新党日本の代表田中康夫が10月2日の参議院での代表質問で月刊誌に発表した『日本経済復活のための13の政策』について財務大臣の中川昭一に質問している。
田中康夫<その本文中に示された見出しは、「国民を犠牲にする改革は本末転倒」、「減税や財政支出も躊躇するな」と始まり、「高齢者への対策」、「母子家庭への対策」、「フリーターへの対策」、「正規雇用者への対策」と続きます。まさしく片腹痛し。私は今一度、目次ページを眺め直しました。もしや、「財源無視宣言」と副題を冠してはいまいか、と。
同様の懸念を抱いたマスメディアの表現者もいたらしく、これらの政策提言を実行するには総額21兆円余りの財政出動を要する、との試算を報じています。いやはや、目糞鼻糞は一体、どちらでありましょう? 改めて財源を明示して頂きます。中川昭一さん、明確な答弁を頂戴致したく存じます。>
中川昭一財務大臣の答弁<私が本年7月に発表いたしました、あー、提言に就きましてのお尋ねでございます。具体的にご紹介いただきありがとうございます。
さて、財政を含め、本提言につきましては財務大臣就任前(と「前」を強調)のものでございますから、財務大臣の立場から、お答えすることは差し控えさせていただきます。
但し、(と再び声を高め)日本を元気にしたい、との思いは些かも変わりはなく、財政再建に努力するとともに、日本経済の持続的な、安定した繁栄を図ることを、基本路線として踏み外さず、日本にとって必要な施策(せさく)についてはしっかりと対応してまいりたいと思います。>(答弁終了)――
『日本経済復活のための13の政策』とは小説や詩の類ではなく、中川本人も「本提言は」と言っているように政策実現のための提言であろう。「日本経済復活」はかく方法を取るべしと高らかに宣言したのである。
中川昭一が言う「日本経済復活」の条件はただ一つ。提言どおりの「13の政策」を忠実に実行する手腕である。勿論、提言は財源なくして実行はできない。提言は財源と一体となった構想の形を取って初めて提言の形を取ることができる。
当然、「財務大臣就任前」に発表した提言だから、就任後に財源を示すことはできないとか「差し控える」といったことはできないはずだ。大体が 財務大臣就任は提言実現の絶好の機会となる。喜び勇んで財源はどうの、実現性はどうのと立て板に水の如くに喋るものだと思うが、「財務大臣の立場から、お答えすることは差し控えさせていただきます」とはどういうことなのだろうか。
提言はそれを発表した段階で、いつでも財源を示す用意がなければならない。くどく言うが、政策提言は財源の裏づけがあって初めて満足な提言足り得るからだ。
民主党の小沢代表とて、自民党から民主との経済政策は財源の裏づけがないと非難されつつ、<「予算の総組み替え」や特別会計と独立行政法人の原則廃止、「埋蔵金」の活用などを提示。それにより、21年度に8兆4000億円、22、23年度は各14兆円、24年度は総予算の1割にあたる20兆5000億円の「新財源」>(「msn産経」)を示している。
また提言の発表が「7月」ということだから、麻生首相が9月末に中川昭一を財務大臣に任命するに当たって、経済政策にそういった考えを持った政治家ということで『日本経済復活のための13の政策』提言を任命条件の主たる一つの要素としたはずである。
提言とは無関係に任命しました、あるいは月刊誌に中川昭一が「提言」を発表したことなど知らなかったでは済まないだろう。突っ込んだ言い方をするなら、『日本経済復活のための13の政策』提言に「日本経済復活」の期待をかけてもいたはずである。
かけてはいませんが、財務大臣に任命したでは特に現在の経済的に重大危機を迎えている時期に於いては矛盾する。『日本経済復活のための13の政策』提言に日本経済復活のカギを見い出し、それが任命の大きなキッカケとなったとすることで任命に於ける整合性を獲ち得る。
そのとき既に任命責任者の当然の義務として、例え「提言」そのものに財源が明記していなくても、そこに財源の裏づけを見ていなければならない。
まさしく麻生首相が「任命した段階では適任だった」はずである。適任とする理由に『日本経済復活のための13の政策』提言が無視できない存在感で含まれていたということである。
その適任性を証明するためにも、中川昭一はなおのこと財源を示さなければならない。証明して自らの経済政策の才能と提言に関わる責任を証拠立てなければならない。
だが、「財政を含め、本提言につきましては財務大臣就任前のものでございますから、財務大臣の立場から、お答えすることは差し控えさせていただきます」と財源を示さなかったばかりか、示さないまま、任せてもらいたいといった力強い言葉で「但し日本を元気にしたい、との思いは些かも変わりはなく、財政再建に努力するとともに、日本経済の持続的な、安定した繁栄を図ることを、基本路線として踏み外さず、日本にとって必要な施策(せさく)についてはしっかりと対応してまいりたいと思います」と確約した。
『日本経済復活のための13の政策』提言の財源を示さないままの「日本経済の持続的な、安定した繁栄」の確約とは無責任極まりない二律背反というだけではなく、財務大臣という経済問題担当の重要な立場に反して言葉で言っているだけの「日本経済の持続的な、安定した繁栄」と堕す二重の無責任を犯すことになる。
どうせ麻生内閣は選挙管理内閣だ。総選挙を行えば民主党に政権が移る。例え短い間でもお仲間の中川昭一に財務大臣という重要閣僚を経験させてやろうということで任命したということなら、提言とか財源とかと関係なしに整合性を最初から抱えた任命とはなる。
但し、麻生首相共々の無責任は依然として残る。
最新の画像[もっと見る]
- 安倍晋三のケチ臭い度量から発した放送法「政治的に公平」の「補充的説明」を騙った報道自主規制の罠 2年前
- 野党の学習不足が招いた安倍晋三と旧統一教会との関係調査・検証要請への岸田文雄の「本人死亡、十分な把握限界」等の罷り通り 2年前
- イジメ未然防止目的のロールプレイ――厭なことは「やめて欲しい」で始まるイジメ態様に応じた参考例をいくつか創作してみた 2年前
- イジメ過去最多歯止めは厭なことは「やめて欲しい」で始まり、この要請に順応できる人間としての成長を求めるロールプレイで(1) 2年前
- イジメ過去最多歯止めは厭なことは「やめて欲しい」で始まり、この要請に順応できる人間としての成長を求めるロールプレイで(1) 2年前
- 立憲長妻昭と小西洋之の対旧統一教会宗教法人法第81条解散命令要件に関わる時間のムダ、カエルの面に小便程度の国会追及 2年前
- 2022年8月NHK総合戦争検証番組は日本軍上層部の無責任な戦争計画・無責任な戦略を摘出し、兵士生命軽視の実態を描出 靖国参拝はこの実態隠蔽の仕掛け(1) 2年前
- 2022年8月NHK総合戦争検証番組は日本軍上層部の無責任な戦争計画・無責任な戦略を摘出し、兵士生命軽視の実態を描出 靖国参拝はこの実態隠蔽の仕掛け(2) 2年前
- 立憲民主党代表泉健太の2022年9月8日衆議院議院運営委員会安倍晋三国葬関連質疑を採点すると30点 2年前
- 文科省の旧統一教会実体不問の名称変更認証と前川喜平氏の下村博文認証関与説、橋下徹の名称変更門前払い対応の前川喜平氏批判のそれぞれの正当性 2年前
「Weblog」カテゴリの最新記事
- 尾木直樹こども基本法講演:"個人としての尊重"なしに「子どものことは子どもに聴...
- 尾木直樹こども基本法講演:「子どもと大人の新しい関係性の第一歩、スタートに立...
- 《八方美人尾木ママの"イジメ論"を斬るブログby手代木恕之》を始めました。
- 日本人の行動様式権威主義の上が下に強いていて、下が上に当然の使用とする丁寧語...
- 財務省2018年6月4日『森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書』...
- 名古屋入管ウィシュマ・サンダマリさん死亡はおとなしくさせるために薬の過剰投与...
- 民間企業と官僚の意見交換に酒食が伴い、その支払いを企業が負う官僚のたかりは人...
- 2021年2月25日山田真貴子参考人招致衆議院予算委員会の黒岩宇洋と後藤祐一の追及を...
- 東京大空襲訴訟高裁判決「旧軍人・軍属への補償は戦闘行為などの職務を命じた国が...
- 安倍晋三の検察庁法改正案に賛成しよう! 但し不正疑惑渦中閣僚一人で検察人事関...