防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

戦後初の「理系脳」首相

2009年09月04日 | 技術動向

今度総理大臣になられる鳩山由紀夫氏は「理系」なんだそうです。

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戦後初の「理系脳」専門は問題解決学
http://www.aera-net.jp/summary/090831_001100.html

「10人の女性と順番にお見合いする。その中で一番すばらしい人にプロポーズする確率を最大にしたい。どうしたらいいか」鳩山由紀夫が、客員教授を務める同志社大学の特別講義でよくする話だ。答えは、

「3人目までは見送って4人目以後これが一番という人にプロポーズすればいい」

というもの。最初の人で決めれば1割、最後の人まで待つとするとやはり1割の確率でしか、最高の人と出会えない。実はその間に「行動に踏み切る最少の人数」があって、この場合、3人見送れば、ほぼ4割の確率で10人中1番の人に結婚を申し込める、という。これは、由紀夫の思考法の原点である、OR(オペレーションズ・リサーチ)、いわゆる「問題解決学」的思考法だ。

大蔵省の官僚だった鳩山由紀夫の父、威一郎は大学で応用数学を学んだ由紀夫を捕まえて、こんな議論をしたという。

威一郎「数学って世の中のためになったためしがあるのかい?」
由紀夫「冗談じゃないよ、新幹線が走るのも(数学のおかげだし)、この世の中で数学なしでまともに動いているものはない」
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これを読んでいる限り、”技系のにおい”はあまりしません。西澤潤一先生のエピソードの方が、具体的でユニークで夢があるように思います。そして、実益を上げるためには(マニュアル通りではなく)考えることと手に職をもつこと、眼力をもつことなど、前例なき、形なきものの追及が大事なのですが”財源さがし”に夢中になりすぎて”知価資源”の醸成に及ばないということのないようにしてもらいたいですね。

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http://homepage3.nifty.com/circuit/dokusou/nisizawa2.html
西澤は、よく教え子の結婚式に招待される。
 西澤は、御祝儀を出す代わりに、電気スタンドと筆記用具をプレゼントするそうだ。それを枕元において、使ってほしいそうだ。何故かと言えば、寝ている時いいアイデアが浮かんだら、すぐ 書き留められるからだそうだ。自分も常にそうしているそうだ。独創的研究者らしい話である。

 西澤は、若い時から特許を数多く出願している。西澤が得ている特許料は、年間5億円以上である。この金は全て、自分が研究所長をしている半導体研究所の研究費につぎ込んでいる。西澤は特許について、こう述べている。

『日本では、特許は卑しいものという感覚があります。お金がからんでくるからです。アメリカでは、良い特許を持つ技術者に、フェローなどの待遇を与えます。日本ではアメリカほど評価されていない。
 研究には、アイデアが重要です。アイデアがあって、その周囲を固めた成果が 論文になります。アイデアを登録するのが特許です。だれよりも早いアイデアであることを、何かの形で残すことが、重要です。資源のない日本では、今後とも技術で生きていくしかありません。特許は、外国に対して重要な対抗手段に成り得ます。』


プロによる地盤調査 - こんなにも”差”があります -

2009年08月18日 | 技術動向
地盤工学会のリスクマネージメントセッションに参加しておりました。大きな話題のひとつとして、地盤技術者の存在感が薄い、窓口を増やすべきだ、といった意見が出ました。地質調査業協会でも取り組んでいるというので、ちょっとホームページをのぞいてみました。

こんなにも差があります!プロによる地盤調査
http://www.kanto-geo.or.jp/html/juutaku/pro.html

正直いってがっかりです。五十歩百歩の意味の説明かと思ってしまいました。SWSより標準貫入試験の方が、より高度です、、とそんなことをアピールしてもほとんどメリットがありません。そして、
費用と期間はかかるものの、精度が高く深い所までの調査ができます。とのこと

正直いって相談する一般市民の方は困り果てています。金がかかちゃあだめなんです。
知恵とハンマーとクリコン その程度の武器で勝負をしなければ。。。

勘所という言葉の意味をかみしめた方がよいと思います

学会発表のカテゴリー - 市民向けはまだまだ -

2009年08月17日 | 技術動向
明日は地盤工学会に参加し、「地盤工学とリスクマネージメント」というセッションで話題を提供します。斜面と市民生活とのかかわりについて述べます。

一般市民にとって、斜面は決して関心の薄い問題ではありません。しかし、わたしたちの存在感がとても薄いのが現実です。そのあたりをどのように解決し、技術者冥利に尽きる時代を引き寄せるか、話しあいます。

来週は地すべり学会ですが、同じようなテーマで発表します。しかし、カテゴリーは『地すべり発生機構』です。昨年は一般調査、リモートセンシングだったし、まだまだ学会のなかにも、市民目線が根付いていないことを痛感させられます。

内陸地震はなぜ起こるのか?

2009年08月16日 | 技術動向
近未来社という自然科学系の専門書を扱う出版社があります。千木良先生の(私は個人的に3部作と読んでいます)著作など、著者個人の考えや失敗談など、手に汗握る臨場感があって、とてもわかりやすい文章が多いので、興味深く読む事ができます。

今年の2月に出版された『内陸地震はなぜおこるのか?』の著者、飯尾先生は、1995年兵庫県南部地震の瞬間を生々しく記述されていました。

○1995年1月17日未明、自宅で寝ていた私は、突然激しい揺れを感じた。(略)・初期微動継続時間は6秒、震源距離50キロくらい、奈良あたりだろうか?などと考えつつ、あわてて布団から出た。(略)。地震の専門家としての習性が見えるが、防災という意味では失格であることがよくわかる。寝ている頭の近くの棚に花瓶を置いていたり(略)一般の方に、関西では昔は大地震が多発していたのです。これからもそれは同じです。」と地震の解説をしながら、自分たちの身に降りかかるとは思っていなかったのかもしれない。

一方、私はといえば、こんな感じでした
(環境地質のコラムより http://www.kankyo-c.com/column/shimogawa_3.htm
○その瞬間を、私は大阪の千里丘陵の麓にあった、学生街の下宿で体験しました。最も大きくゆれた瞬間は、床か通いなれた大学からの下り坂と同じくらいの勾配に見え、全てが転げ落ちるのではないかと、本当に肝を冷やしました。そんななか、大学で地理学を専攻し、近畿には活断層が密集しており、2ヶ月前に発生していた猪名川町の群発地震に関する住民説明資料などを作成した経験もある私は、”どこかの活断層が動いた、揺れの方向と強さからみて六甲か有馬・高槻線か、いずれにしても凄まじいことになった、友達、後輩は大丈夫か”と妙な頭の冷静さとまったく身動きのできない体と、表現しにくい不可解な状態にありました。

|私も防災という意味では失格でした。

このほか、活断層は地震を起こすものではなく、地震の結果として形成されるものであることをはじめとして、マグニチュードや応力、ひずみなど、私たち技術者が普段何気なく使っている言葉について、比喩的表現(これがいかにも近未来社の書籍)を多用され、とてもわかりやすく説明されています。 読んでいるうちに、いろいろ気づかされることがありました。今後何回か、このブログでとリあげてみようと思います。

財政難で地震マップ進まず - 問題は技術不足か? -

2009年08月15日 | 技術動向

最近各地で地震が発生しており、防災グッズが飛ぶように売れているんだそうです。そんななか、地震マップが整備されていないというニュースがありました。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200908130368.html
 地震マップの整備は、新潟県中越(04年)、福岡県西方沖地震(05年)などを受け、国交省が住宅の耐震化などを促す目的で基本方針を06年にまとめ、全市区町村に作成を指示した。作成費用は自治体の面積などで異なるが、数百万~1千万円程度で、国が半額を補助する。

 のだそうですが、市町村レベルで作成しても、実際問題生活に密着したスケールではありません。GIS等のシステム整備などの初期投資も含めるともう少しかかるでしょう。そして、地震マップで問題と思うのは、基本的に既存資料をまとめただけで現地調査がない点です。

 実際には地区・街区単位でしか防災できないと思うので、回覧板的な使い方をした方が実用的でしょう。地形発達史・地質的背景、街の造成履歴を知っておれば、技術者数日分の人件費+α程度だと思うので、自治体に依存しない方がよいのかも知れません。


河田恵昭先生のコメントから

2009年08月13日 | 技術動向
先日太田ジオリサーチの太田さんのブログに「マスコミが批判(揚げ足取り)報道や解説報道ではなく、減災のための有効手段をリアルタイムで報道する姿勢になることはかなり大きな力になると思います。 「道路を水が流れていたら避難所に行くのはやめて、自宅二階の安全そうな所に身を隠してください」等、です。 との記事がありました。http://blog.livedoor.jp/ohta_geo/archives/2009-08.html#20090812

先ほどテレビを見ていたら、災害時の危機管理を研究しておられる河田恵昭先生が、まったく同じことをコメントされていました。また、昨日は現場後の居酒屋で社長と二人で話したことで、「逆説的ではあるが、救助を待つ人は救助される確率が低い」という話をしていたのでした。

天は自ら助くる者を助けるではないですが、周りを見通す力、自分で考える力を体以上に鍛えておかなければならないことを感じます。公助・共助はあくまでも補助なのです。下水道などは、いまだに時間雨量50㎜しか想定していない箇所も多いし、取り急ぎのスギ植林が花粉症の素因となっていることまでは想像できても、保水力に乏しく表層崩壊が発生しやすい、翻って大量の流木の素因になってしまっていることまでは想像できる人は少なくなっています。

自然に親しむ機会が都市化によって失われていったというのは、言い古された理由です。それに加えて、マニュアル主義、暗記・要領教育の弊害もここにきて出てきているのではないかと感じます。地形学や地質学を学ぶと、現場を歩いているときはもとより、その後スケッチをし、写真を整理し、地形分類図、地質図として表現するといった一連の作業を繰り返すときに、現場とフィードバックしながらいろんな想像力を掻き立てます(それが自分の中に映画館ができていくようで愉しみだったりもします)。

社会インフラ整備もよいですが、自分の世代に老朽化することも充分に想像して、避けられるものは避けることによって、豊かな(損失の少ない)暮らしを送ることを望み、それをサポートする技術者・産業が育成されてこそ、先進国と胸を張っていえるのでしょう。

ハザードマップ≒法指定区域分布図

2009年08月09日 | 技術動向

今年は土砂災害の当たり年となっているようです。なんどか、ハザードマップの周知を呼びかける論調もありましたが、多くのハザードマップは法指定区域分布図となっています。どこでどのようなハザードがあるか、どうにかして表現できないものでしょうか。土石流危険渓流看板も4ヶ国語で解説するというセンスよりも、やることがあるように思います。


論文第二弾

2009年08月08日 | 技術動向

先日地すべり学会誌が届いておりました。『地域社会の安心・安全面からみた斜面災害防止のあり方と評価』というずいぶん長いタイトルの特集号でしたが、4編の論文が掲載されていました。このうち、私の論文を含む2編は、市民のためということを前面に出した論文で、このほかの論文は社会インフラ(道路)が被災することによる地域社会に与える影響の定量的評価に関する論文でした。

似たような論文は、来年3月の応用地質学会の論文として投稿したばかりです。維持管理・市民のためのアウトリーチ・相談事案、いずれのテーマも今後技術者にとって不可決のテーマとなってきますので、一過性の特集号で終わらないようにせねばなりません。


空白の天気図

2009年08月06日 | 技術動向
今日は広島に原爆が落とされた日です。防災とのかかわりで言えば、柳田邦夫『空白の天気図』が有名です。原爆で破壊された観測施設から生まれた空白。。。そこには単に観測網の空白だけではなく、”空模様”という定性的な観察眼も失われかけていた、、、、そんな一節もあったように記憶しています。

http://www.shinchosha.co.jp/book/865234/

メタンハイドレードへの期待

2009年07月18日 | 技術動向
http://mainichi.jp/select/today/news/20090716k0000m020065000c.html
政府は、次世代の燃料資源として期待される「メタンハイドレート」の商用採掘に向けた取り組みを本格化する。今年度から海底に眠る資源を採掘する技術開発に着手、12年度後半をめどに海洋で世界初の試掘を実施し、18年度の商用化を目指す。日本近海には国内天然ガス消費量の100年分に相当するメタンハイドレートが存在すると言われており、資源小国の日本にとって有力な国産エネルギーとなる可能性がある。

このような技術開発の話は、なぜ表立った話にならないのでしょう。対象となっている南海トラフは地震を解明する構造地質学的見地からも非常に重要なフィールドであり、もっと国を挙げて取り組むべきです。景気対策を良いですが、それを支えているのは産業であり科学技術です。

必携 地震対策完全マニュアル

2009年07月16日 | 技術動向
京都大学防災研究所の河田先生の本です。PHPのせいか、一見派手です。しかし、被災する前の具体的な状況がイメージしやすく、値段の割には中身は充実していると思います。

一言付け加えるなら”マニュアル”という言葉がどうも引っかかる。発展問題へと興味をそそるようなタイトルの方がよかったかも。

誰でもよかった - サンデーモーニングから -

2009年07月12日 | 技術動向
今日のサンデーモーニングに出演していた寺島実朗さんが、次のようなことをおっしゃっていました。

誰でもよかったというのは、犯人だけの言葉ではない。労働の没個性化(標準化を美化した)により、あんたのかわりはナンボでもいる、誰でもよい仕事が増えて、誇りのもてない社会になった。

以前、報道ステーションでの同じようなことをおっしゃっていましたが、まさにそのとおりです。以前は、土石流危険渓流でも急傾斜地崩壊でも、調査者の実名が報告書に表記されていましたが、いまはワンクリックでレッド、イエロー、、、誰でもよい、、、、、

地すべり学会の論文

2009年07月09日 | 技術動向
私が投稿していた地すべり学会の論文の構成刷りが届いたようです。といっても今月はず~~っと現場にでづっぱり。大きな声では言えませんが、論文のテーマ(今度の応用地質学会に寄せる論文の内容もほぼ同じですが)とは間逆の仕事です。。。

目分量 - 目で覚える、体で覚える -

2009年06月21日 | 技術動向

テレビ東京系列の番組で「ソロモン流」という番組を見ていました。今日の放送はABCクッキングスタジオです。妻が時々通っている料理教室で、ABCというのは”イロハ”すなわち入門ということで、料理初心者の女性を中心に22万人もの会員がいるそうです。料理のテーマが月に一度程度あって、だれでも簡単に作れるレシピがweb上で公開されているのです。

この社長さんは、気軽な雰囲気作り、敷居が高いと思わせないことに努力をしているそうです。女性と子供が動けば巨大なマーケットが動くことを改めて実感させられます。プロの味を追及する料理教室は多々あれど、初心者向けは少なかったとのこと。

そのなかで、おばあちゃんの味、おふくろの味を若い世代に伝えたいという企画をしているというのです。いま防災や地盤技術者の分野でも技術伝承がさかんに言われるようになっていますが、料理の世界でもそういうことがあるようです。

印象的だったのが、おばあちゃんの『目分量』という概念です。塩何グラム、しょうゆ何mlと、数値が示されているレシピしか知らない女性たち、そして、経営者で今45歳の社長さんでさえ『新鮮な概念』」と驚いていたのです。おばあちゃん自身は、そんなの先代、先々代から目で覚えて、体が覚えているから測ったことなんかないわよという話。

私がよくやる空中写真判読や渓流の土砂調査なんかは、まさに目分量の世界です。礫に付着したコケの状況、植生の育ち方、細粒分・砂の抜け方なんかを総合的に判断して、今後豪雨があったら流下していきそうだ、あるいは、安定傾向にありそうだ、、などを判断するわけです。

私の上司は、地質調査でいちばん重要なことは”勘”だといいます。それは多くの”観(察)”に裏打ちされた経験知であり、それこそ露頭を見たときの目分量です。例えば、渓流の堆積物の植生が何センチ以上だから土砂は動く、動かない、クラックがあるから擁壁が危険、と項目別(まさにレシピ)にチェックするだけの仕事に何の疑問も持たずに終始すると、想定の範囲が狭くなり、いつか大事故が起こる、、と危惧を口にします。

私たち防災技術のサービスは、自然科学を基礎としているだけに、さすがに敷居はある程度高くなります。しかし、防災や自然科学に関する知識を持っていることで得した気分になったり、相談窓口をいかに気軽にできるか、マーケットの創出には、その辺の”感(性)”を磨くことも重要であると思います。


Googleの技術

2009年06月12日 | 技術動向
グーグル、「Google Earth」にて日本の主要4都市を3D化
http://japan.internet.com/busnews/20090611/5.html

3Dは二次元の”平面図”や”断面図”に比べて格段の情報量を持ちます。さらにスケッチアップも使えるとなると、これからの世代にとっては、”平面図”や”断面図”は死語になっていくのでしょうか。しかし、その副作用として”わかった気になる”ことがあげられます。”現場”まで死語になっては、大変困ったことになります。

圧倒的なビジュアルは、しばしば思考停止を招くので、こういったツールに使われないようにしなければなりません。