再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の買い取り価格(案)

再生可能エネルギー固定価格買い取り制度案がまとまり、6/1までの間、パブリックコメントを募集しています。

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の施行に向けた主要論点に対する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620112023&Mode=0

この制度は、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)で発電された電気を、一定期間、固定価格で電気事業者が買い取ることを義務付けるもの。費用は電気の使用者が電気使用量の一部として負担することになっています。7月1日からスタートするのに、まだ価格も決まっていないという状態で、見切り発車の印象は拭えませんが、よりよい制度にするために、一般からの意見も重要。

さて、この買い取り期間・価格案は、下記のようになっています。

太陽光、風力、地熱、中小水力

バイオマス(下水汚泥、家畜糞尿、未利用木材、一般木材、リサイクル木材、一般廃棄物)

(クリックで大きく見られます)

それぞれ、計算の根拠となった費用(建設費、運転維持費)、IRR、買い取り価格、期間(案)があります。期間は住宅用太陽光が10年、地熱が15年の他は全て20年。費用は今までの実績を業界団体にヒアリングして決めていますが、ここで問題なのは今まで再生可能エネルギーの設備には補助金が支給されていたということ。

例えば「エネルギー導入促進事業」として地方公共団体、非営利団体には建設費用の1/2、民間企業には1/3の定率の補助金が支給されていました。(事業仕分けで廃止)

平成21年度新エネルギー等事業者支援対策事業の公募について
http://www.nepc.or.jp/topics/2009/0420_2.html
平成21年度 第一次補助決定事業者
http://www.nepc.or.jp/topics/pdf/090731_3.pdf

初期費用の定率の補助金のため建設費が高く見積もられていた可能性があり、このために風力等、無理な乱開発も行われ、計画通りに発電していない設備が多くあると考えています。建設だけが目的化し、実際の発電量は問われなかった。

この買い取り価格案が発表されて以降、再生可能エネルギーの導入計画が次々に公表されていますが、そのほとんどが買い取り価格の根拠となった建設費よりも安くなっています。

さて、この固定価格買い取り制度では、新規導入設備のみで、既存の設備は対象外とされていました。既存は上記のように初期の補助金が支給されているため、今まで通りRPS法で対応と。この価格を決める「調達価格等算定委員会」でもそのように説明されており、既存設備についての具体的な議論はありませんでした。

経済産業省・調達価格等算定委員会
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_0000015.html

ところが、今回のパブリックコメント対象資料には既存設備の買い取り案が含まれています。

意見募集対象資料(既存設備についてはp63)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000088273
正誤表(既存設備の計算方法に修正あり)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000088274

計算方法はまとめると下記の通り

 新規買取価格 - 補助金金額/(調達期間x標準的な年間発電量)

補助金金額を調達期間(20年?)と標準的な年間発電量で割った額を通常の買い取り価格から差し引くというもの。これを残余期間(調達期間から今までの経過期間を引いたもの)続ける。もらった補助金が多いほど買い取り価格は低くなります。(予定通り発電している設備も、失敗例も補助金が同じであれば同じ買い取り価格)

既存設備については全く議論がされておらず、今までの補助金の額、発電量等のデータも示されていない段階での固定価格への移行は拙速だと私は考えています。まずは既存設備の建設費、補助金の額、発電量、設備利用率、故障状況等、全てのデータが開示してから。それすらない状態で、議論も判断もできない。新規の建設ではなく、すでに設備がある状態なので、7月1日からの開始にこだわる必要もないはず。

再生可能エネルギーの発電量を増やすための重要な制度。一時のバブルではなく、今後長期間に渡って制度を維持していくためにも、適切な買い取り価格、運用を望みます。


関連ページ
総務省:バイオマスの利活用に関する政策評価<評価結果及び勧告>
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/39714.html
予算総額6兆5千億円で214事業を行ったが、CO2削減など効果が出ている事業を「皆無」と判定、決算額を把握できないケースも92事業。

当ブログ内
日本風力開発 決算の謎
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bf415f6e04949ff167f11ac6a5398f9f
つくば市回らない風車
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/3812224161e14fa66a9247e394f11102
伊方町風力発電騒音問題
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bc830ac206a7acd06896df7fc155d5a2


2012/5/29 更新
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