ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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教育の広場、第62号、9月11日以降の世界

2006年01月25日 | 政治関係
教育の広場、第62号、9月11日以降の世界

(2001年122月20日発行)

 政治についての発言が2回つづくことになりますが、今年の最後
に当たってやはり(2001年)09月11日のいわゆる「同時多発テロ」
とそれ以降の事について一言しなければならないでしょう。

 9月11日を境にして世界が変わったことは事実でしょうが、根本
的に変わったとは思えません。それまでに進行していた流れが表に
出たという方が正しいのではないでしょうか。

 その後のスクラップを見てみます。もちろん関連記事をすべて集
めたわけではありません。そのような事は不可能です。私に賛成で
きること、あるいはなるほどと学んだことが集まっています。それ
を整理してみようと思います。

 第1の観点は私の持論ですが、「組織はトップで8割決まる」と
いうことです。これを世界の人類という組織(極めて緩い組織です
が)にあてはめて考えますと、世界のトップはアメリカであり、ア
メリカの大統領ですから、今日の事態の責任の8割はアメリカとそ
の大統領にあるということになります。

 実際、多くの人が、テロは絶対に悪いがその原因についてはアメ
リカに大きな責任がある、という趣旨の発言をしています。特に、
ブッシュ大統領になってからの自国主義には批判が強いようです。

又、今回のテロの根本原因の1つと考えられる中東問題について
、アメリカがイスラエルをひいきし、ダブルスタンダードを採って
いることには識者が批判しています。

 中東問題の「発端は第1次世界大戦の際、英国がアラブ人に国家
建設を約束する一方、イスラエルの建国を認めた二枚舌外交」(12
月17日付け朝日新聞の塩野七生氏)ですが、第2次大戦後のことと
しては、1967年以来、国連の決議に反してイスラエルがヨルダン川
西岸の占領を続けていることです。

 アメリカはイスラエルにこの決議の実行を迫るべきなのにそれを
しないどころか、この20年間一貫して、全軍事・経済援助の3割を
人口わずか 600万のイスラエルに向けてきた(『中央公論』11月号
の寺島実郎氏)のです。

 そのほか、イラン・イラク戦争の際にイラクに肩入れしてフセイ
ンを増長させたとか、ソ連のアフガニスタン侵略に反対するイスラ
ム戦士に肩入れしてタリバーン支配の基礎を作ったとか、アメリカ
の利己的で近視眼的な考えは多くの人によって批判されています。

 しかし、今度の事件をきっかけにしてアメリカにも少しは新しい
動きが出ているようです。反テロ包囲網を作る必要からとはいえ、
ブッシュ大統領は世界中の指導者の意見を聞くようになりました。

 アメリカ社会には他の国との関わり方を考えようという機運が生
じているそうです(11月28日付け朝日社説)。

 こういう傾向が強まることを願っています。

 第2に、中東問題は今日の世界の大問題ですが、それに解決のき
ざしが見えないことです。今回の事件をきっかけにして、アメリカ
も少しは反省し、パレスチナを「国家」と呼ぶようになったとか、
イスラエルの戦争行為を批判するようになったとか、少しは報じら
れていますが、本気で反省したとは思えません。

 それに、イスラエルと戦う側(パレスチナとかアラブ諸国)もし
っかりしていないと思います。これらの国々には民主主義がなく、
政権の交代もなく、貧富の差が大きすぎます。特にだらしのないの
がアラブ世界のリーダーと言われるエジプトです。

 マグドゥーブ氏(エジプト国立社会犯罪研究所顧問)は「アラブ
諸国の政府がパレスチナ問題に責任を転嫁して、失政をごまかして
いるのは確かだ」と言っています(12月11日付け朝日)。パレスチ
ナ暫定自治政府の高官たちも私腹を肥やしていると伝えられていま
す。そしてこれを放置し、政権交代もなく40年以上も議長をしてい
るのがアラファト氏なのです。

 私はかつては、中東問題の責任は9対1でイスラエルが悪いと思
っていましたが、今では6対4で、アラファト議長にも4割くらい
の責任があると思うようになりました。

 第3に、これと関連しますが、イスラムは自己改革する必要があ
ると思います。貧しさを分かち合う精神は立派だとは思いますが、
豊かさを追求することが根本だと思います。「イスラムが普遍性を
持つためには、近代化に直面しないとだめだ」(12月16日付け朝日
新聞の池田明史氏)。

 この点でギ・ソルマン氏の説は興味深いものでした。「事件の根
っこに発展を欠くイスラム経済があるのは確か」、「イスラム的経
済発展の理論が見つからない」、「コーランの閉鎖性とバイブルの
開放性が、イスラムの貧困とキリスト教世界の繁栄を分かった」、
「コーランと経済発展を両立させうる指導者を何としてもイスラム
世界に見つなくてはなるまい」(10月21日付け朝日新聞)。

 第4に、そしてつくづく思うことは、人間の業の深さです。偉そ
うな事を言っている人達の誰もが、権力を握ると個人的な奢侈に走
り、堕落するということです。

 先日もタリバーンの指導者のオマール師の邸宅がテーマパークみ
たいだったと報じられていました。あの中国革命の指導者の毛沢東
もハーレムみたいなものを作っていました(『毛沢東の私生活』に
よる)。北朝鮮の指導者についてもいろいろと報じられています。

やはり「修身斉家治国平天下」ということは真理だったようで
す。

 日本政府に見識がないなどということは改めて言う必要もないで
しょう。小泉首相の発言など誰も本気で聞いていないと思います。
靖国神社に参拝するような総理大臣の見識を評価するほど世界の指
導者は愚かではないのです。

 最後に、我々はどうしたらよいのでしょうか。今まで通り、人に
よって考えが違うのは当たり前だという事実を認めて、それを理性
的に処理する方法を追求していきたいと思います。

 先に引用しましたマグドゥーブ氏は「異なる意見の間の対話の可
能性を開くこと」を提案していますが、これこそ我々が研究し、提
案し、追求してきたことです。このメルマガのように「自分の意見
を自分にはっきりさせ、更に発展させること」を目的として明記し
ているメディアがほかにあるでしょうか。

 そして我々は意見が異なった場合にどう処理するのが理性的かも
研究し、提案しているのです。

 時には暴力的な攻撃に出会うこともありますが、それに対しても
しっかり警戒しつつ、希望をもって戦っていきたいと思います。

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