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日々思うこと

シールを巡る思い出

2012-01-17 | せらせら

少年は幼稚園が嫌いだった。

そこには大好きな母がいないからだ。

少年を置いて去ろうとする母に、顔をくしゃくしゃにして泣きつき、いつも母を困らせた。

 

幼稚園も3年目を迎える頃、少年の父は転勤になり家族で松山市に引っ越した。

そして少年は新しい幼稚園に通うようになった。

 

登園初日。

右も左も分からぬ少年に、1人の男の子が歩み寄った。

「幼稚園に来たら、まずこのノートにこうやってシールを貼るんだ」

友達ができ、少年はあんなに嫌いだった幼稚園を楽しいと思えるようになった。

新たな土地で萎縮していた少年の心に、その小さなシールの思い出が深く刻まれた。

 

27年後。

父親になった2人は、いつか自分たちの娘が互いに仲良く遊ぶ日を楽しみにしていた。

初対面の日、少年の娘サヨコは男の子の娘イチカの顔にシールを貼った。

あの日のことを誰が教えたわけでもなく。

 

「あの時のお礼だよ。」

 

日々は小説よりも奇なり。

 

 

でも明らかに嫌がってるな、イチカちゃん。(笑)

 

 

 


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