落武者の行方

09.02.02>>>迷走中?(since 04.09.13)

「谷口吉生のミュージアム」

2005-04-23 | art
Tokyo Opera City ART GALLERY|YOSHIO TANIGUCHI"MUSEUM BY YOSHIO TANIGUCHI"



昨日訪れた、東京オペラシティアートギャラリーで開催中のニューヨーク近代美術館[MoMA]巡回建築展"MUSEUM BY YOSHIO TANIGUSHI 谷口吉生のミュージアム"です。
ex-chamberのDADA.さんとご一緒させて頂きました。


MoMAで開催されたときは"Yoshio Taniguchi:NINE MUSEUM"でした。
そこに日本独自の3プランを加えた12プランの模型、映像、パネル(一部図面)で構成される企画展。

行く前に必至に記憶を辿って、「12もあったか・・・?」と思っていたのですが、あぁ、そういうことでしたか。"葛西臨海水族園"と"広島市環境局中工場中央通路ギャラリー"も含んでいるわけですね。。こじつけのような後者、確かに写真など記憶を寄せ集めた範囲ではかなり力強い美しさを持った通路で美術館に匹敵しそうではありましたが(行ったことはないですが)。

さすがにかっちりした模型。
それを中心に映像を加えた展示は、建築に関係していない方々でも興味さえあれば楽しんで頂けるようになっていたと思います。
図面ばかり並べられても、正直よくわからなかったりしますもんね。

ただ、やはり行かねばなぁ、と。
「そう思うきっかけとしての企画展ですよね。」とDADA.さんともお話しました。そういうわけで意外に早く見終わったりしました。
MoMAのパートは、実物を観ていなかったらもの凄い時間をかけてかじりついていたでしょうが、やはり。[追記:MoMAの写真はこちらです。残念ながら欧米での評判はそんなに良くないとのことですが・・・。まあ、そういうものはここでは大した問題ではないんですけど。]
そうは言いつつも、"万博政府館基本計画案"と"京都国立博物館百年記念館"の模型がみられたのは収穫でしたし、他のプランも興味深くジロジロと拝見。


キャノピーに、大壁・・・。
「あぁ、谷口建築。」と一目でわかるような手法。男っぽい無骨さを潜ませながら優美なところはさすがだと改めて感じました。

「iichiko design展」

2005-04-21 | art
The University Art Museum Chinnretsukan Gallery,Tokyo National University of Fine Arts and Music"iichiko design"



日曜に訪れました(また)、東京藝術大学大学美術館陳列館で開催中の"iichiko design展"です。


いいちこ、と言われても正直「下町のナポレオン」というフレーズに+α程度の知識しかなく、ましていいちこが広告媒体としているであろうホビーやファッション系の雑誌など殆ど読まない、TVは置いていない(というか実家でもいいちこのCMなんか一度も見たことないのですが)・・・というような感じで、どういったアプローチでやっているのか訪れるまで全くわかりませんでした。


東京藝大の河北秀也教授が一手に引き受けている、という"いいちこデザイン"。確かに一貫したコンセプトが感じられました、というかだいぶ定まった路線でずっとやっていたんだな・・・と。
特にポスターなどのヴィジュアルは長年変わらぬコンセプトに基づいてやってきたんだな、と驚き。
ボトルに関しては「こんなモダンになってたんですか。」とまた驚き。


なんというか、知識が殆ど無かっただけに感心することしか出来なかった、という感じなのですが企業イメージと直結するものの一つであるこういったデザインの重要性を改めて感じました、とベタな感想です。


陳列館は無料で良い展示をしてくれるので嬉しいです。
今回の企画展も"第1回 企業のデザイン展"ということで次回が楽しみです。

「ジョルジュ・ド・ラトゥール展」

2005-04-20 | art
The National Museum of Western Art"Georges de La Tour"

日曜に訪れた国立西洋美術館で開催中の"ジョルジュ・ド・ラトゥール展"です(先生チケット有難う御座いました)。


日本での知名度が極めて低い上に、現存する真作が40点あまりという神秘性を付加するにはもってこいの画家、ラトゥール。国立西洋美術館が2003年度にそのうちの1点"聖トマス"を購入したことをきっかけに企画されたのがこの展覧会です。

かく言う僕も、その名は知っていたものの、あとは学校の美術史の授業や書籍で少し見かけたことがあるという程度でした。


きっと「騙された~」という気分になった方もいるんじゃないでしょうか。
真作は20点あまり。あとは模作とモチーフを示す関連作という内容です。
「偽物みせてんじゃね~!!」と思う人もいそうですよね。
 「え、これ、ほんもの?」
 「偽物じゃない・・・?」
というような会話も聞こえましたし。
でも、面白いことにラトゥールの場合模作でさえ価値を持ってしまう、それほどまでに作家を物語るものが少ないということなんだそうです。
真作は消失していても模作は残っている。そういったパターンが少なくないようでラトゥールという画家に近づくには欠かせないものとなってしまっているのが現状というわけです。


そんなこんなで真偽混ぜ混ぜで展示(中には貸し出ししてもらえず、模作の横に真作の写真パネル、なんていうのもありました)された作品たちは、なんというか見づらいというか・・・。
ラトゥール自身のタッチやテクニックが年代でかなり格差があるように感じられ、真筆でも「ん?」と思ってしまったり、ということもありました。
しかし、ラトゥールの代名詞とされる光と闇の劇的対比を取り込んだ作品たちになるとどこか真偽の区別がはっきりしてくるような、模作では到達し得ない地点があるようにも感じました。
一緒に行った友人も言っていたのですが、蝋燭の火によって赤く透き通る指。ここの表現はやはり本人でしか成し得ない何かがあった気がします。


今回出品された作品のうち、日本にあるのは先述の"聖トマス"と東京富士美術館所蔵の"煙草を吸う男"の2点のみです。おそらく残りも日本には無いでしょう。
展示数も少なく、真偽ごちゃ混ぜではありますがこのように一堂に会する機会は滅多に無いと思います。
そういった意味で、あまり興味が無い方もご覧になられても良いんじゃないか、と思いました(勿論休日は避けて・・・)。

「厳島神社国宝展」

2005-04-19 | art
The University Art Museum,Tokyo National University of Fine Arts and Music"Treasures from Itsukushima Shrine"



日曜に訪れた東京藝術大学大学美術館にて開催中の"厳島神社国宝展"です。


昨年の台風18号で甚大な被害を受けた厳島神社。
左楽房倒壊などで修復には2年の歳月と8億にのぼる費用が必要とされるそうです。収入の一部を修復資金に充てるべく緊急企画されたのがこの企画展です。

こういった、過去から現在へ受け継がれた日本の美術品を見るたびにそれを生み出していった人々に畏敬の念を抱かずにはいられなくなります。
本当に人間というものは、感覚も技も進歩したのか、自らと離れたところで技術は長足の発展をみせるものの、我々自身は立ち止まったままなのではないか。そのように思うのです。
簡単に言えばそれほど「ふつうに」美しいものがあるということです(危機感があるのも事実ですが)。

賑わう会場のあちらこちらから「豪華ねぇ~」「煌びやかだわぁ~」という声が聞こえてきました。
確かに。
しかしそれはこの宝物が「実際に生活の中にあった」、そのような時代があったということを意味するわけです。何気ないものにも気品と確かな技による質が与えられていた。
勿論それがほんの一部の人間のものであったことも忘れてはなりません。
それでも僕は、再び現代とのある意味無意味な比較をし、先に述べたようなことを何度も思うのです。


特に印象に残っているものとしては、国宝"密教法具"。加持祈祷を重んじ、深遠なる教えであった密教の世界を体現しているような完成度の高さを感じました。
やはり曼荼羅に通ずるものが。

それから国宝"紺紙金字法華経"は、今にも文字が紙を離れてきそうな不思議な感覚になりました。

能楽面も、観たい観たいと思って一度も生で観たことの無いせいか「こんなに表情豊かでバラエティーに富んでいるんだ・・・」と驚かされるようなものでした(現在もああいったものが全て使われているのかはわかりませんが。少なくとも写真などでは見かけたことはありませんでした)。

エントランスの狛犬2軀も独特のフォルムが気になりましたし、会場をなんとなく厳島神社に仕立ててあったので、どこかお役目果たしているような感じでした。


厳島神社の写真パネルが展示されていました。
勿論台風時、事後の写真も。
倒壊した左楽房の屋根が流れてしまうのを防ごうと、激しい波の中で必至に紐をかける神職たちの写真を見て、何も知らなかった自分が恥ずかしくなりました。

1日も早く復旧されることを願ってやみません。




追記>>そういえば常設のほうも高橋由一の写生帖なんていうものが展示されていて、面白かったです。

石居麻耶「親愛なる日々の光景」

2005-04-18 | art
Goraku gallery|Maya Ishii solo exhibition

ごらくギャラリーで開催中の石居麻耶展"親愛なる日々の光景"です。

ex-chamberのDADA.さんにススメて頂いて一昨日観に行ってきました。
ウェブで見ると、銀座の高級宝飾店のような外観で「一見さんおことわり」などという雰囲気さえありそうな感じだったのですが、そんなことは無い、ということではりきって行って参りました。


DMにも使われている作品など予め観た時の印象は凄く好印象でしたが、同時にテクニックをバリバリ感じさせるような作家さんかな、とも思っていました。

しかし実際ギャラリーに行って1点1点じっくり観てみると、良い意味で、本当に良い意味で普通で何か心が落ち着くような気分になりました。
親愛なる日々の光景というタイトルに違わぬ、静かで暖かでどこか心躍ったり悲しんだり、豊な視線をそれぞれの作品から感じました。
画面の表情も面白くて、近くでじっと見入ってしまいました。


観終わったあと、少しだけスタッフの方と在廊してらっしゃった石居さんとお話させて頂きましたが、すごく小柄な方で、でも何か頼もしさを感じさせてくれるような方でした。
次回6月に青山のピガ画廊での個展(出版記念展だそうです)が決定しているそうで、都合がつけば是非伺いたいな、と思っています。

奇を衒った一過性の作品におちいりがちな若手作家の中で、静かに、しかし確実に自己主張出来る方じゃないかな、と思いました。