ことばを鍛え、思考を磨く 

長野市の小さな「私塾」発信。要約力、思考力、説明力など「学ぶ力」を伸ばすことを目指しています。

勤労感謝の日によせて

2005年11月23日 | ことば・国語
昔は祝日になると日の丸を掲げる家が多かったが、最近では本当に少なくなりました。
「旗日」という言葉も「絶滅危惧種」ですかね.....。

国旗を掲げるどころか、今日が何の日で休みなのかということも知らずに遊び回っている若者よ。
今日は昔で言えば新嘗祭。農作物の恵みに感謝する日でした。
今の法律では「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」日ということになっています。
働けること、それによって物や金を手にできることに感謝し、子どもであれば働いてくれる大人に感謝する日なんですよ。
フリーターとかニートとか気取っている人、今日ばかりは「働く」ということをもう一度じっくり考えてみてはどうでしょう?

「働く」という語は平安時代以降に生まれたようですね。
で、もともとは単に「体を動かす、動く」という意味だったものが、後に「精を出して仕事をする」「努力して作業をする」という精神的な意味も加わったとのこと。
この過程で「人」と「動」を合体させた「働」という国字ができたようです。

おもしろいのはその語源。
「ハタ」から派生したようです。
「ハタ」というのは物の動く様子を表す言葉で、バタバタとかパタパタという擬態語、擬音語もここから生まれているそうです。
「ハタとひらめく」というときの「ハタ」も同じでしょうか?
「バッタバッタとなぎ倒す」の「バッタ」もそう?

それが「はたらく」という動詞になったということは、やはり「働く」とは「バタバタする」ことなんですね。
バタバタ働いて、心を亡くして「忙しく」なる。
うまく辻褄が合いますね。
因みに、関西でよく言われているという「ハタが楽やからハタラクや」というのは完全な俗説のようです。
でも、これはこれで哲学的だと思いますが.....。

外国の言葉に目を向けると、アメリカで勤労感謝の日にあたるのがLabor Day。
laborはwork、task、jobなどと比較して「つらい」「苦しい」というニュアンスが含まれるようで、laborだけで「産みの苦しみ、陣痛」という意味もあります。

また、よく知られているように、フランス語で「働く」を表すtravail(トラバーユ)がえいごではtravel(トラベル)
昔は旅も命がけの労苦だったことは想像に難くありません。
ドイツ語で「働く」はArbeitだそうで、これが日本ではちょっとした仕事を表す「アルバイト」として使われています
彼らの労働は日本人には「ちょっとした仕事」にしか見えなかったということでしょうか.....。

なんだか、西洋の「労働」に対する考え方がかいま見えますね。
彼らには日本人の「ワーカホリック」など絶対に理解できないでしょう。
苦痛なら少しでも減らしたいのはあたりまえ。
チェコ語で「強制労働」を意味するrobotaからrobotという造語が生まれたのも納得がいきます。
「ロボット」に代わりに働いてもらい、人間は苦痛から解放されたい。
そんな思いが伝わってきますね。


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