ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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「小泉ビジョン」について

2006年01月24日 | サ行
 01、「小泉ビジョン」について

 3回連続して政治を論ずることになりますが、お許し下さい。

 (2002年)元旦の朝日新聞の一面に「『小泉ビジョン』策定へ」という見出しが踊っていました。内容の要点は次の2つです。

 第1点。小泉首相は、経済構造改革や政治システム、外交・安全保障など7分野での包括的な国家戦略を示す「小泉ビジョン」を策定する方針を固めた。

 第2点。策定にあたっては自民党の若手議員から政策を吸い上げ、議論の過程をインターネットで公開、有権者との直接対話を通じて練り上げる。

 つまり第2点にあるようなきわめて民主主義的な方法を使って、今後の日本のあり方を自分の思う方向へ持っていこうということだと思います。

 では、小泉首相の持っていこうとしている方向とはどのような方向でしょうか。自衛隊の影響力と認知を強めることであり、首相公選制を突破口として憲法を改定することです。経済の構造改革については、「議論すらなされず、日本の経済政策論議は、目先の危機回避だけに目を奪われている」(野口悠紀雄、1月5日付け朝日夕刊)という状態です。

 しかし小泉首相の大衆に直接訴えるという、これまでの首相になかった民主的に見える手法は多くの国民の支持を集めています。

 首相はこのやり方で更に先へ進もうというのでしょう。ワイマールの民主主義体制を使って独裁体制を作ったヒトラーを思い出します。

 そして、野党にこれに対抗する戦略と人物がいないために、小泉首相の独走態勢は一層強まりそうな気配です。私はこれを恐れています。

 次の通常国会に提出すると首相の言っている「有事法制の整備」については少しずつ反対する動きも出ていますが、このような目先の対応だけでは不十分です。61号に提唱しましたように、「影の内閣を機能させて、それを中心にして広く国民の意見を聞いて、政府のやり方に常に全面的に対決していく」という「本当の野党のあり方」は認識すらされてなく、その芽すら見られません。

 民主党は昨年(2001年)の05月08日以来、つまり小泉内閣のメルマガ以前から「党のメルマガ」DP-MAIL を発刊しているようですが、ほとんど知られていません。購読者数は何人なのでしょうか。「ネクストキャビネット」はほとんど機能していません。政府のタウン・ミーティングに対抗するような大衆的な対話集会も開いていません。鳩山代表は「責任野党であることは政府に対して是々非々であることである」と誤解しています。

 社民党は個人のHPやメルマガはいくつかありますが、影の内閣すらなく、メルマガもありません。土井たか子氏や福島瑞穂氏や辻元清美氏は個人としては立派な人なのでしょうが、組織運営についての見識とアイデアが無さ過ぎるのではないでしょうか。

 小泉首相は次の文化庁の長官に心理学者の河合隼雄氏を起用するようです。政府の審議会の委員に頼まれたり、役に就くことを求められたりすると、自分が偉くなったかのように錯覚してノコノコと出ていく学者も困ったものですが(すべての学者がそうだというの
ではないし、河合氏の見識はまだ分からないが)、こうして支持層を拡げていく首相のやり方のしたたかさを野党は学ぶ必要があるでしょう。

 しかし、インターネットを見ると少しは国民の自主的な活動も出てきているようです。新聞にも新しい方向を模索する活動が紹介されています。私たちも自分の出来る範囲でそうした動きに加担して活動したいものです。

(メルマガ「教育の広場」2002年01月08日発行)

 02、投書

 こんにちは。いつも「教育の広場」を送っていただきありがとうございます。

 第63号「『小泉ビジョン』について」の号について、いくつか感想を記させていただきます。

 この記事で、小泉氏をヒトラーになぞらえているところがありました。私は、小泉氏の言動に報道で接するとき、よく毛沢東を連想します。小泉氏も毛沢東も名言が得意です。毛沢東の中国語のニュアンスは分かりませんが、翻訳の限りでは、何となく似ているものがあります。

 小泉:構造改革なくして景気回復なし
 毛:調査なくして発言権なし
 小泉:恐れず、怯まず、捉われず(論語に出典あり)
 毛:革命は、客をよんで宴会をひらくことではない。文章をつくることではない、──文質彬彬で「温、良、恭、倹、譲」ではありえない。(論語に出典あり)

 これは、偶然や先入観、コジツケによるものだと思いますが、このようなコジツケを考えてしまうのも、一般党員に訴えかけて自民党総裁選に勝利したときの戦術や直接国民に訴えかけ直接国民の支持を得ようとする政治手法が、毛沢東の「都市で農村を包囲する」によるゲリラ戦や文化大革命の「私の大字報」を連想させるからだと思います。

 牧野さんは、小泉氏が「民主主義的な方法を使って、今後の日本のあり方を自分の思う方向へ持っていこう」としていると指摘されています。

 小泉氏が内閣での論議や国会での審議を活性化することにより、自分の主張を実現しようとしているのであれば、民主主義的な方法を利用していると言えると思います。こうした面からは、小泉氏の政治手法が民主主義的な方法を利用しているとは思えません。

 小泉政権になって、大臣を含め、私的諮問機関や懇談会の設置がさらに増え、国会の形骸化が進んだと伝えられています。インターネットにより大衆的に小泉ビジョンを作成することも、それを大規模にしたものではないかと思います。

 少数の仲間内で相談して物事を決め、マスコミを通じ国民に直接訴えることで国民の情緒的な支持を得た上で、実行に移す、というのが小泉流だと思います。毛沢東の大衆路線と似ています。

 私が現在携わっている仕事(役所の社会福祉)の関係でも、住民参加による計画づくりが強調されています。地域福祉計画、健康づくり計画、高齢者保健福祉計画、障害者福祉計画、母子保健計画と目白押しです。いずれも、策定にあたっては、国は住民参加を進めるよう指導しています。その指導に基づき、自治体では、意見の公募が行われたり、公募市民を交えた検討委員会が開催されたりしています。

 しかし、国民参加にしても、住民参加にしてもその国民や住民はとてもあいまいです。それが多数意見かも正確には検証できませんし、意見が割れたときの処理方法など、民主主義に必要なルールはありません。有力者や声の強い人ほど意見を反映させやすいという問題もあります。インターネットもすべての国民が利用できる訳でもありません。国民参加や住民参加を強調すればするほど、民主主義が形骸化していくような面があるように思います。

 この矛盾を解決するには、国民投票制度や住民投票制度も検討されてしかるべきだと思いますが、国レベルでは、例えば、内閣や国会の構成員全員がインターーネットを通じ意見交換を行い、その状況を国民に逐次公開する場(電子閣議や電子国会)をつくることにより、今ある間接民主主義制度により選出された構成員による討論を深めるようにしていったらどうでしょう。

 現在の難局にあっても、その対策を検討するため、1日でも半日でも時間をとって閣議が開催されたという話は聞いたことがありません。野党はシャドウキャビネットを作って政権交代に備えよ、とよく言われます。しかし、与党にはシャドウではないホンモノの内閣があるのでしょうか。実情は、個々の大臣がいるだけのように思われます。(年末に見たテレビによると、小泉政権になって、形式的な閣議終了後、若干のフリーディスカッションの時間ができたそうですが。)

 国会論議の貧困もよく指摘されるところです。

 小泉氏が本気で国民に小泉ビジョンの策定を問いかけたいのなら、自民党内外を問わず、法的にはもっとも正統な国民の代表者たる国会議員全員による電子国会に諮ったらどうでしょう。

 また、小泉氏がこの内閣で現在の難局を乗り切りたいのなら、電子閣議で徹底的に解決策を話しあったらどうでしょう。

 それでは、また、よろしくお願いします。

 03、お返事

 面白い視点で、参考になりました。ありがとうございます。U氏の意見を整理してみますと、次の2点になると思います。

 A・内閣と国会の議論を活性化するのが(間接)民主主義である。その活性化された内閣と国会の議論に国民がコミットするのが正道である。

 B・内閣と国会の議論の活性化を抜きにして、私的諮問機関や懇談会を増やしたり、住民参加を進めたり、直接国民に訴えたりするのは(法的に正当な)民主主義ではない。これは毛沢東の大衆路線と似ている。

 なぜなら、国民参加や住民参加という時の国民や住民はあいまいで、その時には何が多数意見かの検証はできないし、意見が割れた時の処理方法が確立していないし、インターネットも皆が使えるわけではないからである。

 長野県で田中康夫知事が登場してから、車座集会とかで県民と直接話し合うことが多くなったのに対して、多くの県会議員から出されている疑念と似ているように思いました。

 最近多くなってきました住民投票の請求に反対する意見の論拠も
これだと思います。

 たしかに直接民主主義がいつでもどこでも好いとは言えないと思います。それに、日本は憲法上、間接民主主義を採用しています。しかし、トップが一般の大衆と直接話し合うことは憲法上も否定されていないし、間接民主主義とも矛盾しないと思います。

 田中知事にしても小泉首相にしても、国民の政治に対する関心を高めた功績はあると思います。そして、まずこれが民主主義の根本だと思います。これを更にどう生かしていくか、これが問題なのだと思います。

 内閣の議論も国会の議論もインターネットでの討論も、全部活性化させたらいいのではないでしょうか。

 お返事になったかなと思いつつ、今回はこれで終わりにします。ほかの皆さんも自分の意見を出して下さい。


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