既に自衛隊を派遣しているとなると、要らぬ心配となる。だが、自衛隊を派遣していると報道している記事が見当たらない。防衛省のHPには2012年1月の北海道岩見沢市等への除雪支援の災害派遣が最後となっていて、今年の派遣に関わる記述は見当たらない。
勿論、自衛隊の災害派遣は都道府県知事の要請に従う。今冬、豪雪に見舞われている地域の知事は自衛隊に派遣要請する程の災害と見ていないということなのだろうか。
だとしても、雪の被害で多くの死者を出している。3月4日付の「毎日jp」記事は、総務省消防庁の今冬の雪の被害で3月4日午前7時までに89人が亡くなったとする発表を伝えている。内69人が雪下ろし中の屋根から転落、あるいは除雪作業中の転倒のケース。全体の6割に当たる53人が65歳以上の高齢者。
都道府県別死者は北海道最多の29人、秋田県16人、青森県15人、山形県10人などだそうで、重傷者519人。
これだけ多くの死者を出しているのだから、雪下ろし、その他の除雪に自衛隊を派遣してもよさそうなものだと思ったが、そう思うのは素人考えに過ぎないのだろうか。突出して一地域に集中しているわけではなく、4地域分散の平均で計算すると、災害派遣要請基準に入らないということなのだろうか。
但し安倍首相は豪雪対策を古屋防災担当相に電話で指示している。3月2日夕方、山梨県鳴沢村河口湖近くの別荘を訪問。翌3日はゴルフの予定。大雪の情報に接したのだろう、3日午前、被害状況の確認、除雪の徹底、ライフライン確保と交通網の復旧への尽力等が指示内容らしい。
そして別荘から戻ると、3月4日朝、関係閣僚会議を開いて、古屋防災担当相に指示したのと同じ内容の指示を行なっている。《北海道の雪被害 首相「除雪や復旧に全力を」》(NHK NEWS WEB/2013年3月4日 11時55分)
安倍首相「大雪により大きな被害が生じており、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます」
その上、〈現地の被害状況を詳細に把握するため、防災を担当する亀岡内閣府政務官と木村総理大臣補佐官を4日、北海道に派遣することを決め〉たという。
現地被害状況把握にわざわざ東京から内閣の人間を派遣する必要があるのだろうか。国交省の出先機関が各地に存在するし、都道府県庁の役人に調査させてもいいわけである。
いや、調査する前に管轄内全域に亘って既に降雪状況・被害状況を把握しているはずだし、把握していなければならないはずだ。
いわばインターネットやファクスを通じた問い合わせ一つで、各地の被害状況は把握できるはずだ。
自治体が何ら調査していない、情報は何ら把握していないとうことなら話は別だが、そんなことはないだろう。
例え過剰反応に終わったとしても、手遅れにならないための早手回しの危機管理から、自衛隊を派遣して除雪だけでも担当させ、併行させて状況把握に努めてもいいわけである。
どうも安倍首相のこれまでの危機管理を見ていると、アルジェリアの邦人人質事件でもそうだが、中国艦船からの自衛隊艦船に対するレーダー照射事案でも、しっかりやっていますという姿勢を見せるためのアリバイ作りに思えて仕方がない。
なぜ自衛隊を派遣しないのか、何よりも奇異に感じたのは昨日の以下の記事に触れた時だった。《国交相 公共工事中止し除雪も》(NHK NEWS WEB/2013年3月5日 14時35分)
北海道で9人が死亡するなど暴風雪による被害が相次いだことを受けた太田国交相の閣議後の会見発言だそうだ。
太田国交相「記録的な大雪で除雪の予算を確保できるのか心配している自治体も多いが、緊急事態であり除雪にかかる費用は国としてもしっかり支援するので除雪を急いでほしい。
除雪にかかる人手確保のため、国の直轄の公共工事を進めているところは工事を止めて、除雪に対応できるよう力を注ぎたい」――
除雪の不足費用は国が支援することと、人手不足は国直轄の公共事業従事作業員を回すと言っている。
だが、この二項目は自衛隊を派遣することで同時に補うことができるはずだ。派遣自衛隊員に対しては派遣手当等の支出が必要となるかもしれないが、基本給は関係しないことに対してわざわざ工事を止めて完成を先延ばした場合の作業員の報酬、その他は工事が伸びた分、基本給がまるまるかかることを差引計算すると、自衛隊派遣の方が国の支出は少なく済むはずだ。
尤も自衛隊員の方が3倍、4倍(2倍では完成が伸びた分で差引ゼロになってしまう)と高額を得ているなら、土木作業員をコキ使った方が安く上がる。
そういった魂胆なのだろうか。
さらに自衛隊派遣のメリットは災害派遣を担当する陸上自衛隊の施設隊はインターネットで調べたところ、北海道に複数個所、青森、秋田、福島、山形といった豪雪地域の近く駐屯地を構えていることと、除雪に必要な、雪を押していき山にするブルドーザーや雪を1トン2トンと大量に掬ってダンプに積み込んだり、一定個所に山にしたりする大型のショベルローダー等の重機やダンプを備えていることである。
住民任せの除雪、あるいは過疎・高齢化地域の除雪は役所の職員を狩り出しているところもあるらしいが、そういった除雪よりも機動的に作業を行うことができるはずだ。
自治体の長の派遣要請を待たずに官邸の方から、必要ならいつでも派遣すると申し出てもいいと思うが、どうだろうか。
気温が高くなってきて、屋根からの雪の雪崩、山の斜面や壁面からの道路への雪崩の注意を呼びかけている。除雪を手っ取り早く行ってライフラインを確保する危機管理からも、これ以上雪害からの死者を出さない危機管理からも、自衛隊の早急な派遣が必要だと思うが、やはり要らぬ心配なのだろうか。
多分安倍晋三に任せておけば、地域のこういった危機管理も大丈夫なのだろう。