玄文講

日記

金縛りにあったこと

2004-10-19 20:22:14 | 人の話
今月のはじめ、私が高知へ旅行したときのことである。

その夜、私がホテルで寝ていて ふと気がつくと体が動かなくなっていた。それから耳元でガラガラとふすまの開く音がしたかと思うと、数人の子供たちのはしゃぎまわる声が聞こえてきた。
これは俗に言う、金縛りというものであろう。

それはまるで本当に誰かが部屋を開けて入って来たかのような現実感に溢れる音であった。
しかし私の寝ていた部屋は洋室であり、ふすまなんてありはしないのである。
だから明らかにこの音は現実の音ではないのだ。

金縛りとは寝ている時に脳だけが半ば覚醒していて体は寝たままの状態にあるという話を聞いたことがある。
その時、人はまるで夢を現実のことのように知覚するという。
なるほど。これは確かにリアルな夢だ。

金縛りは疲労が濃いときに起きやすいという。確かにその日の私は山中にある八十八箇所の寺の一つである竹林寺へ徒歩で行き、そこで台風にあい、山の中を滑り落ちるように下りながらホテルへ戻ったのであった。私はひどく疲れていた。


私は腕を挙げようと試みたが、全く神経が通う気配がない。
私はこの夢から本格的に覚めようと思い、意識を集中させてみた。
すると両耳の奥に何か熱いものが流れ込んでくるのを感じた。
それから子供の声が遠ざかっていくのを確認してから、再度 意識を腕に向けてみた。腕は軽やかに天井を指差した。
私は目覚めたのである。

考えてみると私は夢と現実の境界を生まれて始めて体感することができたのである。
私は昔からふとんの中でいつのまにか意識を失って寝てしまっていることが不思議であった。だから私はかつて、意識を失い寝てしまう瞬間を記憶したいと思い努力したことがあった。
その努力は当然、ただの寝不足という結果しかもたらさなかったのだが、今日の私は擬似的とはいえ夢と現実の境界を感じることができたのだ。
私は面白い経験ができてとても満足したのであった。