安倍晋三のほぼクロの加計学園口利き疑惑「確証があるのか」と反論するが、野党追及は確証なくとも許される

2017-03-17 10:57:07 | Weblog

 2017年3月13日の参院予算委で社民党の福島瑞穂が安倍政権の国家戦略特区構想の元、今治市が取り決めた市有地16・8ヘクタール、約36億7500万円の土地を加計学園が開設予定の岡山理科大学の獣医学部に無償提供、校舎建設費補助金8年間計64億円支払いに関して政策が歪めれれていないか、いわば直接的な表現は使わなかったが、安部晋三の口利きがあったのではないか、あるいは政治的圧力の介入があったのではないかといったニュアンスで疑惑を追及した。

 NHKのこの中継を見るまで、ネット上では騒がれていると言うのに、この件に関して何も知らないでいた。

 福島瑞穂の追及に対する安倍晋三の答弁を聞くと、状況証拠的には真黒毛のクロに見える。

 この問題については2017年3月13日付の「しんぶん赤旗」が詳しく解説している。

 獣医師への社会的な需要と獣医数のバランスを図る目的で文部科学省や農林水産省は、大学獣医学部の新設を抑制する方針を取っていたこと。僅かな期間の手続きを経て20171月20日の安倍晋三議長の国家戦略特区諮問会議で加計学園を実施主体とする獣医学部新設が認定されたこと、加計学園理事長加計孝太郎と安倍晋三はゴルフや食事を共に愉しむ30年来の友人であることなどが書かれている。

 安倍晋三家計学園口利き疑惑は週刊誌でも取り上げられていることが安倍晋三の答弁から分かった。

 福島瑞穂の質問はこの記事内容にほぼ添いながら、より具体的になっている。2014年6月から2016年12月までの2年半で13回食事をしているとか、その親密性を浮かび上がらせて、国家戦略特区構想に基づいた今治市市有地を建設地とした加計学園の獣医学部新設の決着のスピードぶりから窺うことができる口利きを、「政策が歪められているんじゃないですか」との表現で匂わせた。

 最初安倍晋三は素っ気ない口調で、「担当大臣を呼んで頂きますか。呼ばなければ、私は答えようがない」と、自身は無関係であることを装っていたが、福島瑞穂が安倍晋三と加計学園理事長の加計孝太郎との懇意な関係が獣医学部開設に影響しているのではないかと問うと、急に苛立ちを見せた答弁となった。

 安倍晋三「福島さんね、特定の人物の名前、あるいは役所の名前を出しているんであれば、何か政治によって歪められているという確証が無ければですね、その人物に対して極めて私は、失礼ですよ。

 そしてこの学校でですね、学んでいる子どもたちにも傷つけることになるんですよ。まるで私が友人であるからですね、何か政治的な力を加えたが如く、もう今質問の仕方ですよ。あなた責任が取れるんですか、これ全く関係なく。

 先ず申し上げましょう。今、週刊誌を基に言ってるかもしれませんがね、えー、言ってますけど、例えばですね、それ今治市がタダで提供されたと言うことについて、これおかしいだろうという週刊誌がありますが、20年の間にですね、25例あるんですよ。20年の間にですね、25例あってですね、これはタダで、いわば土地が譲渡された例ですね、いわば貸与されている例はもっとあるんです。

 つまりなかなか遊休地があって、地方自治体が困っているときに学校法人が来ることなんです。これは若い人たちが来ますし、研究者も来るし、街が形成されるんです。
 
 なかなかこれね、簡単には来ませんよ。で、タダで提供するって言ったって、なかなか来ないんです。いま子どもたちの数が減っていますから、タダで提供すると言っても、なかなかずっと学校法人が来ないのは事実であります。

 で、さらにですね、これは今治市が、今度市がですね、決めたことでしょ?これ、市ですから、国有地ですらないわけですから、私、影響がしようがないじゃないですか。

 そしてですね、今ここまであなたがですね、疑惑があるが如くにしているじゃないですか。知人に対して質問しているわけであります。名前を出しているわけじゃないですか。名前を出した。しかも学園の名前も出していますよね。それは生徒の募集にも大きな影響を与えますよ。

 これ、あなた責任取れるんですか。私はそう問いたい。これね、NHKで放送されて、全国放送でされるんですね。私は驚くべきことであります。

 で、申し上げますとですね、今治市はですね、今治市はですね、獣医学部設立を進める。しまなみ街道のサイクリングブームの後押しをする。高度外国人人材の積極的な受け入れや、活力ある地域づくりのための道の駅民間参入など、大胆な規制改革を提案、極めて高い評価を得たわけであります。――」

 そして国家戦略諮問会議を開いて規制改革を進め、獣医学部設立を決定するまでの経緯を長々と喋り続ける。

 ここに書いた安倍晋三の答弁だけで獣医学部設立が安倍晋三の口利きの成果なのか、政治的圧力の成果なのか、印象的には真黒毛のクロなのは十二分に見て取ることができる。

 福島瑞穂は口利きや政治的圧力の関与の有無を問い質した。対して安倍晋三はないことの証明をすれば済む。その証明があればである。

 だが、答弁している全てはその証明とならなないことばかりである。

 地方自治体が自らの所有地をタダ、つまり無償で法人に提供した例が「20年の間にですね、25例」あろうがなかろうが、今治市の市有地を新設獣医学部設置の土地として無償提供することへの口利きや政治的圧力の関与を否定する証明とはならない。

 25例が100例あったとしても、証明とはならない。25例中25例共に政治家の口利きや政治的圧力の関与がゼロであることを立証して初めて、そのことの証明となり得る。

 だが、安倍晋三は証明とならない説明をしているに過ぎない。

 「遊休地があって、地方自治体が困っているときに学校法人が来て」、「若い人たちが来ますし、研究者も来るし、街が形成される」ことが政治家の口利きや政治的圧力の疑惑が存在しなかったことの証明とはならない。

 「これは今治市が、今度市がですね、決めたことでしょ?これ、市ですから、国有地ですらないわけですから、私、影響がしようがないじゃないですか」と言っていることも、一国の首相が裏から国有地ではない市有地に手を伸ばすことができない何の証明ともならない。

 今治市が「獣医学部設立を進める。しまなみ街道のサイクリングブームの後押しをする。高度外国人人材の積極的な受け入れや、活力ある地域づくりのための道の駅民間参入など、大胆な規制改革を提案、極めて高い評価を得た」としても、同じことを言うことができる。何のl証明にもなりませんよと。

 ここで当たり前のことを断っておくが、疑惑があることを証明するのは追及側であって、疑惑がないことを証明するのは追及を受ける側である。双方共にそれぞれ証明しなければならない。

 但し追及側は疑惑が心情の面にとどまるのみで、確証を得ていなくても追及することを許されるが、追及を受ける側は物的に確証を証明できなくても、少なくとも心情的には自分は正しいというしっかりとした信念を有していなければならない。

 追及側が確証を得ていなくても追及することを許されるのは、警察が確たる物的証拠がなくても、状況証拠的に犯罪を犯したことが疑わしい人物を重要参考人として警察に任期同行して取り調べることが許されているのと同じで、それは任意の聴取の過程で参考人の発した事実と矛盾した言葉をキッカケに捜査が進んだり、自白に追い込んだりすることがあるからで、国会という追及の場で同じ場面が演じられない保証はないからだ。

 当然、福島瑞穂が確証がなくても何らかの疑惑を嗅ぎ取ったなら、追及しても許されるし、追及するのは当然であって、そうすることは追及する側の権利でもある。

 対して追及を受ける側の安倍晋三は自身は不正な口利きもしていない、政治的圧力も加えていないという確証を物的に示すことができなくても、自分は正しいという信念を有していたなら、その信念に基づいて誰が何と言おうと、「自分は正しい」、あるいは「自分は間違っていない」ということを言えば済むはずだし、そうすることが追及を受ける側の義務であるはずだが、自分は正しいとする証明することができない無駄な言葉を延々と続けるばかりで、挙句の果てに疑惑があるが如くに知人の名前を出した、学園の名前を出した、さらには生徒の募集に影響を与える、「NHKで放送されて、全国放送でされている」と、追及を受ける側の証明の義務を忘れているばかりか、追及する側の証明の権利をも無視して「あなた責任取れるんですか」と追及自体を非難している。

 このムダな言葉を費やすだけの自分は正しいとする信念の欠落こそが状況証拠的に真黒毛のクロを示して余りある。

 ウソつきがいくら自分は正しい、ウソつきではないと思い込んでいても、それが信念にまで高まることはないゆえに自分がついているウソを事実と相手に信じ込ませるために多くのムダな言葉を費やさねければならなくなるように安倍晋三のムダな言葉の費やしはウソつき由来の多弁に似ている。

 岡山理科大学獣医学部設置への今治市市有地16・8ヘクタール、約36億7500万円の土地無償提供、校舎建設費補助金8年間計64億円は国家戦利略特区に名を借りた、30年来の親友に対する安倍晋三の政治的便宜が手を貸した実現と見て、ほぼ間違いはないだろう。

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稲田朋美の“無かった自分の記憶に基づいた”の答弁は重いはずの閣僚の言葉を軽くしていて、辞任に値

2017-03-16 08:29:42 | 政治

 稲田朋美は2017年3月13日の参議院予算委員会で民進党の小川敏夫の質問に、「森友学園理事長籠池泰典の法律上の相談に乗ったこともなければ、事件を受任し、顧問弁護士であったこともない」と答弁、対して小川敏夫が学校法人森友学園訴訟代理人弁護士稲田朋美という文書が裁判所に提出さていると文書を示してなお迫ると、再度相談を受けたことも裁判を行ったこともないと強い口調で断言した。

 この遣り取りを次のサイトから参考までに載せてみる。
 
 《小川敏夫情報》   

 小川敏夫「稲田防衛大臣の御主人も弁護士ですが、稲田大臣の御主人、夫が森友学園の顧問弁護士をしている事実はございませんか」

 稲田朋美「まず最初に、私、この本件の土地売買について何の関係もないんです。私は、何度もここで言っていますように、籠池氏に面識こそありましたが、ここ10年来全く会っていないんです。そして、この森友のこの売買のことが問題になったことも、テレビを見て初めて知りました。

 夫についてのお尋ねですけれども、夫は、私が国会議員になる前もなった後も、一私人で別人格で大阪で弁護士業務をやっておりまして、弁護士ですから、たとえ依頼者が犯罪を犯した方でも弁護活動をするんであります。しかしながら、弁護士業務について守秘義務がありますので、私は、私人であり弁護士をやっている別人格であるところの夫の弁護士業務の内容についてお答えする立場にはございません」

 小川敏夫「防衛大臣にお尋ねしますが、防衛大臣御自身は、この森友学園あるいは籠池氏の顧問弁護士、あるいは法律相談を受けたり、あるいは事件を受任したということはございませんか」

 稲田朋美「これについても何度もお答えしております。

 私は、籠池氏の法律相談に乗ったこともなければ、事件を受任し顧問弁護士であったということはありません」

 小川敏夫「今朝9時から籠池氏の発言がネットで流されているんですが、その発言の中で籠池氏は、防衛大臣と御主人、お二人が顧問弁護士だったと。それから、具体的な訴訟について、大臣に訴訟代理を受けていただいたというふうに述べておりますが、この点どうでしょうか。

 稲田朋美「そういった事実はありません」

 小川敏夫「具体的に防衛大臣の名前が入った裁判所に提出書類も公開されておるようなんですが、防衛大臣は御主人とともに連名でこの森友学園の事件の受任をしたことはないんですか。

 稲田朋美「勿論、共同で事務所をしておりますので、委任状が共同になっていることはあるかも分かりませんが、弁護士の仕事はそれぞれ属人的なものなんです。私は、全く籠池氏、森友氏の事件を受任をしたこともなければ、裁判を行ったこともなければ、法律相談を受けたこともないんです」

 小川敏夫「これ、今入手したばかりで、事前に資料として配付できなかったんですが、平成17年10月11日、学校法人森友学園訴訟代理人弁護士稲田朋美という文書が裁判所に提出されております。大臣の答弁と違うんじゃないですか。

 稲田朋美「確認をしておりませんのでまた確認をしたいと思いますが、とにもかくにも、弁護士というのは、弁護士というのは個人の人的な信頼関係で事件を受任するんです。

(発言する者あり)いや、委員も、委員も法曹をやられていたのでよく御存じだと思いますけれども、事務所の中、大きな事務所の中でも、その担当の弁護士が、その人的な関係に基づいて、そして事件を受任をしてその処理をするわけであります。

私は籠池氏の相談を受けたこともありません。籠池氏の相談を受けたことも、裁判を行ったこともないということでございます」

 このように強く否定していたが、翌日3月14日午前の閣議後記者会見で森友学園の弁護士として大阪地裁に出廷していた記録があったとの一部報道を認めて答弁を修正することになった。記者とのこの遣り取りを3月14日付の次の記事から取り上げてみる。

 「asahi.com」 

 記者「森友学園問題を巡り、稲田大臣の名前が原告側弁護士の名前として記載されていた」

 稲田朋美「私も昨日、いきなり(参院)予算委員会の中で(訴訟資料とされるペーパーを)示されて非常に驚いたが、昨日国会の答弁で申し上げたことも、今まで申し上げてきたことも、まったく私の記憶に基づいて申し上げてきたものだ」

 記者「(2004年の訴訟関係の)記録には、出廷当事者として稲田大臣の名前があるとの一部報道があった。事実関係は。

 稲田朋美「私もそれ、昨日(の参院予算委で)示された準備書面とは違う、裁判所の出廷記録ということで、報道で初めて今朝見て、それについてもしっかり確認はしたいと思うが、裁判所の出廷記録であるとすれば、13年前の抵当権抹消事件だが、第1回の口頭弁論期日だが、その際に担当の夫の都合がつかずに代わりに出廷したことがあるのではないかと、私は今、推測はしている。いずれにしても、13年前の抵当権抹消事件であって、私は記憶に基づいて今まで答弁してきた。そして、13年前の抵当権抹消事件と今の国有地払い下げの事件、この間には全く関係ないし、私もこれも何度も国会で申し上げているが、本件の国有地払い下げ事件に関しては、私は本当に何の関係もない。そして籠池氏とは面識はもちろんあったが、ここ10年ほどお会いしていない。それは10年ほど前、大変失礼なことをされたということがあって、それ以来、私は関係を断ってきているということだ。いずれにしても、本件国有地払い下げの事件については関係がないということだ」

 記者「これまでの国会答弁と食い違いがあるのではないか」

 稲田朋美「私は全く自分の記憶に基づいて、今まで顧問弁護士をやったことも法律相談をしたこともない。また、昨日いきなり示された事件についても、全く記憶が無かったものだったので、そのように答弁した。しかしながら、今日、第1回口頭弁論期日に私が出廷しているという裁判記録があるという報道を受けたので、勿論確認はするが、そうだとすればその抵当権抹消事件、夫が担当していた事件で第1回期日に夫の代わりに裁判所に行ったということはあり得るのかと推測できるなと、今思っている」

 要するに昨日3月13日の参院予算委で小川敏夫が示した文書は準備書面だったから、籠池泰典から法律上の相談を受けたことも裁判を行ったこともないと答弁したが、報道は裁判所の出廷記録があるとしているから、出廷したことがあるのではないかと推測しなければならない。

 但しそのような答弁をしたこと自体は原告側代理人弁護士として出廷したという「全く記憶が無かった」からで、その無かった「自分の記憶に基づいて」答弁したとの物言いで、間違ってはいないと主張するニュアンスとなっている。

 参考までに言うと、ネットで探し出したのだが、森友学園を原告とするその代理人弁護士として出廷した記録の存在を伝えた一部報道とは「東京新聞」の朝刊記事のことだと思う。 

 稲田朋美が言っている「準備書面」とは、これもネットで調べたのだが、民事訴訟法上、当事者が口頭弁論に先立って弁論内容の予告をする書面だそうだ。

 法律に関しては全くのド素人だが、次のような想像はできる。

 弁護人が準備書面を用意するのはその前提として何らかの民事訴訟が存在しなければならない。訴訟が存在し、準備書面を用意した段階でその書面に弁護人としてサインする。

 その後訴訟を断念することになったとしても、少なくとも原告側、即ち森友学園理事長籠池泰典に対して法律上の相談に乗っていなければ、準備書面は用意できない。

 但しそれが文書として表に出ていたということは、あるいは小川敏夫が表に出すことができたということは裁判所に準備書面を提出して訴訟の段階にまで進んでいたことを証明することになる。

 その準備書面を3月13日の参院予算委で小川敏夫から示されたのである。にも関わらず、籠池泰典から法律上の相談を受けたことも裁判を行ったこともないと答弁した。

 最低限、準備書面が存在する以上、秘書を使うなりして事実確認を行わなければならなかったはずだ。

 だが、準備書面だったから、籠池との関係で法律の相談を受けたことも裁判所に行ったこともないと答弁した。

 ここに矛盾を見ない者はいるだろうか。

 また、籠池泰典から法律上の相談を受けたことも裁判を行ったことも「全く記憶が無かった」、そのような「自分の記憶に基づいて」行った答弁だと、自身の答弁を正当化しているが、この正当化を認めたなら、如何なる閣僚も記憶が無かったことを理由に事実と異なるどのような答弁も可能となる。

 3月15日の参院予算委員会では次のように答弁している。「NHK NEWS WEB」(2017年3月15日 12時06分)   

 稲田朋美「出廷したことを確認できたため、訂正し、おわび申し上げた。私としては、自らの記憶に基づいて答弁したものであり、虚偽の答弁をしたとの認識はない。防衛大臣として、国会では誠実に答弁し、また誠心誠意、職務にまい進し、わが国の防衛に万全を尽くしてまいりたい」

 要するに稲田朋美という閣僚は全く記憶が無かった場合、そのような「自分の記憶に基づいて」行った答弁は虚偽の答弁にならないというルールを自らつくっていることになる。

 と言うことは、虚偽答弁は記憶にありながら、その記憶にある事実とは異なることを述べた場合のみとなる。

 当然、例え後で答弁の矛盾を突かれたとしても、「全く記憶が無かった」は虚偽答弁回避可能の鬼に金棒となる。

 百歩譲って、この正当化を認めることにしてみる。

 稲田朋美が準備書面を見せられながら、相談を受けたことも裁判を行ったこともないと答弁したのは3月13日の参院予算委員会。

 この答弁を修正したのは翌日の3月14日午前の上記閣議後記者会見。

 だが、3月6日の参院予算委員会では民進党の福山哲郎と次のような遣り取りをしている。文飾は当方。

 福山哲郎「稲田大臣、いわゆる森友問題の塚本幼稚園の顧問弁護士をしていた、もしくは弁護士の仕事をしていたという話があります。そのことへの事実関係をお答え下さい。議員になる前というお話もありますし、籠池理事長がそのことを話しをしていたということもございましたので、宜しくお願いします」

 稲田朋美私が弁護士時代に森友学園の顧問、だったということはありませんし、また法律的な相談を受けたこともありません。今委員がご指摘になったのは『保守の会』の松山氏が書かれたSNSではないかと推測致しますけれども、今朝『保守の会』の松山氏から私の(議員)会館事務所に対し私が森友学園の顧問弁護士であったとのSNSの記載は間違っていたので、撤回する旨の連絡とお詫びがあったところでございます」

 福山哲郎「私が聞いてもいないことを丁寧なお答え頂いてありがとうございます。そのSNSでは籠池理事長が今稲田大臣が言われた方が言っていたような記録がございますので、籠池理事長の言葉だとすれば、今大臣の言葉と全く異なるわけでございます。

 先日の籠池理事長の会見でも、どういうわけか籠池理事長が他のマスコミでも、ペラペラ真っ向から対立する話をされています。だからこそ、それこそ私は大臣も名誉を傷つけられているわけですし、鴻池議員も、ある意味、真っ向から違うことを言われているわけですから、逆に参考人を呼んで真実を語って頂くということが大切だというふうに思いますので、引き続き籠池理事長の参考人招致を求めたいと思います」

 「保守の会」の松山なる人物がSNSに稲田朋美は森友学園の顧問弁護士だったと記載したが、その記載は間違いだったとして稲田の議員会館事務所に報告と謝罪の連絡があった。

 だからと言って、「私が弁護士時代に森友学園の顧問、だったということはありませんし、また法律的な相談を受けたこともありません」と断言できることにはならない。

 なぜなら、福山がこの答弁を受けて、「SNSでは籠池理事長が今稲田大臣が言われた方が言っていたような記録がございますので、籠池理事長の言葉だとすれば、今大臣の言葉と全く異なるわけでございます」と言って、「保守の会」の松山なる人物が顧問弁護士だったと言っていたことを訂正したとしても、籠池泰典本人が同じようなことを言っているのだと3月6日の時点で指摘している以上、3月13日の参議院予算委員会で小川敏夫に同種の追及を受けるまでに事実確認を行なっていなければならなかったはずだ。

 なぜなら、稲田朋美はいやしくも閣僚である。それも防衛大臣という国の安全保障を直接的に所管する重職に就いている。当然、その言葉は重くなければならない。

 言葉を重くするためには確かな記憶に基いた言葉の発信に心がけなければならない。

 だが、3月6日から3月13日までに6日間の日数がありながら、自身の記憶が確かかどうかの事実確認もせずに「全く記憶が無かった」からと事実と異なる発言を繰返すというのは重くしなければならない言葉を逆に軽くしていたことになる。

 いわば「全く記憶が無かった」と自分の記憶に基づくばかりで、その記憶を絶対として、実際には事実と異なる発言を繰返していた。確かめる時間がありながら、自分の記憶が果たして事実に基づく正しい記憶なのか確かめることもしなかった。

 ということは、閣僚と言う立場にありながら、虚偽の答弁にならないよう心がけなかった。

 このことだけでも、例え100%虚偽答弁ではなかったとしても、閣僚に就いている資格を失う。

 少なくとも稲田朋美は全体的な印象として、何と言葉の軽い閣僚だという印象を多くに与えたはずだ。

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安倍晋三が森友学園を訴えない理由:裁判を国民に対する最善の説明責任とする機会とせずに自らの仕事を優先

2017-03-14 11:13:02 | 政治
 
 ――特に総理・閣僚の立場にある者が第三者から名誉毀損を受けている状況にあるとき、裁判に訴え、その裁判に勝つことは自身の正当性と名誉を守ることの証明となると同時に国民に対する最善の説明責任となる――

 NHKが中継した2017年3月13日の参院予算委員会で民進党の川合孝典が安倍晋三に対して森友学園籠池泰典理長に利用あれ、迷惑をかけられているから、裁判で訴えないのかと問われた。

 川合孝典「総理も大変激務の中で大変な思いをされながら、尚且つ同じことで繰返し繰返し質問を受けていらっしゃるということでございます。しつこい、面倒だと、私は知らないと言うことを仰ってるわけでありますが、あの、これよく聞かれますのはここまで安倍総理のことを色々と言って、利用して、ということで、前日森友学園籠池理事長が安倍総理の知らないところでこうした、こうしたこと(記者会見の動画をYouTubに載せていること)をやってらっしゃるんであれば、私は安倍総理は籠池理事長、森友学園をお訴えをになるべきだと思いますが、この点は如何でしょうか」

 安倍晋三「この質問についても何回か受けたことがあるんですが、訴えるとするとですね、安倍晋三記念小学校ですか、と言うことはお断りをしたわけです。

 で、断られたという認識は籠池さん側にもあったわけですが、しかしそれを使ったということに関してですね(安倍晋三記念小学校名で開校の寄付金集めをしたこと)、訴えたらどうか、ことでございますが、なぜ訴えないかという点については2点申し上げたわけでございます。

 第1点目はですね、で、私は現在内閣総理大臣でございます。行政府の長であるわけでございます。そん中に於いてですね、いわば法務省に対しても調整能力はあるわけでございます。

 しかし司法は独立しているわけでございますが、そいういういわば国家権力のですね、行政府の長である私がですね、訴えることはしない。

 で、(ヤジ)それはですね(急に語気を強めて)、随分、これは事実上の名誉毀損になるような、記事、随分あります。週刊誌等々に於いてですね、安倍晋三、隠し子疑惑なんて書かれたこともありますよ。これは一々訴えないことにしております。

 で、もう一点はいわばもう一点はですね、訴えるとなるとですね、結構時間を取られるんですね。かつてご質問もございましたが、私は御党の元総理大臣の菅直人氏からですね、訴えられたわけで、名誉毀損で訴えられたわけでございます。

 これは地裁も高裁も最高裁も完全に私の勝利であってですね、私が勝利したわけでございます。(ヤジ)今違うと言った方がおられましたが、これは間違いなく私が勝利しているのは間違いないだろうと。

 私が負けたんであればですね、向こうに損害賠償を払わなければならないし、私は謝罪をしなければならないわけでございますが、で、ここでですね、ここでですね、私は随分、私自身がですね、総理大臣をしておりますから、えー、出廷することはできませんから、出廷しないがためにですね、様々な手続きが必要であります。

 で、多大なですね、いわば労力を使わざるを得なかったわけであります。で、元総理が総理大臣を訴えるというのはちょっと常軌を逸しているいうふうに考えたのでございますが、つまりこちら側が訴えるとしてもですね、森友学園を訴えたとしても、私が出廷できないわけでありますから、それにですね、出廷してできない中に於いてですね、弁護士等々の打ち合わせも相当の時間がかかるわけでありますし、証人等との確保等もありますから、そういうことにはですね、私の私的なことでございますから、については時間(「礼儀」と発音したように聞こえたが)を割くべきではない、いわば国際情勢も動いておりますし、国内に於いても様々な課題がありますから、このように決意をしたところでございます」

 川合孝典「色々とお聞きしようと思っていましたが、想像以上にご答弁が長いもんですから、この件についてはこれで終わりたいと思いますが、総理だからということで、勿論、様々な事情については承りました。

 ただ、総理のみならず、ご夫人、夫人も含めて今回様々な問題に巻き込まれてしまっているという認識されているというふうに私は理解しておりますので、総理、辞めていただいても結構ですから、ここんところはきちんとはっきりさせる措置をお取りになった方がいいのではないかということだけ申し上げさせて頂きまして、本題に入らせて頂きたいと思います」

 森友学園の国有地売却問題に対する追及に移る。

 これまでの安倍晋三の国会答弁によると、森友学園の理事長籠池泰典は新設小学校に「安倍晋三記念小学校」と命名したい希望を安倍晋三夫人安倍昭恵を通して安倍晋三に伝えた。

 安倍晋三が断ったものの、籠池は何度も何度も安倍晋三の事務所にお願いした。お願いしただけではなく、「安倍晋三記念小学校」名で開校の寄付集めをした。安倍晋三はこの寄付集めを野党が国会で質問して初めて知ったと言い、籠池とは一度も一対一で顔を合わせたこともないと国会答弁している。

 いわば全て籠池が独断で「安倍晋三記念小学校」名の寄付金集めをやっていることで、森友学園の国有地売却問題にも何ら関わっていないと発言している。

 籠池泰典が「安倍晋三記念小学校」という命名を安倍昭恵を通して安倍晋三に望んだのは安倍晋三が最初の総理大臣を退いてからであるが、卑しくも一度総理大臣を経験した、世間的には大物とされる政治家に自身の新しい学校に安倍晋三の名前を付けたいと夫人を通して申し出ながら、本人には一度も面会して依頼しないというのは世間の常識からしたら、不可解そのものである。

 あるいは安倍晋三がその名前をつけることを断っていながら、「安倍晋三記念小学校」名の寄付金集めをしていたことを自身の事務所を通して抗議したのに対して籠池から謝罪があったと国会答弁しているが、それが全て事実であるなら、籠池は安倍晋三の事務所に対しての謝罪のみで済ませるのではなく、安倍晋三自身に面会して直接迷惑をかけたと謝罪するのが世間の常識だが、安倍晋三が顔を合わせたことがないと言っている以上、世間の常識に反して謝罪にも訪れなかったことになって、これまた世間には通用しない不可解な常識となる。

 この不可解を解くためには籠池という人物を桁外れに常識外れと取るか、あるいは安倍晋三が虚偽の答弁を繰返していると取らなければ、一向に解けないことになる。

 野党議員は安倍晋三が虚偽の答弁を繰返していると疑っているから、国会で何度も取り上げ、裁判の過程で全ての事実が判明することを願って名誉毀損で訴えることを求めているのだろう。

 この問題が国会で持ち上がってから内閣支持率が6~7ポイント下がっているのはこのことが影響しているからで、評価額約9億円の国有地を約1億円で売却したことの国の説明に納得しないが70%も占めるのも、役人が政治家の圧力に弱いことを知っている国民が政治家の関与があったからではないかと疑っているからで、その政治家の筆頭に安倍昭恵が新設小学校の名誉校長に就いていたことと、元々は安倍晋三記念小学校という名前を希望していたこととの関係から、安倍晋三を頭に思い描かざるを得ないと言うことも影響した70%でもあるはずだ。

 安倍晋三は森友学園理事長籠池泰典を裁判で訴えない理由として2点挙げた

 第1点目は、司法は独立しているが、いわば司法権は立法権・行政権から独立しているものの、自身が現在内閣総理大臣であり、行政府の長だから、法務省に対しても調整能力があるからで、「国家権力のですね、行政府の長である私がですね、訴えることはしない」と断っている。

 この「調整能力」とは内閣総理大臣の命を受けて法務大臣が検察の逮捕許諾に行使できる逮捕拒否の指揮権なのは断るまでもない。

 つまり内閣総理大臣として国家権力を握っている関係から、法務省に対しても調整能力を持っていると危険なことを言っているだけではなく、このこと以って「訴えることはしない」理由とするのは、訴えた場合は指揮権発動の可能性を予見させることになる。

 いわば訴えたりしたら、逆に自身に司直の手が及んで、逮捕を免れるために指揮権を発動することになるかもしれないという暗示を潜ませている。

 だから訴えないのだと。

 これは自身が国有地売却に関与していたことの間接的な告白ではないだろうか。そう取られても仕方のないニュアンスの発言となっている。

 第2点目は総理大臣で多忙の身であることを理由としている。

 総理大臣として国際情勢にも対処しなければならないし、内政問題でも様々な課題を抱えていて多忙だから、裁判に出廷できない。出廷できなくても、様々な手続きに時間を取られる。弁護士との打ち合わせや証人などの確保にも相当の時間が取られる。

 しかも「私の私的なことで」、総理大臣としての大事な時間を割くわけにはいかないから、訴えないことを決意した。

 総理大臣という重要な職にある者の国会答弁が事実かどうか疑われていて、事実でなかったなら、国有地売却問題への関与も疑われて、大々的なスキャンダルに発展しかねない事柄を「私の私的なこと」という感覚は程度が低く、見事である。

 この程度の低い感覚は「元総理が総理大臣を訴えるというのはちょっと常軌を逸している」という発言にも見ることができる。

 「常軌を逸している」かどうかは誰が誰を「訴える」という原告と被告の関係によって決まるわけでも、訴訟行為そのものによって決まるわけでもなく、訴えの内容が決める事柄であろう。

 妻が夫を訴えても、夫が妻を訴えてもいいことだし、子供が親を訴えても、関係性から言ったら、何ら差し支えないはずだ。

 総理大臣が国会という公の場での発言が事実かどうか疑われているのである。その疑惑によって世論調査の内閣支持率を下げている。

 当然、事実かどうか疑われている国会答弁をいくら繰返そうと、疑いは線路はどこまでも続くよでいつまでも晴れない。疑われるということは国民に対する説明責任を果たしていないことを意味する。

 いわば同じような国会答弁をいくら続けようとも、国民に対する説明責任を果たすことにはならないということである。

 安倍晋三が国会での自らの説明を、多くの国民は信用していないが、事実だとするなら、その事実によって森本学園の理事長籠池泰典が安倍晋三の名誉を棄損していることになるのだから、事実ではないと受け取られる国会答弁を繰返すよりも、訴えて事実の白黒の決着をつけることの方が何よりの国民に対する説明責任となるはずである。

 だが、安倍晋三は裁判を国民に対する最善の説明責任とする機会とせずに総理大臣で多忙だから訴えることはしない言明した。

 このことは多忙を理由に国民に対する説明責任よりも総理大臣としての自らの仕事を優先させたことになる。

 国民に対する説明責任を伴わせることのできのない総理大臣の仕事など存在しない。

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安倍晋三の東日本大震災発生日に合わせた毎年恒例2017年記者会見中止は復興遅れ隠し・復興政策失敗隠し

2017-03-13 10:18:37 | 政治

 安倍晋三が2012年12月就任以来、2011年の東日本大震災発生日3月11日合にわせて毎年恒例としていた記者会見を今年は中止した。

 理由は復興遅れ隠しなのは明らかである。復興遅れ隠しは復興政策の失敗隠しを意味する。

 2013年、2014年、2015年、2016年とこれまで計4回の記者会見を開き、「被災地の復興なくして日本の再生なし」、あるいは「福島の復興なくして日本の再生なし」と、復興を日本再生の優先課題とすることを力強く約束し、2020年東京パラ・オリンピックを「東北が復興を成し遂げた姿を世界に発信する機会とする」と2020年夏以前を復興完了期とすると同時に復興を世界への約束とし、それも単に元の姿に戻す原状回復ではなく、「世界のモデルとなるような新しい東北の創造に取り組む」と野心的な地域政策への挑戦を高々と掲げ、被災者が心に受けた傷を癒すにはインフラや住宅の復興のみならず、「人と人のつながりを守り、被災者が孤立することのないよう、地域の見守り体制」の構築にも重点を置くと同時に特に「子供たちへのケア」の必要不可欠性を訴え、「ハード面の復興のみならず、心の復興に一層力を入れていきます」と気配りある数々の約束を被災者や国民に向かってこれでもかと提示した。

 そして何度「復興を加速する」と宣言しただろうか。「安倍内閣におきましては、省庁の縦割りを排しながら現場主義を徹底し、政府一丸となって加速化に全力をあげました」(2014年3月10日)

 「何としても、復興を加速する。その決意のもと、総理就任以来、3年余りで30回近く、被災地に足を運んでまいりました」(2016年3月10日)

 だが、東日本大震災が6年目を迎えるに当たってマスコミが改めて取り上げ始めた復興に関わる報道を見ると、安倍晋三が勇ましく延々とファンファーレを鳴らし続けた約束事とは現状は程遠い。

 その報道の一つ、《復興「遅れている」「実感持てない」が6割に》NHK NEWS WEB/2017年3月6日 17時00分)記事から、そのアンケートを取り上げてみる。    

 NHKはPDF記事、「NHK東日本大震災6年被災者アンケート」で詳しい内容を載せている。参考のために記事アンケートの個所をPDF記事から画像にして載せておいた。

         「震災時に住んでいた地域の今の姿は?」
  














  「前設問で①~④に〇をつけた方にお伺いします。震災時に住んでいた地域の今の姿は震災前と比べてどう感じていますか?」
 

 調査対象 5000人を対象。
 回答者  1437人
 調査期間 2016年11月~2017年2月。

 「震災前に暮らしていた地域の復興状況」

 「進んでいる実感が持てない」26%
 「想定よりも遅れている」36%
 「それなりに進んでいる」34%
 「想定よりも早く進んでいる」2%   

 復興は「それなりに進んでいる」+「想定よりも早く進んでいる」の回答者に対して「地域の今の姿を震災前と比べてどう感じるか」

 「地域経済がよくなった」4%
 「地域に活気が出た」8%
 「交通の便がよくなった」13%
 「買い物が便利になった」15%

 記事は以上のアンケート結果を載せて、〈地域経済や生活環境の回復にはつながっていないと考えている人が多いことが分かった〉と解説している。

 その具体的証明として一昨年と昨年のアンケートとの比較を行っている。

 復興が「進んでいる実感が持てない」26%(昨年比マイナス6ポイント) ← 昨年32%

 これは復興の逆行を示している。

 復興が「想定よりも遅れている」36%(昨年比マイナス17ポイント) ← 昨年53%

 「想定よりも遅れている」という実感は昨年よりも17ポイント減少しているが、あくまでも“遅れている”という文脈内の減少であって、ここに来て急速に復興が加速したという文脈への反転を示しているものではないことは次の比較を見ると理解できる。

 復興が「想定よりも進んでいる」2.4% = 昨年2.4%と ← 一昨年2.5% ← 一昨昨年1.8%

 「想定よりも進んでいる」という実感は低い水準にあり、しかも殆んど変わらない値となっている。

 記事も、〈「復興が進んでいる」と感じる人の割合は、依然として低い状態が続いています。〉と解説している。

 復興は「それなりに進んでいる」+「想定よりも早く進んでいる」の回答者に対して「地域の今の姿を震災前と比べてどう感じるか」の実感が、「地域経済がよくなった」4%、「地域に活気が出た」8%、「交通の便がよくなった」13%、「買い物が便利になった」15%と、それぞれ低水準にとどまっているのは復興が好転している状況にあると見ることができる生活者が低い水準にあるということであり、この低水準は同時にそれぞれの好転した復興状況の利益享受者が少数に留まっていることの現れを示している。

 このことと、「震災前に暮らしていた地域の復興状況」が、「進んでいる実感が持てない」26%に対して「それなりに進んでいる」が34%、「想定よりも遅れている」36%に対して「想定よりも早く進んでいる」が2%のそれぞれの対比から見えてくる全体の状況は格差を構造とした復興の二極化であろう。

 言葉を替えて言うと、復興の波に乗った者がそれなりに存在する一方で取り残された者が大勢いることを示していることになる。

 復興が遅れていることの何よりの証明は人口減少であろう。NHKのニュースでやっていたが、復興事業が盛んだった頃は事業従事の作業員が大勢訪れて繁盛していた食堂が事業がピークを過ぎるにつれ訪れる作業員が減少し、事業が区切りがつくと殆んど訪れなくなって、僅かしか来店しない地元住民相手では商売が成り立たないから閉店することに決めたということだが、作業員は一時的な仮の人口であって、そこに住みついている人口がそれれなりの数を占めないと、商売は成り立たないし、新しく店を開く契機とすることもできない。

 いわば震災を受けて避難した住民が元の場所に戻り、尚且つ新しい住民が住み着くようにならないと、それぞれの地域の活性化は期待できないことになる。

 と言うことは、仮設住宅で避難生活を送っている住民はもとより、他県避難者も含めて元の生活の場への帰還の程度が復興の進展に関係するバロメーターとなる。

 ところが、2017年3月11日付「NHK NEWS WEB」記事によると、東北沿岸の被災地では人口減少が進んでいると同時に復興庁調査による2017年2月13日時点での全国で避難生活を余儀なくされている被災者は12万3168人、このうちプレハブの仮設住宅や民間の賃貸住宅を借り上げている「みなし仮設」、それに福祉施設などで暮らしている被災者は10万4991人に上ると伝えている。 
    
 人口減少は具体的には国勢調査のデータをもとにNHKが纏めた2011年3月1日から2017年2月1日までの岩手、宮城、福島の沿岸にある14の市町村の人口は震災前と比べて10%以上人口が減少しているという。

 この人口減少に加えてプレハブの応急仮設住宅で暮らす避難者は2017年1月末現在で岩手、宮城、福島の3県で計3万5503人に上り、住人の65歳以上の高齢者が占める割合は岩手が県全体の高齢化率とほぼ同じ30.9%(2017年1月末時点)、宮城が県全体の高齢化率よりも約4ポイント高い30%(2017年1月末時点)、福島が県全体の高齢化率よりも約14ポイントも高い42.9%(2016年5月末時点)だと、2017年3月7日付「時事ドットコム」記事は伝えている。

 福島県生活拠点課「自宅を建て直す意欲を失った高齢者が残りがち」

 記事は、〈警察庁によると、3県では2016年末までに仮設で1人暮らしをしていた避難者230人が死亡。その58.3%に当たる134人が65歳以上だった。〉と伝えている。

 上記「NHK NEWS WEB」記事は復興庁調査で震災発生時の2011年3月から2016年9月末までに避難生活による体調の悪化などで亡くなったいわゆる「震災関連死」と認定された被災者は10の都県で少なくとも合わせて3523人、震災による犠牲者は「震災関連死」を含めて少なくとも合わせて2万1969人となっていると伝えている。

 その多くが住んでいた場所を奪われ、中には家族・親しい知人を失った被災者が狭い仮設住宅で6年も暮らさざるを得な住人が占めることになっているはずである。

 マスコミ記事の仮設住宅群のどの写真を見ても、その中に商店や学校、公園や医療機関を抱えていないゆえに街の様相は見えず、収容所群の様相しか見えない。特に高齢者が6年も暮らして体調を崩すしていく状況にあることは否応もなしに理解しなければならない。

 人口減少、高齢化、仮設住宅に取り残されている人口が市に昇格できる人口条件の5万人に近い3万5千人等々、元の街の復活はおろか、復興に遙か程遠い状況は安倍晋三が毎年の震災発生日に合わせて行ってきた記者会見の発言とは全て裏返しとなっている。

 仮設住宅その他で体調を崩し、普通の生活を取り戻すことなく震災関連死の扱いで終末を迎える3500人という少なくない人数や他県避難者の子どもたちが被災を理由にイジメに遭うのは安倍晋三が被災者が心に受けた傷を癒すにはインフラや住宅の復興のみならず、「人と人のつながりを守り、被災者が孤立することのないよう、地域の見守り体制」の構築を言っていたことの裏返しの状況を示すものであろう。

 そして人口減少と高齢化になす術もなく状況任せとなっている現状は復興を単に元の姿に戻す原状回復ではなく、「世界のモデルとなるような新しい東北の創造」を完成形にすると野心的な挑戦を高々と掲げたこととは遠く及ばない、まさに裏返しの状況で推移していることの証明としかならない。

 「安倍内閣におきましては、省庁の縦割りを排しながら現場主義を徹底し、政府一丸となって加速化に全力をあげました」と言っているが、その「加速化」たるや、政府や自治体が予算をつけた公共土木工事のみに当てはまることで、人が集まり、賑わう街の復活・復興を未だ成し遂げていないのだから、そういった復活・復興とは縁のないタワゴトとなっていて、住民が望む復活・復興とは裏返しの状況しか与えていない。

 当然、「何としても、復興を加速する。その決意のもと、総理就任以来、3年余りで30回近く、被災地に足を運んでまいりました」と言っている、「3年余りで30回近く」も「被災地に足を運んだ」ことが何ら意味を成さない、安倍晋三の思惑を裏返しにしたお粗末な現状を見ないわけにはいかない。

 「被災地の復興なくして日本の再生なし」、あるいは「福島の復興なくして日本の再生なし」と高らかにファンファーレを吹き鳴らしたものの、復興の全体的状況が格差を構造とした二極化を呈していて、復興に取り残された住民が多く存在する以上、ファンファーレが意味させていたこととは裏返しの状況にある。

 とても恒例の記者会見を開いて、さも復興が進んでいるかのような、幸せの青い鳥をテーマとしたファンファーレを再び高らかに吹き鳴らす状況にはなかった。

 冒頭発言がそれを許したとしても、記者との質疑で復興が遅れていることの容赦のない矢を放たれたに違いない。

 尤もどのような遅れも認めはしないだろうが、テレビで放送された記者会見やネット上に残った動画を見る者をして、復興は遅れていないとする発言にウソを見い出す危険性は予想しなければならない。

 発言にウソを見い出した場合、そのウソはネット上に飛び交うことになる。

 要するに恒例でありながら、6年目にして記者会見を開かなかったのは安倍晋三の面前で復興遅れを露わにされないための回避、 復興遅れ隠しに過ぎない。

 復興遅れを隠すことで、復興政策の失敗を隠すことができる。

 3月11日に政府主催の「東日本大震災6周年追悼式」に出席して、「被災地に足を運ぶ度、震災から6年を経て、復興は着実に進展していることを実感している」とか、「被災者の方々お一人お一人が置かれた状況に寄り添いながら、今後とも心と身体のケアや新たな地域社会の形成など、復興の進展に応じた切れ目のない支援に力を注ぎ、更に復興を加速していく」等々、現実の復興とは裏返しとなる状況を式辞として述べることができたのは、言いっ放しで済むからであろう。

 なかなか狡猾である。 

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安倍晋三の南スーダンPKO派遣自衛隊部隊撤収「南スーダンの国創りに大きな貢献」は真っ赤なウソッパチ

2017-03-11 12:18:51 | 政治

 南スーダン派遣自衛隊PKO施設部隊が5月末を目途に撤収させるという。この件について安倍晋三が2017年3月10日、首相官邸でぶら下がり会見受けている。    

 安倍晋三「先程国家安全保障会議を開催し、南スーダンに派遣中の自衛隊施設部隊は、現在従事している道路整備が終わる5月末を目途にその活動を終了することを決定いたしました。

 南スーダンPKOへの自衛隊部隊の派遣は今年1月に5年を迎え、自衛隊の施設部隊の派遣としては過去最長となります。

 その間、首都ジュバと各地を結ぶ幹線道路の整備など、独立間もない南スーダンの国創りに大きな貢献を果たしてまいりました。

 南スーダンの国創りが新たな段階を迎える中、自衛隊が担当しているジュバにおける施設整備は一定の区切りをつけることができると判断いたしました。この5年にわたる自衛隊の活動は、過去最大規模の実績を積み重ねてまいりました」

 約350人構成の部隊そのものは撤収させるが、南スーダンPKO司令部への自衛隊要員4人の派遣は継続させるという。

 この他に南スーダン大統領キールが自衛隊の活動を高く評価し、感謝する言葉を伝えたといった発言をしている。

 安倍晋三が「首都ジュバと各地を結ぶ幹線道路の整備など、独立間もない南スーダンの国創りに大きな貢献を果たしてまいりました」と言っていることからすると、安倍政権は2016年11月15日にPKO派遣の自衛隊施設部隊に対して駆け付け警護と宿営地共同防衛の新任務を付与したものの、新任務での活動は一度もなく、それ以外は主たる任務としていた道路整備で「独立間もない南スーダンの国創りに大きな貢献」を果たしたと言うことになる。

 そして「ジュバにおける施設整備は一定の区切りをつけることができると判断」したから、撤収を決めることにした。

 道路整備を主とした活動によって大きな貢献を果たすことができる国創りとは一般的には道路整備が交通と物流の利便性の向上に寄与して、それが経済活動を活発化させて経済発展に繋がっていき、経済発展が国力の強化をイコールさせて、さらに国民の生活向上に役立っていくというサイクルを後に控えていなければ、「独立間もない南スーダンの国創りに大きな貢献を果たしてまいりました」とは決して誇ることはできない。

 果たしてこのようなサイクルを国創りの次のプロセスとして想定できる道路整備だったのだろうか。

 いわば自衛隊の活動によってこのようなサイクルを国創りの次のプロセスとして想定できたから、あるいはこのようなサイクルが国創りの次のプロセスに繋がっていくのを確証できたから、撤収を決めたとしなければ、「国創りに大きな貢献を果た」したとは言えないことになる。

 確実に言うことができるのは、このようなサイクルを想定できずに道路整備だけで国創りへの貢献と決して言うことはできない。

 南スーダンの現状をマスコミ報道から見てみる。

 2017年2月10日の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)発表による大規模な戦闘が起きた2013年12月以降の南スーダンの約1200万人の人口うち国外難民が150万人超。国連保護施設などに身を寄せている国内難民が210万人、合計360万人、30%に達している。

 そしてその60%以上は子どもが占め、その多くが栄養失調の状態だという。

 この大量な難民化の原因は単に政府のキール大統領派と反政府の元副大統領マシャール派間の武力衝突だけではなく、キール大統領派が南スーダン最大部族のディンカ族を形成し、元副大統領マシャール派が南スーダン2番目に多いヌエル族を形成していて、両者の争いが相互に相手部族に対する憎悪に根ざした部族抗争の姿を取り、さながら民族浄化の状況に至っているからだと言う。

 この手の憎悪が相手部族に対する殺戮だけではなく、略奪や誘拐、レイプを横行させ、これらの被害に遭わないために国内外に難を逃れざるを得なくなって大量の難民を発生させている状況にあるということであろう。
 このことはまた南スーダン政府が統治に関わる機能不全に陥っていることを示して余りある。

 当然のこと、戦闘は起きていない場合であっても最悪の治安状況を呈していることになる。南スーダンの首都ジュバは現在はある程度治安は安定しているとのことだが、南スーダン政府が機能不全に陥っていることと難民がこれだけ大量に発生している状況からすると、大きな衝突があった2016年7月以降は目立った戦闘は起きていないという観点からの治安状況であって、異なる部族間の兵士同士だけではなく、兵士による相手部族に属する市民に対する殺戮や誘拐、レイプ、市民による相手部族に属する市民に対する同じく殺戮や誘拐、レイプ、そして兵士や市民による商店等を襲撃する略奪が首都ジュバに於いても発生していることは否定できない悪化した治安状況にあると見なければ、大量の難民の説明がつかなくなる。

 もし首都ジュバが全ての点に於いて治安が安定状態にあるとすると、地方の難民は首都ジュバに逃れることになり、ジュバはパンクする状況にあるはずだ。

 治安が悪化した状況にあった場合、道路整備が交通と物流の利便性の向上に寄与して、それが経済活動を活発化させて経済発展に繋がっていき、経済発展が国力の強化をイコールさせて、さらに国民の生活向上に役立っていくという国創りのサイクルは悪化した治安が阻害要因となって期待できないことになる。

 と言うことは、国創りの第一歩は治安の安定から始めなければならない。治安の安定が上記サイクルを保障する第一要件となる。

 ところが、安倍晋三は南スーダンの治安が悪化している状況では不可能であるにも関わらず、「首都ジュバと各地を結ぶ幹線道路の整備など、独立間もない南スーダンの国創りに大きな貢献を果たしてまいりました」と平気で言うことができる。真っ赤なウソッパチもいいとこである。

 安倍晋三は上記ぶら下がりで南スーダンの今後のことについて次のように発言している。

 安倍晋三「我々は、これからも南スーダンPKO司令部への(4人の)自衛隊要員の派遣は継続いたします。そして、人道支援を充実するなど、『積極的平和主義』の旗の下、国際社会と手を携えて南スーダンの平和と、そして発展のためにできる限りの貢献を行っていく考えであります」

 人道支援とは食糧危機に陥っていると言うから、難民や一般市民に対して食糧支援や水支援、医薬品提供等を行うということなのだろうが、しかし悪化している治安が改善しないことには難民の常態化や一般市民の生活の困窮の常態化に繋がり、このことが人道支援の常態化へと跳ね返ってくる。

 治安の安定が国創りの第一要件でありながら、安倍政権はアメリカが国連安全保障理事会に南スーダンへの武器禁輸を含む制裁決議案を提出したのに対して棄権に回った。

 かくこのように国創りの重要な要件であるはずの治安の安定を無視して、自衛隊は国創りに大きな貢献をしたと言う。実際には貢献していないのだから、自画自賛以外の何ものでもない。

 このような自画自賛に過ぎないことは2017年3月11日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている2917年3月10日の定例記者会見でのハク国連の副報道官の発言が証明してくれる。

 ハク国連の副報道官「日本が南スーダンでしてくれたことに感謝したい。国連は日本と連携して、日本が将来にわたって国連のほかのPKO活動に貢献できるようにしたい。

 (自衛隊が撤収したあとの対応について)可能なかぎり早く、自衛隊の施設部隊の穴を埋めていきたい」

 他の国のPKO部隊が自衛隊PKO部隊の穴埋めをしなければならないということは、自衛隊PKO部隊が南スーダンで必要とされる任務を果たし終えていないことの証左そのものであろう。

 あるいはその任務の継続を代役で賄う必要性が生じている状況にあるということの提示そのものであろう。

 だとすると、自衛隊が5年間活動したと年数を挙げることは意味を成さないことになる。

 2017年2月1日の衆院予算委員会で安倍晋三は次のように答弁している。

 安倍晋三「南スーダンはですね、国連に加盟した国の中に於いて独立して間もない国で、一番若い国と言ってもいいんだろうと思います。その国が失敗した国とならないように、立派に自分の足で立てるようにまさに60カ国が参加してPKO部隊を出して、この国の発展のために貢献をしているわけであります」

 安倍晋三が南スーダン派遣自衛隊が「国創りに大きな貢献をした」と言っていることも真っ赤なウソッパチなら、この発言も、南スーダンが「立派に自分の足で立てるように」なっていないのだから、ウソッパチそのものとなる。

 なぜこうまでもウソッパチを並べてまでして自衛隊を撤退させるのだろうか。

 考えられる理由は衆議院を解散して総選挙に打って出る必要上からの、南スーダンの状況を無視した撤退ではないかということである。

 2016年10月頃から解散の噂が出たが、2017年1月末に安倍晋三が国会で「衆議院の解散については現在、一切考えていない」と否定して解散の噂はピタッと収まった。

 自民党は2017年3月5日の党大会で総裁任期を現行の連続2期6年までから連続3期9年までの延長を決定した。安倍晋三は2018年9月予定の総裁選挙に立候補可能とななり、総裁選挙で勝てば、2021年9月まで自民党総裁でいることができる。

 衆議院議員の任期満了日は2018年12月13日までだから、2021年まで安倍政権を維持するためには次の総選挙に勝つことが安倍晋三の長期政権の絶対条件となる。

 ここに来て安倍晋三の内閣支持率は上昇傾向にある。

 だが、世論調査で国民の半数以上が反対している駆けつけ警護と宿営地共同防衛の新任務を与えられた南スーダン派遣自衛隊が新任務で銃を使用することになって隊員の1名でも死者が出た場合、選挙に大きな悪影響を与える要素となり得る。

 但し撤退して総選挙に臨めば、悪影響を受ける要素を前以て排除できることになる。

 いわば内閣支持率と南スーダンからの撤退は総選挙に勝つための欠かすことのできない必須要件であろう。

 以上の理由付けが間違っていないとしたら、南スーダン派遣自衛隊PKO部隊撤収は衆議院解散・総選挙のサインという見方もできる。

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稲田朋美がその精神を取り戻すべきとする教育勅語は国民を国家権力に好都合な無害の存在とする国民統治装置

2017-03-10 10:59:45 | 政治

 防衛相の稲田朋美が2017年3月8日の参院予算委員会で社民党福島瑞穂の質問に「教育勅語の精神は今でも取り戻すべきだと考えている」と答弁したとマスコミが伝えていたから、YouTubからその動画をダウンロードして文字起こししてみた。

 福島瑞穂は稲田朋美の教育勅語に関わる過去の発言を引き合いに出して、その発言に現れている教育勅語賛美の態度が現在も変わっていないことを稲田朋美自らに言わせて、その国家主義的姿勢を改めて浮き彫りにした点は認めるが、あとは「教育勅語は1947年の衆参決議で効力を失っている」とか、「教育勅語は戦前、戦争の道、国民道徳の規範になって問題を起こしたという認識はあるのか」などとカエルの面にショウベンの何の役にも立たない追及が専らとなっていた。

 教育勅語に内包されている思想の危険性を争点とした議論に的を絞るべきを、そうすることはできなかったから、稲田朋美が今なお教育勅語の精神を信じている姿以外、その姿が如何に危険か、国民に訴えることはできなかっただろう。

 以下、両者の質疑の主なところを拾ってみた。

 福島瑞穂は最初に、大日本帝国を肯定的に評価していると言われている月刊誌「WiLL」の2016年10月号での稲田朋美の対談の発言を読むように求めるが、稲田朋美は、「自分はここに防衛大臣として立っている。11年前の新人議員時代の新人議員同士の発言の一節を読み上げるのは差し控えさせて欲しい」と言って拒否するが、福島瑞穂はしつこく迫って読み上げさせる。

 稲田朋美「先程言いましたように本当に11年前の政治家個人としての意見を述べたもので、11年間に色々と私も学んで、そのときと同じ、全く同じ意見を持っているわけでもないし、また長い対談の一部を読み上げることにどのような意味があるのか分かりませんが、委員が読めとおっしゃいますので読み上げさせて頂きます。

 『教育勅語の素読をしている幼稚園が大阪にあるのですが、そこを取材した新聞が文科省に問い合わせをしたら、「教育勅語を幼稚園で教えるのは適当ではない」とコメントしたそうなんです。

 そこで文科省の方に、「教育勅語のどこがいけないのか」と聞きました。すると、「教育勅語が適当ではないのではなくて、幼稚園児に丸覚えさせる教育方法自体が適当ではないという主旨だった」と逃げたのです。

 しかし新聞の読者は、文科省が教育勅語の内容自体に反対していると理解します。今、国会で教育基本法を改正し、占領政策で失われてきた日本の道徳や価値観を取り戻そうとしている時期に、このような誤ったメッセージが国民に伝えられることは非常に問題だと思います』」

 福島瑞穂「この幼稚園というのは塚本幼稚園のことですか」 

 稲田朋美「今報道等で取り上げられていおる状況を勘案し致しますしと、ここで私が指摘をしているのは塚本幼稚園のことだと推測を致します」

 福島瑞穂「籠池理事長とはどういう関係ですか」 

 稲田朋美「面識はありますけども、ここ10年ぐらいお会いしたことお話したこともございません」

   ・・・・・・・・

 福島瑞穂「あなたの大阪のパーティの呼びかけ人になって貰ったことはありますか」

 稲田朋美「大阪で行った私の1回目のパーティは私を応援してくださっている方々が多く集まれられております。その(呼びかけ人の)中に籠池氏がおられたかどうか記憶にありませんが、1回目のパーティのときに籠池さんがおられた、私のパーティに来られていたことは記憶にあります。

 しかしそれ以来、私はお目にかかったこともないということでございます」

 福島瑞穂「その後に(先程読み上げた対談の発言の後に)教育勅語について発言をなされているのでございますが、『最後の1行も含めて教育勅語の精神を取り戻すべきだ』というお考えは現在も維持されていますか」

 稲田朋美は再び防衛大臣として答弁しているから、その1行についてコメントする立場にないと答弁を拒否するが、福島瑞穂は「考えを変えたのか変えないのか」と迫る。

 稲田朋美「(誰かが、焦るなと声をかけたのか、ニコニコしながら)焦ってませんよ。教育勅語の核である、例えば道徳、それから日本が倫理国家を目指すべきである、その核について私は変えておりません」

 福島瑞穂「最後の1行まで正しいと仰っていますから、それでよろしいんですね」
 
 稲田朋美「私は教育勅語の精神であるところの日本が倫理国家を目指すべきである、そして親孝行ですとか友達を大切にするとかそういう核の部分ですね、そこは今も大切なものとして維持しているところでございます」

 福島瑞穂「ここ(対談)で最後の1行も含めて教育勅語の精神を取り戻すものというふうにおっしゃっています。それも維持されるということですね」

 稲田朋美「今答弁致しましたように教育勅語に流れているところの核の部分、そこは取り戻すべきだというふうに考えております」

 福島瑞穂「念の為に聞きます。全部ですか。あなたは最後の部分まで含めて教育勅語の精神を取り戻すべきだと、全部取り戻すべきだということでよろしいんですね」

 なぜもっと簡潔に、11年前と同じように教育勅語が表している精神の丸々全部を受け継ぎ、今でも自身の重要な思想の一つとしているのかと追及できないのだろうか。追及できていたなら、1度の答弁で済むはずだが、追及できていないから、「11年経っても教育勅語の精神であるところの日本は同義国家を目指すべきであるというそういう精神は、それは取り戻すべきだ、目指すべきだと今も思っている」といった同じ趣旨の答弁の堂々巡りに出食わすことになる。

 福島瑞穂は仕方なく、自身が言っている「最後の部分まで」が何を指しているのか、稲田朋美の対談の一説を自ら読み上げた。

 福島瑞穂「麻生さんは(教育勅語の)最後の1行はよくないと、即ち、『天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スベシ(永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい)といったような部分はよくないと言っているが、私はそうは思わない』というふうに言ってるんですよ。つまり全部っていうことなんですね。この部分も含めて全部なんですね」

 最初から自分が読み上げて、全部の精神を受け継いでいるのかと追及すれば、片付く論点である。堂々巡りの答弁を引き出すだけのムダを省くことにもなる。だが、同じ堂々巡りの答弁を誘っただけの努力で終わっている。

 稲田朋美「今申し上げましたように全体として教育勅語が言っているところの日本が同義国家を目指すべきだという、その精神ですね、それは目指すべきだという考えに今も変わっていないということでございます」

 ここで福島瑞穂は最初に触れた「教育勅語は1947年の衆参決議で効力を失っている」とか、「教育勅語は戦前、戦争の道、国民道徳の規範になって問題を起こしたという認識はあるのか」などとカエルの面にショウベンの何の役にも立たない追及を持ち出している。

 教育勅語が例え1947年の衆参決議で効力を失っていようと、その精神を稲田朋美が個人として自らの思想とすることは思想・信条の自由である。安倍晋三や稲田朋美等の右翼国家主義者が日本の政界で最大勢力を得た場合、教育勅語を日本の教育の基本思想とする衆参決議をいくらでも行うことができる。

 当然、これも最初に触れたように教育勅語に内包されている思想の危険性を明らかにし、その危険性を国民に訴える方法を採るべきを稲田朋美の対談の発言と現在の姿勢の表面部分に拘っている。

 結局のところ、「教育勅語の精神を目指すべきだという考えは今も変わっていない」という繰返させた同じ答弁を以後も何回か引き出す堂々巡りを成果としただけであった。

 福島瑞穂「教育勅語が戦前、戦争の道、あるいは国民の道徳の規範となって問題を起こしたという認識はありますか」

 稲田朋美「そういうような一面的な考え方はしておりません」

 福島瑞穂は最後まで教育勅語が表現している思想の何が危険なのかを具体的に言葉で説明することができなかった。だから、簡単にいなされてしまった。

 教育勅語の思想の危険性を証明するためにネットから探し出したものだが、以下に教育勅語の原文と現代語訳を載せておく。

 「教育勅語と現代語訳」   

 原文

朕(ちん)惟(おも)フニ、我(わ)ガ皇祖皇宗(こうそこうそう)國ヲ肇(はじ)ムルコト宏遠(こうえん)ニ、德ヲ樹(た)ツルコト深厚ナリ。我(わ)ガ臣民(しんみん)克(よ)ク忠ニ克(よ)ク孝ニ、億兆(おくちょう)心ヲ一(いつ)ニシテ世世(よよ)厥(そ)ノ美ヲ濟(な)セルハ、此(こ)レ我(わ)ガ國體(こくたい)ノ精華ニシテ、教育ノ淵源(えんげん)亦(また)實(じつ)ニ此(ここ)ニ存ス。爾(なんじ)臣民(しんみん)父母(ふぼ)ニ孝ニ、兄弟(けいてい)ニ友(ゆう)ニ、夫婦相(あい)和シ、朋友(ほうゆう)相(あい)信ジ、恭儉(きょうけん)己(おの)レヲ持(じ)シ、博愛衆ニ及ボシ、學(がく)ヲ修(おさ)メ、業(ぎょう)ヲ習(なら)ヒ、以(もっ)テ智能ヲ啓發シ、德器(とっき)ヲ成就シ、進(すすん)デ公益ヲ廣(ひろ)メ、世務(せいむ)ヲ開キ、常ニ國憲(こっけん)ヲ重(おもん)ジ、國法(こくほう)ニ遵(したが)ヒ、一旦(いったん)緩急(かんきゅう)アレバ義勇(ぎゆう)公(こう)ニ奉(ほう)ジ、以(もっ)テ天壤無窮(てんじょうむきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スベシ。是(かく)ノ如(ごと)キハ獨(ひと)リ朕(ちん)ガ忠良(ちゅうりょう)ノ臣民(しんみん)タルノミナラズ、又(また)以(もっ)テ爾(なんじ)祖先ノ遺風ヲ顯彰(けんしょう)スルニ足(た)ラン。

斯(こ)ノ道ハ實(じつ)ニ我ガ皇祖皇宗(こうそこうそう)ノ遺訓ニシテ、子孫臣民(しんみん)ノ倶(とも)ニ遵守(じゅんしゅ)スベキ所(ところ)、之(これ)ヲ古今(ここん)ニ通(つう)ジテ謬(あやま)ラズ、之ヲ中外(ちゅうがい)ニ施シテ悖(もと)ラズ。朕(ちん)爾(なんじ)臣民(しんみん)ト倶(とも)ニ拳々服膺(けんけんふくよう)シテ、咸(みな)其(その)德ヲ一(いつ)ニセンコトヲ庶幾(こいねが)フ。
明治二十三年十月三十日
御名御璽(ぎょめいぎょじ)



 現代語訳

 私が思うには、我が皇室の先祖が国を始められたのは、はるかに遠い昔のことで、代々築かれてきた徳は深く厚いものでした。我が国民は忠義と孝行を尽くし、全国民が心を一つにして、世々にわたって立派な行いをしてきたことは、わが国のすぐれたところであり、教育の根源もまたそこにあります。

 あなたたち国民は、父母に孝行し、兄弟仲良くし、夫婦は仲むつまじく、友達とは互いに信じあい、行動は慎み深く、他人に博愛の手を差し伸べ、学問を修め、仕事を習い、それによって知能をさらに開き起こし、徳と才能を磨き上げ、進んで公共の利益や世間の務めに尽力し、いつも憲法を重んじ、法律に従いなさい。そしてもし危急の事態が生じたら、正義心から勇気を持って公のために奉仕し、それによって永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい。これらのことは、単にあなた方が忠義心あつく善良な国民であるということだけではなく、あなた方の祖先が残した良い風習を褒め称えることでもあります。

 このような道は、実にわが皇室の祖先が残された教訓であり、その子孫と国民が共に守っていかねばならぬことで、昔も今も変わらず、国の内外をも問わず、間違いのない道理です。私はあなた方国民と共にこの教えを胸中に銘記して守り、皆一致して立派な行いをしてゆくことを切に願っています。
明治二十三年十月三十日 

 最初に断るまでもなく、戦前の日本は大日本帝国憲法で、「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治」し、「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」と規定して天皇絶対制を採っていた。いわば天皇主権であって、国民に主権はなかった。

 安倍晋三や稲田朋美、その同類たちは女系天皇制に反対し、男系天皇制に拘っていることと、特に安倍晋三は自身の「皇室の存在は日本の伝統と文化、そのものなんですよ。まあ、これは壮大な、ま、つづれ織、タペストリーだとするとですね、真ん中の糸は皇室だと思うんですね」という発言、「日本の歴史というのは、言ってみれば、いわば、つづら織りのようなものでありまして、タペストリーですね。

 この長い歴史をそれぞれの人々が個々の歴史を積み重ねる中で、全体のつづら織ができあがってきたわけでありますが、やはり、真ん中の中心線というのは、わたくしはそれはご皇室であろうと、このように思うわけであります」という発言から、日本の歴史と文化の中心に天皇を置いている点からして、「天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スベシ」(永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい。)と国民に対する義務としている、あるいは稲田朋美がいう“核”の一つとしている教育勅語の精神をも受け継いでいることになる。

 だが、安倍晋三も稲田朋美もその同類も教育勅語に言及する際、天皇主義者だとか、復古主義者だと露骨に取り沙汰されることを恐れて、稲田朋美が「私は教育勅語の精神であるところの日本が倫理国家を目指すべきである、そして親孝行ですとか友達を大切にするとかそういう核の部分ですね、そこは今も大切なものとして維持しているところでございます」と言っているように、その教育勅語に当たる個所、「爾臣民父母ニ孝ニ、兄弟ニ友ニ、夫婦相和シ、朋友相信ジ、」(あなたたち国民は、父母に孝行し、兄弟仲良くし、夫婦は仲むつまじく、友達とは互いに信じあいなさい)云々としている思想のみを前面に出して、今の世にも通じる優れた道徳観だとすることで教育勅語を正当化すると同時に自らの天皇主義の姿、復古主義の姿を巧妙に隠している。

 2017年3月7日付「【風を読む】幼稚園の行き過ぎ指導で「教育勅語」が迷惑している 論説委員長・石井聡」なる「産経ニュース」記事も同じ構造を取った内容となっている。   

 〈教育勅語は現行憲法の国民主権に反し、軍国主義を生んだ戦前の教育思想を支えたなどとして、占領下の昭和23年に廃止された。だが、親孝行や友愛など12の徳目と呼ばれる内容自体は、およそ軍国主義とは無縁で道徳教育の肝となるものだ。

 反対論は天皇中心の国体思想が据えられていると指摘する。皇室と日本の歴史のくだりは国柄を示しており、国民主権を否定する性格ではなかろう。国柄や建国の理念について、どうしても認めたくないのだろうか。〉――

 いわば「親孝行や友愛など12の徳目」を軍国主義とは無縁の現代にも通じる優れた道徳観だと取り上げて教育勅語を正当化しているが、この点のみならず、それがどのようなタガをはめられている思想なのかを巧妙に隠している点についても、両者は相通じている。

 記者は「国民主権を否定する性格ではなかろう」と言っているが、天皇主権で国民主権のなかった時代の教育思想なのだから、天皇主権が国民に対するタガとなって影響を与えていないはずはない。

 そのタガとは教育勅語の全体を通じて流れている天皇や国家に対する国民の奉仕の形を取って現れている。

 それが次の行(くだり)である。 

 〈一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ、以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スベシ。是ノ如キハ獨リ朕ガ忠良ノ臣民タルノミナラズ、又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン。

 斯ノ道ハ實ニ我ガ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ、子孫臣民ノ倶ニ遵守スベキ所、之ヲ古今ニ通ジテ謬ラズ、之ヲ中外ニ施シテ悖ラズ。朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ、咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ。〉(危急の事態が生じたら、正義心から勇気を持って公のために奉仕し、それによって永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい。これらのことは、単にあなた方が忠義心あつく善良な国民であるということだけではなく、あなた方の祖先が残した良い風習を褒め称えることでもあります。

 このような道は、実にわが皇室の祖先が残された教訓であり、その子孫と国民が共に守っていかねばならぬことで、昔も今も変わらず、国の内外をも問わず、間違いのない道理です。私はあなた方国民と共にこの教えを胸中に銘記して守り、皆一致して立派な行いをしてゆくことを切に願っています。)

 この文章に隠された天皇(=国家)と国民との関係性は「神聖ニシテ侵スヘカラス」存在である天皇の、それゆえに言葉は柔らかくても、“何々しなさい”が絶対的命令の形を取ることになって、その命令に従うことを義務付けられた国民との関係である。

 そういった天皇や国家といった強い大きなタガを嵌められた中での親孝行であり、兄弟や夫婦や友達同士の関係であり、順法精神であり、公共に対する奉仕であり、永遠に続く皇室への扶翼=奉仕となっている。

 当然、天皇や国家といったタガを嵌められた国民の規律となっている関係から、本来的な意味の自律性(他からの支配・制約などを受けずに自分自身で立てた規範に従って行動する性質)は養うべくもなく、国家に与えられた目標や道徳律に従った従属性(=タガ)を持たせた、その範囲内の限られた自律性を生きることになる。

 このような自律性が行き過ぎた場合、戦前の日本人が経験したように国家の言いなりとなる国民の姿を取って、自律性を益々狭(せば)めていく。

 いわば教育勅語には国民をこのような姿に飼い馴らす思想が道徳、あるいは徳目の形を取って隠されている。

 飼い馴らされた国民は国家が国民を統治する際、好都合な無害の存在となる。

 ちょっと考えるだけでいい。教育勅語に書いてある項目を全て忠実に守ったなら、どのような国民の姿を取るのか。国家権力にとって好都合な無害の国民しか浮かばないはずである。

 だが、人間は利害の生き物で、国家の利害よりも自己の利害に走りやすい。国民の選良である国会議員が自身の懐を肥やすためにワイロを受け取ることも、政治資金パーティの収入を少ない金額で政治資金規正法に報告するゴマカシも自己利害優先の行動からであろう。

 当然、教育勅語の思想を全ての国民に全面的に体現させることは不可能なゆえに教育勅語を正当性あるバイブルとして、戦前見てきたように国家権力は様々な強制力を働かせて、国民を無害な言いなりの存在に仕立てようとする。

 教育勅語の核となっている思想は稲田朋美が言っているような道徳観ではなく、国民を国家権力に好都合な無害の存在とする国民統治装置とする思想であり、その危険性をこそ問題としなければならない。

 稲田朋美が教育勅語の精神を現在の日本に「取り戻すべき」と言っていることは、それを以て国民を国家権力に好都合な無害の存在とする国民統治装置とすることを欲している願望と見なければならない。

 戦前日本の再来である。

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野党の籠池等国会参考人招致要請拒否理由「違法性なし」は与党が決めていい問題ではなく、違法性隠しか

2017-03-09 10:34:10 | 政治

 【謝罪】

 昨日の「ブログ」で、森友学園売却国有地の不動産鑑定評価書には、『ゴミをすべて撤去する合理性はない』と記載されていることに関して判断間違いを犯して、そういう契約になっていると書きましたが、次のように訂正し、記事も訂正しておきました。
 
 上段の枠内が間違えた文章、下段の枠内た訂正した文章です。謝罪します。

 要するに森友学園側は全てのゴミを撤去しなくてもいいという契約になっていた。

 だとしても、新たな不合理性が生じる。国は小学校の敷地の杭を打つ場所は9.9 メートル、その他の場所は3.8 メートル掘削することを前提に産業廃棄物等のゴミが1万9500トン、ダンプカー4000台分埋まっていると推計し、1万9500トン、ダンプカー4000台分のすべての産業廃棄物等のゴミの撤去・処理費用を8億1900万円と見積もったのである。

 土中産業廃棄物のすべてを撤去しなくてもいいという最初からの契約なら、すべての産業廃棄物等のゴミの撤去・処理費用として8億1900万円と見積もったこととズレが生じる。

 すべてを撤去しなくてもいいということなら、地表から何メートル以下は杭打ち(少しぐらいの産業廃棄物が存在していたとしても杭打ちに支障を来すことはないが)を終了後、産業廃棄物混じりの土を埋め戻してもいい、地表から何メートル以上は分別した土か、あるいは外部から新しい土も持ち込んで埋め戻さなければならないという契約を結べば、そのまま埋め戻した産業廃棄物混じりの土の割合に応じて、8億1900万円の撤去・処理費用のうち何億円かは差引きして帳消しできるはずである。

 要するに不動産鑑定評価書は全てのゴミを撤去しなくてもいいという暗黙の契約となり得る要素を孕んでいた。

 だが、国は小学校の敷地の杭を打つ場所は9.9 メートル、その他の場所は3.8 メートル掘削することを前提に産業廃棄物等のゴミが1万9500トン、ダンプカー4000台分埋まっていると推計し、1万9500トン、ダンプカー4000台分のすべての産業廃棄物等のゴミの撤去・処理費用を8億1900万円と見積もった。

 土中産業廃棄物のすべてを撤去しなくてもいいという土地評価なら、すべての産業廃棄物等のゴミの撤去・処理費用として8億1900万円と見積もったこととズレが生じる。

 ズレを無くすためには、地表から何メートル以下は杭打ち(少しぐらいの産業廃棄物が存在していたとしても杭打ちに支障を来すことはないが)を終了後、産業廃棄物混じりの土を埋め戻してもいい、地表から何メートル以上は分別した土か、あるいは外部から新しい土も持ち込んで埋め戻さなければならないという契約を結べば、そのまま埋め戻した産業廃棄物混じりの土の割合に応じて、8億1900万円の撤去・処理費用のうち何億円かは差引きして帳消しできるはずである。

 民進、共産、自由、社民の野党4党が与党自民党に対して森友学園国有地格安取得疑惑解明のために森友学園理事長籠池泰典や国有地売却時の財務省理財局長であり、現国税庁長官の迫田英典等の参考人招致を求めている。 

 対して自民党は籠池泰典に対しては民間人であり、違法性はなしとして全ての参考人招致を拒否している。

 尤も与党は自民党だけではなく、公明党も自民党に足並みを揃えて参考人招致に反対している。但し自民党が窓口となって国対委員長会談等を行っている。

 2017年3月7日付「毎日新聞」記事によると、2017年3月7日に民進、共産、自由、社民の野党4党の国対委員長が国会内で会談し、森友学園理事長の籠池泰典や売却時に財務省理財局長だった迫田英典国税庁長官ら6人の参考人招致を求めていくことで一致したと伝えている。   

 4党の会談後の対記者団発言。

 山井和則民進党国対委員長「身の潔白を証明したいのであれば、自民党も安倍晋三首相も参考人招致に応じるべきだ」

 要するに国会で堂々と疑惑を晴らして違法性がないことを証明したらどうかといったことを言っている。

 山井和則はこの後、自民党国対委員長の竹下亘と会談。

 山井和則「これだけ国民の疑念が高まっている問題でなぜ籠池氏の招致を拒むのか。(招致は)国民の要望だ」

 竹下亘「民間人の参考人招致は慎重でなければならない。売却手続きには瑕疵(かし)がなく、難しい」

 確かに籠池泰典は民間人である。だが、国民の税金が関わっている国有地の売却は民間人同士が行うことができる事案ではなく、財務省や国交省の役人が関わって行われた取引であり、民間人と言うことだけで済ますことのできる問題ではない。

 そこに政治家が絡んでいて、何らかの口利きの結果値引きされたというカラクリが隠されていたとなると、なおさらに民間人ということだけでは済まないし、最初から違法性なしと決めつけて片付けることはできない。

 何しろ不動産鑑定評価額9億3200万円の国有地を約1億3400万円で売却した理由がボーリング調査やレーダー探査で土地の下に産業廃棄物が1万9500トン、ダンプカー4000台分が埋まっていると推計、その処理費用として見積もった8億1900万円を差引くことになったからであるが、1万9500トン、ダンプカー4000台分の産業廃棄物を実際に処理したのかどうか、契約上確認を行なう必要はないことになっているからと役人たちは誰一人確認していないのだから、1万9500トン、ダンプカー4000台分という膨大な産業廃棄物自体が存在していたのかどうかさえ怪しい。

 常識的には廃棄物処理を森友学園側のみに任せるのではなく、役所が調査・推計した土中産業廃棄物が推計通りかどうか、その推計を知見とするためには事後確認と記録が必要なはずだが、その確認作業すらしなかった、当然、文書として記録もしなかったということは一種の責任逃れ行為であるばかりか、売却に何らかのカラクリがあったのではないかと勘ぐれないこともない。

 また、昨日のブログに書いてことだが、土地の不動産鑑定評価書には「ゴミをすべて撤去する合理性はない」と記載されているということだが、そうであるなら、工事業者にこの小学校を建築する際にどの程度の量のゴミを撤去せずに建築できるか、どの程度の量のゴミを撤去しなければ、建築できないことになるかを見積もらせて、撤去が必要なゴミの量のみの分別・処理費用を計算して、1万9500トン、ダンプカー4000台分の産業廃棄物の全てを分別・処理費した場合の8億1900万円から差引くべきを、そういうこともせずに全量分別・処理した場合の8億1900万円を不動産鑑定評価額9億3200万円から引いた約1億3400万で森友学園に格安売却したのだから、否応もなしにカラクリといったものが頭に浮かんでくる。

 しかも2015年9月5日に近畿財務局で財務局と国土交通省大阪航空局の担当者、施工事業者と設計事務所の計8人が出席した会合が行われて、業者側が「全て撤去となると膨大な金額がかかる、予算がつかないなら(産廃を)場外に出さない方法を考えるしかない」と提案したのに対して財務局側が「できれば場外処分を極力減らす計画を考えてもらえないか。借主(森友学園)との紛争も避けたいので、場内処分の方向で協力をお願いしたい」と応じたと、2017年3月4日付の「東京新聞」が伝えているが、この場内処分も「ゴミをすべて撤去する合理性はない」としている不動産鑑定評価書が背景となっている可能性は否定できない。    

 記事は業者側の場内処分の提案に財務局側が一旦は難色を示したと書いているが、一見すると、財務局側が全場外処分8億1900万円と見積もった関係上、難色を示したように見えるが、そのような見積もりの手前、業者が自らの判断で場内処分した場合、何かあったときに責任を取らされる危険が生じることから財務局側から場内処分の許可の言質を取るために場内処分の提案を申し出たという見方もできる。

 なぜなら、2017年3月6日の参議院予算委員会で佐川財務省理財局長が不動産鑑定評価書に『ゴミをすべて撤去する合理性はない』と記載されていることについて、「『住宅用であれば合理的でない』とされているが、『学校用ということであれば合理的だ』というのが評価書であり、適切な時価で売却した」と発言している以上、不動産鑑定士は小学校の校舎が建つことを知っていて「ゴミをすべて撤去する合理性はない」という土地評価を与えていることになるのだから、そうであるにも関わらず全撤去を前提としたその処分費用を8億1900万円と見積もること自体が矛盾していることになるからだ。

 この矛盾が隠された状態にある間はいいが、公になった場合、財務局側は業者の独断の形にしたかったから、場内処分に言質を与えることは避けたい思いから、場内処分に一度は難色を示したということなのだろう。

 業者側も、いざとなると役所は逃げて業者に責任をなすりつけることを知っているから、言質を取ったと言ったところなのだろう。

 いずれにしても野党4党が参考人招致を求めている6人の中に森友学園理事長の籠池泰典だけではなく、工事担当者や不動産鑑定士も入っていると思われるが、以上見てきたように役人が深く関わっている以上、彼らが民間人だからと言って、参考人招致を拒否する理由とはならない。

 また参考人招致は違法性があるかどうかの解明を行うことが目的であって、その目的そのものを拒否して、与党だけで違法性なしと決めつけるのは越権行為に当たるばかりか、逆に違法性隠しの疑いが出てくる。

 大体が安倍晋三が国会答弁で、「政治家から不当な働きかけがあったかどうかは財務省理財局長が『一切なかった』と何度も答弁してるところだ」と発言、それを以て政治家の不当な働きはなかっと結論づけていること自体が滑稽である。

 なぜなら、森友学園理事長の籠池は自民党の政治家や府議、市議に働きかけているのであって、実際に1万9500トン、ダンプカー4000台分の産業廃棄物が存在したのかどうかも不明である点から言っても、簡単に片付けることができるような経緯を取っていない。

 成功するかどうかは分からないが、参考人招致も疑惑解明の一つの手であって、それを拒否するのは違法性隠しと取られても仕方がない。

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国の森友学園小学校不認可の場合は売却価格で買い戻すという契約等の問題に不合理性を見る

2017-03-08 08:52:36 | 政治
 
 国は森友学園の「瑞穂の國記念小學院」建設の国有地を売却するに当たって、その5190平方メートルの敷地を対象に産業廃棄物等のゴミが1万9500トン、ダンプカー4000台分埋まっていると推計、その撤去・処理費用を8億1900万円と見積もり、この金額を不動産鑑定評価額9億3200万円から引いた約1億3400万で売却した。

 昨日の「ブログ」で1万9500トン、ダンプカー4000台分の産業廃棄物分別・撤去に効率の良い自走式スクリーンを使った工事方法を採用せずに篩付きバケットを備えた重機(スケルトン重機)での工事方法を取ったこと自体が1万9500トン、ダンプカー4000台分の産業廃棄物が存在しなかったことの証明だと書いたが、以下に自走式スクリーンと篩付きバケットを備えた重機(スケルトン重機)のどちらが効率性に優れているかを比較して貰うためにその動画を改めて並べて掲載してみることにした。  






 「瑞穂の國記念小學院」は今年4月開校予定だが、国家主義的な右翼思想の洗脳教育が露わになったことに加えて、平成27年1月に条件付きで「認可適当」と答申した大阪府私立学校審議会に対して学園側が先月2月に愛知県の中高一貫校である私立海陽中等教育学校と「推薦入学枠の提供で合意している」と報告、だが、海陽側がその事実を否定したこと、さらに小学校の校舎を建設する総事業費を大阪府に対しては約7億5000万円と報告、国に対してはその3倍近い約21億8000万円と報告し、国から6千万円を超える補助金を受け取っていた虚偽事実が判明、このことの調査に時間がかかることから、大阪府は瑞穂の國記念小學院が4月開校予定前の今月3月中の認可は難しという認識を示した。

 ここに三つの問題が生じていることになる。

 一つは虚偽の総事業費を安易に信じて国が補助金の交付を決定していたことである。この辺の事情を2017年3月7日の閣議後の記者会見で国交相の石井一が発言している。

 石井一「補助金を交付する前提になる工事費は、工事の契約書の写しで確認している。一方で大阪府からはかなり少ない金額と聞いており、大阪府とも情報交換し、事実関係を確認するよう職員に指示した。

 (森友学園側は補助金は返還するとしているのに対して)現時点で森友学園から補助金の返還に関する相談を受けたことはない」(NHK NEWS WEB)  

 事実関係を確認する考えを示したという。
 
 「工事費は、工事の契約書の写しで確認」、要するにペーパー確認のみである。契約書の写しには工事会社名と担当者の名前が記されているはずで、担当者に電話して、事実かどうか確認することもしなかった。

 補助金交付という形を取っていたとしても、何とも手軽な国民の税金のバラ撒きではないだろうか。盲判に等しい。

 森友学園の国有地売却不正疑惑が持ち上がったから、このような不正も派生的に浮上することになったはずで、どのような種類の補助金申請の案件であっても、少しでも多くの補助金を手に入れようとするゴマカシが混じっていない保証はどこにもないはずである。

 そういった危機管理はないらしい。

 もう一つは小学校が不認可になった場合の売却した土地の問題である。

 国は小学校開校が認可されず、小学校の用地として使用できない場合は売却価格と同じ1億3200万円で買い戻すことができる契約内容となっていて、ゴミの撤去工事によって土地の価格が上がったとしても、買い戻す価格は変わらないと佐川財務省理財局長が国会で発言したと、2017年3月6日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。  

 2017年3月6日の参議院予算委員会。

 佐川財務省理財局長(土地の不動産鑑定評価書には、『ゴミをすべて撤去する合理性はない』と記載されている」と質問されたのに対して)「『住宅用であれば合理的でない』とされているが、『学校用ということであれば合理的だ』というのが評価書であり、適切な時価で売却した」

 すぐには頭に入ってこない発言となっている。要するに「『住宅用であれば(ゴミをすべて撤去しないというのは)合理的でない』とされているが、『学校用ということであれば(ゴミをすべて撤去しなくてもいいというのは)合理的だ』というのが評価書であり、適切な時価で売却した」という文言となれば、正確な意味が取れることになるはずである。

 (以下訂正します)2017年3月9日 8:44


 (訂正前文章)要するに森友学園側は全てのゴミを撤去しなくてもいいという契約になっていた。

 だとしても、新たな不合理性が生じる。国は小学校の敷地の杭を打つ場所は9.9 メートル、その他の場所は3.8 メートル掘削することを前提に産業廃棄物等のゴミが1万9500トン、ダンプカー4000台分埋まっていると推計し、1万9500トン、ダンプカー4000台分のすべての産業廃棄物等のゴミの撤去・処理費用を8億1900万円と見積もったのである。

 土中産業廃棄物のすべてを撤去しなくてもいいという最初からの契約なら、すべての産業廃棄物等のゴミの撤去・処理費用として8億1900万円と見積もったこととズレが生じる。

 すべてを撤去しなくてもいいということなら、地表から何メートル以下は杭打ち(少しぐらいの産業廃棄物が存在していたとしても杭打ちに支障を来すことはないが)を終了後、産業廃棄物混じりの土を埋め戻してもいい、地表から何メートル以上は分別した土か、あるいは外部から新しい土も持ち込んで埋め戻さなければならないという契約を結べば、そのまま埋め戻した産業廃棄物混じりの土の割合に応じて、8億1900万円の撤去・処理費用のうち何億円かは差引きして帳消しできるはずである。


  (訂正後文章)要するに不動産鑑定評価書は全てのゴミを撤去しなくてもいいという暗黙の契約となり得る要素を孕んでいた。

 だが、国は小学校の敷地の杭を打つ場所は9.9 メートル、その他の場所は3.8 メートル掘削することを前提に産業廃棄物等のゴミが1万9500トン、ダンプカー4000台分埋まっていると推計し、1万9500トン、ダンプカー4000台分のすべての産業廃棄物等のゴミの撤去・処理費用を8億1900万円と見積もった。

 土中産業廃棄物のすべてを撤去しなくてもいいという土地評価なら、すべての産業廃棄物等のゴミの撤去・処理費用として8億1900万円と見積もったこととズレが生じる。

 ズレを無くすためには、地表から何メートル以下は杭打ち(少しぐらいの産業廃棄物が存在していたとしても杭打ちに支障を来すことはないが)を終了後、産業廃棄物混じりの土を埋め戻してもいい、地表から何メートル以上は分別した土か、あるいは外部から新しい土も持ち込んで埋め戻さなければならないという契約を結べば、そのまま埋め戻した産業廃棄物混じりの土の割合に応じて、8億1900万円の撤去・処理費用のうち何億円かは差引きして帳消しできるはずである。

 築地市場の移転先予定の豊洲市場はベンゼンやヒ素等の有害物質によって土壌や地下水が汚染されていたが、地表から4.5メートルを新しい土を覆土とすることで有害物資を封じ込めている。

 例えば杭を打つ9.9 メートルの掘削部の3.9メートル以下の6メートルは産業廃棄物混じりの土をそのまま埋め戻してもいいという契約内容なら、小学校の建物が立つ面積が敷地の大部分を占めているから、少なくとも撤去・処理費用は8億1900万円の半分の4億950万円にすることができる。

 ところが、土中産業廃棄物のすべてを撤去しなくてもいいという契約を行っていながら、建設敷地の5190平方メートルを対象に埋まっている廃棄物を1万9500トン、ダンプカー4000台分と推計、その全ての撤去・処理費用を8億1900万円と見積もり、この金額を不動産鑑定評価額9億3200万円から引いた約1億3400万で森友学園に格安で売却した。

 土中産業廃棄物のすべてを撤去しなくてもいいという契約と全てを撤去した場合の8億1900万円の見積もり、この見積もりに従った約1億3400万の売却額の関係に不合理性を見い出さないとしたら、見い出さない方がおかしい。

 最後の一つは、国は小学校開校が認可されず、小学校の用地として使用できない場合は売却価格と同じ1億3200万円で買い戻すことができる契約内容となっていてことである。

 産業廃棄物等のゴミが1万9500トン、ダンプカー4000台分埋まっていると推計、その撤去・処理費用を8億1900万円と見積もり、この金額を不動産鑑定評価額9億3200万円から引いた約1億3400万で売却した事案はあくまでもゴミの撤去に関係した取り決めであって、小学校の開校認可とは別問題である。

 更に言うと、認可されるかどうかは土地とは関係ない森友学園の経営と教育姿勢の問題である。ところが、国交省や財務省が国有地という土地の売買に自分たちに関係ない所管である認可問題を絡めて契約した。おかしな話ではないだろうか。

 1万9500トン、ダンプカー4000台分の産業廃棄物が存在するという推計自体に、さらに分別・処理として見積もった8億1900万円の費用自体に疑惑が生じているというに、その上すべてを撤去しなくてもいいという契約が交わされているなら、最初の地点に戻って取り決めた全てを洗い出すべきだろう。

 洗い出さなければ、国民は納得するだろうか。

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森友学園購入国有地:この手の分別方法では1万9千500トンもの産業廃棄物が存在しなかったことの証明

2017-03-07 13:05:45 | 政治

 大阪航空局が森友学園の最初は「安倍晋三記念小学校」と命名を予定し、その後「瑞穂の國記念小學院」と名前を変更した、その建設敷地の5190平方メートルを対象に埋まっている廃棄物を1万9500トン、ダンプカー4000台分と推計、その撤去・処理費用を8億1900万円と見積もり、この金額を不動産鑑定評価額9億3200万円から引いた約1億3400万で森友学園に格安で売却された。

 この土中産業廃棄物の1万9500トン、ダンプカー4000台分という推計は乳母車みたいに地表を押して使うレーダー探査やボーリング調査に基づいた量だと言う。

 この1万9500トン、ダンプカー4000台分について政府側を追及している2017年2月24日の衆院予算委での共産党衆院議員宮本岳志の発言を、「IWJ Independent Web Journal」が伝えている。 

 宮本岳志「5190平米について、杭を打つところで9.9 メートル、その他のところは3.8 メートルまで、地下に埋まっている廃材などのゴミを全部取り除いて1万9500トン、ダンプカー4000台分の埋設物を運び出し、処理をした場合の計算になっています」

 いわば1万9500トン、ダンプカー4000台分は掘り起こした産業廃棄物の総量となる。

 では、重機で掘削した土(ど)をどのように分別・処理して1万9500トン、ダンプカー4000台分の産業廃棄物のみを取り除いたのだろうか。

 この件に関しても宮本岳志は追及している。

 宮本岳志「ではまず、基本的な事実を確認しますけど、近畿財務局及び理財局は、現に、森友学園が、大阪航空局の見積もり通り、5190平米について、杭を打つところ9.9メートル、その他3.8メートルの深さまでの、全ての埋設物を取り除き、1万9500 トンもの埋設物を運び出し、処理をしたことを確認しましたか?」

 佐川宣寿財務省近畿財務局理財局長「本件は、まさに不動産鑑定価格から、撤去費用を控除しました時価で売却したものであって、実際に撤去されたかどうかにつきましては、契約上も、確認を行なう必要はなく、詳細については承知しておりません」

 前にブログに一度書いたが、麻生太郎も2月23日の衆議院予算委員会で同様の趣旨を述べている。

 麻生太郎「既に売却済みだから、実際に撤去されたかどうか契約上も確認を行う必要はないと考えている」

 この1万9500トン、ダンプカー4000台分の土中廃棄物処理・撤去費用を8億1900万円と見積もったことに関しては佐藤国土交通省航空局長が「国土交通省には地下の埋設物をよく知る立場にあり、見積もりを行う能力を有する技術系の職員もいたことから、見積もりを行った」と言っているが、推計どおりに実際存在したかどうかは確認していなかった。

 役所が調査・推計した1万9500トン、ダンプカー4000台分の土中産業廃棄物が推計通りかどうか、その経験を知見とするためには事後確認が必要なはずだが、その確認作業すらしなかった。

 これは一種の責任逃れであろう。

 もし1万9500トン、ダンプカー4000台分よりも少なかったら、処理・撤去費用が安く済む分、売却価格に上乗せするという条件をつけるのが常識だが、逆に以後新たに廃棄物が見つかっても国は責任を負わないとする瑕疵担保免責特約が交わされているというのも、一見国側が有利に見えるが、国有地を扱う以上、正確を期す態度を取るべきで、少なかった場合の利益をみすみす捨てることになって、釣り合いを欠く。

 いずれにしても不動産鑑定評価額9億3200万円の国有地が約1億3400万で森友学園に格安で売却された根拠は1万9500トン、ダンプカー4000台分の土中廃棄物が存在すると推計、その処理・撤去費用として見積もった8億1900万円を差引くことになったからであって、8億1900万円という処理・撤去の見積額が妥当な金額であるかどうかは1万9500トン、ダンプカー4000台分の土中廃棄物が存在し、尚且つどのような処理工法を想定し、実際にその処理工法に基づいて工事したかどうかに掛かることになる。

 先ずどのような工事方法を用いることを想定して8億1900万円と見積もったかである。
 
 民進党玉木雄一郎が工事業者に聞き取りを行ったのに対して工事業者は掘り出した約2000立方メートルの汚染土のうち半分程度しか敷地外に搬出せず、残りは運動場予定地に埋め戻したと証言、玉木雄一郎はこのことを2017年2月24日の衆院予算委員会で追及した。

 この聞き取りに関わる玉木雄一郎の国会での追及をマスコミが報道、森友学園の籠池泰典は校庭に仮置きしただけのことで、撤去・運搬すると塚本幼稚園幼児教育学園のホームページで明らかにした。

 そのホームページの下部に埋め戻しではなく、仮置きだと説明するリンク付きのページ名が記されている。表で説明されているが、読みやすくするために表ではない方法で纏めてみた。文飾は当方。

 残土処分の時系列まとめ(平成29年2月24日作成)

H28.2  工事内容 杭工事開始 理由 残土処分数量、金額が未決定の為

 掘削残土の状況 杭工事中について、敷地北側に残土を仮置き→杭工事発生土をグラウンド東側に仮置き約1,389m3

H28.4.25  工事内容 建物基礎工事開  理由 次工程の基礎工事を行うに際し支障が出る為

 掘削残土の状況 建物部発生土をグラウンド東側に仮置き約1331m3

H28.8.4 工事内容 建物基礎工事完了 理由は書いてない。

 掘削残土の状況 建物基礎工事完了杭と基礎分を合わせて、グラウンド東側に約2720m3仮置き状態 

H28.11.16  工事内容 作業スペース確保の為の土砂搬出・移動開始

 理由 (H28.11.4分科会にて)

 現場作業が多忙期に入り、大型車の搬入出路の確保、資材のストックヤードの確保の為作業員車両の駐車スペース等を確保する為
 ※予定では分別作業を行い場外搬出する予定でしたが、残土仮置土が予想以上にスペースをとリ、重機や搬入車両が身動きできない状態になりましてフルイ作業を行い搬出できるスペースがない事、

 又南側道路からの人出が出来ない(近隣協定)事も搬出、出来ない事も影響
 
 ※上記の状況を踏まえ検討した結果、出来るだけ省スペースで施工出来る手段として、グラウンド東側の普通残土として処分できるであろう土砂をいったん搬出し仮置き土が敷地にしめるスペースを減少させ工事を遂行できるスペースを確保可能かの検討を行う。
 
 ※搬出場所の土質分析調査を行う

 ※分析調査の結果問題無い事を確認し搬出作業に取り桂トかる事に決定。※現状では分別作業スペースがない為、大型車の搬人出が少なくなるタイミングで分別作業を行う予定に計画変更する。

 掘削残土の状況 グラウンド東側の残土置き場の下部を利用して、残土置き場面旭縮小(現状は2730m3仮置き状態のまま)

 ※報道である、グラウンドの西側では、謡削工事は行われておりません。

H29.2.28頃予定 工事内容 仮置き土の搬出作業開始予定

 理由 大型車や建設重機の搬人出車両が少なくなリ分別作業が可能となる。

 掘削残土の状況 仮置き土をごみ等混入物と土砂とを分別(スケルトン+人力)し分別した混入物は産業廃棄物として処分行う。

 ※分別できない部分はそのまま産業廃棄物として搬出

 そもそもから言って、「H28.2 」に杭工事を開始した「理由」として、「残土処分数量、金額が未決定の為」と書いてあるうちの「金額が未決定」は工事業者の請負金額がまだ決まっていないという意味だと思うが、杭を打つ個所を9.9メートル掘削し、その他のところは3.8 メートルまで掘削した場合に地下に埋まっている廃材などを全部取り除いた廃棄物量を1万9500トン、ダンプカー4000台分という推計値を出したのであり、その金額を8億1900万円と見積もっているのだから、残土処分数量は既に決まっていて、処理金額は8億1900万円のうちに収まるように手を打てば済むことだから、その金額で決まらないということは少々矛盾している。

 「掘削残土の状況」の項目でその残土をグランド東側に仮置きすること自体、掘削と同時にその土を分別にかける工事方法を採っていなかったことになるばかりか、掘削したときのままの産業廃棄物混じりの土をダンプに積んで産業廃棄物処理場に運び、そこで分別して残った土を埋め戻し土として使うために現場に搬入するか、産業廃棄物としてそのまま処理場に運び入れることだけのことをする、いずれかの工事方法も採用していなかったことになる。

 ところが、「H28.11.16  工事内容」では、「作業スペース確保の為の土砂搬出・移動開始」となっている。その理由として、「予定では分別作業を行い場外搬出する予定でしたが、残土仮置土が予想以上にスペースをとリ、重機や搬入車両が身動きできない状態になりましてフルイ作業を行い搬出できるスペースがない事」としている。

 と言うことは、既に述べたように仮置き場に土を搬出するのと同時に併行して順次分別作業に取り掛かる工事方法ではなく、仮置きしてからフルイ作業で分別して搬出する予定が、「残土仮置土が予想以上にスペースをとリ、重機や搬入車両が身動きできない状態」になったために「作業スペース確保の為の土砂搬出・移動開始」を始めたことになる。

 この手間の悪さはどういうことなのだろう。

 この「フルイ作業」という文字と、玉木雄一郎が工事業者からの聞き取りで埋め戻したのではないかと疑われてから、仮置きしただけだと釈明、その証明のために2017年2月28日から行うことになった「仮置き土をごみ等混入物と土砂とを分別(スケルトン+人力)し分別した混入物は産業廃棄物として処分行う」とした文言のうちの「(スケルトン+人力)」という文字から、マスコミの記事の動画でも紹介されていたが、最初からスケルトン重機、いわば篩バケット付きの重機で分別する工事方法を採る予定でいたことが分かる。

 当ブログでも篩バケット付きの重機について何度か書いてきたが、改めてその重機が作業している動画をYouTubから引用してここにのせてみる。



 この重機は作業効率が決して良いとは言えない。少なくとも1万9500トン、ダンプカー4000台分の廃棄物相手では現場に持ち込んで分別を行うことのできる自走式分別機 フィンガースクリーンと比較したら、段違いの効率の悪さしか発揮できないはずだ。

 「自走式スクリーン」というネットのページに、「毎時400トンの処理能力を持つ」と書いてある。 

 機械の型式によって少々の違いはあるだろうが、ゴミ混入率は47.1%だそうだから、廃棄物の種類によって密度が異なるものの、廃棄物混じりの土を単純計算で約2倍と仮定、1万9500 トンを3万9000トンと見て、3万9000トン÷400トン=97.5時間÷1日実働6時間=16.25日 多目の計算だから、2週間で十分に終えることができる。

 現場で行うために篩い分けられた土は埋め戻しに使うことができ、残った1万9500トンは分別費用を除いた処理費用のみで産業廃棄物処理場に引き取って貰うことができて、コストをかなり下げることができる。

 なぜなら、1万9500トン、ダンプカー4000台分の廃棄物を掘削したままの土混じりで運搬したなら、廃棄物混入率47.1%換算の3万9000トン、ダンプカー8000台分の運搬が必要になるが、現場で分別した場合、土中埋設推計量1万9500トン、ダンプカー4000台分の運搬で済む計算になるからだ。

 
 勿論、篩バケット付きの重機(スケルトン)で現場で分別しても、産廃処理場への運搬は同じ1万9500トン、ダンプカー4000台分で収まるが、結局は作業効率の悪さから、分別が間に合わず、グランド東側に仮置きという余分な工程が加わることになった。

 では、自走式スクリーンの利用料はどのくらい掛かるのだろうか、ネットを調べてみた。次のページから一部を抜き出してみる。

 「NETIS 新技術情報提供システム」国土交通省)   

●VR512-2型自走式スクリーン〔振動スクリーン(2分別)〕 

 基礎価格(千円)  32,000 

 共用1日当り換算値 損料額(円)  83,200円 

●VR512-2型自走式スクリーン〔振動スクリーン(3分別)〕 

 基礎価格(千円) 46,700 

 共用1日当り換算値 損料額(円)  121,400円(以上)

 前者は「2分別」の分別機、校舎は「3分別」の分別機。 

 「基礎価格」とは国内に於ける標準仕様による機械の実勢取引価格を言うということで、その実勢価格に基づいて利用料が決められるから、基礎価格そのものが利用料に付け加えられるわけではない。

 また、「VR512-2処理費用は、後述する機械損料より算出した」との記述がある。但し処理費用何円との記述はない。機械損料額がそのまま処理費用を示すはずだ。この費用以外にオペレーターの人件費が加わるのだろう。

 「損料」とは機械の損耗代金を指す。その損耗代金が減価償却費となる。大体その機械を何回使うことができ、その全体の損耗代金が減価償却費となって機械代をペイすることができるが、これでは利益がないことになるから、一般的には損耗代金に利益を上乗せしてある。

 ページ添付の画像を載せておいた。
 「処理能力=240m3/日」と立方メートルで出ているから、1万9500トンに応用はできない。上記の「毎時400トンの処理能力」に頼るしかない。2週間で作業を終えることができると仮定すると、後者の「3分別」の分別機の場合、121,400円✕14日=1699600円。多く見積もって、200万円で済む。

 何のために廃棄物処理のスクリーンが自走式かと言うと、作業ヤードを確保できれば、現場に持ち込んで作業することによって分別のコストを下げ、尚且つ工事の作業効率を上げることができるようにするためである。

 産業廃棄物が混じった土をダンプで自走スクリーンを備えた産廃処理場に運んで処理・分別し貰うより、産廃のみを持ち込んだ方がコストを下げることができる。ダンプの運行回数を減らすことができるからだ。

 なぜ国土交通省や近畿財務局、大阪航空局は 自走式スクリーンを使った分別・処理の工事方法の採用に基づいた廃棄物の処理費用の見積りを行わなかったのだろうか。

 だが、森本学園は分別の効率が悪く、時間の掛かる篩バケット付きの重機(スケルトン)を用いる工事方法を採用した。

 仮置きした土を篩バケット付きの重機(スケルトン)を用いて分別する動画をマスコミは流したが、その様子を見ても効率の悪さは一目瞭然で、森本学園がホームページで示した上記「残土処分の時系列まとめ」には「(スケルトン+人力)」となっていたが、実際に土嚢袋を持った作業員が手で廃棄物を拾っていた。

 自走式スクリーンなら機械が一括して処理する作業をこの人手に頼る効率の悪さからも、1万9500トン、ダンプカー4000台分の廃棄物、廃棄物混入率47.1%で計算すると、廃棄物混じりの土の処理量は単純計算で約2倍の3万9000トン、ダンプカー8000台分の分別・処理に人手作業の工程を加えていたこと自体がおかしな話となる。

 3万9000トン、ダンプカー8000台分を果たして篩バケット付きの重機(スケルトン)を10台、20台並べても効率よく処理できる量だとすることができるだろうか。

 処理できなかったから、掘削したままの土の状態でグランド東側に仮置きしなければならなかったと言うだろうが、それ以前の問題として、専門の工事業者がついていながら、土と産業廃棄物混じりの総量約3万9000トン、ダンプカー8000台分の分別・処理に篩バケット付きの重機(スケルトン)を用いた工事方法をそもそも採用したことである。

 このことは役所側が廃棄物を分別・処理するに最善の効率が期待できる工事方法を想定して8億1900万円という見積もり金額を果たして算出したかという問題にも関わってくる。

 このような効率の悪い工事方法を採用したこと自体が1万9500トン、ダンプカー4000台分もの廃棄物が土中に存在していなかったとしなければ整合性を見い出すことはできない。

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安倍晋三の質無視の「実体経済の中で最も大切なのは雇用」と言うトンチキ(2/28参院予算委対小川敏夫)

2017-03-06 11:17:22 | 政治

 2月28日午後1時からの参院予算委員会をNHK総合の中継で見ていたら、民進党参議院議員会長の小川敏夫が2013年に物価安定目標2%・2年程度内の達成を掲げていた日本銀行の参考人として出席していた黒田日銀総裁に対して今以て達成できていないのではないかと追及、安倍晋三に日銀総裁の責任はどう取らせるのか尋ねた。

 その答弁の中で安倍晋三は小賢しいばかりの得意顔で雇用の質を無視、「実体経済の中でも最も大切なのは何でしょうか。それは雇用ですね」とトンチキな発言をしていた。

 小川敏夫は自身の国会質疑を秘書にやらせているのだろうか、あるいは速記録を取り寄せたのか、文字起こした質疑の遣り取りを何日か後に「小川敏夫 オフィシャルサイト」に載せている。その「ページ」から発言録を利用することにした。文飾は当方。
  
 小川敏夫「安倍総理、平成25年、安倍総理が総理になられたときの予算委員会でお尋ねしたところ、安倍総理はこういうふうに言っているんですよ。今回は明確に日本銀行に責任として、責任が生ずるんですよ、できるだけ早い時期に達成できなければ日本銀行の責任なんですよと2%の物価目標について言っていらっしゃる。

 できるだけ早い時期に達成できなければ日本銀行の責任だと。しかし、4年経ってもできていませんし、いつ達成できるとも言っていません。日本銀行の責任はどうやって取らせるんですか」

 安倍晋三「そのときも申し上げていると思いますが、責任というのはまさにこれは説明責任であります。(発言する者あり)いや、これは、説明責任というのは、これは、これは国際的な常識であります。言わば中央銀行が負う説明責任でありまして、言わば政府に対して説明責任を負っているということでありまして、政府の立場としては、日本銀行総裁のこの2%物価安定目標に対する遅れについての説明については了としているところであります。

 と同時に、と同時に、この2%の物価安定目標に向かってこの異次元の緩和を行っていくということは、2%という目標を達成すると同時に、実体経済に働きかけているということが大変大切です。

 実体経済の中でも最も大切なのは何でしょうか。それは雇用ですね。民進党政権時代は10万人雇用が減っていた。しかし、我々はこれ、結果、金融政策によって170万人これ雇用は増えました。170万人雇用増えましたね。

 そして、長い間正規雇用もなかなか増えないではないかと言われておりましたが、これが今、何と、一昨年、昨年合わせて、一昨年、ずっと減っていた正規雇用が8年ぶりに、8年ぶりにプラスになった。これは、人口が減少している中では私は快挙ではないかと思いますが、これ、2年間で、2年間で何と77万人正規雇用が増えたんですよ。先ほど、皆さんのときは10万人減っていたと言いましたが、正規雇用は皆さんのときは55万人減っていたんですよ。55万人減っていたところから77万人増えたということでありまして、まさに――」

 (発言する者あり)これ、後ろの方々はもうバックベンチからどんどんどんどん、何だかこれ、テレビを御覧の方々は聞こえないかもしれませんが、すごいヤジでうるさいんですが、よっぽど私にこういう反応をされたくなかったんだと思いますけれども。言わば、2%の安定目標に、これは勿論しっかりと金融政策を進めていただき達成していただきたいと……(発言する者あり)

 山本一太委員長「静粛に願います」

 安倍晋三「達成していただきたいと思いますが、同時に、実体経済に金融政策を働きかけをしていくということも私たちは重視をしているところでございます」

 小川敏夫「今、総理が雇用のことをおっしゃられたんでこの表を出しますけど、実質賃金、安倍政権になってから下がっているんですよ、今年ちょっと上がっただけで。それから、世帯主収入、これもかなり下がっているんですよ。消費支出、がた減りですよ。上がっているのはエンゲル係数だけ。ひどい状態じゃないですか」

 小川敏夫はパネルを示して、その統計によって安倍晋三が自慢している雇用が個人生活の豊かさに役立っていないことを指摘している。

 NHKの中継ではパネルの統計ははっきり見えたが、パソコンに残しておいたYouTubの動画では小さくて読めない。小川敏夫のオフィシャルサイトにアクセスしても、民進党のサイトにアクセスしても載っていない。

 小川敏夫のツイッターの2月28日の投稿を覗くと、載っているには載っていたが、十分な拡大図とはならない。民進党は所属議員が国会質疑で政府を追及するために示したパネルの画像をサイトに1ページを設けて、そこに纏めて載せて、自由に閲覧し、利用できる情報提供のサービスぐらいはすべきだろう。

 一部の議員は自身のサイトにリンクさせる形で情報提供しているが、民進党サイトの1ページに纏めて、リンクが必要な場合はリンクの形で載せておけば、探す面倒が省ける。こういった情報提供が支持拡大に繋がるささやかキッカケとならない保証はない。

 仕方ないから、ネットから各情報を探して、小川敏夫がパネルで示したと思われる、それに近い統計をここに載せることにした。賃金に関係する統計は「厚労書」のサイトから、消費支出に関係する総務省統計は「総務省統計局」サイトからそれぞれの統計を利用することにした。


 小川敏夫が「上がっているのはエンゲル係数だけ。ひどい状態じゃないですか」と言っているエンゲル係数とは家計の消費支出に占める飲食費の割合のことだが、実質賃金は安倍晋三がアベノミクス3本の矢の経済好循環をかしましく言い立てる割には上昇と言える上昇を見せていない中にあって異次元の金融緩和を受けた株高・円安が高額所得者や大企業の懐をなお一層豊かにしたものの、株に縁のない一般生活者は円安による物価高と消費税8%増税の直撃を受けて生活上必要不可決な食費だけが増え、なお一層生活の困窮を受けざるを得ない状況に置かれていることがエンゲル係数に現れているということなのだろう。

 小川敏夫はこの点を集中的に攻めるべきだったが、最初の追及、森友学園疑惑に時間を費やして時間不足となり、日銀の異常な国債を買入れ問題と財政の健全化に悪影響を与えることになる政府の多額な国債の発行残高を端折る形で追及して、時間切れを迎えてしまった。

 2016年9月29日エントリーの当ブログ記事に、〈経済の活性状況を伝えるどのような指標を持ってこようと、一般的な国民一人ひとりの消費活動(=個人消費)が窮屈や不自由を強いられていたなら、政治は責任を果たしていると言えるだろうか。

 消費とは物質的欲求の充足のみならず、精神的欲求の充足でもあり、それらの充足によって人間は生活に於ける自己実現の主要な一部を見い出す。いわば消費は生命の活動をも意味する。

 その消費が抑えられることは生命の十全な活動を抑えられることにもなる。〉と書いた。  

 いくら安倍晋三が安倍政権になってから、「金融政策によって170万人これ雇用は増えました」と言い立てようと、雇用の質が問題となる。

 確かに正規雇用は僅かながらに増えている。《「非正規雇用」の現状と課題》厚労省)によると、2016年正規雇用者数は2015年比+51万人に対して3355万人と増加している。

 だが、それ以前は逆に漸減傾向にあった。

 非正規雇用は例外はあるものの、ここに来て増加傾向は弱まったが、2016年の非正規雇用者数は2015年比+36万人の2016万人と最も高い数字となっている。

 非正規雇用が増えている状況での正規雇用のこの増加の原因は人手不足による囲い込みが影響した止むを得ない正規雇用採用であって、アベノミクスが実体経済を活性化させた結果の、いわば景気回復の見るべき成果を遂げた結果の正規雇用数の増加というわけでは必ずしもそうではない。
 
 大企業が安倍政権発足後史上最高益を上げていると言っても、日銀の異次元の金融緩和がもたらした株高・円安恩恵の最高益であって、為替が円高に触れると、それが株安を連れ添って、たちまち企業の利益を剥落させることになる。

 このような展開は何度も見てきているはずである。

 ここに来ての僅かな賃金上昇も、円高・株安を恐れて賃金への還元を恐れている企業に対して政府が尻を叩いて渋々上げさせた官製賃金に過ぎない。

 企業のこのような心理を一般勤労者は敏感に感じ取って、少しぐらいの賃金上昇で思い切った個人消費に走ることができない。

 こういったことが原因している長引く個人消費の低迷であろう。 

 かくこのように安倍晋三が「実体経済の中でも最も大切なのは何でしょうか。それは雇用ですね」と断言し、「金融政策によって170万人これ雇用は増えました」と自慢しても、本質的には雇用の質が第一番の問題となる。雇用の質が賃金の質を決め、最終的に個人消費の動向に影響を与える。

 上記画像で挙げた個人消費の動向把握の重要な統計である家計調査での消費支出が芳しい数値を示していない以上、いわば一般国民の経済活動のそもそもの出発点となる雇用の質を問題にしないでアベノミクスの成果をいくら言い立てようと、意味は一切ない。

 要するに〈実体経済の中でも最も大切なのは個人消費の指標そのものだ〉ということにしなければならない。

 2017年1月31日付「ロイター」記事は次のように書いている。  

 〈1月31日、総務省が発表した昨年12月の家計調査によると、全世帯(単身世帯除く2人以上の世帯)の消費支出は31万8488円となり、前年に比べて実質で0.3%減少した。減少は10カ月連続。生鮮食品価格の上昇継続などが消費を抑制した。〉

 記事が末尾で、〈12月の勤労者世帯の実収入は1世帯当たり92万4920円となり、前年比で実質2.3%増と2カ月連続で増加した。名目は同2.7%増だった。〉書いていながら、一般生活者は消費行動に積極的になれないでいる。

 消費支出のこの31万8488円はあくまでも平均値であって、中央値以上を占めているであろう株高と円安で大儲けした高額所得者の消費支出を除いた場合、一般生活者の平均支出額はさらに減っていく。勤労者世帯の1世帯当たりの実収入にしても同様の傾向を取る。

 パート・アルバイト・臨時雇い・期間工といった20万円前後以下の月収入の非正規雇用の場合となると、消費支出はさらに低くなって、ギリギリの窮屈な生活を送っているはずである。

 だが、安倍晋三はこういったことを一切無視して、自慢顔に「実体経済の中でも最も大切なのは何でしょうか。それは雇用ですね」と断言し、雇用を170万に増やしたことで経済の全てが円滑な状況を迎えているかのようなパフォーマンスを演じている。

 常々「経済成長こそ私の政権の最重要課題です」と言っていながら、正味の経済状況に目を向けることができないこのトンチキさである。

 自民党は昨日、3月5日に定期党大会を開催、総裁任期を連続2期6年から3期9年に延ばす党則改正を正式決定し、安倍長期政権への道を開いた。このようなトンチキに日本の進路を長期に託す。少し考えた方がいいのではないのか。

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