小鳥がとんだ後の
梢の小さなゆらめきが
静まりかえった夕暮れを
すこしばかり陽気にした
路は
雑木林をひとつの方向に
とめどなく流れていて
もし
小鳥がとばなかったら
わたしは
影をたたみこんで
路におぼれていただろう
塚原将「たったひとつの季節に』より . . . Read more
ある程度
友に逢わないと
わたしは
友をいらないような
いらだちを感じる
まったくのひとりぼっちは
朝に顔を合わす
水槽の金魚にさえ
感じているので
棘のない痛みが
そんないらだちを
つれてくる
塚原将「たったひとつの季節に』より . . . Read more
部屋のなかの孤独感をひきずって
街に出てみると
小さすぎて
街の中の孤独感をひきずって
海に来てみると
とても小さすぎて
さあこんどは
空にでも登ってみようか
塚原将「たったひとつの季節に』より . . . Read more
本当に逢いたいひとは
ほんのかすかなずれもなく
心がむかいあうひとは
いないか
いるはずはない
鏡にうつるわたしでさえ
本当のわたしより
明るい顔をしている
塚原将「たったひとつの季節に』より . . . Read more
トンボの頭をひきちぎるように
愛をちぎって投げた
方向を失って
遠い目をした言葉のやりとりも
間と思ったし
暖まるだけのふれあいも
愛だと思った
捨てられた頭のほうは
信じられずに
死んでしまったのに
塚原将「たったひとつの季節に』より . . . Read more
永遠に目をそらすことがなかったら
わたしは
ひとつの愛を信じたろう
永遠に黙りつづけられたなら
わたしは
ひとつの愛を信じたろう
わたしは
すぐによそみをしたり
話をしたりしたので
自分すら信じられなくなってしまい
ひとつの愛は
いつの間にか
真心の玩具になってしまった
塚原将「たったひとつの季節に』より . . . Read more
虹の美しさは
濡れた空が乾くまでに
消えてしまうから
なおさら
美しく心に残る
もし虹が
決して消えないものならば
わたしは
いつでも気づまりな思いをして
空を
信号にしたがって歩くだろう
塚原将「たったひとつの季節に』より . . . Read more
花の散ることは淋しいことなのだが
花の散ることは誰でも知っていて
やがて実のなる頃には
すっかり忘れてしまうのに
ほんの短い時間が
あまりにひっそりとするために
情深い偽善者が
深刻な顔で腕をくむ
その実を口にするとき
誰が花のことまで思い出すものか
ただ
甘い
すっぱいと
思うだけで
しょせん同情心なんてそんなもの
可哀そうにと涙ぐんでいる目のなかで
花は満開の季節だ
塚原将「たった . . . Read more
花が音もなく散ってゆく
時間のように
哀しい優しさがにじんでいるので
瞳をとじたままでいる
静まりかえった海一面に
花弁が
釣舟のようにひろがっている奇妙な風景が
涙にのって
次から次へとこぼれおちる
決して淋しいのではない
まして悲しいことは何もない
花弁のもろい美しさが
ふと海に重なったことが
新鮮にうれしかったのだ
塚原将「たったひとつの季節に』より . . . Read more
振りむくと
子供のわたしが微笑っていて
秋が風車のようにまわっている
あのとき
たしか わたしは泣いていたのに
わたしが羽根を切った
赤とんぼが
すっきりと飛んでいる
塚原将「たったひとつの季節に』より . . . Read more