防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

2008年度比叡平3丁目自治会の記事(その2)

2008年07月29日 | 災害の記憶と想像力

2008年度比叡平3丁目自治会の記事が更新されました。
具体的な取り組みとして、福祉マップの作成、ハザードマップの作成、緊急連絡体制の確立、一時避難所の再検討、地滑りや液状化の予測、県下における過去の地震被害調査など、私たち技術者からみてもお手本になるような内容と水準があります。

楽しい、そして実用的な取り組みとしては、DIGを中心に、クロスロードの考え方をとり入れた防災マップの作成があげられています。

DIGとは、災害図上訓練((Disaster(災害)、Imagination(想像力)、Game(ゲーム))の頭文字をとったものです。自然災害は非常時ですから、レスキュー隊や消防隊以外は”防災のベテラン”はいません。ですから普段から想像力を働かせておくことが重要で、特に2008年度比叡平3丁目自治会さんのように、地盤をよく知っている方々にとっては、3次元・4次元的なイメージトレーニングができます。

机上の空論ならぬ地上の正論というわけです。

クロスロードは、災害対応カードゲーム教材「クロスロード」は、カードを用いたゲーム形式による防災教育教材で、ゲームの参加者は、カードに書かれた事例を自らの問題として考え、YESかNOかで自分の考えを示すとともに、参加者同士が意見交換を行いながら、ゲームを進めていくものです。ゲーム感覚ですから、防災を楽しく学べるわけです。

この防災クロスロードは、京都大学防災研究所准教授の矢守克也先生のサイトに詳しく解説されています http://www-drs.dpri.kyoto-u.ac.jp/staff/yamori/

実は、矢守先生のお父様は城下町の研究を中心として、国内外の都市計画の歴史地理の第一人者の方でした(1992年、私が大学2年生の夏休みになくなりました。最期の講義を受けた世代です)。

地域の構造を知り「知域」を広げる ことがいかに大切かこのようなことからもわかります。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
変動防止工事はにはハードルが (久保田)
2008-08-02 10:29:00
 下河さんコメントとブログへの紹介ありがとうございます。

 前回のコメントでは、比叡平が谷埋め盛土の大規模造成宅地に該当することを述べました。大地震による谷埋め盛土の変動の可能性については、調査をして危険度の評価をしなければわかりません。2006年の宅地造成等規制法の改正により、自治体がこの調査をすることになっていますので、その調査結果を待つことにしています。この地域の3カ所の谷埋め盛土については(途中にある盛土斜面も含めて)、自治体にはボーリングを含むきちんとした調査をしてもらい、データの説明を受ける予定です。盛土の底部の状態や地下水位の分布などの調査がきちんと行われない場合には、いずれセカンドオピニオンも必要になるかもしれません。

 造成宅地防災区域第一号に指定された柏崎市の山本団地では、地盤改良工事を行うことになりました。特例により復興基金が投入されその費用の住民負担率は1/4(一戸あたり80万円程度)で済むことになったようです(太田ジオ)。山本団地のようにすでに地震で変動を起こした地盤の改良については、結果が出ていますので住民の合意が得られやすと思いますが、予防については大地震で変動するかどうかも不確定な状態で住民負担の合意を得ることは困難が予想されます。地域住民は誰も自分が住む土地が危険宅地であると評価されることは望んでいません。まして自ら高いお金をかけて自らの住む土地が危険であることを調査することに関しては、住民の合意を得るのは難しい面があります。

 調査の結果、仮にこの地域のいくつかの部域が造成宅地防災区域に指定され、改善命令が出されたとしても、大規模谷埋め盛土ではどこがどれだけ変動する可能性があるのか、科学的にも境界線を正確に引くことが難しいのが現状です。戸別の危険度が測れないのであれば戸別の負担割合を決めることもできません。地域全体で負担するとなると、切土上で変動の確率の低い世帯に高額の工事費の負担を求めるのも難しいでしょう。「1000年に一度あるかどうかもわからない大地震で変動するかどうかもわからないことに高いお金をかけられない。もしも調査をして危険とされたら、変動防止工事の負担を強いられ、地価も下がってしまう。だいいち、高いお金をかけて工事をしても100%安全という保障はない。側方流動や不同沈下で命を落とす確率は低いのだから、地震が起きたら起きた時のこと、運が悪いとあきらめるしかない。」という意見もあるのです。

 住民負担割合1/2の規定についても問題があります。住宅地が危険である場合には宅地所有者が一義的に責任を負わされ、谷埋め盛土を開発して販売した業者の責任が不問にされるのは住民としては納得できません。住民が宅地を購入したときには地盤に関する説明は何も行われていませんし、重要事項説明書にも何も記載がありません。大多数の住民は宅地の危険性については何も知らずに購入したのです。もしも宅地開発時に伐採した樹木をそのまま埋め込んでいたり、盛土の水抜き処理が全く行われていないといった不適切工事が行われていた場合には、開発業者が瑕疵責任を問われてもおかしくないのです。瑕疵が認められる場合には、対策工事費の一定部分を開発業者と施工業者に負担させるべきではないかと考えています。実際には法律では開発業者の負担が一切考慮されていないのは問題です。比叡平の場合には、危険が予測される主要な部分は調整池であったり、盛土斜面であったり、公共道路であったりと、大津市や開発業者の所有地域ですから、一義的に責任を負うのはむしろ大津市や開発業者と考えた方がよさそうです。谷埋め盛土はどの地域でも問題は単純ではありません。実際に対策工事が必要になった場合、工事費の負担割合の問題は今後各地の造成宅地防災区域で問題になるでしょう。

返信する
ありがとうございます (下河)
2008-08-03 12:18:42
久保田 様

コメント有難うございました。
我々はつい”地盤の都合”ばかりを考えてしまい、住民の皆様の心情や投資に対する考え方を組み込んだプランを考えていかなければならないと思いました。

太田ジオリサーチのブログでは、
「あんしん宅地」は、民間の営利企業の人間が集まってやっているので、「専門家」といっても公的資金援助等ができる力は全くありません。このため、あんしん宅地のコンサルティング部門は、シナリオライターに過ぎないのです。いろいろな立場や感情や法律があって、そこの中でいろいろな選択があり、なにが最良の選択かを選ぶことができるようにしてあげることが大切なのだと思います。昨日の講演でも話しましたが、「自己責任」を言うなら、その判断ができるに充分な情報を提供しなければならない、ということです。

とのご意見を頂きました。
http://www.ohta-geo.com/cgi-bin/diary9/diary9.cgi
返信する