米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた環境影響評価書が2011年12月27日、配達業者によって沖縄県庁に運び込まれ、2013年6月に防衛省沖縄防衛局が沖縄県に対して辺野古埋め立てを求める申請書を提出、普天間県外移設を主張していた仲井真県知事の年内結論の意向に対してその可否判断が注目されていた。
そして12月17日午前、政府と県が沖縄の経済振興策や米軍基地問題を話し合う沖縄政策協議会(主宰・菅義偉官房長官)が首相官邸で開催された。
この12月17日は結論が出る前の12月17日であるから、あるいは結論提出に前以ての12月17日だから、当然、安倍晋三側は仲井真知事の結論に影響を与える魂胆で会議に臨み、仲井真知事は結論の参考にする意図のもと臨席したはずである。
どのようなことが話し合われたのか、《普天間飛行場、運用停止5年内に 知事が初要求》(琉球新報/2013年12月18日)から見てみる。
この会議には国家主義者安倍晋三と全閣僚が出席したというから、仲井真知事の要求に応える意気込みを見せたのだろう。仲井真知事の側から言うと、その錚々たるメンバーを前にして要求を獲ち取る意気込みで一人敵地に乗り込んだ心地がしたのではないだろうか。
仲井真知事の要求は次のとおりである。
米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止
牧港補給地区の7年以内の全面返還、
日米地位協定の改定などの基地負担軽減を要求
米軍普天間飛行場の5年以内運用停止は代替基地の提供を前提として成り立つ。5年以内に代替基地を本土に設けるか、沖縄県内に設けるか、いずれかの選択によって可能となる。
だが、記事は、〈知事が5年以内と期限を区切って普天間の運用停止を求めるのは初めて。普天間の県外移設は今回求めなかった。〉と解説している。
いわば米軍普天間飛行場の5年以内運用停止を県外移設と併行させて5年以内と期間を区切って要求しなかった時点で、以心伝心で、あるいは阿吽の呼吸で両者共、埋め立て承認を前提とした会議続行となったはずだ。
仲井真知事は日米地位協定改定については米政府が望んでいる運用改善は「現実的ではない」として否定的態度を示し、〈返還前の掘削を伴う基地内立ち入り調査やより厳しい環境基準の適用を求めた。〉と解説している。
さらに普天間配備の輸送機オスプレイの県外配備、過半の訓練の県外移転も要望、来年度予算での沖縄振興費3408億円の確保や本島への鉄道導入も要求したというから、このような欲張りとも思える矢継ぎ早の要求からも承認を前提としていたことを窺うことができる。
承認するんだから、これだけのことはして貰いたいと欲張ったといったところなのだろう。
矢継ぎ早の要求の後にだろう、次のように発言している。
仲井真知事「アジア太平洋地域の安定化、発展に貢献していきたい」
記事は、〈政府の安全保障政策に協力する姿勢を示した。〉と解説しているが、政府政策への全面的寄り添いである。
この発言からも見返りを求める交換欲求を窺うことができる。
会議後の記者団への発言。
仲井真知事「県外移設をもうやめたとは言っていない。名護は手間も時間もかかる。県外移設が早いというのは変わっていない」――
だが、埋め立て申請を承認すれば、辺野古基地建設推進に関しての核となる主要部分は沖縄県の手を離れて、政府と沖縄県民、さらに名護市及び名護市民の問題へと移る。どのように激しい反対運動が起きようとも、政府は反対運動を排除しつつねり強く着々と基地建設に向けて努力していくことになるはずだ。
そして12月25日午後、仲井真知事の要求に対して政府が回答を示す安倍晋三と仲井真知事の会談が首相官邸で開催された。当然、回答にしても、承認を前提とした内容となるはずである。
どのような内容なのか、《首相 沖縄知事に基地負担軽減策を説明》(NHK NEWS WEB/2013年12月25日 15時35分)を見てみる
1.普天間基地5年以内運用停止と牧港補給地区の7年以内の全面返還は防衛省に作業チーム設置、返還期間を
最大限短縮。
2.普天間配備の輸送機オスプレイの県外配備、過半の訓練の県外移転要求に関しては訓練の約半分を沖縄県外
の複数の国内の演習場等で行う。
3.在日アメリカ軍の施設や区域で土壌などの環境汚染が生じた場合などに立ち入り調査を行えるようにするた
め、日米両政府間で日米地位協定を補足する新たな協定の締結に向けて協議に入る。
ほぼ満額回答となっている。このような満額回答を与えるについては承認を前提としていなければできないはずだ。そもそもからしてこの会談が安倍晋三国家主義内閣と仲井真知事との契約となる以上、片務的な約束であってはならない。双務的約束を前提としているのだから、この前提は承認前提の上に成り立たせた前提ということになる。
仲井真知事「安倍総理大臣みずから驚くべき立派な内容を提示していただき、沖縄の140万人県民が心から感謝している。お礼を申し上げたい。
安倍総理大臣の回答をきちっと胸の中に受け止め、普天間基地の代替施設の建設にかかる埋め立ての承認・不承認を2日後をメドに最終的に決めたいと思っている」――
「安倍総理大臣みずから驚くべき立派な内容を提示していただき」とは恐れ入るが、この言葉自体がほぼ満額回答であることを示していて、大満足した様子を露骨なまでに窺うことができる。
当然、承認を前提としていなければ口を突いて出てこない言葉であるはずだ。承認を前提として登場人物である安倍晋三と仲井真知事が一大サル芝居を打っていたといったところである。
一大サル芝居であることは「沖縄の140万人県民が心から感謝している」という言葉が証明する。沖縄県民の大多数が望んでいる沖縄の将来図は基地のない街の経済発展であり、経済発展に伴う社会や文化の発展であるはずだからだ。
だが、仲井真知事は県政推進の十分なカネさえ獲得できれば、基地には目をつぶろうとしている。いわば「沖縄の140万人県民が心から感謝している」は自身の欲求と大多数の沖縄県民の欲求との違いを自らゴマカシて正当性を与えようとする言葉であって、沖縄県民に対する愚弄に相当する。
安倍晋三「沖縄県民全体の思いとしてしっかりと受け止め、日本政府としてできることはすべて行うというのが安倍政権の基本姿勢だ。
安倍政権は引き続き沖縄振興と基地負担軽減の両面にわたり、沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、政府一丸となって全力で各種の施策に取り組んでいく」――
沖縄県民の大多数が基地のない街望んでいる以上、「沖縄県民全体の思いとしてしっかりと受け止め」ていることにはならないし、「沖縄の方々の気持ちに寄り添」うのとは180度違う方向の偽りの「思い」に過ぎない。
要するに安倍晋三も仲井真知事も沖縄県民に対してゴマ化しを働いているに過ぎない。特に仲井真知事は県知事として県が必要としている要求を出すだけ出して安倍晋三にほぼ満額回答させ、基地移設は日本政府と沖縄県民、名護市と名護市民に丸投げの狸オヤジぶりを見事に演じた。
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