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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

マルタ騎士団とナイトを学ぶ

2022年03月11日 | 歴史

 2名の日本人が、日本人として初のマルタ騎士団の騎士(ナイト)の階級を得た。

 ナイトに任命されたのは、大阪市に本拠を置いて自然保護や国際文化交流活動をする「ROYAL NIPPONN財団」の毛利康成代表理事らとされている。
 マルタ騎士団をハリウッド映画でしか知らないので調べてみた。以下は、ウイキペディアの要約であるが、
 マルタ騎士団は通称で、正式名称は「エルサレム、ロードス及びマルタにおける聖ヨハネ主権軍事病院騎士修道会」で、現在はカトリックの騎士修道会としてローマに本部を置き120カ国で慈善活動を行っているとされていた。さらに、現在は領土を持たないが、かつて領土を持っていた経緯から今でも国際法上の「主権実体」・「領土なき国家」と解されて国連総会や欧州連合にオブザーバーとして参加している。12世紀の十字軍による創設から900年以上を経た今日でも、世界最古の騎士団として110カ国と外交関係を持っており、ローマにある騎士団中央政府建物内はイタリアから治外法権が認められているそうである。
 マルタ騎士団憲章という憲法と統治機構を持つ騎士団は、全世界で13,500名の騎士、80,000名の無給ボランティア、42,000名の有給専門職、若干名の騎士団付司祭で構成されるが、騎士のみがマルタ騎士団員と呼ばれるとなっている。また、外交・公用に携わる者等500名がマルタ騎士団パスポートを持っているそうである。
 騎士団は誕生の経緯から厳然たる階級組織であり、第一階級(最上級騎士)、第二階級(上級騎士)、第三階級で構成され、新任騎士は例外なく第三階級に置かれるとされている。騎士への登龍には、聖職者の推薦、貴族家系出身、等の中世的条件があるとされるが、現在では非貴族出身者にも登龍・昇進の道が開かれているようであるが、騎士団創設の経緯・性格からカソリック信仰者であることは不可欠の要件であると思われる。

 ナイトは、英国の専売と思っていたが、イギリスの「ナイト」は一般的に「勲爵士」と訳されるようにイギリスへの貢献に対して世襲権を持たない準貴族という称号(ナイト)と尊称(サー)を与えるに過ぎない様であるが、豊田章一郎(トヨタ会長)氏、故コリン・パウエル(元統参議長・国務長官)氏などが列せられていることを見れば、国際的な評価なども選考基準になっているのかもしれない。
 女王陛下が受勲者の肩に剣を置いて爵位を与える受勲式は見知っているが、マルタ騎士団の受勲式はさらに中性的なものではないだろうかと思う。
 オーストラリア等の多くの国でナイト爵位は廃止されたが、マルタ騎士団とイギリスには末代まで残して欲しいものである。日本も英国ナイトに準じた「国民栄誉賞」を設けているが、もっと「相応しく」「名は体を表す」呼称はないものだろうか。


防衛意識の変化-2

2022年03月10日 | 防衛

 昨日は、ウクライナ侵攻という経験に学ぶ若しくは学ぼうとする賢者に触れた。

 本日は、この経験に学べない事例を考えてみた。
 第1はバイデン大統領である。安易な撤退でアフガンをタリバンに進呈するとともに友邦国の信頼を損ない、米国協力者をも見捨てるという人道過誤を犯したが、今回も判断と決断の遅れからウクライナをロシアに進上しようとしている。二つの事象に共通しているのは「友好国との協調重視」という言葉に隠された「アメリカ単独では矢面に立たない原理」である。この行動原理は、トランプ氏のアメリカ・ファーストを嫌う日本の識者も高く評価していたが、利害の入り組んだ国際社会では調整に時間を取られて、決定が「証文の出し遅れ」になってしまうことは避けられない。加盟国でないウクライナ支援に動くはずもないNATO軍とEUとの協調に期待した行動原理がロシアの暴走を許したのは間違いのないところである。ウクライナの核放棄に際して米英(後に仏も)が保全を約したブタベスト覚書の精神に立てば、ロシアが国境に大軍を終結させた時点で非難声明以上の明確かつ具体的メッセージを発出できたと思っている。トランプ氏は「プーチンは賢い。それ以上にバイデンは馬鹿だ」と酷評したが、政敵という面を割り引いても、トランプ氏の評価が正しく思える。
 第2は立憲民主党である。維新が政府に対して「アメリカとの核シェアリング議論を進化させる」よう要求したことに対して、立民は「この時期に議論するのは相応しくない」と応じたが、憲法や核についての議論を忌避・先送りするのは何度目だろう。「非核3原則の逸脱議論には応じない」、「安倍政権下では憲法を議論しない」、「コロナ禍で憲法の緊急事態条項を云々するのは火事場泥棒」、「改正国民投票法の検証期間中は憲法を議論しない」、近年の記憶でもこれらのフレーズが繰り返され、旧社会党時代を含めれば「憲法・防衛(核)には触れない」が野党の信条となっている感が強い。
 泉代表は「適当な防衛力の整備は必要であるが、核兵器で通常兵器は抑止できない」と正論を継いでいるが、しからば「何を・どの程度」との具体策はどこにも見出せない。立憲民主党が真剣に憲法と核を議論するためには更にどのような経験が必要なのだろうか。新聞の解説するところでは、泉代表の言は党内極左派閥の「サンクチュアリ」と「国のかたち研究会」に配慮した側面が大きいとされるが、コップまでも至らぬ御猪口の中の嵐のために国策に関する議論を回避・犠牲にするのは如何なものであろうか。

 塩野七生氏のルネッサンス考のなかで、ある表現に接した。曰く「宗教は信じることを、哲学は疑うことを起点としている」というものであるが、預言者の一言半句も変えることなく時宜に応じた神学解釈で対応する宗教と、先人の結論を疑うことで発展する哲学の存在を、宗教を護憲派、哲学を改憲派と読み替えれば、日本国憲法に対する国民の選択に通じるものと解釈した。
 憲法は、GHQのG2所属の左傾グループの原案に枝葉を付けたものであることは明らかとなっているが、護憲派にとっては大日如来の預言との位置付けであろうか。


防衛意識の変化-1

2022年03月09日 | 防衛

 ウクライナ紛争は、国防・軍事に対する課題と選択を国内外に突き付けている。

 国際的には、米英独が軍事同盟非締結国に対する戦闘機を含む武器供与を決定した。日本もウクライナからの対戦車砲支援要請には法律の壁で供与できなかったものの軍用ヘルメットの提供には踏み切ったが、ウクライナからは儀礼的謝意は受けたもののロシアからは紛争加担と名指しされるという、「虻蜂とらず」に終わりそうな雲行きである。
 本日投開票が行われる韓国大統領選でも、親中朝の与党候補はウクライナ紛争勃発後に支持率が低下しているといわれる。
 ロシアと1000㎞に及ぶ国境線を有するフィンランドは、EUには加盟したもののロシアを刺激することを避けるためにNATOには加盟せず国民もそれを是としてきたが、ロシアのウクライナ侵攻目的がNATO加盟阻止であった現実から、NATO加盟を求めるという世論が急激に台頭していると報じられている。世界三大エレキバンドの一つ、ザ・スプートニクスの「霧のカレリア」で有名なカレリア地方を1965年の冬戦争で失ったトラウマを持つフィンランド国民としては、外国の支援を受けられずにカレリアを割譲した無念さは未だに生き続けているようである。
 日本でも、多くの原発を抱える福井県知事が原発防御に陸自の配備・駐屯を防衛相に打診した。これまで多くの首長は、市民活動家の「自衛隊基地周辺は攻撃目標になる」とのプロパガンダを鵜呑みにするかのようにしてきたが、ロシアの無差別攻撃を見る限り「抵抗が弱く自軍の損耗が防げる地域を無差別に攻撃して目的を達成する」というプーチン戦術が露わになり、中国も大いに参考にするであろうことは確実と思われる情勢では、福井県知事のような選択はますます増えるように思う。秋田県の佐竹知事の動向や如何に。
 専守防衛・敵基地攻撃能力の是非として長射程の武器を封じている我が国としては、他国からの侵略は、大東亜戦争末期の無差別空襲や、敵の上陸を水際で阻止する沖縄線・硫黄島線に近い本土決戦にならざるを得ないため、国内の全て・特に軍事施設の無い抵抗の弱いところに攻撃が集中することになるのは避けられないと思う。

 80歳を超えるウクライナ老人が、レジスタンスに参加している姿が報じられた。先日「銃を執るのに吝かでないが、視力・聴力・体力から壮丁の足手纏いにしかならないだろう」と自嘲したことを恥じている。抵抗の意志さえあれば何等かの働き場所は有るだろうことから、歩ける限り国難には身を捧げるべきと改めて決意し直した。


ウクライナ支援

2022年03月07日 | 美術

 ウクライナの和平交渉は、遅々として進みません。
 プーチンにすれば、停戦交渉妥結=降伏文書調印と考えているのは明白で、人道措置として設けることに双方で合意した「避難者の人間回廊」の攻撃すら容認しています。
 戦場や戦闘での行為に対する倫理感が今ほどでなかった時代、大東亜戦後の軍事法廷(東京・横浜・マニラ・・・)では一方的な証言等で多くの日本軍人が「非戦闘員への残虐行為」と断罪されましたが、100年後の現在、プーチンとロシア軍に対する懲罰は、極東軍事法廷の判断を遥かに超えるべきと思います。
 ウクライナで抵抗を続ける軍民に敬意を表するとともに、彼らが無事に家路につける日が早からんことを願って、拙い絵を捧げます。


「家 路」(F20)


核シェアリング

2022年03月06日 | 軍事

 ウクライナ危機に遭って、核シェアリングの是非に関する議論が活発である。

 自分は「日本はイスラエル型の核兵器隠れ保有国」であるべきとの持論であるものの、非核3原則堅持が日本基準であることは理解しているが、本日は、それらに関するあれこれを書いみたい。
 本朝のTV番組が、「核シェアリング議論を進めることの是非」に関するデータ投票を求めていた。賛否は拮抗若しくは反対意見が多いだろうとの思いで見ていたが、集計結果は案に相違して、賛成76%、反対19%、わからない5%であった。ある程度のポジションに在り発信ツールを持つ人が声高に叫ぶために、いつしか核兵器に関する議論は悪漢・悪魔の主張との風潮に彩られているが、声なき声の多くが「保有は別にしても議論はして欲しい」と切実に願っているように思った。もちろん、この数字は傍証の一つと捉えられるべきものであろうが、核議論=門前払いの図式は再考する必要があり、個人に対する根拠なき誹謗中傷さえ国会議員の免責特権に守られている現状からしても、国防の根幹に位置する核論議を国会で聖域視することは改められるべきと思う。
 核論議を忌避する主張の枕詞に「唯一の被爆国として」があり傾聴には値するとしても、もし日本がこのまま2回目の被爆国となった場合について考えるならば。
 ・天国にいるヒロシマの被爆者は新たに天国に召された被爆死者に「私らだけで十分なのに同じ災難に遭うて!!。アンタら80年間も何しちょったん」と広島弁で問いかけるように思える。
 ・1000年後の歴史家・考古学者は日本国と日本人を、「何等の方策を講じることなく、同じ厄災を2度も被った学習能力のない怠惰な国・国民」と分類するに違いない。

 銃規制に反対する全米ライフル協会の定型句は「銃が人を殺すのではない。人が人を殺す」である。人類が持ってしまった核兵器であるが、白人至上主義的傾向を持つトルーマン以外は使用していない。核兵器使用=人類の終末という概念が浸透して以降、強国の指導者は勿論、隣国との軋轢に悩むイスラエルやパキスタンの指導者ですら核を恫喝手段として使用しない理性と使用できないシビリアン(ポリティカル)・コントロール形態を保ち続けているが、ウクライナに対するロシアのように強国が狂国に変貌した場合には一挙に危うくなるもので、中朝も同じ道を進む可能性があると思っている。
 現実的には日米の核シェリングは困難であると思うが、アメリカの核兵器がドイツ・スペイン・ディエゴ・ガルシア・日本に保管されているのは確実視されており、近い将来には米攻撃型原潜導入を決めたオーストラリアにも保管されることは確実で、さらにオーストラリアは原潜を機に核シェアリングに先鞭をつけることも予想される。