中山辞任は麻生のトカゲのシッポ切り/それでも任命責任は残る

2008-09-28 13:09:50 | Weblog

 多08年9月28日日曜日、「NHK日曜討論」を見ていたら、9時39分、臨時ニュースとして「中山大臣が辞任」とインポーズが出た。
問題が長引くと麻生内閣の支持率に影響して総選挙で不利な戦いを強いられることを考慮して自らが辞任することで事態の悪化を最小限にとどめようと判断した自発的辞任と見る報道もあるが、選挙での自分のクビを心配して公明党を含めた与党内からの辞任圧力が既に始まっていたことと、野党の任命責任追及は麻生首相のみに向けられる“矢”であって、“矢”の当たり所次第では麻生自身の道連れの危険性が生じることも自ら警戒しなければならないことを考えると、辞任から任命責任追及まで時間を置くことも一つの手だから、トカゲのシッポ切りよろしく早々に詰め腹を切らせたといったところだろう。

 閣議で中山が辞表を提出し、麻生総理が受理するといった手続きはもっともらしい儀式に過ぎないのだから、誰も信じないだろう。与党の連中だって信じないに違いない。ただ顔にも口にも出さないだけだ。

 どうもこの中山騒動が、そうなって欲しいという強い期待感がそう思わせていることもあるだろうが、麻生内閣のケチのつき始めに思えてならない。

 多分麻生は次のように言って逃げの手を打つのではないだろうか。

 「『単一民族』発言だけだったなら、私も『一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本のほかにはない」』と言っていて「単一民族幻想」に取り憑かれている点では同罪だが、『単一民族』以外に『日教組の子供なんて成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低いんだ』とか、『ごね得というか、戦後教育が悪かったから成田空港の整備が遅れた』といった余計なことを喋っている。そのプレミアムがあるかないかで、私は生き残る資格を得て、彼は死ぬことになった。プレミアムは中山大センセイの個人的な思想上の財産で、任命責任者の私であろうと想定外のことだった」

 だが、まさか親分が失言する前に同じ穴の「単一民族幻想」ムジナ子分が失言して、その尻尾を切ることになるとは任命前は考えもしなかったろう。首相のクビが呆気なく飛ぶかもしれない自分の失言に関しては相当に気にかけ、失言しないよう神経を使っていたことは「一国の指導者となりますと、何事も軽々には申しておりません。いつも寸止めで踏みとどまってきたんじゃないかと。ご安心をいただけると存じます」と総裁選前に語っていた発言から否でも窺うことができる。

 例え自身の失言ではなくても、自分が任命した閣僚の失言であっても任命権者たる自身のクビが飛ぶこともあり得ることを今さらながらに戦々恐々と実感しているに違いない。

 昨9月27日土曜日夜のNHKニュース。

  中山センセイ、地元の宮崎に帰って地元後援者からお叱りを受ける。中山センセイが椅子に神妙に坐っているすぐ脇に自民党宮崎県連緒崎会長がマイク片手に立ち、かなりきつい調子で苦言を呈する。
 緒崎会長「インタビューの中で、我々が誤解を招くような発言があったということで、先生自身も表現の不味さ等については十分に反省していただきまして、県連が一体感を持って選挙戦に取り組む、その足を引っ張るような発言は厳に慎んでもらいたいと、ということをよろしくお願い申し上げておきたい――」

 中山センセイ、慌てず騒がず表情も変えずにゆっくりと立ち上がって「不愉快な思い、させてしまったと、そういうこともありましたもんですから、ホント、これから、あの、謝罪申し上げたいと――」

 「そういうこともありましたもんですから」とは、何とまあ他人事な。カエルの面にショウベンとは中山センセイのためにつくられた諺に思えてくる。

 謝罪だけで済ませておけばいいものを、そこは才能ある政治家、済ませておくことができなかったのだろう。

 中山センセイ「日教組の問題につきましては、私も言いたいことがあるわけで、ございまして、一部の方々がですね、本当にそういう意味で、考えられないような行為を取ってるわけでございます。何よりも問題なのは、道徳教育に反対している。私はこれからですね、小泉さん流に言えば、日教組をぶっ壊せ。この運動の先頭に立ちたい――」

 外に出て記者に囲まれる「日教組が強いところの成績が悪い、ってことですね、学力が低いという。その発言の内容については?」

 中山センセイ「それは撤回していません」

 記者「謝罪も、ではされていない?」

 中山大センセイ「(二度頷いてから)日本の教育のガンが日教組だと思っています

 記者「大臣の職についての辞職する考えはないということですか?」
 
 中山大センセイ「うん、まーあ、国会審議等が、そういったことに影響があるということに、なればね、絶対、あの、辞めんだと言って、しがみついているつもりはありません。まあ、推移を見守りたいと思っています」

 小沢民主党代表「非常に不見識な、軽率な、まあ、あー、偏った、発言だと、いうふうに思っておりまして、エー、国務大臣としての資質と見識を問われる。内閣は一体、ということも、オー、ありますし、中山大臣の責任ちゅうのは、オー、任命責任者のちゅうことと、オー、イコールの問題、だというふうに把えるべきではないかと――」

 そう、いくらトカゲのシッポをうまく切ったとしても、任命責任の問題は残る。

 河村官房長官「総理も知っとられたようですが、『うーん』って言ってただけで、それについて後は何もおっしゃいません。ちゃんと真意を質してから、ということになるんじゃないでしょうかね?」

 官房長官というものは、それが詭弁であろうと言い逃れであろうとなかろうと言葉が豊かでなければならないはずだと思うが、何と言葉が貧しい官房長官なのだろう。

 引き続いてNHKニュース、同じコナーが続く。成田空港午後6時半頃のインポーズ。中山大センセイが空港ロビーなのか、人混みの中を歩いている。記者が囲む。このスッポンのしつこさ。これぞジャーナリスト魂。

 記者「昨日謝罪があったので、これで翻ってくる感じに聞こえてしまうんですが――」
 
 中山大センセイ「あれは国交省の中でしたからね。国交相を離れて一政治家として、今日は発言させていただきました。自分の出処進退は自分で決めます」

 記者「総理から辞表を出せと言われたら、それは応じるという」

 中山大センセイ「まあ、今晩家に帰って、女房と二人でゆっくり相談しますよ」

 中山恭子拉致問題担当首相補佐官は亭主のクビが心配で、拉致問題どころでなかったろう。

 小沢民主党代表が中山前国交相のことを大センセイながら、「国務大臣としての資質と見識を問われる」と言っていたが、中山大センセイ、日教組が道徳教育に反対しているから、「日本の教育のガン」だとか主張しているが、学校教師だけが子供の人格形成、精神形成、あるいは道徳形成に与るわけではない。親も関わり、社会の大人も直接的に、あるいは情報を通して間接的に関わっている。

 学校教師や親が子供と関わる時間・質量よりも社会の情報が関わる時間・質量の方が遥かに優るのではないだろうか。マンガや雑誌、テレビ、映画、インターネットが発する情報は自分から取捨選択して吸収する形式を取るゆえに短い時間で身につく質量が大きく、当然その影響力は学校教師や親の影響力の比ではない。

 子供は大人がつくるものであり、子供の姿とは大人の姿のヒナ型であると言われる所以がここにある。

 社会の大人が全員でかかって今の子供をつくっているのである。もし今の子供が道徳心に欠けるとしたら、それは今の日本社会の日本人の大人たちの道徳心の欠如を受けた、その反映と把えなければならない。

 事実、政治家・官僚のカネや地位・人事にまつわる不正行為、会社・企業の食品偽装、取引上の談合、脱税、補助金の不正受給、不正雇用、大学教授とかの社会的地位ある者の性犯罪、医療機関の不正行為、不正請求等々、例を挙げたなら枚挙に暇もない日本人の大人たちの道徳心を欠いた行為が跡を絶つことなく蔓延しつづけている。

 道徳心を欠いた姿は何も子供だけではなく、日本の大人たちも同じ姿を取っている。子どもが先なのか、大人が先なのか。子どもが先なら、大人は子どもに影響を受けた非道徳ということになる。

 そんなことはあり得ないことで、大人が先なのは断るまでもなく、子どもは後からつくられる。大人の姿を受け継いだ子どもがちの道徳心を欠いた姿なのである。

 それを日教組学校教育の責任だと単細胞な把え方しかできない。もし日教組の学校教育を受けた者が成長して社会に占めた結果の非道徳だと言うなら、日本人は大人への成長過程で社会から何も学ばない生きものと言うことになる。

 逆に大人の非道徳を子どもたちが学んで成長していった結果の同じ姿と把えてこそ、跡を絶つことのない非道徳の蔓延と言える。

 そういったことも考えることができない。日本の最高学府東京大学で学び、卒業していながら、このお粗末な頭、単細胞はどういった逆説によって手に入れた獲得物なのだろうか。「日本の教育のガン」とは軽薄単細胞な麻生太郎とか中山成彬といった政治家やそれに類した日本人の大人たちの存在をこそ言うべきであり、そういった人間が国会議員、ましてや国務大臣として世に憚ること自体を問題としなければならないのではないだろうか。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 麻生首相は中山国交相の「単... | トップ | 麻生首相の蚊に刺された程も... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事