もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

秋田のイージス・アショア配備について学ぶ

2019年06月13日 | 軍事

 イージス・アショアの配備候補地である秋田において、候補地選定データのミスが発覚し、併せて住民説明会で防衛省側の居眠りによって説明会が頓挫する事態が起きた。

 居眠りはさておき、候補地選定時のデータを誤っていたことは、あってはならないものであると思う。ミスは射界制限算定の際にgoogleの地形データ読み取りを誤ったことに起因しているとされているが、作業の過程でより正確な国土地理院のデータとの照合(ダブルチェック)が行われなかったこと、現地偵察でも実測検証しなかったことの積み重ねであることは明白である。防衛相は射界制限の項目を修正しても、候補地として検討された青森、秋田、山形各県の国有地と陸自弘前演習場の計19カ所のうちで陸自新屋演習場(秋田市)が最適地だとする判断に変わりはないとしている。候補に必要な要因は、山口県の陸自むつみ演習場(萩市等)に配備予定の西日本イージス・アショアと連動して日本全域をカバーするための東日本拠点としての位置や後方支援等の多くの要因があることから、軍事的な防衛省の決定は尊重されるべきであろうと思う。イージス・アショア配備を含む軍事基地の整備には、必ず反対闘争が繰り広げられる。1つは平和団体の活動であり、今回もその中核は秋田市平和委員会であろうと推測される。秋田市平和委員会のHPにはアクセスできなかったために、母体である日本平和委員会をウィキペディアで閲覧したら『個人加盟の有限会社で、平和運動を実施する団体の中央組織であり、地方組織として都道府県単位の平和委員会がある。「核戦争阻止・核兵器廃絶、日米安保条約廃棄・在日米軍基地撤去・戦争法(安保法)廃止・安倍晋三政権打倒・日本国憲法の第9条を守り日本に再び戦争させないために全国各地で活動」するとして全労連や民医連など日本共産党と共闘している。また、慰安婦問題日韓合意に反対し、韓国の市民団体と連携して、日本に韓国に対する恒久的な誠意ある謝罪と賠償を行うことを求めている』団体とされており、正体と真意は朧気ながら推測できる。2つ目は地域住民のエゴで、イージス・アショアの必要性は認めるが、軍事拠点は攻撃の優先目標になるので他所に作って欲しいというものである。北朝鮮が発射したミサイルが日本列島を横断した事態では各自治体はこぞって迎撃ミサイルPAC3の配備を要望したが、米朝会談等によって北朝鮮暴発の危険性が薄れた途端、ミサイル(弾薬)の輸送や駐滞に対する反対運動が起こって、現在自衛隊の駐屯地以外に展開しているPAC3は皆無となっている。軍事的に考えれば、北朝鮮や中国(本土に接近する爆撃機が対地ミサイルを搭載)の脅威がある限り、イージス艦による監視・対処を続けるとともに、イージス・アショアによる防空体制が完成するまでPAC3の展開は必要であると思うものの、喉元を過ぎた熱さは完全に忘れ去られている。軍事拠点は攻撃の優先目標になるというのも、杞憂に過ぎないと思う。全面的な侵攻作戦では軍事拠点を第一の攻撃目標に選定するが、限定的な侵略や社会不安を企図とする攻撃は、防御の薄いとこを狙うのが常であり、世界で起こっているテロ攻撃の大半はショッピングモール等に向けられている。大規模な武力衝突においては、遅かれ早かれ全土が戦場となり軍事拠点からの距離は市民の被害と相関しないし、テロ等に対しては軍事拠点の方が危険性は少ないともいえるのではないだろうか。。

 イージス・アショアは、欧州内陸部に対するロシアとイランからのサイル防衛を主眼として開発されたもので、現在ポーランドとルーマニアに実戦配備されている。米国の推計では、日本を射程に収める北朝鮮のミサイルは100発以上とされている。イージス・アショアの配備は、国民を「人間の盾」にするかのような平和愛好家と住民エゴに勝る問題と思うのだが。