――マヤカシとする理由は、戦前の沖縄戦の犠牲に加えるに1945年8月15日敗戦を起点とした戦後の1972年5月15日沖縄本土復帰までの米軍統治の犠牲と差別の歴史的総量と全国土0・6%の沖縄の土地に米軍基地75%の差別が強いている物心共に亘る国民負担の総量と比較した場合、嘉手納基地以南返還の負担軽減のみでは差別解消のうちに入らないからだ――
沖縄県知事も名護市長も、多くの沖縄県民も普天間の沖縄県内移設に反対している中、防衛省が3月22日(2013年)、米軍普天間飛行場の移設先となっている名護市辺野古沖の埋め立てを申請する書類を沖縄県に提出した。
2月22日(2013年)の安倍・オバマ日米首脳会談で普天間の辺野古移設に向け具体的に対応していくとオバマ大統領に約束したとおりに、できなことをは書かない・言わないをモットーとしている手前、早速実行に移したというわけなのだろう。
これに対して地元沖縄県知事も移設先となっている名護市長も県外移設を求めた。
仲井真沖縄知事、「『辺野古への移設は、事実上無理ですよ、不可能ですよ』とずっと申し上げてきたのに、政府がなぜそれを考えないのか理解できない。実現の可能性を考慮しないで、政府が決めたから実行できるということは考えられない。」(NHK NEWS WEB)
仲井真知事は「政府がなぜそれを考えないのか理解できない」と言っているが、安倍晋三はアメリカとの約束優先で、移設を果たしてアメリカによくやったと褒められたいことしか頭に無いことが理由となっていることに気づいていないわけではあるまい。
頭の中にアメリカのことしかないとなれば、当然沖縄県民の反対意思など占める場所はない。
稲嶺進名護市長「これまでの環境アセスに関する書類の提出でも見られたように県民の目を欺くかのような不意打ちの形で埋め立て申請が提出されたことに憤りしか感じない。沖縄県は、これから審査に入ると思うが、環境アセスの段階でも県の指摘事項が多くあり、県は埋め立て申請に対して、『はい分かりました』とはいかないと思う。県から意見を求められればこれまで表明しているとおり、はっきりと『辺野古への移設は、まかりならん』と言いたい」(同NHK NEWS WEB)
普天間移設県外要望の沖縄感情は沖縄戦や戦後の米軍統治、さらに全国土0・6%の沖縄の土地に米軍基地75%の過度な国民負担に現れている日本本土の沖縄に対する差別への反発を養分としているはずだ。
このような沖縄の反対感情に対して我が日本の安倍首相は辺野古沖埋め立て申請後、次のように記者団に発言している。
安倍晋三「嘉手納以南の返還も含めて、沖縄の負担軽減に全力を尽くしていきたい。普天間の固定化はあってはならない。 断じてあってはならないと」(テレビ朝日)――
先に挙げた沖縄の歴史的と現状を合わせた基地に関わる犠牲と負担の総量、さらに全国土0・6%の沖縄の土地に米軍基地の75%を引き受けている国民負担の差別から見て、「嘉手納以南の返還も含めて、沖縄の負担軽減」では明らかに限りなくゼロに近い、いわばないに等しい不公平な交換条件(=代替補償)でしかない。
「100万円の損害を与えてしまった。キャンデー一本奢るから、チャラにしてくれないか」と言っているようなものだが、そんなことが気づく安倍晋三の賢明なる脳ミソとはなっていない。
佐々江駐米大使にしても脳ミソという点で安倍晋三と変わらない。3月22日(2013年)、ワシントンのシンクタンクで講演している。
佐々江駐米大使「申請が承認されれば、人口の少ない地区に基地が移設され、沖縄に駐留するアメリカ海兵隊の一部のグアムへの移転と基地の整理統合が促進されることになり、沖縄にとってとても大きな利益になる」(NHK NEWS WEB)
沖縄の米軍基地問題は現在にまで続いている沖縄全体の歴史的と現状の問題であって、その全体を見ずに一地域を取り上げて、「人口の少ない」というレベルからのみ基地問題を解釈、「沖縄にとってとても大きな利益になる」と言うことができるのは、安倍晋三と同様に辺野古移設を果たすことのみを米国への使命と考えていて、そのことしか頭にないからだろう。
ではなぜ辺野古移設の米国への使命のみが頭に占めるかと言うと、民主党政権の歴代首相と同様に普天間の県外移設という困難を実現するだけの政治力を安倍晋三にしても持たないからだろう。
困難に挑戦する政治力を持たない替りに海兵隊と航空部隊の一体運用の必要性とか沖縄の地理的特性とかの口実を設けて、沖縄全体の歴史的と現状から目を背け、今まで通りに沖縄に押しつける安易な道を選択しているに過ぎない。
その証拠は普天間海兵隊の一部グアム移転、一部オーストラリアやハワイへのローテンション移転の計画が証明する普天間の相対的価値低下許容の可能性であり、このことは同時に沖縄の地理的特性の相対的地位低下をも意味するはずだ。
こういった最近の状況は普天間基地を海兵隊と航空部隊の一体運用の形で日本の九州地方や中国地方に移転させても部隊としての価値維持の可能性をも教えていることになる。
また国家防衛・国土防衛の安全保障は軍事力と外交と経済の一体的運用によって力を発揮するのであって、如何に一体的に運用するかは偏に政治の力にかかっているはずだ。
最大限であるべきは政治の力だと言うことになる。
その政治の力を満足に発揮できず、かつての沖縄全島米軍基地化の固定観念に麻痺し、その範囲内で足し算したり引き算したすることでしか沖縄の米軍基地問題を考えることができない制約を日本の政治は自らに課している。