トランプ大統領が、イラン攻撃の10分前に攻撃を中止したと述べた。
攻撃は30分前に決定したが、10分前の攻撃機発進直前に中止したというもので、中止の理由は「攻撃によるイラン側予想被害(150人)と撃墜された無人機損失が釣り合わない」と云うトランプ流ビジネスマン的な表現で、これまでアメリカ(他の国も同じであるが)が主用していた「国益と自由を守る」ためでないことが注目される。勿論、1国の武力行使がこのような安易な理由で決定される筈もなく、真意はイランに「航空機や船舶に対する攻撃で人的被害が生じた場合は、即座に攻撃する。部隊は30分以内で攻撃に移れる即応態勢にある」というメッセージを送ったものと思う。また、数日前にトランプ大統領が「無人機の撃墜は軍(又は革命防衛隊)将官の独断か」とも述べていることから、イランに対して政治が武力をコントロールすることを求めているものとも考えられる。本日は、イランの政体と軍事組織について勉強した。1979年のイラン革命後、イランは「法学者による統治」を国是として、国家元首に相当する最高指導者はシーア派の最高解釈者(法学者・終身制)が務め、神の意思に従って国家を指導している。イランには大統領制も敷かれているが、大統領は国家元首ではなく行政府の長であり他国における首相と同等の地位を与えられているに過ぎない。軍事組織としては、大統領・国防省が指揮する正規軍の他に、革命防衛隊省の統制下にある「革命防衛隊」がある。革命防衛隊省も形式的には大統領の指揮監督下に置かれているが、独自の評議会によって部隊運用がなされていることから、大統領のコントロールが及ばない組織となっている。革命防衛隊は、旧帝政への忠誠心が未だ残っているとの疑念を持たれた正規軍への対抗として、ホメイニ師の命令で1979年に創設され、当初は国民の道徳監視を行ってホメイニ師を援助(秘密警察的活動)とされていたが、現在では正規軍とは別に独自の陸海空軍、情報部、特殊部隊、弾道ミサイル部隊等を持ち、戦時には最大百万人を動員できる民兵部隊も管轄し、さらには多数の系列企業(建設・不動産・石油事業)をも所有している。このようにイランは、 三権はおろか軍権まで最高解釈者(法学者)であるハメネイ師に集中しており、彼の意思・見解で開戦まで決定できる国である。
イランの政体と軍事組織を整理してホルムズ海峡を眺めると、同海峡の安全と日本の石油事情が終身独裁者ハメネイ師の手中にあることが理解できた。今回、安倍首相がハメネイ師と会見したが、師の嫌米・自立(イスラム自律)の意思は固く、米国との対話すら頑なに拒否する姿勢が再確認されただけである。イランの他にも、主体思想で極東の安全を弄ぶ金正恩氏(師)、中華思想の野望を隠さない習近平氏(師)がおり、思想・宗教の終身指導者ほど厄介なものは無いと思わざるえ終えない。