http://www.gupi.jp/letter/letter011/letter-011.htm
「海の水がどんどん引いています」とか「大きな波が押し寄せてきます。異常気象です。」などといったナレーションもありました。 海が引くというのは津波の前兆現象です。 戦前の教育を受けた人なら誰でも知っていました。 小學國語讀本で「稲むらの火」を教わっていたからです。 稲むらの火は安政元年11 月5日、紀伊國有田郡廣村を襲った津波の話です。 庄屋の五兵衛(本名濱口儀兵衛)は地震の後「波が沖へ沖へと動いて見る見る海岸には廣い砂原や黒い岩底が現れ」たのを見て「津波がやって來るに違ひない」と気づき、とっさに稲むらを焼いて村人に危急を伝えたため、村人は助かったという実話がもとになっています。 この美談を小泉八雲が”A Living God”という小説に書き、その和訳が国語の教科書に載ったのです(昭和12~22年)。当時は国定教科書ですから国民全員がこれを学びました。
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これは、NPO法人地質情報整備・活用機構の岩松先生が寄せられた文章です。この文章には、地学教育の弱体化に対する憂いがあり、知的好奇心と自然をイメージする力が防災への近道であるという主張も読み取れます。
しかし、最近出版された 広瀬弘忠『どんな災害も免れる処方箋』講談社新書http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2726211&x=Bによると、
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津波という災害は、決して綺麗な災害ではない。高速で陸上を流れる海水の層は、破壊された建物や船の残骸、油やゴミ、廃棄物などの人工物と、樹木、岩石、砂などの自然物のミックスであり、渦をまいて流れる水の中では窒息の危険だけではなく、切断や打撲の危険性がある。津波は土石流と同じで液体と固体のアマルガム※なのである。
※Wikipediaでアマルガムをみると、広い意味で混合物を指し、ギリシャ語で「やわらかいかたまり」を意味するとあります。土石流は”お粥状”ということができるので、それよりはゴツイでしょうか
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前者の稲むらの火は小説で国語の教科書でもあるので、後者のようなリアリティはないのですが、科学的描写もしっかりイメージすることも確かに大切です。ただ、初学者がとっつきやすくするためには多少の娯楽性も必要ですので、バランスが難しいところです。
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