ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

 2008年10月から「第2マキペディア」として続けることにしました。

教育の広場、第 229号、授業評価サイトの充実と広がりを

2006年05月23日 | 教育関係
第 229号、授業評価サイトの充実と広がりを

   (2006年05月23日発行)

 新潟県立看護大学講師(人間環境学領域)の山本淳子さんが朝日
新聞の「私の視点」欄(2006,05,19) に、次の文を寄稿していまし
た。新聞社が付けたのであろう見出しは「授業評価サイト、中傷の
氾濫、運営者に責任」となっていました。

 まず、それを全文、引用します。

 大学が学部教育改善のために、授業評価を導入するのは当たり前
の時代となったが、大学と無関係の企業が、匿名の学生らによる授
業評価をインターネット上に公開することには違和感を覚える。

 某大手IT企業の子会社が運営する就職支援を目的とした、ネット
のサイトに、「授業評価数24万5千件のキャンパスライフ支援サイ
ト」(全国の大学生による講義評価)がリンクされていた。匿名の
投稿者による、授業の「評価」と「講義内容」が、授業担当者の実
名・担当科目名とともに、公開されている。

 「評価」部分には、単位取得の容易さ、出欠確認の有無、試験に
おける持ち込みの可・不可といった項目が並び、いかに楽をして単
位を取得できるか、というニーズに応えている。また「講義内容」
には「わかりやすく、面白い」「授業はつまらないが単位は楽勝」
といった、その科目を取った人の感想が書かれている。

 授業に関係ない、教員個人に関する情報も掲載されている。「お
酒の好きな先生です」はまだしも、「鉛筆を披零振り(拾うふり)
をして女性の下着を見る癖がある~こんな教員、そのうち、せくら
ら(セクハラ)で新聞に出そうな感じ」のような、評価どころか名
著棄損になりかねない内容や、「論文の数が少ないのに教授になれ
るのはおかしい」といった、本当に学生が書いたのだろうかと首を
かしげたくなるような書き込みもある。

 一応このサイトには個人情報の取り扱いについての記載があるが
、サイトの運営責任者によるチェックはないようで、あらゆる中傷
が実名と共に掲載されたままだ。また、ログインさえすれば、誰で
も匿名で(大学生でなくても)評価を書き込める仕組みになってい
て、管理の質が問われる。

 この会社のプレスリリースには、「学生に選ばれるマーケットバ
リューの高い教育サービスが大学教育機関より提供されるよう、健
全な講義情報の還流に貢献してまいります」とあり、口コミの情報
に高い価値をおいているが、還流しているのは、必ずしも健全な内
容ばかりではない。

 また、卒業生が過去の授業を振り返って感想を書いている例もあ
り、古い情報も混在している。そもそも授業の価値は、自分が実際
に出席して決めることであろう。このサイトが提供する情報が、本
当の意味で学生の利益になっているかどうかは疑問だ。

 このような授業評価サイトを存続させるのであれば、企業として
、もっと責任ある運営方法を考えてほしい。誤った情報(毎年同じ
やり方で講義・試験が行われるとは限らない)や特定個人への中傷
の氾濫を防ぐためにも、教員の実名を公開する場合には、最低限、
本人にその旨連絡を入れるべきだろう。

 大学の講義情報に限ったことではないが、インターネット上の匿
名掲示板を管理する側には、プライバシーの侵害や名誉棄損などの
問題が起こらないよう十分配慮してもらいたい。(引用終わり)


 このサイトの存在を知らなかった私は早速、それを見てみました
。学生として登録しないと全部は見られないように出来ていますの
で、1部しか見られませんでした。

 山本さんは1部を見ただけでこのような主張をしているのでしょ
うか。それとも学生になりすまして多くのものを見たのでしょうか


 私の見た範囲内では、山本さんの指摘するような言葉は見つかり
ませんでした。内容があると言えるほどではありませんが、現在の
学生諸君のレベルからすれば、何の指導もしないで自由に書かせれ
ばこれくらいだろうな、という程度のものでした。

 山本さんが問題視している点について私見を述べます。

 第1点。「いかに楽をして単位を取得できるか、というニーズに
応えている」という点は、そういう部分もありますが、別に大した
問題ではないと思います。

 たいていの学生諸君は内容のある授業を求めており、そういう授
業をすれば応えてくれますから、教師はそういう学生を念頭に置い
て授業をすればいいだけだと思います。

 第2点。「授業に関係ない、教員の個人に関する情報」という点
で、「セクハラで新聞に出そうな感じ」を「名誉棄損になりかねな
い」としていますが、事実なら名誉棄損にならないと思います。事
実でないなら、言われた人が運営者を訴えればいいと思います。

 それが積み重なれば、運営者もどういう記事は自分の方で削除す
べきか、分かってくると思います。

 第3点。「論文の数が少ないのに教授になれるのはおかしい」と
いう発言を「学生が書いたのか」と疑念を呈していますが、誰が書
いたのであれ、この事は根本的な問題です。山本さん自身はこうい
う「偽装教授」が沢山いるという大学の現状をどう考えるのでしょ
うか。

 第4点。「誰でも匿名で(大学生でなくても)評価を書き込める
仕組みになっている」と言っていますが、私の試みた経験では、所
属大学と学部などを記入しなければならず、そうするとそこで記入
した大学の頁しか全部は見られないし、書き込みもできないように
なっていると思います。

 第5点。「そもそも授業の価値は、自分が実際に出席して決める
ことであろう」と言っていますが、出席してみた結果、時間の無駄
だったと分かってからでは遅いからこそ、こういうサイトが必要な
のだと思います。

 人生は経験してみなければ分からないと言って、先人の経験を聞
くのは意味がないとは誰も言わないと思います。

 山本さんが書いた点の検討はこれくらいでいいでしょう。書いて
いない点を含めて考えましょう。

 なぜこういうサイトが必要になるかと言えば、学校と教師の側が
必要十分な情報公開をしておらず、説明責任を果たしていないから
だと思います。

 山本さんの属する新潟県立看護大学のホームページを見てみまし
たら、きわめて不十分でした。学長の挨拶も内容はほとんどなく、
客である学生や保護者や地域住民の意見を聞いて議論する場はどこ
にもありません。

 教員の研究業績の説明もおざなりです。山本さんの項はクリック
も出来ません。山本さんの頁がないからです。こういうサイトを批
判する前にしっかり説明責任を果たすべきでしょう。

 シラバスを開いてみましたら、時間割みたいなものが載っている
だけで、いわゆるシラバス的なものは全然書いてありませんでした
。ほかの大学もお粗末ですが、これほどお粗末な大学も少ないでし
ょう。

 大学新聞の代わりになるような「ニュース」が発行されていまし
たが、その内容には、大学のあり方や学長のリーダーシップや個々
の授業の問題点についての議論は全然なく、御用記事ばかりでした


 私も看護専門学校で教えていたことがありますが、本当の新聞を
出したら、もっと内容のあるものになっているはずです。

 次に、教員への中傷ですが、たしかにそういうものも載っている
のだろうと思いますが、それを非難する前に、これまでに教員(小
中高校及び大学の教員)が生徒や学生の体や心をどれだけ傷つけて
きたかを反省するべきだと思います。

 生徒による教師への中傷より、教師による生徒への中傷の方が何
億倍、何兆倍も多く、ひどいと思います。

 私はこのサイトが出来たのは当然だと思います。教師はこのサイ
トを否定するのではなく、むしろそれを充実させるために、どうい
う事をどういう風に書いたらいいのか、授業の中で学生に考えさせ
、議論させるべきだと思います。

 このサイトの最大の欠点は、「学校教育は個々の教師が行うもの
ではなくて、校長を中心とする教師集団が行うものである」ことを
知らず、「組織はトップで8割決まる」ことを知らないために、個
々の授業の評価だけしか念頭にないことです。

 学長のリーダーシップを評価する項目がなく、学部全体、学科全
体のあり方について意見を言う場がないことだと思います。

 その他の要望としては、学生でない人でも自由に登録できるよう
にして、又自分の大学以外の頁も全部見られるようにした方がより
良くなると思います。

 更に、こういうサイトは大学だけでなく、高校に関しても作って
ほしいと思いますし、中学校、小学校と広げてほしいと思います。
日本の学校は本当に閉鎖的すぎると思います。