安倍晋三は「女性の活躍」をあれ程吹聴しながら、なぜ小池百合子を都知事選で自民党推薦としないのか

2016-07-15 10:45:47 | Weblog

 自民党と公明党が2度続けて擁立した猪瀬直樹が黒いカネの問題(徳洲会から現金5000万円を受け取っていたとの疑惑)、舛添要一が政治資金の私的流用疑惑(「政治資金とカネの問題」)で途中辞任した不祥事を踏まえて、舛添要一の辞職に伴う東京都知事選(7月31日投開票)の立候補者として自民党都連は当初、人気アイドルグループの「嵐」のメンバーの桜井翔の父親であることから、簡単に知名度を獲得できると狙ったのだろう、総務省前事務次官の桜井俊の担ぎ出しを策したのに対して本人からその気がないことを伝えられても何度か要請を続けた。

 勿論、この自民党都連の桜井俊に対する立候補要請は自民党本部及び安倍晋三の承認を得た連携プレーと見なければならない。いわば最終的には安倍晋三の承認を背景として都連を窓口とした交渉ということであろう。

 桜井翔パパ、桜井俊が固辞している間に立候補の意向を周囲に伝えていた、環境相や防衛相を務めたことがある自民党の小池百合子が6月29日午前、国会内で記者会見して正式に立候補を表明した。

 知名度十分であり、しかも安倍晋三が盛んに「女性の活躍」を吹き込んでいる。安倍自民党がもし当選させることができたなら、「安倍政権下で初の女性都知事誕生」と、自身の政策のアピールにもなる。

 だが、自民党東京都連も自民党本部も芳しい反応を見せなかった。

 と言うことは、安倍晋三自身が快く思っていないことの証左ともなる。

 いわば小池百合子の立候補を「女性の活躍」のうちに入れていないことを意味する。

 いくら「女性の活躍」を吹聴しようとも、政治の場では相手を選ぶと言うことなのだろう。

 小池百合子のこの立候補表明記者会見に対する自民党東京都連に所属する安倍晋三太鼓持ち官房副長官萩生田光一の6月29日同じ午前の記者会見での反応。

 萩生田光一「東京都連執行部に何ら相談なく意思を表明することは違和感がある。(都知事選候補者の)選定や出し方を含めて都連執行部に一任されている。

 (出馬の)意思を伝えるとすれば、記者会見ではなくて執行部に伝えるのが本来の対応ではないか。正直驚いている」(産経ニュース/2016.6.29 12:25)

 手続きを踏めと言っている。

 先ず東京都連執行部に立候補したい旨を伝えて、執行部が自民党本部と、自民党本部は安倍内閣の面々と協議し、許可できるかどうか裁定する。許可できれば推薦という形を取り、許可できなければ立候補を思いとどまらせる。

 いわば安倍晋三の意向次第ということになる。

 なぜ手続きを踏むことを求めるのか。

 手続きは許可という過程を必要とする。

 特に政治の世界では許可を受ける者は許可を与える者の意向に従う絶対儀式となっている。

 言葉換えて言うと、許可を与える者は許可を受ける者に対して“許可”という行為を通して許可を与える者の支配下、あるいは影響下に置こうとする。

 簡単に言うと、許可者の意向に従うことを求められる。

 ところが小池百合子をそもそもからして自民党東京都連に立候補の許可を求めるという手続きを踏まなかった。東京都連の、ひいては自民党本部や安倍執行部の意向に従わない危険性を嗅ぎ取ったのだろう。

 特に7月5日、小池百合子が東京都連会長・経済再生担当相の石原伸晃と会談、推薦を要請したが、石原伸晃の参議院選後に方針決定の返事に見込がないと踏んだのだろう、翌7月6日に再度国会内で記者会見して、推薦なしの、いわば更に手続き無視の立候補の決意を示した。

 小池百合子「改めて立候補を表明する。政策を論じる時間が無くなることなどを総合的に判断し、このままでは推薦を得られないので、不本意ながらパラシュート無しの立候補となる。

 リスクは山ほどあるが、都民目線のさまざまな問題解決のために、覚悟を持って臨みたい。むしろ、しがらみの無い都民の目線で戦える。

 自民党は家族的で、素晴らしい政党だが、東京都連は改革が必要だ。どこで誰が何を決めているのか、不透明なところが多い。当選したら、都議会を冒頭で解散したい。分裂選挙と言われるが、都議会と都民の分裂ではないか。民心が離れては、暖かい政策は実現できず、都民の声を聞きたい。

 参議院選挙のまっただ中であり、自民党員として、最後まで一生懸命、党の候補者を応援する。あくまでも私は自民党員だ」(NHK NEWS WEB

 都連の推薦を受けない立候補表明となった。

 当選した場合、「都議会を冒頭で解散」という意思表明は自民党都連ばかりか、自民党本部、安倍内閣の意向に対する反旗そのものの象徴であって、この発言によって急遽危険人物に昇格したに違いない。

 このことは「スポーツ報知」が伝える都連最高顧問の深谷隆司元通産相(80)と萩生田光一の発言が証明してくれる。 

 深谷隆司「小池さんは、都議会を解散させるという。都知事にそんな権限ないのに。また、都連を改革するともいう。何を改革するのか分からない。小池さんは都連でずっと活動してきたが、今までそんなこと聞いたことない。

 全く子供騙しの言い方。知事選の費用は50億円以上かかる。さらに都議選をやるなど、税金を何だと考えているのか。お出になるなら政策を語るべき。許し難い発言だ」

 確かに知事が任意に議会を解散する権利はないようだが、舛添要一の政治資金の私的流用疑惑で長年務めてボス化した自民党都議の存在も明らかとなったことから、少なくとも改革の名を借りて既得権を壊されることは警戒しているはずだ。

 萩生田光一「石原会長がいない時にきた。『直接会長に手渡してほしい』と言ったが、紙1枚置いて退席された。候補者を都連執行部に一任すると決まったにも関わらず無視した。

 参院選の最中にこれだけ世間を騒がせ、党に迷惑をかけておきながら、紙1枚で推薦願を取り下げるのは、あまりに党を侮辱した姿勢で憤りを感じる。党が分裂している印象を与える。きちっと対応してほしい」

 味噌もクソもないけなしようである。

 小池百合子の逆を行ったのが自民党東京都連が桜井俊の次に担ぎ出しを考えた元岩手県知事・元総務相の増田寛也であろう。

 都連から立候補要請を受けると、立候補の意思を表明、自民党と公明党に推薦が受けられるように依頼した。

 自民党や公明党の方から都連が立候補要請したのだから、推薦を出すと意思表明したわけではない。あくまでも推薦という許可を願い出る立場を守っている。

 政策面であなた方の意向に従いますと、その支配下、あるいは影響下に入る絶対儀式を演じた。

 増田寛也は区長会や市長会等の要請を受けて立候補の意思を固めたという手続きまで踏んでいる。

 皆さんに従いますという一種の恭順を都連ばかりか、都連以下の自民党に関係する組織や自民党本部、公明党本部に対して全方面的に示した。

 だからと言って、都知事に当選後も安倍内閣や自民党、あるいは自民党都連の意向に永遠に従わなければならないわけではない。それなりの実績を上げ、都民の高い支持を得た場合、それなりの政策面の自由度を得ることができる。 

 若いタレントが所属する芸能事務所と芸能界の上下関係に縛られて上の意向を無視できない活動を強いられたとしても、一定以上の人気を獲得し、一定以上の年齢を重ねると、自身が上下関係の上に位置することになって、活動の自由度が広がり、芸能事務所から独立することも番組の企画に口を挟むことができるようになるのと同じ経緯を踏む。

 だが、小池百合子が政界で長年かかって築き上げた活動の自由度は都知事選立候補に関しては何ら効き目を発揮しなかった。

 逆にこういった場合の絶対儀式としている意向に従う手続きを踏まなかったために関係する組織の支配、あるいは影響を受けつけない、何を仕出かすかも分からない危険人物と見做された。

 「毎日新聞」が伝えている、7月11日に自民党東京都連が配布した都連会長の石原伸晃や都議会ボスの都連幹事長内田茂らの連名で出した「都知事選における党紀の保持について」と題した文書がこのことを物語っている。   

 ▽党公認・推薦候補者以外の者を応援してはならない
 ▽各級議員(親族含む)が非推薦の候補を応援した場合は除名等処分の対象となる

 ――等々。

 こうまでして小池百合子を排斥しなければならない。

 日本の組織に於いて上下関係に従わない人間程、あるいは上下関係に従うための手続きを踏まない人間程、危険人物視される。

 大本に控えているのは安倍晋三だから、その意向が働いた上下関係の強要と言うことである筈だ。

 政界だけではないだろうが、特に政界ではそのように見えるが、「女性の活躍」にしても上下関係への従属が条件となっていることが明らかとなった今回の小池百合子の都知事選立候補騒動ということであるはずだ。


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