菅仮免の自分からは辞めるつもりはない3法案成立が退陣条件は多数決の原理を歪める行為

2011-06-29 09:43:54 | Weblog



 菅仮免は一昨日(6月27日)の首相官邸記者会見の冒頭発言で退陣条件に3法案の成立を挙げた。

 菅仮免「6月2日の民主党の代議士会において、私が震災と原子力事故対応に一定のめどが立った段階で、若い人に責任を引き継ぎたい、それまで責任を果たしたいと申し上げたところです。私としては第2次補正予算の成立、そして再生可能エネルギー促進法の成立、そして公債特例法の成立。これが一つのめどになると、このように考えております」

 民自公党執行部が合意した通常国会50日間会期延長案を菅仮免が70日にひっくり返した、プラス20日の必要理由として挙げた第2次補正予算案と公債特例法案の成立に加えた再生可能エネルギー促進法案の成立を改めて自身から口にして述べたに過ぎない。

 退陣時期を明確にしたわけではない、この3法案の「成立」を条件としたことに対して、成立しない場合はなお居座るのかとの疑念を周囲に与えた。

 その疑念に則った記者会見での質問。

 山口NHK記者「NHKの山口です。総理は先ほど退陣の3条件を示されましたけれども、そうすると逆に言うと再生エネルギーですとか、公債特例法案が成立しなければ9月1日以降も総理を続投するという理解でよろしいでしょうか」

 菅仮免「先ほど申し上げましたように、6月2日の代議士会で私は震災や原子力事故に対する一定のめどがついた段階で、若い世代に責任を引き継ぎたい、それまではしっかり責任を果たしていきたいと申し上げました。その一定のめどということについて、先ほど申し上げましたように、一つは2次補正の成立、一つは公債特例法の成立、一つは再生可能な自然エネルギー促進法案の成立、この三つをもってこの一定のめどと、そのように考えるということを申し上げさせていただきました。まさにそのように考えているということです」

 これは冒頭発言の単なる繰返しに過ぎない。成立しなかった場合の対処について何も答えていない。質問したNHK記者は、居座りの言葉を頭に思い浮かべたに違いない。

 もう一人の記者も居座りの疑念に添った質問をしている。

 相本西日本新聞記者「西日本新聞の相本です。総理は今3つ挙げられましたその内の一つ、エネルギー政策の見直しについて、強い意欲を示されておりますが、もし延命という批判が当たらないということであれば、総理の覚悟をお聞きしたいと思うんですが、今国会に提出されている法案の成立に野党の協力が得られず成立が出来ない場合は、そのエネルギー政策について国民に信を問うというふうなお考えはおありなんでしょうか」

 菅仮免「今回の東電、福島原発の事故を経験して、我が国のエネルギー政策をどのようにしていくべきか、これから本格的な議論を始めなければならないと思っております。私はすでに、従来のエネルギーの基本計画は現実に合わなくなっているということで、白紙からの見直しということを申し上げ、そして従来の化石燃料、原子力燃料に大きく依存してきたエネルギー政策を、再生可能エネルギーと省エネルギーという2つの柱を加えて、そちらの方向に進むべきだということを言って参りました。そういう方向性と、すでに法案を提出している自然エネルギーの促進法は、全く軌を一にするものでありますから、何としても私の内閣の責任で成立をさせたい、そのように考えております」
 
 「何としても私の内閣の責任で成立をさせたい」――

 成立を「私の内閣の責任」とするということは成立するまで、「私の内閣」を維持するとも受け取れる、なかなか巧妙な言葉となっている。当たり前の指導力、政治力には見るべき才能はないが、延命に関する才能は天才的である。

 そして昨6月28日の民主党両院議員総会での発言。WEB記事から全文参考引用させてもらう。 

 《菅首相の発言要旨》時事ドットコム/2011/06/28-20:32)

 28日の民主党両院議員総会での菅直人首相の発言要旨は次の通り。

 昨日、記者会見を行い、2011年度第2次補正予算案と特例公債法案、再生可能エネルギー促進法案が成立すれば一定のメドが付いたと考えると明言した。(いずれも)この国会で何としても成立させなければならない。今回の(福島第1原発)事故を受け、エネルギー基本計画を白紙から見直すことを決めた。エネルギー政策をどのような方向に持っていくかは次期国政選挙でも最大の争点になるのではないか。後世に禍根を残すことがないよう原子力行政の改革についても早急に一定の方向を出したい。残された時間、完全燃焼する覚悟でこの三つの課題(に取り組み)、原子力行政に禍根を残さない方向性を示すことができればと思う。(原子力行政の改革には)もちろん長い時間がかかるので、時間の許される中で方向性を打ち出すところまでやらせていただきたい。

 なぜそこまで頑張るのかという見方もあるかもしれないが、私のことだけで言っているのではなく、次に安定的に引き継ぐ(ためだ)。私個人が何かを得たいということではない。民主党は少なくともこの2年間、必ずしも国民に十分な信頼なり理解をいただけていない状況にあるが、残された2年間で必ずや国民に理解していただき、信頼を回復できる道筋がある。そこにつなげていきたいという思いで行動しているとぜひご理解いただきたい。

 「この国会で何としても成立させなければならない」とは、6月15日開催の再生可能エネルギー促進法の早期制定を求める集会に飛び入り参加して菅仮免が発言した言葉に擬(なぞら)えるなら、「菅の顔を見たくないなら、この法案を通した方がいい」ということになるのだろう。

 だが、成立を退陣のハードルとしていることに変わりはない。3法案の成立が「一定のメド」だと。

 但し言っていることに色々と矛盾がある。「次に安定的に引き継」ぎたいとしているが、成立が必ずしも保証されていない状況下での「次に」としている時期は成立の保証不明に連動して時期不明となるにも関わらず、「次に引き継ぎたい」としている矛盾である。

 成立が保証されていない以上、退陣時期も不明確となり、「次に」もいつ頃になるのか不明確となるにも関わらず、「次に」を持ち出している。

 この矛盾は3法案の成立を退陣の条件としていることによって起きている矛盾であろう。

 法案成立も退陣も「次に」も不明確な状況に置いて、「今回の(福島第1原発)事故を受け、エネルギー基本計画を白紙から見直すことを決めた。エネルギー政策をどのような方向に持っていくかは次期国政選挙でも最大の争点になるのではないか」と、「最大の争点」という強調語までおまけにして発言したものだから、今朝のNHKニュースでやっていたが、衆議院の解散を示唆し、退陣を牽制しているのではないかとか、解散も視野に入れて、いわば起死回生の逆転を狙って、さらに延命も企んでいるのかといった疑心暗鬼を生むことになっている。

 果たして、法案成立を退陣の条件とすることが許されるのだろうか。

 法案成立は首相自身が自ら手立てし、自らの才覚で実現させる極めて個人的な能力事項であろう。勿論、現在参議院が与野党逆転状況下にあり、数の劣勢が成立の阻害要件とはなっている。

 いわば菅仮免の手立て、才覚を縛っている。個人的な能力の発揮に制限を加えている状況にある。

 だが、元々民主主義が多数決を原理としていることは自覚していたはずだ。いや、常に自覚して行動していなければならない。民主主義は数取り合戦だと言い直すこともできる。数を獲得し、その数に頼らなければ、法案成立も思うようにはいかない。昨年の参院選で数の力を失ったのは菅仮免自身の能力の成果であった。その程度の才覚しかなかった結果の数の喪失であろう。

 とは言っても、数取り合戦は選挙による数の獲得だけではなく、連立によって法案成立に必要とする数を補強する方法もある。あるいは政策ごとに野党と手を組んで数の獲得を方法もある。

 その努力はしただろうが、連立に関してはそれを実現させるだけの才覚を現在のところ、菅仮免は発揮することができなかった。「民主党は少なくともこの2年間、必ずしも国民に十分な信頼なり理解をいただけていない状況にある」とは言っているが、「国民に十分な信頼なり理解をいただけていない状況」をつくり出した主体は「民主党」ではなく、菅仮免自身である。

 「民主党」とするところに責任回避意識・責任逃れがある。詭弁を用いてまでして、責任を回避する。ここに既に指導者としての資質を欠いていることが分かる。

 2010年7月の参院選で菅仮免は数を失った。だが、その劣勢を跳ね返すだけの能力・才覚を発揮し得ていたなら、今年4月の統一地方選を党勢を回復し、尚且つ拡大する機会とすることができないわけではなかった。もしその機会を生かしていたなら、また違った局面を迎え、退陣要求など起きなかったろう。

 統一地方選の勝敗は国政選挙と同様に内閣支持率と党支持率に対応するから、例え参議院の与野党逆転の状況に変化はなくても、統一地方選で勝利できるだけの内閣支持率と党支持率を獲得できていたなら、そのような国民の支持は参議院の数の劣勢をある程度補い、菅仮免に対する風当たりをある程度和らげることができたはずだ。

 国民の支持を背景に強気の姿勢を取ることもできる。国民の高い支持を得る程に自らの能力・才覚を発揮し得ている政治状況を導き出しているということなのだから、各支持率は能力・才覚発揮のバロメーターとなる。

 だが、4月の統一地方選までに内閣支持率も党支持率も上げるだけの能力も才覚も発揮できなかった。特に3月11に大震災発生以後の震災対応と原発事故対応の遅滞・混乱が却って支持率の悪化につながり、統一地方選はご覧のように散々の結果に終わった。

 すべてが菅仮免が演出した各支持率であり支持率に連動した選挙結果であった。中部電力停止要請で僅かに内閣支持率を上げはしたが、一時的得現象で終わり、元の木阿弥状態に戻った。

 自らの能力・才覚がないばっかりに法案を成立させる手立てを殆んど失ったのである。残る手立ては野党案の丸呑みあろう。但し与党としての主体性喪失という代償を支払わなければならない。与党としての意味を失うということである。

 法案成立が首相自身が自ら手立てし、自らの才覚で実現させる極めて個人的な能力事項でありながら、連立の形成や内閣支持率の上昇、地方選の勝利等に向けた手立てを講じて法案成立の基盤を整備することができなかった。整備するだけの能力を発揮できなかった。

 既に菅仮免の無能に問題がある以上、自らは政権の背景に退いて、新しい主役と脇役を登場させるべきだろう。菅仮免が無能であったために法案成立の手立て・才覚を講じることができなかったのだから、新しい主役に解散・総選挙なり、連立なりの法案成立の手立て・才覚を講じる機会を譲るべきである。

 潔くそうすることはせずに退陣を条件に成立を半ば強制することは本来的な意味での民主主義の多数決の原理を歪める行為であり、許されはしないはずだ。

 勿論、「菅の顔を見たくないなら、この法案を通した方がいい」にしても多数決の原理と堂々と渡り合おうとする意志表明とは言えず、それを否定する邪道も邪道と言える。

 一旦退陣を表明しておきながら、成立できなかったなら、退陣することはできませんと次の国会にまで職にとどまり、成立を図ろうとすることも、多数決の原理の壁に阻止されたことを無視する行為であり、やはり退陣を条件とすることとなって許されはしない。

 では、多数決の原理に堂々と立ち向かうために解散・総選挙して数を獲得しますとすることが許されるかというと、解散・総選挙は退陣の条件に入っていなかったことで、自分勝手に条件を曲げる違反行為となって、これも許されるはずはない。

 両院議員総会で衆院比例東北の菊池長右エ門議員が「被災地は(政府の震災対応の遅れで)最大不幸社会になっている。首相は(辞任し)一日も早く四国巡礼の旅に立つように意志を固めてほしい」(時事ドットコム)と発言したそうだが、数は力の数をどう手立ても才覚もできなかったのだから、素直に従って旅立つべきだろう。

 これ以上無能な首相は要らない。

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