母親(24)とその内縁の夫(24)に虐待を加えられて長女(2)が内臓破裂で殺されてしまう今年1月まで3回の面談まを行いながら、虐待の事実を見逃し、死を防ぎ得なかった、再び繰返された児童相談所の不手際問題(今回は千葉県柏児童相談所)――。TBS「みのもんたの朝ズバッ」(07.3.19)の途中からの録画から。
県柏児童相談所・石井宏明所長「何か問題があったのか、あるいは落ち度があれば、それを検証委員会の方で(調査)していただければ、今後の指導の対応にしていきたいと思っています」
みのもんた、フリップを持ち出す。
去年7月頃
夫と別れた大竹香菜(かな)容疑者、長女美咲ちゃんとと
もに吉野陽士(ようじ)容疑者と同棲
12月11日
東京新宿で吉野容疑者の車に放置されていた美咲ちゃんを
警察が保護
(「時事通信」/07/03/18によると、「通報を受けた相談所が両容疑者を呼び、事情を聴いたのに対し、吉野容疑者は『車の中で寝てしまったので毛布をかぶせておいた。仕事の合間に様子を見ていた』と釈明。美咲ちゃんが2人にまとわり付く様子も見られ、相談所側は『不自然な感じはないが、育児に不安がある』と判断した。
この後、同(12月)14日と1月16日に児童相談員2人が家庭を訪問。美咲ちゃんの右目脇にあざなどがあったが、母親は虐待を否定したため、継続して様子を見ていたという。」
事務所費問題で松岡農水相本人が「今の法律制度で定められた必要な報告を致しております」と不正付け替えを否定したから、それを鵜呑みにして不正はないと判断するのと同じ構図であろう。民主党は追及側だから、当然鵜呑みにしないが、安倍首相は鵜呑みにして済まそうとしている。)
12月12日
「虐待の疑い」があるとして、美咲ちゃんは柏児童相談所
に送られる
美咲ちゃんは頭にけがをしていたが、容疑者2人は「台所
でぶつけた」「虐待していない」と主張
→〝一時保護〟せず、美咲ちゃんを帰す
12月14日 柏児童相談所が家庭訪問。新しいけがはなかっ
た。
→しばらく様子を見ることに
今年1月16日 柏児童相談所が家庭訪問。
美咲ちゃんの頭に新しい傷があった
大竹容疑者「階段で転んだ」「虐待してい
ない」と主張
→美咲ちゃんの全身は調べず
1月21日 美咲ちゃんは内臓破裂で死亡
(3月18日「朝日」朝刊によると「調べでは、女児は1月下旬、家族に市内の病院に運ばれ、約1週間後に死亡した。腹などに殴られたような跡があったことから、病院が『虐待の疑いがある』と警察に通報していた」とある。)
みの「いいですか。打撲とか何とか、以上の内臓破裂という、そんな形で死んでいる――。(コメンテーターの末吉竹二郎に)児童相談所って、何のためにあるんです」
末吉「今のね、僕は所長さんの弁明聞いていて、もう腹立たしいですよね。人が何か注意したら、それで自分たちが改めますと、そういう態度、本当に許せませんよね。それから多分、その、プライバシーに踏み込み過ぎるのはよくないとかっていう発想があるんでしょうけども、人の子供の命、赤ちゃんの命を救うんであれば、多少の踏み込んだケースがあってもですね、そのことで児童相談所が非難を受けることがあったらですね、社会にオープンにしたらいいじゃないですか。そうしたら社会はオーバーラン気味でもいいから介入して赤ちゃんを救おうとする児童相談所、みな支持しますよ。サポートしますよ。それをですね、自分たちが何か非難を受けるんじゃないかっていう発想でね、過少に過少に自分たちの介入を考えて、こういった態度では本当に救えませんよ」――
「プライバシーに踏み込み過ぎるのはよくないとかっていう発想がある」とかの問題ではなく、先ずは学習能力が機能していないことから起きている同じことの繰返しではないだろうか。
日本全国の過去の児童虐待例及び虐待死例の情報をすべての児童相談所は共有していていなければならないはずであるし、当然共有しているはずである。またそういった共有だけからではなく、児童相談所等関係機関の不手際・失態・無策から〝防ぎ得た虐待死〟を防ぎ得ずに招き寄せてしまった重大事例は新聞・テレビ等のマスメディアが連日取上げ、それらが発する情報からもどう対処すべきだったか、何が間違っていたかを学習するはずであるし、学習しなければならない児童相談に関わる者としての責任と義務を課されているはずである。
当然学習することでどう対処すべきかを学んだ情報が次の事例に対して臨機応変に具体的な形を取って活用されるプロセスを踏まなければならない。そのようなプロセスを踏むことによって、自らが役目とする責任と義務を果たすことになる。
ところが、最初は「台所でぶつけた」「虐待していない」、次は「階段で転んだ」「虐待していない」等の否定句は過去の虐待例の中に虐待常習者が虐待を言い逃れるためによく使う常套句であるとする情報を学習して知識として持っていなくてはならず、疑ってかかるべき場面であったはずであるが、大の大人が、しかも児童問題を扱う児童相談所が頭からまったく学習能力がないとするわけにはいかず、そのことに反して二度までも相手の言葉どおりに受け取る事務的対応で済ませてしまったのは学習自体が機能しなかったか、学習した情報を行動に生かすことができなかったか行動不全のどちらかだろう。
一人や二人の問題ではない児童相談所のこのような学習に関わる欠陥・不備と、そのことがもたらす責任不履行はどこから来ているのだろうか。やはり日本人が行動様式としている権威主義を抜きには説明できないのではないだろうか。
美しい国家主義者・安倍晋三が防衛大卒業式でその資格があるのか、「右と左とを足して2で割る結論」を戒める訓示を垂れたということだが、「右と左とを足して2で割る」も裏を返せば過去の事例を情報として創造的に生かすことができない学習能力の欠如からの機械的対応状況への指摘だろう。単純細胞の安倍国家主義者がそこまで気づいて言ったかどうか分からないが、日本人は学歴の上下とか地位の上下、財産の上下、職業の上下とかで人間を上下の価値に分けて上は下を従わせ、下は上に従う権威主義を主たる行動様式としている関係から、上から言われたことはする、あるいは上が決めたことはする機械的対応を主行動としているが、そこから脱して誰に言われたことでもなく、また決められているからということでもなく自分で学習して、学習した情報を自分なりに行動に移す学習性能力発揮に深く関わる自己判断性は逆に権威主義の上は下を従わせ、下は上に従う機械的関係力学に阻害されて行動に於ける欠陥要因としている。
マニアル思考とか横並び思考と言われる日本人性も、自己判断性を剥いで機械的に従う形式の思考性を言うのであって、自ら学習して、それを自分なりの情報に臨機応変させて行動に移す「右と左とを足して2で割る」式ではない自己判断性とは対立項をなす価値形式を言うはずである。
自己判断性が学習能力に深く関わるとなると、自己判断性の欠如は学習能力の欠如と対応し合う構造を取ることとなり、それは児童相談所だけの問題ではなく、また防衛大生にとどまらず、権威主義性に支配されているゆえに発症させている日本人全体の問題、日本民族性としてある双方の欠如ということになる。
そして何と言っても児童相談所に於ける児童保護に関わる逆説でしかない自己判断性の欠如が、虐待が与える恐怖心がどれ程に幼い子供の生命(いのち)を怯えさせるか、生命(いのち)を如何に蝕むか、そのことへの怒りと思い遣りの人間による人間に対する想像性のなさによってもたらされ、それが学習能力の欠如を加速させている要因となっているのではないかということである。
幼い命が虐待を受けているとしたら、あまりにも痛々しい、虐待を受けているようなことはあってはならない、受けているとしたら子供を救い出さなければならないという怒りと思い遣りの一点で行動していたなら、誰に言われなくても否応もなしに自己判断性に衝き動かされることとなって、活性化された学習能力を身につけていくだろうからである。そのような人間に対する想像性の不備が機械的、事務的、型どおりの対応となって現れて、そのまま同じことを繰返す不手際・失態につながっているのだろう。
幼い子どもを一個の生命(いのち)と見ることができず、単に他人の子供としか見ることができない人間による人間に対する想像力のなさが虐待がどれ程の恐怖心と痛みを味わわせることになるだろうかということへの思い巡らし(=自己判断性)を妨げ、学習能力の育みを阻害する。
自分の子どもが学校でいじめられていると分かったなら、親は激しい怒りに駆られて、いても立ってもいられない気持ちに衝き動かされるに違いない。そのような切迫した衝動が他人の子供には働かない。子供という人間に対する想像力が自分の子どもにまでしか働かない限界を日常性としている。当然大人の場合でも、自身か、ごく身近な近親者に対してのみ働く限界を抱えることとなる。
離婚した若い母親が生活も苦しく、子育ても大変で、イライラが子供に当たるようになって、それが習い性となって歯止めが利かなくなる。あるいは離婚女性が新しい男を見つけたものの、子供が男になつかなかったり、男の方が自分の子供でないということで疎んじたりしてしつけを口実に邪険に扱い、次第にエスカレートしていく。女は男の機嫌を損ないたくないっばかりに自分も子どもに厳しいところを見せざるを得なくなり(「何でお父さんの言うことを素直に聞けないの?」)、男と同調して子供に当たる。そして双方して子供が憎らしい、邪魔な存在となっていく。
家の中では子供を乱暴に扱っているから、そのことに気づかれないように外では変に優しいところを見せる。顔や腕といった人目に触れる部位に傷の跡があれば、「転んだ」とかこじつける。
過去の児童虐待、あるいは児童虐待死から学習し、教訓とすべき情報例は多くの共通項を導き出すことができる。それを生かすことができない児童相談所の対応の不手際・失態・無策にしても、面談すべきを怠ったり、面談しても、面談しましたとする通り一遍の事務作業、役目のための役目で終わらせたり、電話のみの対応で済ます省略があったり、面倒を厭う気持が無意識にあって、相手の言い逃れを疑うことなく鵜呑みにしたり、自己判断性と学習能力を欠いた形で多くの共通項を抱えている。
子供を虐待する人間が家の中では子供を乱暴に扱っていることのカムフラージュに外で演じる優しい態度・優しい姿は、自己を美しい人間に見せることになる日本語の敬語や丁寧語と対応しあっている装いではないだろうか。言葉で自己を美しく見せなければならない。それは上下の価値で上が下を従わせ、下が上に従う権威主義性・権威主義的人間関係が自律的相互関係ではないこと、真に大人としての行動ではないことをカモフラージュして美しい装いを与える必要からの言葉の美しさではないだろうか。
このことは政治家を見ればよく理解できることである。国民を下に置き、自身は高みに置いて党利党略、族益、選挙利害を自らの主たる行動様式としながら、そのことに反する「国民の皆様」なる丁寧語の乱発がさも国民利害で行動しているかのように見せかけるカモフラージュとなっているからである。
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