

黙々と雫れたさくら拾う兵
                        時効まで孤灯の下で糸を吐く
           テロの棲む街に干してあるパンツ
                        折れやすき爪とポリシー腹が空く
振り向いて時々愚かさを拾う
           月の吐く息の白さにせかされる
                        ひとつずつ忘れて欠ける海の月
昼月の真下を走る霊柩車
           生きるため月を選別機にかける
                        トンネルが長くて疑い深い街
遠い目をしていた犬の死を思う
           故郷の敷居の高さ石を積む
                        言い分は確かにあった逢うまでは
あたたかな涙も混じっている水面
           くっきりと指紋を残しておくこの世
                        仮の世で握手ばかりをするさくら
次の世へついて来るのか藁人形
           まだ雪は降るだろ老臭深き里
                        順調に老いてドッコイショと座る
死んだふり寝たふり酔ったふりの葦
           音たてて水のむ体臭消えるまで
                        ペンを持つ指は怒涛の海へ海へ
てのひらにのせる男の錆びた影
           矢印の通りに歩いてきた迷子
                        芯折れる音に目覚めるわが背筋
冬眠の最中ウロコ発光す
           この髭に触れることなく春の駅
                        衣食住満ちて曲がってくる背骨
ずぶ濡れの指で送信するメール
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