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環境を考える
再生可能エネルギーの発電量はどのくらい? 設備容量と設備利用率について
震災、福島第1原発の事故以来、再生可能エネルギーの話題が大変多くなってきました。その中で再生可能エネルギーで原発○基分可能と言った記事を見ることがあります。例えば100万kWの太陽光の場合、設備容量は確かに原発1基分ですが、得られる発電量は原子力の約1/5。ここで、原子力○基分というと、誤解が生じてしまうわけです。
というわけで、「設備容量」と「設備利用率」の話です。
さて、設備容量100万kWの発電所があるとします。ここで1年間でどの位の電力が発電できるでしょうか?
発電量は、出力x時間(Wh)で計算されます。
1年間では24時間x365日=8760時間なので、1年間目一杯発電したとすると、
100万kW x 24 x 365 = 876,000万kwh = 87.6億kWh
しかし、どの発電方法でも常に100%出力できるわけではありません。で、実際の発電量を設備容量(x時間)で割ったのが設備利用率です。
設備利用率 = 実際の発電量 / (設備容量x時間)
要は、フルに発電できた場合と実際の発電量の割合です。原発の設備利用率が60%に低下した。なんてニュースで使われたりしています。
参考 世界の原子力発電の設備利用率の推移
![](http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010energyhtml/img/213-2-4.gif)
平成21年度エネルギー白書より
ちなみに平成21年度の日本の原子力発電所の設備利用率は64.7%だったそうです。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100305a04j.pdf#page=12
原子力発電は安定電力と言われていますが、それでも設備利用率は100%ということはありません。火力発電でも、点検、出力調整、故障等で設備利用率は下がります。水力発電は雨量に関係します。風力、太陽光などの再生可能エネルギーは変動が大きく、設備利用率は相対的に小さくなります。(地熱を除く)最近話題の風力発電では、設備利用率20~30%、太陽光発電は12~15%程度と言われています。
設備利用率を原子力65%、太陽光12%、風力20%とした場合、全て同じ100万kWの設備容量であったとすると、年間の発電量は
原子力 100万kW x 24時間 x 365日 x 65% = 569,400万kWh
太陽光 100万kW x 24時間 x 365日 x 12% = 105,120万kWh
風力 100万kW x 24時間 x 365日 x 20% = 175,200万kWh
と、同じ設備容量でも発電方式で得られる電力(発電量)は大きく異なります。日本の原子力発電の設備利用率が60%台というのは国際的に見て低いですが、それでも他の発電方式と比べると発電量は大きい。同じ設備容量だと、原発は風力の3倍以上、太陽光の5倍以上の電力を発電することになります。
ここでは、原子力の設備利用率を65%を使って計算していますが、これが80%だと原子力の発電量はさらに大きくなります。もちろん、風力を30%として計算することもできます。(洋上風車だと30%くらいか?)ただ、日本の現状では風力の設備利用率は20%以下になっているようです。太陽光は雨、曇天、夜間は発電しないので設備利用率はどうしても低い。
このように、発電の方法により設備利用率は大きく異なります。また、太陽光は夜間は発電できない。季節によって風の強さも変わる。水力は雨が少ないと発電できないなど、発電の特性も違います。単純に設備容量を足し合わせて、原発○基分とか、原発がなくても電気は足りると言うことはできません。
原発の代替えを再生可能エネルギーで!と言う声が大きくなってきていますが、再生可能エネルギーにももちろん欠点があります。風力発電の反対運動が大きいのも事実。大規模ダムは今後作るのは難しいでしょう。あまりにもてはやすのではなく、利点と共にそれぞれの発電特性、コスト、リスクも考える必要があります。
関連ページ
大規模洋上風力発電九州大グループが研究開発へ 1ユニットで原発1基分の発電 低リスク・低コストで実現可能
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/electoric/electoric_wind01.htm
有名な社民党ホームページにある風レンズ洋上風車。「1ユニットで100万キロワット級の洋上風力発電は、原発1基分の総発電能力」とありますが、総発電能力というのが何を差すのかがはっきりしません。少なくとも設備容量100万kWの洋上風車で、原発1基分の発電量を得るのは無理でしょう。
池田信夫氏 原発1基分=山手線内側分面積の太陽光パネル[NEWSポスト]
http://www.news-postseven.com/archives/20110512_19990.html
100万kWを発電するためには、(太陽光)パネルが約42~56平方km必要になる(山手線内は約58平方km)。としているが、100万kWが発電量なのか設備容量なのか分からない。(記者も分からずに書いているよう)ここでも「発電能力」という言葉が出ています。割と一般的な言葉なのでしょうか?
資源エネルギー庁 電力調査統計
http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/denryoku/result-2.htm
2-(4)発電設備利用率に各発電方式での設備利用率あり。(ただし、水力は可能発電電力量に対する実発電電力量の比なので、一般的な設備利用率とは異なるので注意)九州電力の地熱は約80%で安定。風力は季節変動が大きい。
勝手に風力発電講座 定格出力と設備利用率
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/a08334ada4cdae6bf1fe22356a36d648
風力発電の設備利用率について以前に書いた記事。今回とほぼ同じ内容です。
2011/5/23 更新
というわけで、「設備容量」と「設備利用率」の話です。
さて、設備容量100万kWの発電所があるとします。ここで1年間でどの位の電力が発電できるでしょうか?
発電量は、出力x時間(Wh)で計算されます。
1年間では24時間x365日=8760時間なので、1年間目一杯発電したとすると、
100万kW x 24 x 365 = 876,000万kwh = 87.6億kWh
しかし、どの発電方法でも常に100%出力できるわけではありません。で、実際の発電量を設備容量(x時間)で割ったのが設備利用率です。
設備利用率 = 実際の発電量 / (設備容量x時間)
要は、フルに発電できた場合と実際の発電量の割合です。原発の設備利用率が60%に低下した。なんてニュースで使われたりしています。
参考 世界の原子力発電の設備利用率の推移
![](http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010energyhtml/img/213-2-4.gif)
平成21年度エネルギー白書より
ちなみに平成21年度の日本の原子力発電所の設備利用率は64.7%だったそうです。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100305a04j.pdf#page=12
原子力発電は安定電力と言われていますが、それでも設備利用率は100%ということはありません。火力発電でも、点検、出力調整、故障等で設備利用率は下がります。水力発電は雨量に関係します。風力、太陽光などの再生可能エネルギーは変動が大きく、設備利用率は相対的に小さくなります。(地熱を除く)最近話題の風力発電では、設備利用率20~30%、太陽光発電は12~15%程度と言われています。
設備利用率を原子力65%、太陽光12%、風力20%とした場合、全て同じ100万kWの設備容量であったとすると、年間の発電量は
原子力 100万kW x 24時間 x 365日 x 65% = 569,400万kWh
太陽光 100万kW x 24時間 x 365日 x 12% = 105,120万kWh
風力 100万kW x 24時間 x 365日 x 20% = 175,200万kWh
と、同じ設備容量でも発電方式で得られる電力(発電量)は大きく異なります。日本の原子力発電の設備利用率が60%台というのは国際的に見て低いですが、それでも他の発電方式と比べると発電量は大きい。同じ設備容量だと、原発は風力の3倍以上、太陽光の5倍以上の電力を発電することになります。
ここでは、原子力の設備利用率を65%を使って計算していますが、これが80%だと原子力の発電量はさらに大きくなります。もちろん、風力を30%として計算することもできます。(洋上風車だと30%くらいか?)ただ、日本の現状では風力の設備利用率は20%以下になっているようです。太陽光は雨、曇天、夜間は発電しないので設備利用率はどうしても低い。
このように、発電の方法により設備利用率は大きく異なります。また、太陽光は夜間は発電できない。季節によって風の強さも変わる。水力は雨が少ないと発電できないなど、発電の特性も違います。単純に設備容量を足し合わせて、原発○基分とか、原発がなくても電気は足りると言うことはできません。
原発の代替えを再生可能エネルギーで!と言う声が大きくなってきていますが、再生可能エネルギーにももちろん欠点があります。風力発電の反対運動が大きいのも事実。大規模ダムは今後作るのは難しいでしょう。あまりにもてはやすのではなく、利点と共にそれぞれの発電特性、コスト、リスクも考える必要があります。
関連ページ
大規模洋上風力発電九州大グループが研究開発へ 1ユニットで原発1基分の発電 低リスク・低コストで実現可能
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/electoric/electoric_wind01.htm
有名な社民党ホームページにある風レンズ洋上風車。「1ユニットで100万キロワット級の洋上風力発電は、原発1基分の総発電能力」とありますが、総発電能力というのが何を差すのかがはっきりしません。少なくとも設備容量100万kWの洋上風車で、原発1基分の発電量を得るのは無理でしょう。
池田信夫氏 原発1基分=山手線内側分面積の太陽光パネル[NEWSポスト]
http://www.news-postseven.com/archives/20110512_19990.html
100万kWを発電するためには、(太陽光)パネルが約42~56平方km必要になる(山手線内は約58平方km)。としているが、100万kWが発電量なのか設備容量なのか分からない。(記者も分からずに書いているよう)ここでも「発電能力」という言葉が出ています。割と一般的な言葉なのでしょうか?
資源エネルギー庁 電力調査統計
http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/denryoku/result-2.htm
2-(4)発電設備利用率に各発電方式での設備利用率あり。(ただし、水力は可能発電電力量に対する実発電電力量の比なので、一般的な設備利用率とは異なるので注意)九州電力の地熱は約80%で安定。風力は季節変動が大きい。
勝手に風力発電講座 定格出力と設備利用率
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/a08334ada4cdae6bf1fe22356a36d648
風力発電の設備利用率について以前に書いた記事。今回とほぼ同じ内容です。
2011/5/23 更新
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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山手線の太陽光の話は、池田信夫氏の計算は間違っていないようです。
ただ、記事中に設備容量、設備利用率という言葉はなく、kwとkwhが混在して分かりにくくなっています。
記者も多分分かっていないように思います。
私も書き方が悪かったようで、誤解されてしまったとしたらすみません。。。
山手線の内側、または猪苗代湖くらいの面積が必要となりました。
年間の発電量で計算したのですが、これを単に「発電能力」と表現したのではないでしょうか。
造語に近いですね。
固定価格買い取り制度もスタートし、メガソーラー等のニュースがよく見られるようになりました。
その際、年間の発電量を示し、「一般家庭○○件分の消費量相当」という表現が多いです。
単純に原発で換算していないだけまだましですが、やはり意のままにならない電力をバックアップ電源などの問題を考慮せず、発電量だけで測るのはいろいろ誤解を与えかねませんね。
この記事では、発電量で比べているのでまだ良いと思います。ただ、kwとkwhの混在、発電能力という言葉などが分かりにくくなっていると思います。
すでに震災から1年半が経過していますが、いまだに再エネの設備容量だけで原発○○基分とする報道があります。それにkwとkwhの混乱も。
再生可能エネルギーでは特に、発電方法により出力の変動、発電量に大きな差があり、混乱の元になっているようです。それぞれの特性に合わせて考える必要があると思います。
ご指摘ありがとうございます。
訂正いたしました。
なお、他の記事の訂正はぼちぼちやりますので、ご了承ください。