小野寺五典「赤坂自民亭」:大雨対応の問題ではなく、「国民の生命財産」に敏感に反応する意識・想像力の問題

2018-07-14 11:33:37 | 政治

 気象庁が2018年7月5日14時00分に《西日本と東日本における8日頃にかけての大雨について》の気象状況を発表。その内容を画像にして添付した。

 7月5日から7月8日にかけて非常に激しい雨が断続的に数日間降り続き、記録的な大雨となる恐れがあるからと、土砂災害や低い土地への浸水、河川の増水・氾濫への厳重な警戒を呼びかけている。

 いわばこれらの自然災害の起こり得る危険性の高さを指摘していた。しかも台風上陸の直接の影響ではなくても、通過前や通過後に前線の活発化によって過去に例を見ないような集中豪雨、あるいは短時間記録的大雨が年々発生して大きな被害をもたらす最近の気象傾向となっていることを考えた場合、気象庁が厳重な警戒を呼びかけた以上、特に国・地方共に、結果的に空振りになったとしても、危険性の高さに備えなければならない。

 官房長官菅義偉も、記者会見で年々の自然災害に触れている。2018年7月9日の記者会見。「ロイター」(2018年7月9日 / 18:29)

 菅義偉「ここ数年、従来とは桁違いの豪雨で被害が繰り返し発生している。被害のリスクを減らすためどのようなことができるか、改めて検討する必要がある」

 .2018年7月11日の記者会見。「毎日新聞」(2018年7月12日)

菅義偉「従来とは桁違いの豪雨被害が繰り返し発生している。気象庁が発表する防災気象情報と自治体の避難情報の連携なども含め、検証していく必要がある」

 気象庁の防災気象情報と自治体の避難情報の連携の在り方の検証と見直しに向けた発言だが、「従来とは桁違いの豪雨被害が繰り返し発生している」という言葉で年々の気象傾向であることを指摘している。

 この年々の傾向を200人を超える犠牲者を出した西日本豪雨の惨劇を目の当たりにして気づいたことだとしたら、国政を担う資格を失う。7月11日の当ブログに、〈実際に起きたことを前以って予知する能力は人間にはなくても、前線が停滞したり、前線に向かって南から暖かい空気が流れ込むと、毎年のように集中豪雨や記録的短時間大雨をもたらして洪水や浸水被害・人的被害を発生させる最近の気象傾向から過去の事例相応の最悪の事態を予想しなければならない能力は備えているはずだ。

 備えていなければ、学習能力がないことになるし、学習能力の無さは危機管理能力にも影響することになる。〉と書いた。

 気象庁が7月5日14時00分に記録的な大雨予報と土砂災害や低い土地への浸水、河川の増水・氾濫への厳重な警戒を呼びかけたその夜、「首相動静」を見ると、8時28分、東京・赤坂の衆院議員宿舎着となっているが、安倍晋三出席のもと、「赤坂自民亭」と名付けた飲酒を伴う懇談会を開き、災害時に住民の救助・救命に当たる、いわば「国民の生命・財産を守る」実働部隊自衛隊のトップに位置する関係から、年々の気象傾向から判断して過去の事例相応の最悪の事態を予想、「国民の生命・財産を守る」ことに備えるべく先頭に立って指揮・監督に当たらなければならない防衛相小野寺五典が、例え30分間という短い時間であったとしても自らの役目に当たらずに出席していた。

 しかし小野寺五典は自らの出席に役目上の「支障はなかった」と発言している。
 「2018年7月13日記者会見」防衛省記者会見室

 記者「豪雨災害の中、『赤坂自民亭』が開催されたことにつきまして、批判が上がっておりますが、大臣の受け止めをお願いします」
 小野寺五典「この件につきましては、この会合の写真をネットにアップした西村官房副長官が、国会において、多くの方々を不愉快にさせてしまい大変申し訳ないとお詫びをされたと承知しております。私自身、気象庁が注意する呼びかけ、不安な気持ちを持たれている方々がおられる中で、あのような情報を発信することは適切ではなかったと思います。

 その上で、少し補足をさせていただきますと、政府の対応につきましては5日の午後の時点で、防衛省においては災害発生が予想される自治体への連絡員を派遣しており、実際、6日未明には京都府や高知県から災害派遣要請があって、部隊を派遣するなどの対応をしております。私自身も、日中に防衛省においてこうした対応を指示しており、退庁後も、適時、防衛省から連絡を受け、対応をさせていただいておりました。

 また、翌日には近畿、中国、四国を担任する中部方面隊の総監部、これは兵庫県伊丹市でありますが、ここを私が訪れ、部隊を指揮する中方総監に対し、現場の状況を報告させ、その後の対応について速やかにできるよう、しっかり指示をしてまいりました。特に対応に支障があったとは思っておりません」

 記者「関連してなのですが、大臣が10日の会見で、議員宿舎で待機をしていて、その後、集会場で行われた場所に行って、顔を出し、防衛省から随時連絡を受け、指示を出していたとおっしゃっていました。大臣は酒を飲みながら、飲み会から指示を出し、飲み会で報告を受けていたということでいいですか」

小野寺五典「そういうことはありません。顔を出して、そこで乾杯等はいたしましたが、その後、会は長くやっていなかったと思いますので、会が終会したあと、私の方に連絡があり、その都度対応をしていたということであります」

 記者「飲み会で酒を飲みながら連絡を受けて、酒を飲みながら指示を出していたということで間違いないでしょうか」

 小野寺五典「そういうことはありません」

 記者「飲んでないのですか」

 小野寺五典「私は、乾杯はいたしましたが、今、おっしゃるように会合の最中に連絡があったとか、会合の最中に連絡をしたということはありません」

 記者「待機というのは、大臣室の代わりに議員宿舎に待機しているわけですが、そういう時に宴会に出るというのは待機じゃないのではないですか」

 小野寺五典「集会が行われたということでありますので、私どもとしては、これは会員相互の集会が行われていたという認識であります。

 記者「酒を飲むのは宴会とか飲み会と言うのではないですか」

 小野寺五典「どのような意図をもって、今、そのような質問をされているのかわかりませんが、私どもとしては、支障がない対応をしていたと思っています」

 記者「飲み会で報告を受けて、飲み会で酒を飲みながら指示を出していたのは問題がなかったとおっしゃるのですか」

 小野寺五典「少なくとも、その対応について支障があったとは思っておりません」

 記者「飲み会で報告を受けて、飲み会で酒を飲みながら指示を出したことに問題はなかったということですか」

 小野寺五典「繰り返しになりますが、酒席の場で、私が連絡を受けたり、酒席の場で報告をしたということはございません」

 記者「10日の会見ではそうおっしゃっています。『特に防衛省から随時連絡が来ておりましたし、その都度指示を出しておりましたので、特に支障がなかったと思っております』とおっしゃっていますが如何ですか」

 小野寺五典「少なくとも、集会場にいた時点でそのようなことはありません」

 記者「その時間だけ空白だということですか」

 小野寺五典「どのようなイメージでお話をされているかわかりませんが、集会場にいた時間というのは30分程度だったと思います。当然、連絡が入ったのは、その前からも随時きていますし、また、その後連絡が来たこともございますが、少なくとも集会にいる間に連絡がきたり、私の方から指示をしたということはございません」

 記者「その30分の間だけ連絡がなかったということですか」

 小野寺五典「少なくとも、そのようなことはなかったということであります」

 記者「問題はなかったということですか」

 小野寺五典「支障はないと思っております」

 記者「問題はなかったというふうに判定はされないのですか」

 小野寺五典「少なくとも、私どもとしては、その時点で対応をしっかりさせていただきましたし、また、その後も指示をしておりますので、支障はなかったと思っております」

 記者「政府がそういう態勢をとっていた時に、飲み会に行って酒を飲んで指示を出していた行動に問題はなかったとおっしゃるのですか」

 小野寺五典「例えば、今、お話されているような、一部、今回の報道の中で『赤坂自民亭』という、何か居酒屋とかホテルの集会場とか、そのようなイメージで、発信をされたのであれば、これは正確を欠いていると思っております。会員相互の会議室での交流の場ということでありますので、私も宿舎待機の時間でありましたが、そこに顔を出させていただきました」

 記者「何の問題もないとおっしゃるのですか」

 小野寺五典「少なくとも、誤解を受けるようなことはあってはならないと思いますし、その集会の場の内容について、写真をアップした西村官房副長官が、このような事について、『適切ではなかった』というお話をされておりますし、私もそのように思っております」

 記者「ツイッターにアップしていることではなくて、防衛大臣がこのタイミングで集会に出て乾杯をしたということについて問題があったかなかったかということを聞きたいのです」

 小野寺五典「集会があって、その場は交流の場ですから、乾杯をさせていただきましたが、少なくとも支障はなかったと思っております」

 記者「問題はなかったのですか」

 小野寺五典「支障はなかったと思っております」

 7月5日14時00分の気象庁の防災情報を受けた防衛省及び小野寺五典自身の当日の対応を小野寺五典の発言の中から拾ってみる。

 防衛省は「5日の午後の時点」で、「災害発生が予想される自治体への連絡員を派遣」。小野寺五典自身は日中は防衛省で様々な対応の指示、退庁後は議員宿舎の自室で防衛省の連絡を受けたり、その連絡に対して対応していた。

 その後、「赤坂自民亭」に出席したが、「会合の最中に連絡があったとか、会合の最中に連絡をしたということ」はなかった。但し、「会が終会したあと、私の方に連絡があり、その都度対応をしていた」と言っている。

 話していることが事実だとすると、「赤坂自民亭」出席前後は防衛省から連絡を受けたり、その連絡に対して対応していたのだから、出席中に防衛省から何の連絡もなく、その連絡に対して自身の方からも防衛省に連絡しなかったと言っていることは、たまたま無かった偶然であって、その偶然に頼って不謹慎の批判をかわしているものの、防衛省の災害関連の事務方が小野寺五典にいつでも連絡できる態勢で絶え間なく役目に臨んでいたのに対して小野寺五典の方は、「赤坂自民亭」出席以外の時間に「しっかりと対応していて、支障はなかった」といくら主張したとしても、防衛大臣という役割上、災害発生の予想時は退庁後も防衛省といつ何時でも連絡を取り合うことができるよう、随時役目に臨むことができる態勢でいなければならなかったが、30分と言えども、飲酒を伴う懇談会に出席したことによって自らの役目から離れていたことになる。

 このことを否定して、「赤坂自民亭」に出席していても、役目から離れていたわけではないと主張するなら、「酒席の場で、私が連絡を受けたり、酒席の場で報告をしたということはございません」と、そうした場合は自らの役目に反するかのようなニュアンスで発言すること自体が誤魔化しの情報発信となる。あくまでも正直に「『赤坂自民亭』出席の30分の間も防衛大臣としての役目を果たすことができる態勢で臨んでいたが、その30分間、偶然にも何の連絡を入らなかったし、自分の方からの連絡を取ることもなかった」と発言しなければならない。

 小野寺五典がどう言い繕うと、自然災害の現場で「国民の生命・財産を守る」役目を直接的に担い、その使命と責任を負っている組織のトップに位置している以上、どこにいようと、その使命と責任を組織全体で果たすべく指揮・監督する立場から、「国民の生命・財産を守る」意識と想像力を常に敏感に研ぎ澄ましていなければならない。

 でなければ、危機管理は満足に果たすことはできない。

 「国民の生命・財産を守る」意識と想像力を常に敏感に研ぎ澄ましていない政治家が「国民の生命・財産を守る」役目を直接的に担い、その使命と責任を負う組織のトップに君臨していたとしたら、資格のない政治家が使命と責任を負う奇妙な倒錯を見せつけることになる。

 小野寺五典が以上のような意識と想像力を常に敏感に研ぎ澄ますことのできる政治家であったなら、例え30分と言えども、飲酒の伴う懇親会「赤坂自民亭」に出席するといった軽率な振舞いはできなかったはずだ。

 支障がなければ、何をしてもいいというわけではないのだから、「しっかりと対応していて、支障はなかった」で済ますことのできる問題ではない。「国民の生命・財産を守る」意識と想像力をどの程に敏感に研ぎ澄ましていたかで、小野寺五典を判断しなければならない。

 このような問題点を問わなければならない小野寺五典の「赤坂自民亭」出席を、「この件につきましては、この会合の写真をネットにアップした西村官房副長官が、国会において、多くの方々を不愉快にさせてしまい大変申し訳ないとお詫びをされたと承知しております。私自身、気象庁が注意する呼びかけ、不安な気持ちを持たれている方々がおられる中で、あのような情報を発信することは適切ではなかったと思います」とSNSへの情報発信の問題にすり替えている点にも、政治家としての小野寺五典がどの程度か判断できる。


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