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川柳・ボートっていいね!北海道散歩

川柳・政治・時事・エッセイ

詩(うた)語らい。

2007年11月04日 | 川柳
     現代川柳『泥』四号・・私のイリュージョン・・木村政子

         ぽあんぽあんと生きる乾いた右脳 テイ子

 気が付くとうっすらと口を開けテレビに見とれている。
すさまじい勢いで開けたてする女子アナの口元に見とれている。血の飛び散るドラマに見とれている。若い娘が如何にも上手そうに温泉料理を食べて見せる、下顎の卑しげな動きに見とれている。殺されて飛び散るイラク人のかけらも写らない、清潔な侵略戦争の報道番組に見とれている。

            一蓮托生のしじみと砂を噛む  テイ子

 ごくごく短い管(くだ)がある。長い長い管もある。
ハエにトンボにイタチにブタに、あなたにわたしに管がある。命はいのちをかみ砕き、管に流して甦る。

            傷痕に染みる水の重さと水の刑 テイ子

 ああ、なんて嫌な奴。さりげなく調子を合わせつつ、五度も六度もそう思う。この人まだ笑ってる・・・この鈍感さが堪らない。口を開けて食べないで。手をひらひら泳がせないで。検事のように糾弾し判事のように裁決し、わたしはニコニコ面(面)を付けたまま。

            バス停でとろんと犬の目を拾う テイ子

 こんなところでどうしたの。いったいどこへ行くつもり。ちちははの待つ故郷(ふるさと)へ帰りたいのに返れない。バスに乗っても帰れない。八つの頃には帰れない。
ひざを抱えて待つばかり。迷子の犬と待つばかり。

        餌を拾うこともなく彷徨う 狂女たり  テイ子

 夫に恵まれ子に恵まれても忍び寄る不安。満ち足りてなお朽ちるたましいもある。それだってうらやましい。夫の職場は会社更生法、子は定職に就けず引きこもり、友達はいつからか敬遠疎遠になって、それがわたしの現実。家に直行する勇気も失せ、パートの帰りにカラオケルームでしばしの道草。2時間500円。たったひとりの独唱。

         モノクロの静止画像は終戦日  さとし

 あの日は抜けるような青空と、ラジオのノイズと落胆と安堵と空腹と・・・。56年後の7月26日、アメリカ合衆国アジア州日本では、イラク復興支援特別措置法が村議会を通過した。元帥を夢見る村長小泉純一郎の脳裏には、勇ましい軍靴の音と日の丸の旗がひるがえる。

         ステンレスの沖八月を照り返す  さとし

 戦後間もなく出回った、鮮やかな色に艶やかな光沢、そして如何にも堅牢そうで、それがまったくのまやかしだった・・・人絹の、あのてらてらとした感触が、波打つことを忘れた海の怠慢と、どうしても重なる。あの日の雲ひとつ無い空の青さとも重なる。


                            続く・・・・。

         11月原流   けものみち出て一対の窮まりぬ  不凍




   
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