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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ウクライナ事変1年

2023年02月24日 | 軍事

 ロシアのウクライナ侵攻から1年が経過した。

 侵攻当初は、圧倒的なロシアの軍事力の前には短期間で圧倒されるとの危惧に反して、1年余の長期にわたって奮戦するウクライナ国民の結束と抵抗に改めて敬意を捧げるとともに、ウクライナの勝利を祈っているが、事変の長期化に伴って気懸りな点も浮上しつつあるように思える。
 事変は、既にロシアとNATO間の戦闘の様相を呈しているが、ここに来て中国がロシアへの武器支援に転舵したとの確証をアメリカが把握し中国に警告したと報じられており、事実であるならば事変は自由社会と全体主義の全面対決に拡大することが懸念される。
 また、西側世界の武器庫とされるアメリカもウクライナ支援によって一部兵器の在庫備蓄が危機的なレベルまで減少しているとも報じられている。
 事変による被害状況は正確には把握されていないが、ウクライナ政府の推定として12月末時点のウクライナ軍死者数は1万人から1万3000人とされ、国連が推計した民間人の死者は少なくとも7200人で400人以上の子供が犠牲になったと報じられている。
 一方のロシア軍については、去年9月に国防相が5937人と明らかにして以降発表されていないが、イギリス国防省はロシア軍の兵士や民間軍事会社の戦闘員の死傷者数が17万5000人から20万人に上っており、死者数は4万人から6万人としている。
 更にウクライナが被ったインフラ被害は天文学的数字に上るとともに、復旧・復興に長期間を要するものと思っている。
 戦果を逃れるために国外に脱出した、いわゆるウクライナ難民は500~800万人とされるが、ロシア系住民の不満を内包していたとは言え世界の穀倉地帯とされる安定した国から500万人超の難民が生まれることなど考えた人はいなかったであろう。

 日本の世論も、ウクライナの「いま東部3州を失うことはアイデンティティと将来を失うこと」とのウクライナ指導部・国民の熱情が浸透した今では、事変当初に起こった「市民被害を防ぐためにウクライナの譲歩に依る早期の停戦を」という論調は影を潜め、事変の責任はロシア・プーチン大統領にあるとの認識が普遍的であるように観ているが、朝日新聞のみは「素粒子」という短文コラムで、「米ロ大統領の演説に停戦の気配もない現実が苦々しい」と軍事支援をするアメリカにも責任があるとの認識を示しているそうである。
 狂国の力による現状変更は断じて許すべきでなく、その意欲を挫くためには、防衛に対する装備と民意の涵養に不断の・必死の努力が必要であることを、ウクライナ国民が示してくれているように思う。
 ウクライナと西側社会に勝利を!!


尹錫悦政権の積弊清算を歓迎

2023年01月21日 | 軍事

 韓国恒例の積弊清算が伝えられているが、今回は従来とは聊か事異なる一面もあるように思える。

 従来の積弊清算では、旧政権中枢に関連する経済的な腐敗追及が主であったように思えるが、今回の積弊清算は「親北思想」の排除という面が大きいと観ている。
 今回の捜査対象とされる罪状は、選挙干渉・妨害容疑が多いものの、親北勢力の牙城と観られている「民主労総」への家宅捜索などと併せ観ると、文政権における親北思想の蔓延は抜き差しならぬ程度まで拡大していることは疑いようもないように思える。
 文在寅前大統領は、在任中から「北朝鮮の主席報道官」と揶揄されるほど親北を隠さなかったし、西側諸国からも北朝鮮への原油瀬取りや先進技術の迂回輸出など国連決議違反が疑われる行為取り締まりに手心を加えているのではとの疑念を持たれていた。政権交代で官僚の中枢まで交替する韓国の制度化にあっては、その文在寅氏が任命若しくは重用した勢力は当然に親北で占められることになり、西側諸国の「韓国疲れ」の最大の要因ともなっていた。
 かっては、韓国での北朝鮮スパイの摘発は日常茶飯事であったが、文政権下にあっては殆ど報じられることが無かったことは、スパイがいなくなったのではなく政権の司法指揮で摘発ができなかったのではないだろうか。
 まだ、親北勢力に対する清算捜査は韓国軍にまで及んでいないようであるが、自衛隊機に対する射撃レーダ照射、北朝鮮の砲撃に対抗して発射したミサイルの爆発、北方限界線海域における海軍の不手際などから考えると、軍内における北シンパの存在も杞憂とは出来ないようにも思える。

 台湾陸軍でも、上級司令部の中枢幹部が中国工作員として逮捕されたことが報じられた。肝心の日本でも、OB提督に特定防衛秘密を漏洩した1等海佐が懲戒免職となった。
 二つの事例から「西側社会の軍の箍(たが)が緩んでいる」と指摘する向きもあると思うが、過度の個人情報保護も遠因の一つであるのではと思っている。日本の場合では、隊員の思想調査はできなくなったために、公然と活動することに対しては「隊員の政治活動禁止」によって排除できるものの、非公然活動については把握しようがないと思っている。
 これらの情報保全・防諜の脆弱性改善のために高市早苗議員が提唱・主導されている「セキリュティ・クリアランス制度」を早期に整備して、情報段階に応じたアクセス制限を設ける必要があると思う。
 「箍の緩み」は一般社会でも見られ、勤務先の機密情報を以って同業他社に高額で鞍替えする不心得者の例が度々報じられていることを思えば、「箍」は文明病として対処せざるを得ないのかもしれない。


海上保安庁法25条を考える

2022年12月22日 | 軍事

 政府が閣議決定した安保3文書に関連し、有事における保安庁の存在・統制が議論されている。

 海上保安庁法第25条には「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」と規定されており、有事においても自衛隊が海保を統制して統合運用することを禁じている。
 同法立法の由来に関しては無知であるが、何らかの改正が必要ではないだろうか。
 これまで、縦割り行政の弊害として、同一の目的・目標達成のための制度に「行政割に従った複数の機関・制度が並立」し、非効率のみならず混乱を招いた事例が多い。
 海上保安庁は、大型巡視船と雖も40㍉機関砲どまりの武装しか持たないので、もし自衛隊の統制下に配されても戦闘艦艇との直接交戦は不可能であるが、有事において自衛隊が海保を統制下に置くことはメリットがあるように思える。
 現在、有事における島嶼住民の避難が憂慮されている。国民の生命を守るという目的では、海保・自衛隊が等しく責任を有していると考えるが、その場合にあっても、避難させるべき島嶼の選定や護衛する自衛艦の配備等、協調・共同は不可欠であるように思える。また、海保はヘリコプタ搭載の巡視船を有しているが、狭い海域で複数のヘリコプタの運用が想定されるので、ヘリコプタの飛行管理についても何らかの統制も必要である。
 また、海警行動が発令された場合にあって、巡視船が対応不能の武装船団を発見しても、現行の指揮系統に愚直に従えば、その情報は巡視船⇒海保司令部⇒海上保安庁⇒国交省⇒官邸⇒防衛省⇒自衛隊⇒司令部⇒艦艇と伝達され、さらには各結節で状況判断や逡巡が加えられれば、情報事態が伝達されずに消滅するおそれもある。
 「なだしお」衝突事故を契機として自衛隊⇔保安庁間の通信手段が設定されたが、それは現在でも118番の海難事故通報程度ではないだろうかと推測している。

 日本の巡視船に相当する中国の公船は中国海警局所属とされているものの、武装警察部隊の傘下として中国共産党・海軍の指揮下に置かれている。
 自分が参加したリムパック時の日米共同訓練にはコーストガード所属の「ジャレット」が参加していたが、指揮管制(通信)、艦隊運動、対潜訓練なども、海軍艦艇と同様にこなしていた。
 同一目的のために行動する政府機関の指揮管制は、迅速な意思決定と効果的な対応のためにシンプルに一元化されるべきで、保安庁法25条は安保文書の思想を以って改正すべきであるように思う。


トマホーク購入

2022年12月20日 | 軍事

 来年度の防衛費が総額6.8兆円となる見通しと報じられた。

 新規事業としての反撃能力整備には、トマホーク購入に2113億円が、12式地対艦誘導弾(SSM)の射程延伸(100㎞⇒1000㎞)の整備については1227億円が計上されている。
 また、継戦能力向上のためにも、弾薬整備に9901億円、航空機等の維持整備費2兆359億円が計上されてもいる。
 この数字を見ると極めて巨額に感じられるが、内容を精査すればこれまで怠っていた事業へのパッチ充ての意味合いも強く、部品の調達ができないために本来可動すべき戦闘機の一部を部品取りのために非可動とせざるを得なかったケースや、実弾射撃訓練を減らしていた現状を解決するための予算措置に過ぎないものも多い。
 トマホークの購入については、国産ミサイルの開発に時間を要することから止むを得ない対症療法かとも思うが、技術先進国を謳う日本が巡航ミサイルを国産開発できないのは残念に思う。これらは、「軍事技術開発拒否の学会」、バブル期に増殖した「買えば良い思想」、「備蓄は無駄とする会計検査」の結果であって、一朝一夕には根治困難な病根であるように思えるが、改善すべき課題であるように思う。
 戦後80間に亘った平和(ただ戦争が無かった)は、日本人から確実に危険予知・危機管理の思考を奪っているようで、そのことはコロナ禍で構築された医薬品の緊急承認制度でも如何なく発揮されたと思っている。ワクチンに関しては、米英の承認後2週間で緊急承認はしたものの、イスラエルは開発国における承認と同時に接種開始したことや、日本人の治験も無いままの承認に2週間も必要だったのかとの疑問が残り、治療薬「ゾコーバ」に関しては、1回目の審議会では治験データ不足として門前払いに近い結論を出しながら、世論の反発を受けてであろうか2か月後には一転して承認という不可解さを露呈した。

 本日発表されたFNN(産経グループ)世論調査では、反撃能力の保有には60.2%が賛成としたものの、財源を増税に求める岸田提案には69.5%が評価しないと答えている。
 かって、イザヤ・ペンダサン(山本七平?)は、「日本人は空気と安全はタダと思っている」と警鐘を鳴らしたが、安全な空気は無料でないことをコロナ禍が教え、いままた安全もタダではないことを学ばなければならない事態となっている。整備に賛成・増税には反対という意見にあっては、自己負担が曖昧な国債に財源を求めよということだろうと思うが、あれほど喧しかった1960年代の国債反対の主張はすっかり影を潜め、現在では負担を孫子に託す国債が大手を振って闊歩している。
 今回の岸田増税案にあっても、国民(富裕層は除く)一人当たりの直接負担増は年間数千円・外食1回分程度で、家計のダウンサイジングやレベルダウンとまでは必要としないものと思う。
 昭和40年代頃までは、戦後の食糧事情を子供に伝えるために月に1回「すいとん」食を設ける風潮もあったが、それも「今は昔」食品ロスに悩んでいる。
 岸田提案も、「ズボンを穿けずとも核兵器(長射程ミサイル)を」とした毛沢東に倣っての掛け声程ではないことを、冷静に考えようではありませんか。


防衛3文書の閣議決定

2022年12月17日 | 軍事

 防衛3文書が閣議決定された。

 防衛3文書改訂については、拝金主義的に防衛費増額についてのみ論じられるが、実質は国民に対して国防意識の変革を求めるとともに自衛隊の近代化・強靭化を目指すものと思っている。
 これまでの国防意識は、「日米安保破棄・自衛隊解体」を主張する共産党・社民党支持者を除いて、大方は「国防は日米安保に依存するが日本の負担は局限すべき」であったと理解している。
 また、日本人の国防意識をイビツした背景には、大東亜戦争を含む戦前のアジア政策を全否定する東京裁判史観に立った極端な近隣諸国配慮と平和憲法に配慮した「政局判断」で案出された「専守防衛」と「必要最小限の自衛力」という空疎な概念が、年月を経てもはや国是と考える人々を生み出してしまったことが挙げられる。最悪であるのは、平和憲法が規定する「不戦」条文を「非戦」と解釈することが一般化した結果、敵の侵攻意思を挫く抑止力として有効な敵基地攻撃能力さえ不要とするまでに肥大化してしまったと考えている。
 自衛隊の近代化・強靭化については、5年間で相応の抑止力と継戦能力を拡充整備して、以後はそれを維持するとしている。
 既に軍事音痴となっているので、拡充すべき装備の質&量について判断する能力はないが、これまで「本格侵攻に対する自衛隊の継戦能力は1週間で、米軍の本格支援開始まで持ちこたえられない」とされている継戦能力も向上し、敵の第1撃における国民の人的被害を減らせるとともに、米軍の支援部隊開始まで組織的な抵抗・戦闘が維持できるだろうと期待している。

 防衛費の増額については、安定財源の確保等に侃々諤々の状態であるが、2点の興味深い報道を読んだ。
 1は、デンマークも防衛予算の対GDB比2%を目指しているが、目標達成手段の一つとして、祝日を1日減らすことを計画しているらしい。1日の休日削減がGDPを如何ほど押し上げるかは不明であるが、政府は防衛費捻出のための負担増を国民が共有するためのメッセージとしているのではないだろうか。
 2は、あの輿石東氏(かっての民主党参院のドン)が、「立民も旧態依然の専守防衛固執を捨て、集団的自衛権の容認」に転舵しない限り、党勢回復・政権奪取・若者誘引など期待できない」と発言したことである。現在の立民支持者の多くは高齢者で、必然的に「変革なく余生を全う」することが最大の目的で、憲法・防衛などについては「自分の敷いた線路は正しいので息子にも強要」する家訓を定めた中世辞世者の面影さえある。

 今回の防衛3文書改訂に際して、生涯にわたって非暴力を貫いたマハトマ・ガンジーの言葉、「何人も汚れた足で私の心を歩くことは許さない」、「握り拳と握手をすることはできない」が、心によぎる。