東国原国政転出騒動に見る大阪府知事橋本徹の言葉の合理性

2008-10-07 01:51:32 | Weblog

 橋本徹が単なるタレント出身者だというならまだ許されるが、弁護士を生業(なりわい)としていた人間である。特に公の場での言葉に合理性を持たせる責任を有する。ここで言う「言葉」とは、自らの考えに基づいて口にする言葉なのは断るまでもない。

 いわば考え自体に合理的関連性(=論理的整合性)を備えていなければならない。

 合理性の一カケラもない自らの不穏当な失言で就任5日で国土交通相を辞任することとなった中山成彬センセイが次期総選挙に出馬しないことを10月4日の地元宮崎市での記者会見で正式表明したことを受けて宮崎県知事のそのまんま東こと東国原英夫の後継出馬が取り沙汰されることとなった。

 このことに対して鳩山由紀夫民主幹事長が早速というか、当然の反応というか、対立政党の立候補者となるのである、お笑いタレントそのまんま東が引き出している有権者に対する人気が侮りがたいことを警戒してのことだろう、福岡県内での会見で「知事1期目の半ばで国政に転出すれば県民は失望するに違いない。途中で投げ出してしまう知事では評価されない」「サンスポ」)と批判したという。

 お笑い芸人ではないが弁護士兼テレビタレントとしてお笑いで人気を取って大阪府知事に高得票で当選、同じテレビタレント系として東国原と人気や政策が常に比較される橋本徹が当然の如くにいいネタになるとばかりに東国原後継出馬に関するマスコミのインタビューを受けた。

 橋下府知事「県民のみなさんが後押しするならぜひ。東国原知事も地元のために必死ですから。宮崎のためになるならがんばってほしい」(「asahi.com」

 「宮崎のため、国のためにプラスなら辞めることは全然問題ない」(同「asahi.com」

 上記「サンスポ」が詳しく伝えていた鳩山民主党幹事長の批判についての「asahi.com」の橋下の反応は<「任期を全うしても成果がでなければ意味はない。役人っぽい牽制(けん・せい)の仕方」と批判した。>となっている。

 東国原宮城県知事とお仲間だから、こういった身内庇いの言葉が口を突いて出たのだろうが、前後で合理的関連性(=論理的整合性)を欠いた言葉となっている。

 「任期を全うする」と言うときの「任期」は法律上規定された期間(県知事の場合は4年間)を在籍したということを指すわけではないのは誰でもが承知していることだろう。無為無策のまま県知事を4年間務めて、彼は県知事の「任期を全うした」と言ったら、滑稽なことになる。

 例えば彼はプロ野球の監督を4年契約で引き受けたが、意に反してチームの成績を4年間最下位のまま終わらせることとなった。

 この場合、彼は4年間の監督「任期を全うした」とは言わないだろ。言ったとしたら、同じく滑稽なことになる。「全うする」には能力及び成果を含むからだ。県知事の任期は4年間ですと言うのとは違う。何ら成果を上げない知事を任期を全うしたと言うなら、飛んでもない勘違いだと言わざるを得ない。

 分かりやすく極端な例を挙げよう。

 コソ泥やケチ臭い万引き、空き巣等を繰返して人生の大半を刑務所で暮らしこの世を終えた人間に対して、「彼は人生を全うした」と言うだろうか。誰かが言ったのをあの世で聞いていたとしたら、「俺をおちょくっているのか」と怒られるのがオチだろう。

 勿論、「彼はケチ臭い犯罪者として人生を全うした」と言うことはできる。事実「ケチ臭い犯罪者」としての能力・成果を人生を通して物の見事に演じ得たからだ。

 つまり「任期を全うした」という言葉は、その対象者が能力を発揮し、その能力にそれ相応に従った成果を付随させていることを前提として使われるが、能力を発揮せず、成果を見ない「任期」の経過に関しては使われない。

 当然、次のような言い方は可能となる。「彼は県知事の4年間様々な成果を上げた。その意味で彼は任期を全うしたと言える」と。

 だが、橋本徹は「任期を全う」するケースに「成果がでな」い場合も入れている。これは論理矛盾ではないだろうか。

 もし橋本徹の言い方が間違っていないとすると、先に上げた譬えで説明するなら、コソ泥やケチ臭い万引き、空き巣等を繰返して人生の大半を刑務所で暮らしてこの世を終えた人間に対して、「彼は人生を全うした」と言ったとしても許されることになる。

 誰もが成果を上げることを前提として任期に当たる。成果を前提とし、成果を結果とし得たとき、初めて「任期を全う」したと言い得る。成果という“結果”を想定せずに任期に当たる者はいないだろう。
 
 引き受けた職務の先に成果を見て任期に当たるということである。それが職務を引き受けた者の責任であろう。確かに「任期を全う」することにならないから「成果が出なければ意味はない」が、「任期を全う」は任期中の職務の結果(=成果)に対する評価であって、それを見ない、「任期を全う」することができるかどうか不明の段階で最初から「成果が出なければ意味はない」と任期を論ずるのは一種の責任放棄であって、そのことを理由として「任期」を途中で打ち切ったとしたら、安倍晋三や福田康夫が成果を何ら期待できなくなって内閣を投げ出しと同じく、無責任極まりない行為と言わざるを得ない。

 例えお笑いタレントの人気が生み出した宮崎県知事という地位であったとしても、形式上は立候補して県知事選を戦うに当たってマニフェストで示した「宮崎県をこう変える」とした約束(=契約)を有権者と交わしたのである。

 その時点で東国原はその約束を成果と見据え、任期に当たる結果責任を負った。4年間を経ずに途中で任期を投げ出すとしたら、4年の任期を待たずに自らが約束した(=契約した)成果を上げたときだろう。

 例え2年で辞めようと3年で辞めようと、約束した成果を十分に上げ得たなら、「任期を全うした」とは言えなくても、「彼は約束(=契約)を果たし、職務を全うした」と言える。

 東国原はお笑いタレントとしての人気を利用して宮崎の知名度は上げはしたものの、県政に関してはたった1年半しか経過していないのである、未だこれといった成果は上げ得ていないはずである。

 そういうことなら、鳩山民主党幹事長の「知事1期目の半ばで国政に転出すれば県民は失望するに違いない。途中で投げ出してしまう知事では評価されない」とした批判は別に合理的関連性(=論理的整合性)を欠いた言葉だとは言えない。

 それを橋下府知事は「役人っぽい牽制の仕方」と貶しているが、鳩山幹事長の批判が合理的関連性(=論理的整合性)を欠いた批判でないとしたら、「役人っぽい牽制の仕方」は逆に合理的関連性(=論理的整合性)欠いた再批判ということになる。

 各メディアが東国原の任期半ばでの国政への転出に反対する地元支持者の動向を伝え、昨6日になって「時事通信社」が「解散されても『今のところありません』と言い続ける」という言い回しで出馬を見送る意向を表明したと伝えているが、不出馬と言うことなら、「今のところ」とは次の衆議院選挙に関してはということなのだろう。

 鳩山幹事長の批判が橋本徹には「役人っぽい牽制の仕方」なら、地元支持者の反対の声も「役人っぽい牽制の仕方」と把えなければならなくなる。不出馬が動かない事実となったなら、「役人っぽい牽制の仕方」が功を奏した不出馬となる。そこに整合性を持たせることができるだろうか。

 自分が地方役人に囲まれ、自分の政策が反対されて思うように進まないことからの役人に対する反発が反対はすべて「役人っぽい」と把えることとなっているとしたら、そのように反対意見を役人的だとのみ規定する固定観念は政治家の必要資質とする柔軟な発想と相反する意思表示であって、そんな人間にどれ程の政治的創造性が期待できるだろうか。

 上記「asahi.com」では<自身の立候補や出馬要請については「まったくない。国のためにやるような男ではありません」と否定した。>ということだが、大阪府の財政問題を解決したなら、他の赤字地方自治体の大いなる参考となるだろうから、結果として「国のため」となる。何も国会議員になって国政に携わることだけが「国のためにやる」事柄となるわけではない。

 「私は地方政治の場から国にプラスとなることを成し遂げたい」ぐらいは言えなかったのだろうか。

 今日6日昼過ぎの「朝日テレビ」のワイドショー番組で有馬とか言う政治評論家が「東国原知事が立たないで40歳の政治家が立候補したら、20年30年とか続けることになって立候補のチャンスを失う。立つなら今がチャンスだ」といったことを話していたが、その話が正当性を持つのは政権交代がかしましく言われている今の状況下で東国原以外の候補者が我らの中山成彬センセイの後継として立候補して簡単に民主党候補を破って当選するという条件をクリアできた場合のみで、当選できなかったなら、次々期衆院選の立候補の可能性は十分に残されることとなって、有馬センセイの言葉は正当性を失う。

 あるいはその候補者が民主党候補を破って当選したとしても、政権交代が実現したなら、次々期衆院選で東国原の人気を全国区相応に広げるために候補者の差し替えといったこともあり得る。但しその間、東国原が民主党支持に気変わりしなければという条件つきとなる。気変わりした場合でも、民主党からの国政に向けた立候補はあり得る。

 尤も県知事の4年間でたいした成果を上げることができなかったなら、人気にかなりの陰りを見せることになるだろう。任期を全うするのも、人気を全うするのもすべては成果という名の結果にかかっている。


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