ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

 2008年10月から「第2マキペディア」として続けることにしました。

岩手県(01、実力)

2008年11月19日 | ア行
 一ノ関から岩手県に入った東北新幹線は、北上川沿いの沃野を進む。田んぼの黄緑と、人家を囲む林の深緑との対比が美しい。北海道に次いで広い県だけに、県北の二戸駅はまだ6つも先だ(フル規格新幹線駅7駅は都道府県最多)。

 小京都のような風情のある県都・盛岡の冬の冷え込みは有名だが、北上高地を越えて2時間の太平洋岸・三陸地方では、常緑樹が茂る岬と群青色の海の対比が四季を通じて鮮やかだ。

 名山、高原、海岸景観、鍾乳洞、山海の食材、地酒に地ビール、いずれも日本最高水準のものがある。

 時流に先駆け己を貫く人物を輩出する。平安後期の平泉に100年の平和を築いた奥州藤原氏3代。維新の先駆者・高野長英。藩閥政治を打倒した原敬。時代を超越する作品を残した宮沢賢治や石川啄木。彼らの伝統は、今も有名無名の県民に受け継がれている。

 質朴な土地柄を反映し、人口当たりの交通事故死傷者数や刑法犯認知件数は都道府県46位。県立病院網の充実で人口当たり通院者率は全国1位だが、予防医療の成果で、受給対象者当たりの老人医療費は44位。

 食料自給率も100%を超えて全国5位。安心・安全を求めるなら、当地への移住はお薦めかもしれない。

 記憶をひっくり返してみても、あれ以上の紅葉を見たことがない。一面の黄色と橙色の中に深紅を交えた優美な山体が、真っ青な湖面に映える。県南端、一関市の須川高原温泉から歩き出し、昭和湖から栗駒山を見上げたときの眺めだ。

 先般の地震の復旧も進み、温泉の営業も再開。県内の他の観光地に被害はなかった。秋の黄金のひととき、豊潤な北の山と海に行かれては。

  (朝日、2008年08月30日。
 (地域経済アナリスト藻谷浩介、協力・日本政策投資銀行地域振興部)

香川県(01、実力)

2008年11月17日 | カ行
 小島の浮かぶ瀬戸内海。無数のため池と、にょきっと突き出す緑の小山に彩られる讃岐平野。県の面積も全国最小だが、景色もまさに箱庭のようだ。

 年間降水量が都道府県43位で、大河川もない。この風土が稲以外の商品作物の栽培を促し、讃岐うどんや和三盆糖、手袋など全国区の特産品を生んだ。冷凍食品やカタログ通倍販売のように、県内資本が他に先駆けて開拓した分野も多い。

 地道に働いて貯金する県民性から、世帯当たりの貯蓄現在高マイナス負債現在高は1470万円。東京などより多い。日本一だ。

 そこに商機を見た郊外型大型店の急増で、人口当たり小売り売り場面積は全国2位(2006年度末)に上昇。しかし、県民の財布のひもは固く、人口当たり小売り販売額は過去10年間に2割以上も低下(減少率全国1位)。

 郊外開発と同時に進む車社会化は、人口当たり交通事故死傷者数1位(2006年)という事態も招いた。

 消費活性化には、関西に流出する高級品需要や、県外観光客を引き寄せる、おしゃれで当地らしい街並みの再生が不可欠だ。

 旨みと香りに満ち、嫌みな後味がない。家業にほれ込む若い当主が杉樽で3年かけて仕込んだ醤油を、思わず飲むように味わった。

 高松から高速船で30分程度の小豆島は、醤油のほか素麺や佃煮、オリーブ油など、全国屈指の産品の宝庫だ。団体客に依存する観光地の色彩が強いが、輝く自然や伝統の昧をガイドつきで探訪する「エコツーリズム」も女性と若者が盛り上げる。

 貯蓄が地元での消費に回り、独自の特産品が育ち、それが再び所得を生む。この正常な循環の回復に向けた希望を、この美しい島に見た。

  (朝日、2008年10月11日)
  (地域経済アナリスト藻谷浩介、協力・日本政策投資銀行地域振興部)

岡山県(01、実力)

2008年11月16日 | ア行
 キャッチフレーズは「晴れの国」。県都岡山の年間快晴日数37日は47都道府県で5位(2006年)、降水量773㍉で最下位(2007年)と、雨の少ない瀬戸内地方の中でも際立つ。とはいえ県北の豊かな森林に涵養された吉井川、旭川、高梁(たかはし)川の恵みで、水不足にも強い。

 桃、ブドウなど、日照に育まれ甘みの強い高級果物の産地でもある。

 広島や山口に比べ平野も広く、吉備の国と呼ばれた古代から生産力は際立っていた。巨大な前方後円墳のベスト3は大阪府内にあるが、4番目は関西ではなく当県にある。

 新幹線に加え山陰や四国など9方面からの列車が集まる岡山駅は、3大都市圏以外では随一の鉄道結節点だ。経済的に一体性の強い岡山市・倉敷市の広域都市圏人口は146万人(2005年)と広島都市圏に見劣りなく、政令指定都市以外では最大規模。水島の大工業地帯もあれば、ベネッセ、林原など、個性的な地場大企業も多い。

 にもかかわらず、岡山市街地のにぎわいは広島に比べればぐっと地味だ。広島のようにプロ野球やプロサッカーの応援で盛り上がる伝統もない。当県の実力はむしろ、上品な家具調度の集められた私的な空間におじゃますると実感できる。

 たとえば昔ながらの蔵が日本有数の集積密度で残る倉敷市の旧市街。美観地区が有名だが、その東の町屋地区では店や蔵の再利用が進み、旅人でも当地の居住文化の一端を味わえる。蔵を快適なサロンやギャラリー、カフェなどに造り替え市民に開放している方々、それを支える建築家集団の方々と思わぬ出会いもあるかもしれない。数字に出ない地域の奥深い魅力を知る機会が、ここにはある。

  (朝日、2008年09月06日。
(地域経済アナリスト藻谷浩介、協力・日本政策投資銀行地域振興部)

外国人労働者(01、実態)

2008年11月09日 | カ行
直接雇用  22万2929人( 2万4549人増、12% 増)
 内、正社員 25,3% (前年並)

出身地別
  東アジア人  10万0257人
  中南米人    6万4909人
  東南アジア人  3万2284人

業種別
  製造業    11万6977人
  サービス業   3万2039人

外国人雇用事業所数  2万7323ヵ所

  調査方法

 従業員50人以上の約15万事業所に聞き、回答約99万事業所。


間接雇用  16万7291人(15% 増)(派遣など)

 事業所数 6667ヵ所

 以上、厚生労働省調べ。2006年06月時点での状況。
 (かっこ内は前年比)

 (朝日、2007年04月19日)


公務員(損害賠償と役所の責任)

2008年11月08日 | カ行
 国の責任を問う訴訟について、政治主導で和解を目指すケースが増えてきた。現在国民の関心の的となっている薬害C型肝炎についてもそう遠くない時期に和解条件が整うだろう。

 過去に当局の適切な判断と迅速な対応があれば被害の拡大が抑えられたであろうことに疑う余地はない。速やかな和解を1国民として願うところである。

 ところで国の責任が問われる事態が何故このように繰り返されるのか。あたかも行政当局には自らの責任の下に被害を最小限にとどめようとする使命感も、事件の再発を防ぐために仕事の仕方を自分たちで変えようとする向上心も全く無い、と思わせるぼどである。

 その根源は官民挙げて作ってきた官尊民卑の風土にあっての役所の驕りであるが、役所が自らの罪をあがなうに国民の血税をもってする、という損害賠償の構図にもその原因無しとはしない。賠償額がいかに多額になろうと当該役所の職員には何の痛棒も与えない。

 民間企業であれば自分たちの商品やサービスの不具合から顧客に迷惑をかけ多額の損害賠償金を支払えば、企業存続すら危うくなる。当然責任ある人たちは首になり、新体制の下、幹部以下全社員がボーナスを返上し、給与をカットして社の再建に取り組むだろう。もちろん顧客の信頼回復のため業務品質の改善に総力を挙げる。

 そういう意味では国が責任を認め損害賠償金を支払う際には、その件に関係する役所の職員全員がボーナスを返上し、報酬をカットするというような仕組みを国として導入したらどうか。そのことによって組織の責任というものが実感され、自らの価値観、行動様式を変革する必要性にも気付くのではないか。

 公務員制度にその類の何らかの仕組みを織り込まない限り、役所の意識の国民からの乖離はいささかも縮まないだろう。ましてや国民本位の行政などは程遠い。

  (朝日、2007年10月31日、経済気象台、啄木鳥)

病院評価

2008年11月03日 | ハ行
 最近、多くの医療過誤が報道され、医師と病院に対する国民の不信を招いている。過ちを起こすのが人間の常とすれば、医療過誤を完全になくすことはできないかもしれない。しかし、多くの医療過誤は、病院が周到な防止対策を講ずれば防止できる。特に病院の医療機能を院内、院外から定期的に評価する態勢を充実させることが必要だ。

 過去50年余、米国のすべての総合病院は、安全で効率的な医療経営を維持するため、民間財団の米国医療機関認定合同委員会(JCAHO)から3年ごとに、病院の全診療機能の厳格な審査を受けてきた。もし病院に欠陥があり、早急に矯正されないときには、公式に認定されず、経営破綻に陥るのである。

 さらに、公的医療保険制度(メディケア、メディケイド)の診療報酬を支払う連邦医療財政庁(HCFA)は毎年、州政府衛生局に委託して、抜き打ちにすべての総合病院の医療機能、医師の質を検閲する権限を与えられている。HCFAの検閲は、JCAHOの評価を踏まえてさらに綿密な調査を行い、病院における医療管理の万全を期している。

 これらの二つの医療機能評価機構は審査項目として、病院の設備、医師・看護婦数と資格、カルテの充実度、死亡率・罹病率、手術数と合併症数、院内感染、救急医療体制、誤診・輸血ミス・点滴ミスなど院内で発生したすべての医療事故の報告、危機管理体制、医師・看護婦の医学教育制度などが、詳細に検閲される。

 その結果と認定は公表される。認定されなかった病院は、政府ならびに民間の保険機構から診療報酬の支払いを停止されるから、破産に追い込まれざるを得ない。

 また国民は、これらの報告に基づき作成された病院ならびに医師のデータ・バンクの情報をインターネットでアクセスでき、患者の病院選定に大きく貢献している。

 私は在米中しばしば、JCAHO、HCFAの厳しい病院医療機能審査の実態を体験した。病院長はもちろん、医師、看護婦、その他のすべての病院職員が、これらの厳しい審査に神経をとがらしていた光景を忘れられない。これらの機能評価により、どれだけ病院の医療機能が改善され、医療ミス防止に役立ったか分からない。

 約15年前、日本でもJCAHOをまねた組織づくりが厚生省・日本医師会の指導の下に企画され、ようやく1997年に日本医療機能評価機構(JCQHC)が発足した。しかし、過去3年間に、全国の病院9358のうち認定を受けたものは、わずか318病院(3.4%)にすぎない。認定を受けるのは希望制で、ほとんどの病院は認定されてもされなくても病院の収益に影響しないと考え、評価を受けないのだという。

 そればかりか、JCQHCの審査評価査定は、米国JCAHOおよびHCFAの審査に比べてあまりにも甘いことも問題である。このような、病院機能や医師の質の評価がほとんどの病院になされていない現在、医療ミスを防止する体制がおろそかにされ、医療ミス頻発の大きな原因になっていると言っても過言であるまい。

 日本の診療報酬が、病院の実際の機能や医師の質の評価を無視して診療報酬請求明細書(レセプト)を支払い基準にしているのに驚く。架空、付け増し、振り替えなど、病院の不正請求が多いのは免れない。

 日本では過去しばしば、週刊誌などに「有名病院」「名医」の名が掲載されてきたが、機能や質の評価に基づかない格付けでは、信用度に問題があると言わざるを得ない。第三者機構による病院機能評価がなされていない状態では、避け得るべき医療ミスが頻発し、患者さんたちが安心して治療を受けることのできる病院を選ぶことは不可能である。

 厚生省、日本医師会が、病院機能ならびに医師・看護婦の質の評価制度を強化し、認定病院と医師のデータベースを作成し、早急に公表されることを切望する。

  (朝日、2000年07月12日。論壇。投稿者・中野次郎)
 (中野氏は北摂総合病院理事、内科医、元オクラホマ大学数授)

部活動

2008年11月02日 | ハ行
 新しく中学校に入学してきた子どもたちの楽しみのひとつに部絡動がある。しかし、学校教育の中での部活動は、多くの課題を抱えているのも事実である。

 生涯スポーツの振興を担う財団法人世田谷区スポーツ振興財団では昨年度、小中学生を対象に、プロ野球やJリーグに属するトップアスリートやコーチを招いて各種の講習会を開いた。そこでも中学校の部活動の問題に関心が集まった。

 中学校の部活動で一番大きな課題は指導者の問題である。部活動の指導はこれまで教員が担ってきたが、教員が部活動の指導者であることが難しい時代になってきたのである。その理由には次のことがある。

 まず、教員は担当教科だけでなく、生活指導や進路指導、地域社会や保護者への対応など多くの仕事を抱えている。学校教育の一環であるとはいえ、部活動の指導者として積極的に活動し、指導レベルの向上を図るには、あまりにも多忙である。

 また、今の子どもたちの中には小学生の段階で専門の指導者によってあるレベルまで指導を受けている子がいる。そうした子どもやその保護者は、中学校の指導者にそれ以上のものを期待してしまう。ところが、中学校の部活動が管理顧問だけだったり、指導者がまったくの素人であったりすると、子どもはスポーツヘの意欲をそがれたり、保護者は不満に思ったりしてしまうのだ。

 時代に合わなくなった現在のシステムでは、教員が部活動を指導することが難しいばかりでなく、子どもたちが願う指導者像ともかけ離れたものになってしまう。従って、部活動の指導者確保とその養成方法そのものの改革が必要になっているのである。

 そこで一つの提案は、地域と学校が一体になって、小中学生の一貫指導システムを構築するのである。例えば、近隣の小学校で各種目の指導をしている指導者と、中学校の指導者が一緒に「地域少年スポーツ指導者協議会」(仮称)といった組織を設立し、情報を交換しながら、子どもたちの意欲や能力に応じた指導をする。もちろん教員は、一指導者として参加する。

 また、それぞれの種目の指導者と子どもたちのレベルアツプを図るために、各界で活躍したトップアスリートやコーチの巡回指導を組み入れる。都市部であれば、トップアスリートやコーチの人材は豊富である。多くの運動選手も、自分がやってきたスポーツで地域に貢献したいと考えているのである。

 行政が指導者の連携システムを整備し、地域と学校が協働して運営する。また、中学校体育連盟は新しい時代の新しい指導者を育成するための準備をする。

 学校数育と部活動との位置付けなど、まだ多くの課題もある。しかし、多感な年代である中学校時代に、地域協力で小中一貫指導を高い技術指導力と豊かな人間性を兼ね備えた指導者との出会いは重要である。

 あっという間に過ぎていく中学校3年間。子どもたちの瞳がいつまでもきらきらと輝いているためにも、部活動の問題を学校の中だけではなく、地域・学校・行政の三者が協働して考え、指導者同士が連携していく時代にきているのではないだろうか。

  (朝日、2002年04月02日。投稿者・藤川恭英)