ポジティブか、ネガティブか、私は前者でいきましょう!!
>以下抜粋
>第54回「日本経済は新たな上昇気流に乗れるか――2007年の展望」(2006/12/28)
2007年の日本経済は新たな上昇気流に乗ることができるだろうか。
06年の日本経済は100点満点でいえば、及第点の60点はクリアした。「まずまずの成果」といってよいが、80点以上のA評価には届かなかった。やや甘く採点すればB評価、辛目でC評価の、65点から70点といったところだろう。
ただし、06年の日本経済のパーフォーマンスを「悲観的に総括」してはならない。日本経済が長かった「15年デフレ」から脱しつつあることを踏まえれば、「後ろ向き(バックワード・ルッキング)」ではなく、「前向き(フォーワード・ルッキング)」にとらえるべきだからだ。
「発進態勢」を備えつつある企業
たしかに、政府は「デフレ脱却宣言」をいまだ出せない逡巡(しゅんじゅん)状態にある。だが、デフレトンネルの出口は見えているし、抜け出しつつある。その証拠が今次の景気上昇局面(「小泉景気」)が06年11月に「いざなぎ景気」を超え、戦後最長を記録していることに端的に表れている。
「勢い」には欠けるが、5年5カ月の小泉時代に日本企業や国民が「血と汗」を流した大リストラの効果によって、かなりの企業は損益分岐点を大きく切り下げることに成功するとともに、不良資産の積極的な損切り(いわゆる不良債権処理)でバランスシートを好転させ、将来に向けての「発進態勢」を備えつつある。よって、企業がデフレ後に向け発進に動き出せば、経済の主力エンジンは点火し、日本経済は新たな成長を起動できる状態にある。
この観点から、07年の日本経済を読むポイントは、次の3点に集約できる。
(1) 何故に景気の約6割を占める個人消費がいまなお、「勢い」に欠くのか。
(2) 米国景気など世界経済の成長調整はどうなるか。
(3) 政府・日銀は「新しい成長」に向けて有効な政策運営を行えるか。
「勢い」欠く個人消費
まず、第1点は個人消費の「勢い」だ。最近の経済データをみれば、景気の「勢い不足」の主因が個人消費の力不足にあることは常識化している。消費が慎重な原因は、一般に雇用者所得の低い伸びにあるとされる。実際、企業収益が増益トレンドにあって久しいのに、個人所得はほとんど増加していない。雇用情勢は若年層を中心にここにきて様変わりの好転をみせつつあるが、企業は依然として雇用ベースの拡大に慎重な姿勢を維持し、非正規社員の正社員化はこれからである。また、賃上げやボーナス増もなお、一部の業界にとどまっている。
前回の本欄で強調したように、過去5年間の大リストラ旋風のもとで経営者は「羹に懲りて膾を吹く」心理から脱することができず、慎重居士のままだからだ。この結果、収益の増加分は内部留保か自社株消却など財務構造の強化に向けられ、雇用者への分配は「後回し」になっている。
こうした経営者の労働分配面への慎重さに加えて、消費者も「堅実消費」パターンが習慣化し、財布のひもを緩めるには少なからず時間がかかる。しかも、07年には定率減税廃止など増税プレッシャーがあるし、近い将来の消費税引き上げも想定内。とすれば、なかなか消費シーンに目立った動意は生まれにくい。
世界経済の大幅な調整は杞憂
第2点は米国景気の行方だ。06年1-3月、4-6月、7-9月の米国の実質国内総生産(GDP)は年率で各々5.6%増、2.6%増、2.0%増と減速傾向を強めている。07年の実質成長率は2.5%前後とみる向きが多いが、筆者は2%前後にスローダウンするとみる。
この程度の景気減速はこれまでの「黄金の10年」からみて必然的な調整で、これが07年の世界経済の足を引っ張るとみるのは過大な懸念である。それよりもBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)など新興経済諸国はいま、中長期的な成長トレンドにあり、中産所得階層が着実に増大しているから、世界経済の大きなスローダウンは杞憂(きゆう)に終わるのではないか。むしろ、原油や資源価格の高騰に歯止めがかかることを評価すべきではないか。
>以下抜粋
>第54回「日本経済は新たな上昇気流に乗れるか――2007年の展望」(2006/12/28)
2007年の日本経済は新たな上昇気流に乗ることができるだろうか。
06年の日本経済は100点満点でいえば、及第点の60点はクリアした。「まずまずの成果」といってよいが、80点以上のA評価には届かなかった。やや甘く採点すればB評価、辛目でC評価の、65点から70点といったところだろう。
ただし、06年の日本経済のパーフォーマンスを「悲観的に総括」してはならない。日本経済が長かった「15年デフレ」から脱しつつあることを踏まえれば、「後ろ向き(バックワード・ルッキング)」ではなく、「前向き(フォーワード・ルッキング)」にとらえるべきだからだ。
「発進態勢」を備えつつある企業
たしかに、政府は「デフレ脱却宣言」をいまだ出せない逡巡(しゅんじゅん)状態にある。だが、デフレトンネルの出口は見えているし、抜け出しつつある。その証拠が今次の景気上昇局面(「小泉景気」)が06年11月に「いざなぎ景気」を超え、戦後最長を記録していることに端的に表れている。
「勢い」には欠けるが、5年5カ月の小泉時代に日本企業や国民が「血と汗」を流した大リストラの効果によって、かなりの企業は損益分岐点を大きく切り下げることに成功するとともに、不良資産の積極的な損切り(いわゆる不良債権処理)でバランスシートを好転させ、将来に向けての「発進態勢」を備えつつある。よって、企業がデフレ後に向け発進に動き出せば、経済の主力エンジンは点火し、日本経済は新たな成長を起動できる状態にある。
この観点から、07年の日本経済を読むポイントは、次の3点に集約できる。
(1) 何故に景気の約6割を占める個人消費がいまなお、「勢い」に欠くのか。
(2) 米国景気など世界経済の成長調整はどうなるか。
(3) 政府・日銀は「新しい成長」に向けて有効な政策運営を行えるか。
「勢い」欠く個人消費
まず、第1点は個人消費の「勢い」だ。最近の経済データをみれば、景気の「勢い不足」の主因が個人消費の力不足にあることは常識化している。消費が慎重な原因は、一般に雇用者所得の低い伸びにあるとされる。実際、企業収益が増益トレンドにあって久しいのに、個人所得はほとんど増加していない。雇用情勢は若年層を中心にここにきて様変わりの好転をみせつつあるが、企業は依然として雇用ベースの拡大に慎重な姿勢を維持し、非正規社員の正社員化はこれからである。また、賃上げやボーナス増もなお、一部の業界にとどまっている。
前回の本欄で強調したように、過去5年間の大リストラ旋風のもとで経営者は「羹に懲りて膾を吹く」心理から脱することができず、慎重居士のままだからだ。この結果、収益の増加分は内部留保か自社株消却など財務構造の強化に向けられ、雇用者への分配は「後回し」になっている。
こうした経営者の労働分配面への慎重さに加えて、消費者も「堅実消費」パターンが習慣化し、財布のひもを緩めるには少なからず時間がかかる。しかも、07年には定率減税廃止など増税プレッシャーがあるし、近い将来の消費税引き上げも想定内。とすれば、なかなか消費シーンに目立った動意は生まれにくい。
世界経済の大幅な調整は杞憂
第2点は米国景気の行方だ。06年1-3月、4-6月、7-9月の米国の実質国内総生産(GDP)は年率で各々5.6%増、2.6%増、2.0%増と減速傾向を強めている。07年の実質成長率は2.5%前後とみる向きが多いが、筆者は2%前後にスローダウンするとみる。
この程度の景気減速はこれまでの「黄金の10年」からみて必然的な調整で、これが07年の世界経済の足を引っ張るとみるのは過大な懸念である。それよりもBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)など新興経済諸国はいま、中長期的な成長トレンドにあり、中産所得階層が着実に増大しているから、世界経済の大きなスローダウンは杞憂(きゆう)に終わるのではないか。むしろ、原油や資源価格の高騰に歯止めがかかることを評価すべきではないか。