今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

今更「家庭医」の留学にどんな価値があるのか?

2007-11-13 01:13:53 | 臨床留学
ブログの題名にもなっています

「今更いくの?」

卒後10年もたってレジデントをやりなおす選択に、いろいろな人から言われます

かつては、米国の家庭医帰りといえば、それだけでもてはやされたようです

しかし、家庭医療研修を米国で終了した、もしくは研修中の日本人医師は60名を超えました。

うち20名強が日本で活動されており、その10名強がなんらかの教育活動をされているそうです。(亀田ファミリークリニック岡田先生提供の情報)

まだ質が検証されていないとはいえ、日本で家庭医療研修をできる施設も増えています

亀田では今年から家庭医のためのマタニティケアフェローシップも開始されました

東海地方でも、南生協病院の家庭医療コース後期研修は産科の研修にかなりのウェートをおいています

私のいる大学でも家庭医療の後期研修プログラムが開始され、レジデントも集まりつつあります


日本でも良い研修をできるようになってきたという事実に加え、アメリカに行きさえすればどこでもすばらしい家庭医研修が受けられるとは限らない、ということも注目されるようになってきました

この辺りの考察は、現ミシガン大学老年科フェロー(昨年までジェネシス地域医療センター家庭医療科レジデント)の吉岡哲也先生が「北米臨床留学へのパスポート」に寄稿された文章に詳しいので,是非読んでください

そうした中で、あえて米国にいく理由はあるのでしょうか?

留学を考え始めて10年。留学を決意して5年。いろいろな人に相談しながら自問自答してきました。その中で自分なりにまとまったのが以下の4点です

1. 人材が豊富

外のプログラムを実際にみてきてから、改めて自分の環境を振り返ると、上司や同僚に恵まれている事を強く再認識しました

それでもアメリカは家庭医先進国です

プログラムを選べば、巨匠ともいえる優れた指導医が大勢集まっているところがあります

様々な指導スタイル、診療スタイルの巨匠と出会ってそれを盗みたい。また将来自分が指導者になったときに彼らと交流を続ける事で、自分を高めたい

実はこれが自分の中での一番の渡米理由です

なんだかんだと日本はまだ人材不足なのです

レジデントをせずに教育や指導者のフェローのコースを選ぶという手もありました。それでも私は同じ釜の飯を食って,自分の努力やパフォーマンスで認めてもらう方法の方が自分にはあっていると思います。


2. 研修システムが確立している

これは長い歴史ときめ細かな検証に基づく研修の質の保証が大きいです。

こういうのは中で体験してみないと、そのよさ、日本における実現可能性の検証は難しいと感じています。


3. 指導者のフェローシップのコースがある

渡米の目的はレジデンシーよりも、その先の指導者としてのフェローシップにあります

勿論レジデンシーで学ぶ事もたくさんあります。特に小児、産科,整形は多く学ぶ事になると思います。

10年も臨床医(主に内科系)として経験して,今更レジデントをするのは効率が悪すぎるというアドバイスを多く受けていました

そこで渡米前には小児、産科,整形の診療機会を追求することはあえてしませんでした

それよりも、EBM、身体診察、予防医療、行動科学、FD、医学教育などジェネラリスト、指導者としてのベースを深める事を優先してきたのはその為です

4. スポーツメディスンのフェローシップがある

前回もそうでしたが、今回の渡米でも、家庭医の卓越した関節の診察には驚かされました。

家庭医によるスポーツメディスンというのは、日本では未確立の分野であり、それを追求するのもおもしろいと考えています