ドル崩壊の次の時代
書籍紹介:Osker Morgenstern:International Financial Transaction and Business Cycles, Princeton University Press.
ドルが崩壊に向かって暴落し続けている。元々、1国内部で通用する1国通貨のドルを、世界通貨として使用する事そのものに無理があった。
今後は、長い期間の議論を経て、新しい世界通貨というものが形成されて行くであろう。その場合、ヨーロッパがフランやマルクからユーロ通貨へと「まとまって行った」経験が参考になる。
最大の問題となるのは、通貨をどのように安定させるかという課題であり、かつては金塊と紙幣を一定比率で交換すると「約束」し、通貨を発行する金本位制度を採用する事で通貨を安定させようとして来た。
しかし、世界経済の成長率が10%の場合に、金塊が鉱山から採掘される伸び率が3%であれば、通貨は供給不足に陥る。そして、この2つの数字が一致する事は「有り得ない」。しかも金塊自身が商品でもあり、価格が大きく変動する。その意味で21世紀の現在、金本位制度が現実的に有効であるとは考え難い。
むしろ最も可能性の高いのは、金・銀・銅・ニッケル・トウモロコシ・小麦・コーヒー・原油・天然ガス等、様々な商品の一定量の価格を1セット=「バスケット」にし、その「バスケット」と通貨をリンクさせる「商品バスケット方式」であり、これが現在、最も実物経済と金融経済を正確にリンクさせ、安定させる制度であると言える。
モルゲンシュテルンの本書は、かつての金本位の通貨制度を詳細に実証分析し、金塊と紙幣が交換されるシステムによって、通貨が安定するはずの金本位制度が、実は、虚偽の制度、ウソによって成立していた事実を明らかにしている。各国政府は自国が所有している金塊の量を「大幅に上回って紙幣を発行していた」。つまり、金塊と交換するなどと言うのは制度的な「ウソ、詐欺行為」であり、金本位制度は、金塊と紙幣の交換を「全く前提にしていない」、紙幣の印刷「し放題」の制度であり、それを誤魔化すために「金塊と紙幣を交換する」と虚偽を述べていた詐欺システムであることを、モルゲンシュテルンは実証している。
こうした事実としての金本位制度の「ウソ」を見る時、今後、採用されるであろう最も安定性のある“はず”の「商品バスケット方式」の新しい世界通貨が、「様々な商品と通貨の交換を政府・国連が保証する」と主張する「ウソ」の制度となり、かつての金本位制度下と同様に世界中の市民がそのデマを信用し、新しい紙幣を必死で働き貯蓄する「サギ・システム」となる事を、本書は予言している。
金塊との交換を約束された最も安定していたはずの金本位制度は、「なぜ崩壊したのか?」。金塊と交換されるから最も安定しているというシステムの主張が「ウソ」であったためである。
今後、採用される様々な商品との交換を約束された最も安定しているはずの「商品バスケット」通貨制度は、「なぜ必ず崩壊するのか?」。様々な商品と交換されるから最も安定しているというシステムの主張が「ウソ」であるためである。
この通貨制度の「ウソ」により通貨は崩壊し、騙された市民は全財産を失い、ホームレスとして道端に投げ出される。市民は犯罪の被害者であり、犯罪の犯人は銀行と政府・国連である。
通貨は通貨である以上、その本質からして無限増殖し、無限増殖の末、実体経済から異常に分離し、その分離の末、通貨は信用を失い、必ず崩壊し、世界恐慌と世界戦争を引き起こし、人類を絶滅へと追い込んでゆく。それが通貨の本質である。その回避・抑止の方法は、地域通貨についての拙稿「地域通貨のための基礎理論」を参照。