題名に書いてあるように有効求人倍率は過去最低。それも〈前月を0.01ポイント下回る0.43倍で2カ月続けて〉の過去最低を更新だそうだ。
〈完全失業者は前年同月比83万人増の348万人で、増え幅はこれまでで最も大きい。理由別では、勤め先の都合が同62万人増の121万人と大幅に増えた。自己都合は4万人減の97万人となり、4カ月ぶりに減少した。 〉――
「勤め先の都合」とはクビ切り・解雇にあったということであろう。それが62万人増加した。「自己都合は4万人減」と言うものの、「有効求人倍率過去最低の0.43倍」で分かるように再就職の機会が少ない中、「97万人」もいるのは驚きだが(女性の結婚による専業主婦化もかなり含まれているに違いない)、それでも「4万人減」は次の就職先を考えると我慢して勤めなければならない状況を示しているのではないだろうか。
但し有効求人倍率は下げ幅が小さくなっており、下げ止まりの兆しが出てきたというが、全体の有効求人倍率0.43倍と比較して正社員の有効求人倍率は0.24倍だそうで、非正規社員に向けた恩恵の低い「下げ止まりの兆し」と言うことができる。
その上、〈新たな求人数は前月比4.2%増で、昨年12月以来6カ月ぶりに増加に転じた。 しかし、新たな求職数も同2.7%増と4カ月ぶりに増えたため、景気の先行きを示す新規求人倍率は、過去最悪だった前月とほぼ同水準の0.76倍にとどまった。〉という状況は求人企業が一方で出現しているものの、依然として解雇企業が存在し続けていることを示している。
この状況は記事の最後で伝えている〈昨年10月から今年9月までに、解雇や雇い止めなどで失職する非正社員は、前月の集計より6千人多い23万人。派遣が14万人と6割余りを占める。同じ期間に失職する正社員は、100人以上の離職事例の集計だけで4万1千人だった。〉としている状況に符合するが、「昨年10月」以前に既に失職していた非正社員数は出ていない。
この「23万人」は「NHK」記事――《非正規労働者 約23万人失職》によると、7月21日の時点で実数「22万9170人」だそうで、その内訳を詳しく伝えている。
▽派遣労働者が13万9341人
▽期間従業員が5万1420人
▽請負労働者が1万7953人
都道府県別の統計を見ると――
▽愛知――3万8733人
▽長野――1万 119人
▽静岡―― 9473人
▽三重―― 8667人
▽東京―― 8156人
今まで景気のよかった県がより大きな影響を受けている。
そして、〈次の仕事が見つかった人は、就職活動を把握することができたおよそ10万1000人のうち35.1%にとどまり、再就職は厳しい状況が続いています。〉と就職困難な現況を伝えている。
完全失業者は348万人で、「解雇や雇い止めなどで失職する非正社員は、前月の集計より6千人多い23万人」ということだが、5月1日の「asahi.com」記事――《非正社員の失職、20万人超す見込み 厚労省調査》には、1カ月30人以上の離職者を出す事業主に対して事前の提出を義務づけている「大量雇用変動届」からの統計として、3月中の届け出972事業所での離職者数は4万9082人。割合は正社員が21732人、非非正規社員が27350人で、非正規社員が5618人上回り、4万9082人に対して約56%を占めるいる。
不況による解雇が非正規社員に先行・集中して行われたことを考慮に入れて、上記56%を完全失業者は348万人に当てはめてみると、あくまで概算だが、正社員失業者数153万を42万人上回って約195万人の非正規社員失業者数となる。
非正規社員の地位の極端な不安定さから見たら、約195万人を超える非正規社員失業者数ということになるかもしれない。
同じ昨31日の「asahi.com」記事――《国民年金納付率、最低の62.1% 記録問題・不況響く》の内容は題名どおりだが、政府は納付率80%を目標としているが、それを下回る過去最低の「62.1%」、3年連続の納付率の低下で、未納者は加入者の1割を超える315万人に達しているという。
その原因を、「厚生年金に加入していたサラリーマンら約30万人が国民年金に加入した」ものの、「失業して保険料を払えない人も多く、納付率を前年度から0.9ポイント分下げる要因になった」としている。
7月29日の『朝日』社説《論点・安心と負担2―若者への投資を急がねば》は次のように書いている。
〈派遣労働者など非正社員は、働く人の3人に1人を占めている。年収200万円以下の労働者は1千万人を超えた。これらの人々は中高年になっても、なかなか賃金が増えない。
不安定な所得のため健康保険の保険料が払えず、正規の保険証を取り上げられた世帯が100万を超す。国民年金の保険料未納は20代後半で5割だ。 〉――
「国民年金の保険料未納は20代後半で5割」、「非正社員は働く人の3人に1人」、「年収200万円以下の労働者は1千万人を超える」。そして「完全失業者数348万人」、「昨年10月から今年9月」の間だけでも、「解雇や雇い止めなどで失職する非正社員は、前月の集計より6千人多い23万人」・・・。
そして、学歴主義社会日本で企業の求人対象として(女性の結婚対象としても同じだが)最も持て囃される大学生でさえも、彼らの現時点での就職内定率は昨年同時期と比較して1~2割減という状況。
こう見てくると、麻生首相が今月の25日に横浜市内で開催された日本青年会議所(JC)の会合で、「元気な高齢者をいかに使うか。この人たちは皆さんと違い働くことしか才能がないと思ってください。働くということに絶対の能力がある。80過ぎて遊びを覚えても遅い。遊びを覚えるなら青年会議所の間ぐらい。そのころから訓練しとかないと。60過ぎて、80過ぎて手習いなんて遅い」(毎日jp」などと小賢しげに得々と言っている場合ではなく、国民年金保険料未納が5割にも達する20代後半の若者世代、あるいは多分その多くが蓄えもなく失職している非正規社員等を対象とした就業機会の創出に先ずは面と向き合った主張を訴えるべきだったのではないだろうか。
例え全力を上げて景気回復に努めていると言っても、優先順位から言ったなら、若者の就業によりウエイトを置いた視線を常に持ち、機会を捉えてはそのことを訴えるべきだったろう。
今月30日の省庁横断「若年雇用対策プロジェクトチーム(PT)」の初会合で麻生首相は1990年代の「失われた10年」に出来(しゅtったい)させることとなった「就職氷河期」世代――いわゆる満足な就職ができずにフリーターや非正規で凌ぐこととなり、それが常態となってしまっている世代の再現を防ぐ意味で、「『ロストジェネレーション(失われた世代)』を再び作ってはならない」と指示したということで、一見若者世代にも目を配っているようには見えるが、この配慮が麻生太郎の中で常に強く意識した固定観念となっていたなら、また一国の政治指導者として固定観念化させておくべき配慮でもあるのだが、20歳~40歳を年齢的なメンバー資格としている日本青年会議所という場での講演である以上、自然と出てくる話題は満足な就職の機会を手に入れることができない若者世代を対象に如何に働く場所を創り出し、提供するか、「働くということに絶対の能力がある」はずだからといった内容でなければならなかったはずである。
だが、景気が回復して雇用状況が大きく改善されない限り、一旦リタイアした高齢者の再就職の機会は限られるだろうから、緊急な課題とはならないはずだが、「働くことしか才能がないと思ってください」とか、「80過ぎて遊びを覚えても遅い」とか余分なことまで言って、高齢者に働く機会を提供して彼らを納税者に仕立てる、それが日本が目指す「明るい高齢化社会、活力ある高齢化社会」だ、このような「高齢化社会の創造に成功したら、世界中、日本を見習う」などと高齢者雇用を中心に話を展開させている。
緊急な課題としなければならない若者世代の雇用機会創出に関しては意識の中心にはなかったからこそできた高齢者中心ではなかったろうか。
麻生は2006年9月1日の広島市で開催された前々回の総裁選討論会「中国ブロック大会」でも、「65歳以上の人のうち本当の意味での寝たきりは15%しかいない。あとの85%はまわりが迷惑するくらい元気。こういう人は働くしか才能がないといえば語弊があるが、あんまり遊んだことはない。そういう人たちをうまくおだてて使うことが会社経営者の才能」(《“高齢者の85% 迷惑するほど元気” 麻生氏が暴言 自民党ブロック大会》2006年9月2日(土)「しんぶん赤旗」)と高齢者を「うまくおだてて使う」ことを以って日本の高齢社会とすべきことを社会保障の観点から主張したそうだが、このことからも麻生太郎と言う政治家の意識の中心にある持論だと分かる。
「うまくおだてて使う」高齢者雇用を以って日本の高齢社会とする主張は他でも述べている。この主張が麻生太郎の意識の中心にある優先課題の持論であることの補強証拠となり得る。
2001年10月24日の〈中央政治大学院 「秋季特別講座」Ⅲ〉で『わが国経済の再生に向けて』と題して当時政務調査会長だった麻生が講演している。
「マスコミでは高齢者の現状について、暗く貧しく独居老人のような報道がなされてますが、2270万人のうち寝たきり老人はたったの13%。あとの80%の人は大変元気に過ごしています。皆さんの自宅にもそんな元気な爺さん婆さんがいると思います。
また65歳以上の老人はお金を持っている。日本には1400兆円の資産があるといわれていますが、その半分は老人が持っている。資産には債権もあれば債務もあるが、債務を引いた純債権で換算すると71%は高齢者が持っている。その元気な人たちを隅っこに追いやっているのが若い人たちなんです。高齢者はおだてて使うべき。働く意欲がある。特に、大正か昭和一桁生まれの人。働くことが何よりの生きがい。日本だけです、退職してガックリとしてしまうとこは。寂しく退社するのは日本だけ。そういう国が日本なんです。寂しい理由は『やる事』がないからです。だから、金の使い先も知らない。日本の高齢者には元気であるにも拘らず趣味が乏しいので、意欲のある人には働いてもらえばいいんです。1週間に3日でもいい。優秀な技術者などたくさんいると思います」
断っておくが、私は69歳間近の68歳だが、月8万3千円程度の国民年金で蓄えもなく、節約の上に節約を重ねた正真正銘の貧乏人で、「65歳以上の老人はお金を持っている」と断言した中には決して入らない。
「寂しい理由は『やる事』がないから」、「日本の高齢者には元気であるにも拘らず趣味が乏しい」は若いときの生き方に問題があるはずだが、そのことには触れずじまいである。
小泉純一郎が内閣を発足させたのが2001年4月26日、その年の「日本経済は、年初から景気後退を続けた。13年の実質経済成長率は-0.5%と3年ぶりのマイナスとなった。年後半にはIT不況に米同時多発テロが重なり景気悪化が一段と鮮明になった。世界的な景気減速傾向のなかで、輸出、設備投資が落ち込み住宅投資も悪化、さらに個人消費の低迷が深刻化した。百貨店の売上げは持ち直しの兆しが見られたが、スーパーは低迷。家電は4月以降、自動車は9月以降前年割れ。外食や海外旅行は落ち込んだ。」とHP《広告景気年表:2001年》 に書いてあるが、「100年に一度」と言うことだから現在とほぼ同じとは言えないだろうが、失われた10年と地続きの「2001年」の不況の年であるにも関わらず、麻生太郎は中央政治大学院の『わが国経済の再生に向けて』との講演で、「いま、経済全体としては縮小しています」の発言はあるが、若者の雇用に関して一言も喋っていない。若者の雇用があって、『わが国経済の再生に向けて』があるはずだが、麻生太郎の中ではそうなっていない。
と言うことは、省庁横断「若年雇用対策プロジェクトチーム(PT)」会合での麻生太郎の「『ロストジェネレーション(失われた世代)』を再び作ってはならない」の指示は「若年雇用対策」を議題とした会合だから口にした、官僚の指示を受けたかどうか分からないが、「『ロストジェネレーション(失われた世代)』を再び作ってはならない」の疑いが限りなく濃くなる。
優先的に目を向けるべき若年層の雇用問題、高い非婚率といった弊害まで生じせしめている生活貧困の問題を差し置いて、高齢者の雇用を優先課題の持論とし、世界中に日本を見習わせようとしている。
麻生太郎と言う人間の程度が分かる。
6月の完全失業率(季節調整値)は前月を0.2ポイント上回る5.4%で、過去最悪の5.5%に迫る水準となった。〉と昨31日の「asahi.com」記事――《失業率悪化、5.4% 有効求人倍率は最低の0.43倍》が伝えている。
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