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チュニジアテロ事件:自衛隊海外派遣が可能になっていたなら、果たして邦人を救出できたのか

2015-03-20 10:23:17 | 政治

 
 チュニジアの首都チュニスの国立バルドー博物館にテロリスト2人が侵入、銃を乱射、その後観光客を人質にして館内に立て篭もり、その後治安部隊が突入、襲撃テロリスト2人を射殺、日本人3人を含む20人の外国人観光客が死亡、40人以上が負傷している。

 時間的経緯を見てみる。

 「毎日jp」記事から。

 現地時間3月18日午前11時(日本時間3月18日午後7時)過ぎ テロリスト数人が博物館に侵入。
 約3時間後の現地時間3月18日午後21時過ぎ 治安部隊が突入。テロリスト2人を射殺。

 「NHK NEWS WEB」記事では、治安部隊の突入は約2時間後となっている。

 治安当局は他にも2、3人の共犯者が現場から逃走したとみているという。

 当時博物館の中には100人以上がいたそうだが、テロリストが銃を乱射して突入した際、何人の観光客を殺害したのか、人質を取って立て篭った後、治安部隊の突入によって銃撃戦となり、その際、いすれかの銃撃によって何人の観光客が巻き添えとなったのかは不明だが、国立のバルドー博物館は各地のローマ遺跡から集められた展示品で知られていて、外国人観光客も多く訪れる観光名所となっているということだから、治安部隊も館内に相当数の入館者がいることは承知していたはずである。

 だが、2~3時間後に突入した。いわば人質の生命よりもテロリスト制圧を優先させた。チュニジア政府はテロリストと交渉せずの態度を取ったのである。

 アルジェリア人質事件も同質の経緯を取った。

 2013年1月16日日本時間午後1時頃、テロ武装集団がアルジェリア・イナメナスの天然ガス関連施設を襲撃、日本人を含む施設従業員の多数を人質に取り、施設内に立て篭もった。

 武装集団はマリ共和国内のイスラム系武装組織に対するフランス軍の軍事攻撃の停止とアルジェリア政府逮捕のイスラム過激派メンバー釈放などを要求したが、アルジェリア政府は「テロリストとは交渉せず」を基本姿勢としていたために武装勢力の要求を拒絶、襲撃から約31時間後の1月17日日本時間午後8時30分頃に制圧作戦を開始、その約10時間後の1月18日朝6時頃、軍事作戦を終了した。

 襲撃から軍事的制圧作戦まで約31時間必要としたのは天然ガスプラント施設故に広大な敷地に様々な生産設備と事務棟や宿舎等の建屋が立ち並んでいて、武装グループの所在の確認と確認に対応させた治安部隊の配置にそれだけの時間を要したということなのだろう。

 結果、人質側日本人10名を含む48名、武装集団側32名の死亡者を出した。

 「テロリストと交渉せず」の一つの結末である。終始一貫、「交渉せず」の態度を持していたから、アメリカ政府やイギリス政府、フランス政府などの協力申し出をすべて断っている。

 安倍晋三は2度、アルジェリアの首相と電話会談して、最初の電話会談で人命優先を申し入れている。なぜなのか不明だし、理解に苦しむが、アルジェリア政府が軍事作戦を開始した日本時間1月17日午後8時半頃から4時間置いた1月18日日本時間夜中の0時30分頃、訪問中のタイから電話を入れている。

 安倍晋三「アルジェリア軍が軍事作戦を開始し、人質に死傷者が出ているという情報に接している。人命最優先での対応を申し入れているが、人質の生命を危険にさらす行動を強く懸念しており、厳に控えてほしい」

 この「人命最優先での対応を申し入れているが」と言っているのはで岸田外相がアルジェリアの外務相に電話会談で申し入れた人命優先であって、アルジェリアの首相に日本の首相として申し入れたのはこれが初めてである。

 アルジェリア政府が対テロ集団に対して「テロリストとは交渉せず」を基本姿勢としていることは承知していなければならない邦人保護に関わる国家危機管理であるから、人命優先を訴えるなら人質の中に邦人が含まれていることを知った以後、早々に電話会談で申し入れなければならなかったはずだが、制圧作戦開始後となった。

 このチグハグな国家危機管理上の対応から見ると、どうもアルジェリア政府が制圧作戦を開始してしまったから、日本の首相としてアルジェリア政府に対して「人命最優先」を一度も訴えないのはマズイと考えて、アリバイ作りのために申し入れたとしか思えない。

 2度目の電話会談は軍事オペレーション終了後から1日と18時間後の日本時間1月20日午前0時30分である。

 セラル首相「人質救出に向けたすべてのオペレーションが終了し、全テロリストは降伏した。現在、まだ見つかっていない人質を捜索中だ」

 安倍首相「わが国として、テロは断じて許容しない。今回の事件は極めて卑劣なものであり、強く非難する。これまでアルジェリア政府に対し、人命を最優先にするようにと申し入れてきたが、厳しい結果となったことは残念だ」

 安倍晋三がいくらバカでも、海外で集団的な身柄拘束のテロ事件が発生した場合、領域国が「テロとは交渉せず」の基本姿勢を取り、軍事的制圧を優先させていたなら、人命優先は満足には機能せず、生と死のサイコロの目の振れは殆どが偶然に左右されるということを学習したはずである。

 つまりこのようなケースでの拘束された場合の邦人保護に対しては日本政府は手も足も出ないということであり、そのことを学習しなければならない。

 このことは今回のチュニジア人質事件が改めて教えてくれたはずである。チュニジア政府はテロ武装勢力制圧を優先させた。その結末が日本人3人を含む20人の外国人観光客の犠牲であり、助かるも助からないも、銃弾が身体の致命的な場所に当たるか当たらないかの偶然によって決まった。

 果たしてこの学習が3月18日に自公与党が合意した安全保障法制整備の具体的な考え方の中の「在外邦人救出」に反映されているのだろうか。

 《自公が実質合意した安保法制の共同文書(全文)》asahi.com/2015年3月19日08時06分)から、「在外邦人救出」に関しての合意のみを抜き出してみる。 

〈(3)在外邦人の救出(自衛隊法関連)

 ○領域国の受け入れ同意がある場合には、武器使用を伴う在外邦人の救出についても以下の要件を前提に対応できるよう法整備を検討する。

 1.領域国の同意が及ぶ範囲、すなわちその領域において権力が維持されている範囲で活動すること

 2.派遣手続きについては内閣総理大臣の承認を要すること

 3.在外邦人の安全を含む活動の安全な実施に必要な措置を定めること〉――

 例え反映されていたとしても、事件解決の当事国たる領域国が「テロリストと交渉せず」の姿勢を取る以上、他国政府も他国軍隊も関与不可能となって手も足も出ないことに変わりはない。

 変わりがあるなら、そのことを明記し、国民に詳しく説明責任を果たすべきである。

 安保法制の国会成立によって海外で身柄拘束された場合の邦人保護・救出を目的に自衛隊の海外派遣が可能となったとしても、その保護・救出は領域国のテロリストに対する姿勢次第だとするのはあまりにも無責任である。

 安倍晋三が「国民の命と幸せな暮らしを守る」の美名で進めている海外邦人保護を目的の一つとした自衛隊の海外進出だが、どのような邦人保護も可能であるような幻想はあまり振り撒かない方がいい。


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