ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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教育の広場、第28号、選択制は好いことか

2006年03月05日 | 教育関係
教育の広場、第28号、選択制は好いことか

(2001年03月07日発行)

 学校教育のいろいろな場面で選択制が広がっています。大学の受講科目は
昔からほとんど選択制でした。高校にも選択制は広がっています。私の高校
時代も理科や社会で何を選んで取るか、芸術で音楽を取るか美術を取るかな
どの選択制がありました。

 今では一部の高校では大学と契約して高校生が大学の授業に出てそれが単
位として認められるような事も出てきました。ほとんど全部が単位制の高校
もあるようです。

 しかし選択制は本当に好いことなのでしょうか。それが導入される理由と
しては、生徒が自分の希望するものを学ぶから、学習意欲が高まるというこ
とらしいです。

 しかし、選択制にすると、受け入れる方のキャパシティもありますから、
希望者が多すぎる場合は抽選ということになります。つまり、希望する授業
を受けられないことも出てくるのです。

 又、授業によって受講者の人数がバラバラで、生徒が極めて少なくなる場
合もあります。そもそもクラス単位の授業ではなくなります。選択必修なら
まだしも、完全な自由選択だと、途中で止める生徒も多くなりがちです。

 学校教育の1つの特徴としてその計画性と集団性があると言われていま
す。生徒がクラスとしてまとまっているということも大切な要素だと思いま
す。選択制にするとこれが崩れるのです。

 私の勤務する某国立大学でも、第2外国語は元々選択制ですが、その選択
肢が去年から又1つ増えました。つまりこれまではドイツ語、フランス語、
ロシア語、中国語の中から選んでいたのに、去年からはスペイン語も選択肢
の中に入りました。これは好い事なのでしょうか。

 私は必ずしもそうは思いません。学校というのは教育というサービスを提
供する1つのお店だと思います。そこでどういうサービスを提供するかは、
もちろんお客さんである学生の希望も聞いてみる必要はあると思います。し
かし、最終的にはそのお店のポリシーの問題だと思います。

 お店を経営する場合の一番大切な事は提供する商品なりサービスの質に責
任を持つということだと思います。現在、例えば大学での第2外国語教育に
ついて言いますと、その存在意義が問われていますし、教員の中には「英語
以外は重視されていない」と感じてやる気をなくしている人も多いようで
す。

 大切な事はそのような大した意味のない授業を増やすことではなくして、
今提供しているサービスを再検討して、止めるものは止める、続けるものは
その質を向上して、学生が「やっただけのことはあった」「受けて好かった
」と思えるような授業を提供することだと思います。

 人生には偶然の出会いから新しい道が開けるということもあると思います
。授業で大切な事は、生徒がそれに初めから興味を持っているか否かという
ことよりも、先生が熱心で、工夫をした授業をし、その学問の面白さを伝え
るかということだと思います。

 3年ほど前、フランス語を希望したけれど叶えられなくて、私のドイツ語
のクラスに入れられた学生がいました。その人はアンケートの中で「ドイツ
語に回されて好かった」と書いていました。

 看護学校での哲学の授業でも、「看護婦に哲学なんてどうして必要なのか
、と思っていたが、授業を受けてみて、こういう授業なら意味があると思う
ようになった」と書いている生徒は沢山います。

 この看護学校ではすべての授業が必修でクラス単位の授業です。選択制を
取り入れてほしいという要望はあるようですが、条件が整わずまだ取り入れ
られていません。しかし私はそういう条件の問題ではなく、原理的に考えて
、クラス単位の必修授業にしながら全ての授業を充実した授業にしていくこ
とこそ学校の責任だと思います。

 小学校でも学区制を緩くして、子供をどの小学校に入れるか、親が選択で
きるような所も出てきているようです。たしかにそれは学校に刺激を与えて
いる面もあるようです。

 しかし、これで本当にこれで根本的な解決になるのでしょうか。私にはそ
うは思えません。選択制でも、その選択肢の中に本当に好いものがあるとは
限らないと思います。皆が悪いものだったら、どうしたらよいのでしょう
か。

 私はやはり前回提案しました「学校オンブズ」の方が好い案だと思いま
す。