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知床観光船沈没事故9・検証◇沈没原因はハッチの不整備と隔壁に穴が開けられ大量の海水が流れ込んだ/少数派

2023年02月18日 | リニア・交通網
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知床観光船沈没事故9・検証◇沈没原因はハッチの不整備と隔壁に穴が開けられ大量の海水が流れ込んだ

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事故前のKAZUⅠの船首部分。右端の人物の足元に写っているのがハッチの蓋(運輸安全委員会提供)

■報告は全て船主と船舶検査機構に責任を負わせ根本的原因がある国交省は不問に
毎日新聞・しんぶん赤旗を活用しています/22年4月、北海道・知床半島沖で観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故で、国の運輸安全委員会が中間報告を公表した。投稿者はWebで、PDF版報告書70ページを読んだ。専門用語が多く、難解な点はネットや新聞の要約を見て理解した。報告書は当然ながら、メディアや当投稿で散々指摘した点が記載されており、ここでは新たな問題点(沈没の原因)に絞って書く。結論から言えば、①ハッチの不整備 ②船体の隔壁に穴が開けられていた~これらの不備によって、船内に大量の海水が入り沈没した。さらに③日本小型船舶検査機構(JCI)の検査不十分と、中間報告は結論付けた。投稿者の印象としては、もちろん船主側の異常と思える安全に対する無責任さが直接的な原因だ。その一方で、国の代行機関である「JCIの検査が不十分」と責任を押しつけたことは問題だ。既号の通り、JCIが満足に点検を行えないほどの少ない人員配置・人員削減などが行われ、過酷な勤務を押し付けた国土国交省の責任が問われていない。次項以降、発表された原因の概要に投稿者の感想を付け加える。

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▽原因1・船首部分の「ハッチ」を密閉する留具に不具合があったこと
補足/ハッチとは甲板から船員が船倉におりるための出入り口で、海水が流入しないよう密閉するための蓋が付けられ、蓋の四隅に「クリップ」と呼ばれる部品(留具)で固定する仕組み。報告書は、KAZUⅠ船首部分に約50cm四方のハッチがあったとする(画像参照)。しかし、事故発生の2日前に実施された救命訓練の参加者の証言から、クリップのうち2つが当時からしっかり固定できない状態になっていたことが判明した。また別の1つも摩耗が進んでいたと言う。事故当日に現場付近で海が荒れ始め、波が船首部分に打ち込んだことで蓋が開いたとしている。さらに船体の状況から、この蓋が完全に外れて客室の前面中央のガラス窓に当たり、破損させた可能性が高いとした。その結果、大量の海水が船内に入り込んだとされる。また船体の構造上、船長がいる操舵室からハッチは死角になっており、ハッチが外れ客室の窓ガラスを割り、海水がなだれ込んだことの認識が遅れたことも指摘されている。投稿者の感想=ハッチの留め金が甘く蓋が開き大量の海水が入り込むとは、船舶事業者や船主としてあってはならない極めて最低のレベル。普段から、全く安全のことなど考えていなかったのだろう。

▽原因2-A・船体隔壁に穴が開けられ大量の海水が浸水しエンジンを停止させた
甲板より下の部分は船首部分から、2つの船倉のほか、エンジンのある「機関室」や「舵機(だき)室」の4区画があり、それぞれ「隔壁」と呼ばれる仕切りが設けられている(イラスト図参照)。しかし全ての隔壁にやっと人が通れる程の穴が開けられており、ハッチや割れた窓を通じて流れ込んだ海水がそこから船底全体へ広がった。電子制御系の部品は海水に浸かってショートし、エンジンが停止したとみられる。機関室や他のスペースへ行き来しやすくする理由で、穴が開けられていた。報告書では事故の前年21年のJCIの点検で指摘され穴は塞がれたが、流入海水の勢いではがれたと推察している。一方、知床遊覧船の元従業員は、「隔壁に穴が開いていたのは知っている。21年の検査の際に指摘され、船長がコンパネ(合板)でふさいだ。その部分が取れて海水が入ったのか、運航当日時点で外されていた状態だったのかは分からない」と証言。別の元従業員も「穴は人がやっと通れるぐらいの大きさだった。機関室と舵機室を行き来するのに、穴があると楽だった」と話していた。投稿者感想=よくタンカーや大型の客船・貨物船は、火災や海難事故によって浸水が広がるのを防ぐために、いくつも隔壁を設けて隣の区画に移らないようにしていることを聞く。投稿者が調べたところ、KAZUⅠは元々、瀬戸内海で航行されていた。その時点で穴が開けられたのか、現船主になって開けられたかは不明も、現船主側に責任があるのは言うまでもない。

▽原因2-B・知床半島沖に不向きな船体構造だった・バラスト(砂袋)の位置も不適切
報告書では船体そのものの構造の不適合が事故の直接原因とまで言い切っていないが、欠陥は指摘はされている。KAZUⅠは比較的穏やかな水域を航行するための船(前項)として建造され、従って波が高いと海水が流入しやすい構造だったと指摘している。TV番組でも専門家は客室の位置が高く、波が高く風が強い知床半島沖で航行するには不向きと言っていた。さらに報告書は、船を安定させるためのバラスト(砂袋)の位置が船首側に置かれ、沈みやすい状況(前方に傾く)になっていたことも分かった。JCIが禁止していたにもかかわらず、バラストの一部を規定の場所から動かしていた可能性があるという。観光船に備えられていた救命胴衣や、しがみついて浮力を保つ救命浮器が低水温の海域に適していなかったことなども指摘した。※投稿者補足/KAZUⅠ特有の不備ではなく、専門家は以前から北海道のような寒冷水域に人間が浸れば、短時間で生命が失われ不向きとしていた。

▽原因3・運輸安全委員会は日本小型船舶検査機構(JCI)の検査が不十分だったと指摘
報告は、JCIの検査不十分と結論付けた。その裏付けとして、JCI札幌支部が事故3日前の22年4月20日に検査をしていた。その際、検査担当者はハッチの蓋の密閉状況を「問題なし」と判断したが、実際は開閉の確認までしていなかったとした。運輸安全委員会は、それが沈没の要因の1つになったとした。投稿者の感想=それは言う通りだが、問題はそこではない。担当者を庇う訳ではないが、背景を考慮しなければならない。既号の文章をそのまま転記すると、「検査員は業務用車で現場に赴き、1日平均3.2隻、154㎞を移動する強行軍。3分の2が春から夏に集中し、その時期は1日4.6隻の検査に膨れる。船体・機関・無線設備・救命設備などを確認するが、ある船の所有者は「検査は資料や法定備品が揃っているかを調べ、すぐ終わる」。投稿者としてはおそらく形式な検査、目視(見ただけ)など検査にも匹敵しないものだと思われる。短時間で数をこなさなければならず、検査体制が極めて脆弱だ」。いわゆるその程度に終わらせなければ、日程が消化し切れないJCIの人員体制が問題なのだ。しかし報告書の流れは、KAZUⅠの船主・船長とJCIに責任を負わせた形でまとめられていた。

【投稿者の結論】大本の原因は国土交通省の無責任体制にありメスを入れなければ同じ事故を繰り返す
大本の原因は、その背景にある30年前から続く国土交通省の無責任体制だ。同じく投稿者が過去の文章に述べたように、国土交通省のJCI人員削減方針、甘い船舶検査、緩い船舶免許の取得、安全を無視した規制緩和などが原因だ。責められるべきは大本の国土交通省であり、そこに全く触れていない運輸安全委員会の報告は、極めて意図的・政治的な臭いがする。船主、検査員など一部の人間に責任を負わせ、原因の根幹である組織の欠陥にメスを入れなければ、また同じ事故を繰り返すことは明白だ。

Sankoub
前号/知床観光船沈没事故8・検証◇加藤登紀子さん「知床旅情」鎮魂の思いを込めて歌い続ける

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