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水素を何から作るか!

2005-11-09 | 水素
燃料電池は電気と熱を発生するいわゆるコジェネであり、家庭やマンション、病院などで利用できる分散電源です。大型発電所でももちろん大量の熱が発生していますが、この熱を電気のように各家庭まで配ることができないので、仕方なく温水プールなどで細々と利用し、残りは海水に捨てています。

分散電源なので街中や建物の中に発電装置があり、そのため電気の他に熱も直接利用できます。結果としてエネルギー利用率を高めることができ、使用燃料を削減できるのでCO2排出量抑制に寄与します。つまり、燃料電池は効率の高いコジェネ装置です。

現在実用化あるいは実証に供されている燃料電池の燃料は都市ガスあるいはLPGです。化石燃料ですが、先に書いたとおりエネルギー利用効率が高いので、CO2排出量を削減できます。

これに対してCO2を発生しないで燃料電池の直接の燃料である水素を作る方法が検討されています。ひとつは太陽光で自ら水素を作る方法です。太陽電池-水電解もそのひとつの方法ですが、このほど東京理科大が開発した方法は、これを触媒を用いてひとつの反応場で行おうというものです。

大川助教授らが開発した方法は、青色発光ダイオードに使われる窒化ガリウムの光触媒機能を利用するもので、水槽にこのチッ化ガリウムと白金を電極にして入れ、光を当てて直接水素を発生させるものです。光から水素へのエネルギー変換効率は0.5%と実用化光触媒であるTiO2の2%よりは低いものの、有効な光の波長の幅をコントロールすることで3年以内に変換効率20%を目指すといいます。

なお、研究総括責任者にはあの中村修二教授です。20%の効率とはとてつもない目標と思うが、将来的に期待できる技術分野ではあると思います。

もうひとつはもっと実用的というか身近なお話です。
京都市では家庭生ごみをメタン醗酵-水蒸気改質して水素を作るプラントを稼動させます。このプラントからはCO2は発生するものの、バイオマス起源なのでカーボンニュートラルです。バイオマス-メタン醗酵-水蒸気改質は新しい技術ではありませんが、京都市の特徴はグリセリンも醗酵の原料にしているところです。

突然、グリセリンがどこから出てくるのか。京都市ではすでに家庭からの廃食用油からBDFを作るプラントを稼動させています。このプラントから副生物としてBDFの10分の一程度の量のグリセリンが出ます。このグリセリンは下手をすると廃棄物処理にまわさないといけないことになるので、京都市はこのグリセリンも醗酵原料とすることで、廃棄物処理とバイオガス製造の一石二鳥を狙っているわけです。環境省の補助事業でH17年度は1.5億円の予算だそうです。

こちらについてもCO2を実質増加させずに水素を作る方法として期待はできますが、エネルギー効率が果たして見合うかです。何も無理やり水素を作らなくても、バイオガスはそのまま燃料にした方が良いかもしれません。まして、液体燃料としても使えるであろうグリセリンをわざわざ扱い難いガス体にするからには、エネルギー効率の高いことが要求されるものと思います。

エネルギー効率の観点からより良い方法を選択しなければいけません。

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