ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

 2008年10月から「第2マキペディア」として続けることにしました。

教育の広場、第07号、授業のルールの1例

2006年03月27日 | 教育関係
教育の広場、第07号、授業のルールの1例

(2000年10月25日発行)

 第6号で私は、「ルールを明確に定めて、そのルールを守って自由に競争
するようにする」ということを提案しました。契約という観念の弱い日本社
会ではなかなか理解されないかもしれません。今回はこれを授業について考
えてみたいと思います。

 アメリカの大学の授業では、その第1回の授業の際に、その講義内容と採
点方法を詳しく書いたシラバスを配付するそうです。日本の大学でもシラバ
スはかなり(というのは、専門科目などについては出ない方が多いから)出
されるようになりましたが、その内容はお粗末なものが多いようです。

 私はシラバスを書いた経験は少ししかありませんが、今ではどの授業でも
第1回の授業の際に、詳しい「授業要綱」を配って説明します。参考のため
に、某専門学校での哲学の授業でこの秋に配ったものを紹介します。

        記

 まず、「授業要綱」として、こういう授業を目指しますということをお話
します。

 1、哲学とは筋道をつけて考えることとする。従って、その練習をし、各
自が自分の考え を自分にはっきりさせ、発展させることを目的とする。

 テーマとしては、今年は今大きな問題としてクローズアップされている医
療事故から 出発したい。その後はそこから出てきた問題を深めていくこと
とする。いずれにせよ、 先を急がす、どんなテーマでも対話と反省を深め
ることに注意したい。

 2、授業の方法

 (1) 与えられた資料を手掛かりにし、また講師の意見を聞いたりして考え
、カンファレンス〔3、4人での話し合い〕をして、自分の考えをレポート
にまとめる。

(2) レポートを書く時の注意
  メモをとって3分は考えてから書く。日付を入れる。

  「その他」としてテーマとは無関係な事、私生活上のこととか、授業の
感想とかを書いてよい。書いて欲しい。

 「教科通信」に載せられては困ることは、その旨記すように。匿名希望
も可。

 (3) 講師は「教科通信」を発行して、考えを深めるのに役立てるように努
力する。

(4) 「教科通信」を家族に見せたり、授業の事を家族に話したりすること
を歓迎する。家族の意見をレポートで報告するのも大いに歓迎する。

 個人の対話体験の基礎は家族との対話、特に親子の対話にあると思う。

 (5) ディベートの練習も出来たらしたい。

 (6) 講師はレポートには感想を書いて返すように努力する。

(7) レポートは学校の原稿用紙に書くのを原則とする。

 授業中はメモ用紙に書き、後で原稿用紙やワープロで清書するのもよし
、初めから原稿用紙に書いてもよし。それを、学期末にまとめて綴じて文集
にする。

 文集は同じものを2部作り、2部共提出する。講師は1部を自分に取り
、1部に成績の根拠を書いて返すように努力する。

(8) 授業中、適当な時に「休憩」を入れるように努力する。
たいてい、授業と無関係なものを読んだり、ビデオを見たりする。

(9) 配付する資料等はA4に統一するので、A4のファイルを用意して欲
しい。

(10)授業中、気持ち悪くなったり、トイレ等の用のある人は、黙って出て
いくこと(断らなくてよい)。

(11)当番の人は始業5分前には来て『天タマ』〔教科通信〕等を配ってお
いて欲しい。

(12)教科書『囲炉裏端』は「筋道をつけて考える」ことの参考書とみなす


3、哲学の授業に臨む態度ないし心構えについて

(1) 自分の言いたい事を全部、分かりやすく言うように努力する。

(2) 相手の言う事を最後まで聞くように努力する。

(3) 感情的にならないように努力する。根拠をあげて客観的に冷静に意見
を言う。

(4) 講師は先を急がないようにする。生徒のレポートなどで問題に気づい
たとき、自分の意見を言う前に、生徒に問題を提起して考えてもらうように
努力する。

4、授業のあり方の反省

この授業が根本的に間違っていると考えた場合は管理者に相談して欲しい
。以下は、「この授業は根本的には適当だが、部分的に改善して欲しい点が
ある」という立場で考えるものとする。

(1) レポートの際、いつでも、「その他」として、授業の感想・提案を書
いてよい。

(2) 講師の作ったアンケート「より良い授業のために」を2回取る予定。

 (3) 学生が企画・実行する「アンケート」も1~2回行う予定。

(4) この「授業要綱」にあることにはつねに意見を出せる。従って変更も
ありうる。但し、最後的決定権は講師にある。

(5) Eメールで意見を下さっても結構です。

5、成績

(1) 生徒に相応しくない態度は、1回でC、2回でD、または酷い場合に
は1回でDとする。(感情的な態度、私語と内職、規律を乱す行為、等)

(2) 受講態度に問題がない場合は、レポートの内容によってS・A・Bを
つける。

 その観点・・独創性、考察の広さと正確さ、文章のまとまりと分かりや
すさ、等。特に独創性を評価する。

(3) 成績の根拠を生徒に伝えるものとする。

 異義申し立ては1回だけ聞くものとする。最後の決定権は講師にある。

6、希望

内容のある楽しい授業にしたい。


 以上ですが、この授業要綱の特色は、授業のあり方について反省する機会
を沢山設けていることだと思います。その上、授業のあり方に対して想定さ
れる批判ないし不満を根本的なものと部分的なものとに分けて処理するよう
にしていることだと思います。もう一つは、レポート、それに対する感想、
教科通信など、書き言葉を重視していることだと思います。

皆さんの意見をお聞かせください。