自民党の中川昭一政調会長27日(06年10月)にアメリカでアミテージ元国務副長官と会談し、「日本はかつてアメリカが直面したキューバ危機に匹敵する切迫した状況にある」として核保有について議論することへの理解を求めたと29日・日曜日のテレビでやっていた。
中川氏「ゼロからのスタートなんです。北朝鮮にああいう暴挙を一刻も早くやめさせないと、それが目的」だと言う。
10月29日の『朝日』朝刊の関連記事から中川氏の発言を拾ってみると、「核の傘とは何ぞやという歴史的経緯から勉強していきたい」とか「情報や歴史を整理し、総合的に判断する問題だ」と言っている。
このような発言は『朝日』の記事も解説しているように、明らかにアメリカの核の傘のもとにあった日本の安全保障の是非(歴史的経緯)を時間を遡って検証しなおすことへの提案であろう。
朝日の解説は「『日本が米国の核の傘の下にあることが基本』(政府関係者)の日米安保体制や、核不拡散条約(NPT)の在り方の再検討さえ迫る」ものとしている。しかし続いて、「ところが中川氏は日米安保やNPT体制は『大前提』と語っており、核保有論議は『自然に起きてくるはずだ』と党内で議論をリードするつもりがないことも強調している」となっている。
以上のような中川氏の核保有議論発言に見せている矛盾しているようにも受け取れる二面的態度・主張は安倍首相の首相就任前と就任後の二面性と微妙に照応し合っている。
安倍首相は首相就任前は「我が国が自衛のための必要最小限度を超えない実力を保持するのは憲法によって禁止されていない。そのような限度にとどまるものである限り、核兵器であると通常兵器であるとを問わず、これを保有することは憲法の禁ずるところではない」と日本の核保有の可能性を論じているが、就任後は「政府や与党が核保有を公式に議論することはない」と逆の方向にではあるが、態度を変更させている二面性と否応もなしに響き合う。
また中川氏の「核の傘とは何ぞやという歴史的経緯から勉強」と「情報や歴史を整理」は安倍首相が訴えている「戦後レジームからの脱却」と呼応しあう主張であろう。
安倍首相が首相という立場にいて思うように発言できない不便・窮屈を代弁して中川氏が身代わりに発言していると勘繰りたくなる程に二人の主張は、その二面性も含めて呼吸が合う内容となっている。
問題としなければならないのは、「日米安保やNPT体制は『大前提』」(上記『朝日』記事)とし、「私は非核三原則をいじるとは一言も申し上げていない。私はもとより核武装反対論者だ」(06.10.19『朝日』朝刊)としながら、例え〝核を保有する必要があるかどうか〟の議論であっても、そういった二面性は許されるかと言うことであろう。中川氏自身は〝言論の自由〟を掲げて、許されるとしている。
2006-10-20 01:50:42にブログした『ニッポン情報解読』「核保有論議よりも金正日崩壊シナリオを」の記事に対して寄せられたコメントの回答を兼ねたいと思う。
核の議論はするべき 2006-10-25 02:16:55 世田谷の住人
中国は18年間2桁連続で軍事費を拡大させ、核を所有し、
反日教育を行い、東シナ海では中間線ギリギリでガスを開
発しています。
「核の論議」ぐらいはする必要があります。
十分議論して、必要がないと分かれば止めれば良いだけで
す。必要があるのであれば持てば良いだけです。一般の日
本人は常識を持っていると思いますよ。議 論するなとい
うことは貴兄は自分は大丈夫だけど、他の日本人は判断力
がないと、馬鹿にしているのではありませんか。
あの記事では「『非核三原則をいじ』らない、『非核三原則は政府の立場として変わらない』の前提を絶対とするなら、『言論の自由』云々とは関係なしに『核保有の議論』(保有する方向への議論)は存在させてはならない」、「『非核三原則』に反対する者(核武装論者)のみに『核保有の議論』(保有する方向への議論)は許される」という主張を展開したのであって、「議論するな」とは一言も言ってないと思うのだが、そう解釈したようである。
「自分は大丈夫だけど、他の日本人は判断力がないと、馬鹿にしている」といった論理展開もさせていないはずだが、そういったふうに受け取られる論理展開となっていたのだろうか。
中川政調会長が「あの国の指導者は糖尿病ですから」とテレビで言っていたから、日テレHPで調べて引用してみると、「『あの国のあの指導者はごちそう食べ過ぎて糖尿病ですから、(日本への核攻撃を)考えちゃうかもしれません。相手はルールも何もない!おいしいモノが食べられなくなった。日本からウニや…おいしいマグロが入らなくなった。頭に来た!やっちゃおう!と思いかねない人なんですよ』と自民党・中川政調会長は20日、核開発を進める北朝鮮の姿勢を批判した。
また、日本の非核三原則は前提だとしながら『相手が核ということになれば、核の議論ぐらいはしておく必要がある』と述べ、あらためて核保有議論の必要性を強調した」(10/21 1:47)
例え「日本の非核三原則は前提だとし」ていても、「(日本への核攻撃を)考えちゃうかもしれません。相手はルールも何もない」という考えに立って、「相手が核ということになれば、核の議論ぐらいはしておく必要がある」とするのは、「非核三原則」を裏切る、あるいは「非核三原則」論者には許されない〝核保有に向けた議論〟を示しているはずである。百歩譲って、〝核を保有する必要があるかどうか〟の議論の提案だから、「非核三原則」論者であっても許されるのではないかとする主張を検証してみる。
「日米安保やNPT体制は『大前提』」とし、「私は非核三原則をいじるとは一言も申し上げていない。私はもとより核武装反対論者だ」としているなら、そのような立場から日本の安全保障の政策を個人的にも党としても、あるいは内閣としても代々の内閣が引き継ぐ形で既に創造していたはずであるし、個人的には政権党に所属する政治家であるからなおさら創造し、準備していなければならないはずである。創造もせずに「私はもとより核武装反対論者だ」という態度を取っていたのだろうか。
いわば「核武装反対論者」であるなら、また安倍首相が言うように「政府や与党が核保有を公式に議論することはない」とするなら、核を持たない防衛体制で外交政策をも含めた日本の安全保障をアメリカと共同で、あるいはそれと並行させて日本独自に様々に構築し、シミュレーションも行い、計画書として作成されているはずである。計画書に立案・構想した政策が北朝鮮が核実験を行っただけで有効性を失ってしまう程に粗雑な内容だったということなのだろうか。例えそうであっても、ほころびが出た箇所を修復して、対応できるように創造していくのが「核武装反対論者」、あるいは「非核三原則」論者の務めではないだろうか。
中川氏は中国もロシアも核を持っていて、北朝鮮まで持つに至ったなら、日本の周りは核だらけになってしまうといったことを言っていたが、中国・ロシアの核は今に始まったことではないから、日本の安全保障に新たに加えるべき要素ではなく、それに対する政策は前々から準備していたはずである。北朝鮮の核に対する不安・脅威に関連させて中国・ロシアの核にまで言及するのは、安全保障に何ら準備していなかったからなのだろうか。何も準備していなかったとしたら、「核保有議論」を云々する前に与党国会議員として責任を果たしていないことになって、政治家として失格者の烙印が押されなければならない。
もし中川氏が核保有議論をするなら、「核武装反対論者」であることをやめるか(私に言わせれば、正直な姿を現すか、と言うことになるが)、少なくとも「核武装反対論者」であることに自信を失った、日本の安全保障は核なくして成り立たないのではないか、日本の「非核三原則」は時代に合わなくなったのではないか、日本が核を保有する必要があるかどうかの議論を始めるべきではないかとすべきではないだろうか。
「核保有超党派国会議員の会」でも作って、その座長に納まって、大いに議論すればいい。核を持ったとしても、使えない核と化し、カネのムダ遣いで終わるだろう。例え北朝鮮が核先制攻撃を行ったとしても。先制攻撃に先んずる外交政策をも含めた政策を創造すべきだろう。
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