何日か前に同じテーマでブログ記事を書いたが、自民党参院選勝利を受けて、焼き直しとなるような記事を書くことにした。
安倍晋三は2013年年10月1日記者会見を開き、予定通りに消費税を増税することを発表した。
安倍晋三「本日、私は、消費税率を法律で定められたとおり、現行の5%から8%に3%引き上げる決断をいたしました。社会保障を安定させ、厳しい財政を再建するために、財源の確保は待ったなしです。だからこそ昨年、消費税を引き上げる法律に私たち自由民主党、公明党は賛成をいたしました。
ただし、直近のデータによれば、民間給与はわずかに上昇傾向に転じましたが、景気回復の実感はいまだ全国津々浦々までには波及してはいません。この中で増税を行えば、消費は落ち込み、日本経済はデフレと景気低迷の深い谷へと逆戻りしてしまうのではないか。結局、財政規律も社会保障の安定も悪い方向へと行きはしまいか。
最後の最後まで考え抜きました。足元の日本経済はどうか。次元の違う三本の矢の効果で回復の兆しを見せています。2期連続で3%以上のプラス成長、有効求人倍率も0.95まで回復しました。生産も消費も、そしてようやく設備投資も持ち直してきています。15年間にわたるデフレマインドによってもたらされた日本経済の縮みマインドは変化しつつある。であれば、大胆な経済対策を果断に実行し、この景気回復のチャンスをさらに確実なものにすることにより、経済再生と財政健全化は両立し得る。これが熟慮した上での私の結論です」――
アベノミクスの経済政策を以ってすれば、8%に増税しても乗り切れると自信の程を見せた。
いわばアベノミクスを力に「経済再生と財政健全化は両立し得る」と増税に立ち向かう姿勢を打ち出した。
安倍晋三は2014年11月18日、首相官邸で記者会見を開いて2015年10月に予定していた消費税の8%から10%への引き上げを2017年4月に延期することを伝えた。
理由を次のように述べている。
安倍晋三「このように、国民生活にとって、そして、国民経済にとって(消費税増税延期という)重い重い決断をする以上、速やかに国民に信を問うべきである。そう決心いたしました。
今週21日に衆議院を解散いたします。消費税の引き上げを18カ月延期すべきであるということ、そして平成29年4月には確実に10%へ消費税を引き上げるということについて、そして、私たちが進めてきた経済政策、成長戦略をさらに前に進めていくべきかどうかについて、国民の皆様の判断を仰ぎたいと思います」
安倍晋三は消費税増税延期とアベノミクスの是非に関して国民の信を問うとするこの解散宣言の前段で延期の利点に言及している。文飾は当方。
安倍晋三「9月から政労使会議を再開しました。昨年この会議を初めて開催し、政府が成長戦略を力強く実施する中にあって、経済界も賃上げへと踏み込んでくれました。
ものづくりを復活させ、中小企業を元気にし、女性が働きやすい環境をつくる、成長戦略をさらに力強く実施することで、来年の春、再来年の春、そして、そのまた翌年の春、所得が着実に上がっていく状況をつくり上げてまいります。
国民全体の所得をしっかりと押し上げ、地方経済にも景気回復の効果を十分に波及させていく、そうすれば消費税率引き上げに向けた環境を整えることができると考えます。
そのためにも、個人消費のてこ入れと、地方経済を底上げする力強い経済対策を実施します。次期通常国会に必要となる補正予算を提出してまいります」
かなりの数の国民や経済に関する識者の多くが実質的にはアベノミクスが機能していないと見ていて、更に延期されるのではないのかとの懸念があることについては次のように発言している。
安倍晋三「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。
平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」
この結果、安倍自民党は2014年12月の衆議院選挙で大きな勝利を収めた。
そして2016年6月1日、通常国会閉幕に合わせて開いた首相官邸記者会見。
安倍晋三「1年半前の総選挙で、私は来年4月からの消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げるとお約束しました。そして、アベノミクスを強力に推し進めてまいりました」
強力な推進のお陰で有効求人倍率が24年ぶりに高い水準となった、正規雇用は昨年、8年ぶりに増加に転じた等々のアベノミクスの成果を掲げているから、転ばぬ先に杖なのだろう、新たなリスク要因を掲げて、「再び延期することはない」と断言していた2017年4月予定の消費税8%から10%への増税の2019年10月までの再延期を打ち出した。
安倍晋三「 しかし世界経済は、この1年余りの間に想像を超えるスピードで変化し、不透明感を増しています。
最大の懸念は、中国など新興国経済に『陰り』が見えることです。リーマンショックの時に匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落し、さらに、投資が落ち込んだことで、新興国や途上国の経済が大きく傷ついています。
これは、世界経済が『成長のエンジン』を失いかねないということであり、世界的な需要の低迷、成長の減速が懸念されます。
世界の経済の専門家が今、警鐘を鳴らしているのは、正にこの点であります」
そして2016年7月の今回の参議院選挙で安倍自民党は比例代表で前回2013年の参院選の1846万票を遥かに上回る2011万票を獲得する大きな勝利を収めた。
安倍晋三は参院選勝利を受けて昨日、2016年7月11日自民党本部で自民党総裁として記者会見を行った。
安倍晋三「今回の参議院選挙、私は国民の信を問いたいと申し上げました。そして自民党、公明党の連立与党で改選議席の過半数61議席を目指すという目標を掲げました。
暑い真夏の選挙戦となりましたが、多くの皆さんが投票所に足を運んでくださり、連立与党で70議席、過半数を大きく上回る議席を頂きました。アベノミクスを一層加速せよ、と国民の皆さんから力強い信任を頂いたことに心から御(おん)礼を申し上げます」
アベノミクスが信任を得た参議院選挙の勝利だとしている。
そしてアベノミクスの経済政策を以って世界経済の不透明感に対抗する強い意志を披露している。
安倍晋三「イギリスのEU離脱の関する国民投票、陰りが見える新興国経済、世界経済は今様々なリスクに直面しております。中小企業を始め日本経済にマイナスの影響を及ぼすことがないよう、万全をの対策を講じてまいります。
しっかりと内需を下支えすることができる総合的、かつ大胆な経済対策を実施したいと思います。
世界経済の不透明感が増す中にあって、世界経済の成長と市場の安定のためには国際協調を強めていく必要があります。戦犯の伊勢志摩サミットではG7が強い危機感を共有し、世界経済のリスクに立ち向かうため、あらゆる政策を総動員していくことで合意を致しました。
この経済成長への決意をさらにアジア・ヨーロッパの国々とも共有したいと思います」
さらにバングラデシュのテロを取り上げ、テロとの戦いに決意を見せた。
安倍晋三「来るべきASEM(アジア-ヨーロッパ首脳会議)に於いてもアジアとヨーロッパの国々が一致してテロの根絶に向けて緊密に連携する、その明確なメッセージを世界に向けて発信したいと考えています。
世界経済とテロとの戦いという二つの大きなテーマに対してこれまで培ってきた各国首脳との深い信頼関係の上に日本としてもリーダーシップを発揮してまいります」――
言っていることは要するに参議院選挙の勝利は「アベノミクスを一層加速せよ」と、そのことを欲する国民の強い思い・強い要請がアベノミクスの信任の形を取ったもので、そのアベノミクスを武器に様々なリスクに直面している世界経済が「中小企業を始め日本経済にマイナスの影響を及ぼすことがないよう、万全をの対策を講じ」、なおその上に「この経済成長への決意をさらにアジア・ヨーロッパの国々とも共有」することで世界経済まで引き受ける強い自信と決意を提示したということでなければならない。
その強い自信と決意が言わしめた「世界経済とテロとの戦いという二つの大きなテーマに対してこれまで培ってきた各国首脳との深い信頼関係の上に日本としてもリーダーシップを発揮してまいります」という発言であるはずだ。
記者会見のこのよう自信と決意からは消費税の8%から10%への引き上げを最初の予定通りに2015年10月に行ったとしてもマイナスの影響を左程受けるとは考えていない節が見える。
もし消費税増税延期と再延期に助けられた自信と決意だとしたら、更には世界に向けて発揮する日本のリーダーシップだとしたら、ある種の子どもが親の見ているところでなければ他人に対して取ることができない強い態度と同じく、その自信と決意は割り引いて見なければならない。
実際にも消費税増税の延期と再延期を背景とした国民の「アベノミクスを一層加速せよ」の要請であり、参院選挙でのアベノミクスの信任――参院選の勝利が実態であるはずだ。
実はここに狙いがあったのではないだろうか。
狙いがあったから、増税延期に助けられたアベノミクスの推進といった弱気を見せることができずに逆に強い自信と決意を見せなければならなかった。
消費税増税を延期することで2014年12月の総選挙に大勝し、今回2016年7月の参院選挙でも消費税増税再延期を打ち出して大きく勝利することができた。
いわば消費税増税延期を選挙勝利の方程式とした。
安倍晋三は多くの経済専門家が「アベノミクスは失敗した」と言っている中で、「アベノミクスは失敗していない。道半ばだ」と、揺るぎない自信を見せている。
安倍晋三は立場上、アベノミクスの失敗は認めることはできないのだろう。逆に「道半ばだ」とすることによってアベノミクスを自らが信任し続けることができる。
アベノミクスを信任しているのは国民以上に本人自身であるはずだ。
アベノミクスを信任していながら、堂々と増税に立ち向かうのではなく、増税の延期を以って衆院選と参院選の勝利の方程式とした。